ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【彼女と焼きそばと海辺】

 

うちの彼女が最近怪しい。

 

うちの彼女はとても良いカノジョ。見目は彼氏贔屓が入ってるにしても、もう切れ長の目付きが特徴的な凄い美人だし、2人きりでいる時の普段見せない甘々な態度が何より可愛い。高めの身長から垂れ下がるポニーテールからは揺れる度に甘くふわっとしたいい香りがする。抱きついたら、もう、なんて言いながらおずおず抱き返してくれるのが愛おしくて仕方ない。

 

 

さて、そんな彼女が怪しくなったのは、そうだな具体的に言うならここ2ヶ月くらいか。

なんだか急に俺と一緒に帰るの断りだしたし、なんなら休みの日でも連絡がつかないことが多くなってきた。もしかして俺にはもう飽きたんだろうか。彼女はアイドルなってもおかしくないくらいの美人だし、ほかの色んな男に言い寄られてるのかも。そんなことを考えると悲しくなって夜も6時間しか眠れない。もうちょっとで誕生日だってのにこんなに暗い気分で過ごしたくないよ……。

 

「なぁ、どうしたらいいと思う?」

「うるせぇよ、友達と海来てる場面で聞くんじゃねぇよ」

「しかも案外しっかり寝てんじゃねぇか」

「はぁー? 人間7時間は寝ないとといけないんですけどー?しらないんか?」

「こいつ……」

 

ちっ、聞く相手をミスったか。無教養の奴らよりやっぱりうちの彼女最高、でもいま彼女は……。

 

「ねえ、躁鬱すぎてめんどくさいんだけどこいつ」

「まぁまぁ、だから今日海に連れ出したんだろ。やつも男だ。夏色きらめくおっパイの魔力には抗えんさ」

「言葉選びキモくね?」

 

そんなこんなでバカ2人と一緒に、気分転換に海に来た訳だ。さすが人気スポット、海辺にはたくさんの人が賑わい、色んな出店が美味しそうな匂いを立ち上らせている。

正直、腹ぺこ男子高校生にとってその香りは魔力だが、海に来たからにはやらなければならんことがある。

ということで。

 

「海と言えば、決まってるよな!」

「ああ、もちろんだ」

「こちとらこの為に体を温めてきたんだ」

 

「じゃぁ、泳ぐぞー!」

「「ナンパだー!!」」

 

……。

 

「え?」

「「え?」」

 

とりあえず、泳いでから食べ物つまむついでにナンパすることにした。俺は彼女いるんだけど?

 

 

ひとしきり水と戯れて、充足感とベタベタの体と満遍のない疲労を受け取った俺たち。

だが、そこでとうとう匂いの魔力にやられてフラフラと出店に近づいていく。

 

「なぁ、どれにする?」

「ここは焼きそば一択だろ」

「夏と海と言えば焼きそばだよな!」

「お前この前の祭りでも似たようなこと言ってなかった?」

 

グダグダ話していると、焼きそばの屋台の近くについた。こういう場所にありがちなことだが、焼きそばの屋台は複数あってそれぞれトッピングとかが違う。

別にどれでもいいな、と男子高校生特有の大雑把さでひとつに近づいて行くが後ろから一際大きな歓声が上がった。

 

「なんだ?」

 

後ろを振り返ると、先程スルーした別の焼きそば屋台だ。不思議に思ってみていると、店員さんが焼きそばを作り始める。その手際が、もう職人とかさすがプロ、といった感じで深いため息を吐くことしか俺達には残されていなかった。揺らめく陽炎の中、閃く鉄べらはまるでかの佐々木小次郎の技燕返しを彷彿とさせる俊敏さで、それが二刀流なのだから武蔵とのコラボレーション。最強と最強が合わさったらそりゃ超サイキョーに決まっている。

何より目を引くのがそれをやっているプロの姿だ。とても美人なお姉さんが、汗を滴らせながらものすごい手さばきで焼きそばを作ってるとなれば、注目が集まらないわけもない。しかも、そんじょそこらの美人じゃない、うちの彼女レベルの絶世の美女……うん?

 

切れ長の瞳、閃くポニーテール、何よりあのとてつもない美人顔。

 

「あれ、うちのカノジョなんだけど」

「「はぁ!!?」」

 

慌てて目を擦る友人二人は、何度見もしてようやく正体に気づいたみたいだ。

そうか、最近忙しかったのはバイトだったからか……。

 

「いや、そんなはずが」

「でもどう見ても彼女さんだよあれ…」

「どういう偶然だよ」

 

そんな友人二人の驚愕を背に俺はそちらへ歩き始めた。彼女はまだ気づいていない。だが、僕は彼女の目論見に気づいていた。

ついに注文の順番が、彼女の手前まで来た。

 

「ヘイラッシャイ、ご注文いかがします、か…?」

「焼きそば3人前と、君のとびっきりの愛を」

 

謎の美人焼きそばプロは先程の手際はどこへやら。ものすごい動揺しながら、それでも凄いスピードで仕上げてこちらへ渡してくる。

紅しょうがのハート付きだ。サービスも満点。あと顔がいい。

 

「あの、忘れて……」

「なんの事だい、僕たちは今日初対面だろう」

 

俺はそれだけ言って、その場を去る。

もちろん焼きそばを受け取り、頭のメモリーにしっかりと谷間に流れ落ちる汗と恥ずかしそうな顔を焼き付けて。

 

3人前の焼きそばは僕の胃袋に消えて、しばらく2発のアザが両頬にできたし、首元にはすごいオシャレなネックレスも増えた。

 

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