私を呼ぶ声がする。
その事に気づき、意識が急に浮上する。
目を開けると視界いっぱいに知らない女の顔。
タレ眉、なんとなく気弱そう。あと、絡まれたら面倒くさそう。もう既に面倒な事態になってるけど。
そいつは酷くオロオロとした顔をしていたが、私が目を開いたら一気に花開く笑みを浮かべた。
「起きましたのね!」
他人事なのに何故そこまでの笑顔を浮かべる?
逆に怖いよ。手まで掴まれてるし。
よっぽどこいつが去るまで寝たふりしておこうかと思ったけど、こいつに時間を使わせられる腹立ちがギリギリ勝ったので、起き上がる。
「ここはどこ、あんたはだれ、私は何してたの」
「う、え……?えとえと、ここは」
「ここは学園よ、あざみさん。あなたは気から転げ落ちて気を失ってた。」
知らない奴が増えた。
さっきのが頭含めてゆるふわ系なら、こっちは頭カチカチそう、メガネカチカチ叩きそう、30年後まで身持ちカチカチすぎて焦りそう。瞳の色が青いし、日本人ではなさそうだけど……。というか名前は何。なんであたしの名前知ってんのに私はあんたらの名前を知らないの。
「まったく……その顔だと全然覚えてなさそうね。私はガーベラ、そちらの方はたんぽぽさんよ。含めて同クラスなのだけど?」
いや、本当に見覚えがない。
その辺に集まってる有象無象も含めて。
「悪いけど一切覚えがないね。新手の押し売り?
そもそもあたしはなんでこの歳になって木登りなんてしようとしてたんだ」
「なるほど、あなたは____
「あざみちゃん、猫助けようとしてたの!」
なにか喋りかけた堅物を乗り越えてもう1人の能天気が声を上げる。やくたたずと思ってたけど、理由はわかった。そこは感謝しよう。
だが、気に入らない点がひとつ。
「あんた、いつまで私の手を握ってるわけ?」
「あ、ごめんなさい」
ぱっと手を離される。いつもなら不快に思って振りほどいてたんだが、なんとなく出来なかった。それに目の前の女を見てるとよくわかんないナニカが脳をかき乱してきて不快だ。
「事情は分かった、じゃあな」
一応、断りの言葉だけ告げてその場から走って離れる。
「あ、保健室____
その言葉を聞きたくなかったんだよ、知らねぇ人間に触れられるなんて真っ平御免だ!
たんぽぽもガーベラもバカみてぇな心配ヅラするから、一緒にいたくない。
そんなことを考えながら、途中何度か道を間違えつつ自分の寮部屋に辿り着くのだった。
部屋にたどり着いた後、ガーベラの
「あなたが繋いだ円だったのに」
去り際のよくわかんない言葉が、なぜかずっと頭に残っていた。