物理的に閉じる。おかしいだろ。
あの有名シンガーだって、これだけはダメだって言うよ。俺の心置き去りにして事態が進行してるもん。
そもそもなんでこんなことしたんだ。目閉じろって言われたから閉じたらこれだよ、上からセロテープ貼るんじゃねぇよ産毛禿げてなんか変な感覚になるでしょうが。
「おい、こいつは一体全体どう言う真似だ?」
下手人がいるであろうところに手を伸ばし、がっしりと腕を掴む。
「いやあの日常に刺激をというか、有名シンガーになった気分をですね」
「辞世の句はそれでいいんだな?」
「…………」
「…………」
「……あのもうちょっと考えていいデスカ」
「よく練れよ」
うんうん唸ってるチビを無視して、未だ瞼に物理的な干渉を続けるセロハンテープに手を伸ばす。
「おっとと」
「ダメです」
動かしていた手は途中で掴まれ、むにょんっと名状しがたい感覚に包まれる。
もう片方は右隣のちびを掴んでたはずだがいつの間にかこちらが掴まれ硬い感覚を押し付けられてる。未だ視界は黒く染まっているが、他の男子なら垂涎の状況なのは想像出来る。正直気持ちよくはあるのだが、それ以上に今は苛立ちが勝る。
「なんで増えてんだ」
「おかしいわね。男の子はこうすると大抵思考停止するって、ラノベに書いてあったのに」
「捨てろその有害図書」
「あの、理由は言えませんがダメです」
「ダメなのはセロハンテープで瞳を閉じさせてくるお前の頭だ、離せ」
だが、どちらも頑として譲る気は無いらしい。
俺の言葉に反応して、それぞれ感触が強くなる。左手は暖かい柔らかいしで溶けてる感じだし、右手は痛い。思いっきりボタンの跡とかついてそう。視覚が無いために他の感覚が強まっている気がする。周囲でほかの人間がガサガタやってるのも聞こえる。悪いことじゃなけりゃいいけど。
「はーい、準備終わりました!ご開帳です!」
右隣のチビから声がかけられるとセロテープが剥がされ
「痛ってぇ!!!!」
「あはは、ごめ痛ってぇ!!!!」
くそ、産毛ごとビリッと剥がされたせいでヒリヒリする。まぁ、咄嗟に動かした手にアッパー喰らったみたいだし、その辺はイーブンで許してやるか……。
「うぅ、私も悪いけどひどいですよぉ……。
って、あだ!! なんでもう1発ぶった!?ねぇ!!?」
俺の視界を制限した分、押し付けてきた分。
もう片方は凄いにこにこしてるから、手は出さない。
「なんで私にはしてくれないのかしら」
「望んでるものくれてやっても罰にならんだろ」
「ふふ、つまり今の状況が罰なのね滾ってきた」
「山奥に幽閉されてくれねぇかな、できるだけ人との接触を絶った状態で」
「ああ、放置プレイを示唆する言葉責めかしら?」
「きっっっっしょ」
「すばらしい感情の込め具合だわ気持ちいい」
「無敵かこいつ」
HENTAIから目を逸らし(隣で、無視もいいわねとか言い出した)、改めて周囲に目を向ける。
「……こりゃどういうことだ」
目にとびこんできたのは味気ない教室じゃなくて、ファンシーとカラフル。そして黒板の文字は……
「ふふ、隠してるつもりだったのよね?」
「教えてくれなかったのは酷いですけど、お友達なんだからお誕生日はいっぱい祝いますよ!」
「うるせぇ」
顔を見なくてもわかる。
なので、せめてもの抵抗として窓の外を眺める。
「あれぇ〜、照れてるんですか?
あの、普段からクールキャラみたいに振舞ってる君が!?
大丈夫ですよ、みんなも君のこと好きだから用意したんだし、なんならさっきのまぶたをセロハンで貼った姿面白すぎて写真バシバシ撮ってたからクールキャラはもう剥がれていたい!!!!」