午前11時半。デスクワークで凝った体をほぐし、早めに休憩室に向かう。3席しかないから早く終わった人から次々行かないと詰まっちゃうんだよな。
俺が移動していると、途中で後輩ちゃんを発見した。平均より少し低めの慎重に、プログラマにありがちなひょろひょろな体とぼさぼさ伸びっぱなしな髪。前まではしてなかった可愛らしい意匠のヘアピンが着いているがあまり本来の用途は果たせてない。
どうやらあっちも飯を食いに行くらしい。普段、部屋自体が違うから関わる機会ないし、たまには話しかけてみようか。最初の頃にぽつんとしてたところ数度話しただけだしな。
前を歩いていた彼女が、閉まっていた弁当を取り出す。
「おー、今から昼飯?」
冷蔵庫を開ける彼女に声をかける。小柄な背中が一瞬ビクッと震えた。恐る恐る、といった様子で振り返り、俺の顔を見るとオドオドと微笑む。
「……あっ、そす」
控えめにこくんと頷き、いそいそとものを取り出す。ガガっと椅子を引いて座って昼飯を前に手を合わせ、そのままもきゅもきゅと口に詰め込み始めた。
余程俺が怖いのだろうか? なんかした記憶はないんだが。というか、そんなに急いで詰め込んだら……。何となく予想が立ち、コップに水を入れる。
「!? ッ……!!!」
言わんこっちゃない。
どんどんと胸を叩き苦しそうにしている彼女の横にコップを置く。藁にもすがる速さでそれを取ると何とか一段落着いたようだ。
「ぷふぅ……」
「今度から気をつけなよ」
恥ずかしいのか、息が詰まった後遺症か顔を赤くした彼女に声をかけ、冷蔵庫からおにぎりを取り出した。
これ以上おなじ事起こすわけにもいかねぇし、さっさと退散するか。
昼飯を持って彼女から数歩離れる。
いや離れようとした。が、袖の先をぎゅっと握られる感覚に振り返る。何か用があるのか、と見てみるがなにやらあうあうと口をパクパクさせている。あがり症なのか顔の赤みも増している。先輩の、しかも普段あまり関わらないやつの袖を握って引き止めるなんてだいぶ肝が据わってんな、とか思ったけどどうやらこれが彼女の精一杯みたいだ。
仕方なしに肩をポンポンと叩き、落ち着くように言うと、少しずつ動揺が収まっていく。もみじは落ちたままだが、少なくとも俺の目を見れるくらいには落ち着いたらしい。
ようやく口を開く。
「ぁの、ありがとうございました」
相変わらず俯きがちだしよれ気味の声だけれど、少なくとも彼女の目の光は意外と綺麗なことに気がつく午後だった。