「おぉいおまえ!!!」
神社内を響き渡るキンキンとした声に、夕涼みしていた鳥さんたちが一斉に飛び去ります。
私はと言うと、変わらず縁側で茶を啜って我関せず。いつもの事なので。
足をぶらぶらしながら芋ようかんをもちもち飲み込んでいると、奥の方からころころとイザナミさまが飛び出してきました。
十二単なんて動きにくさトップティアみたいなもんなのに、体というか足もちっさいんだからあんなに全力疾走してたら……あぁ、言わんこっちゃない。
見事な顔面スライディングで私の目の前まで流れてきた彼女こそ、我が神社の主人たるイザナミさま。名前は誰でも聞いたことあるかもしれません。ですが、その姿は多分誰も予想できないでしょう。だって今は、威厳の欠けらも無い幼稚園児くらいの可愛らしい女の子なんですもの。
烏の濡れ羽色と表すような、豊かで艶やかな髪。服は色鮮やかなようなくすんでるかのような十二単を身にまとっています。所々金の刺繍もあってなんか成金みたいですね。で、そんな状態でよく飛んだり跳ねたりするので、今みたいなことになって泣きべそかくことが日常になっていると。一応、顔は絶世の美女……なんでしょうけど如何せん幼稚園ロリフェイスなので特殊な趣味のお友達にしか刺さらないタイプですね。
さて、彼女が主人なら、私は言わば従者。
主たる神が困っているのであれば、巫女たる私が助けて差し上げなければ。
「なんかしたり顔で頷いてるみたいだけどお前のせいじゃからな?」
「おお、主よ如何様にお困りなのでしょうか!忠実なるあなたの巫女、この超絶有能天才美少女、否命様にお任せ下さい!」
「話を聞けよ。というか、自分でそこまで言うかや普通」
「なんもないならお夕飯まで、じっとしててくださいよ、めん……忙しない方ですね」
「おい今なんて言おうとした、このダメ巫女。
妾の気分次第でお主いつでも解雇できるんじゃからな」
「めんどくさい方ですね、お夕飯抜きますか?」
「はっきり言えばいいってもんじゃないからな! あと、神を脅迫するんじゃあない!!」
「はいはい、わかりましたー。とりあえずお夕飯用意してきちゃいますね。今日はかぼちゃの煮付けありますよ」
「わーい! 待ってるね! じゃなくて、うむお主に一任してやろう。妾を満足させてみよ」
童女さまのいじらしい応援に思わず笑みを零しつつ、私は台所へ。いつの間にか戻ってきた小鳥の声と、夕焼けに照らされた小さな彼女のゆらゆらゆれる大きな影の中、歩きながら今日も頑張るぞと気合いを入れ直すのでした。
数分後。食材を出したりなんだり準備が一段落つきまして、さぁ今から始めるぞというところで。
「おぉいお前ェ!!妾のポテチ食ったじゃろ!!!」
ちっ。