ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【また会いましょう】

また会いましょう

 

その言葉を信じたことなんてない。嘘つきが使う言葉だから。

じいちゃんはその言葉守らなかった。

親戚のおばちゃんも、いとこの姉ちゃんも、父ちゃんも母ちゃんもそうだ。みんなみんな二度と会うことなんてなかった。

だからオレは嘘つきにならない。そんな言葉は使わない。そう決めた。

 

消防隊員になる為、俺は必死になった。

幼馴染の洋子もおばさんも心配してたけど、実際努力するのは嫌いじゃないし、弟だけは兄ちゃんかっけぇって応援してくれた。ますますやる気が出た。

おじさんは無口だったが、時おりタオルやスポーツドリンクが無言で置いてあった。時おり、オレをじっと見つめ、その後仏壇の前に行くのが日課のようになっていた。

 

俺はそれまで本の虫だったから、消防隊員になるのなんてそれこそ血反吐吐くぐらい大変だった。それでも決めたことを曲げることなんてしたくない。俺は嘘つきにだけはならないようにしないといけない。

弟のことは絶対に守ってやる、という約束だってずっと守った。そのせいで訳の分かっていない大人たちからの覚えは悪かったが、仕方の無いことだ。そういう時のおじさんは決まって「……祥太」と一言俺の名前を呼び、「立派な男になれ」とだけ注意した。無口でいつも厳しい顔をしているし、怒るためにこと更にその雰囲気を強くしているようではあったが、それでもその顔はなんだか寂しそうに見えた。たくさんの言葉も強い声も無いが、その顔と相まって俺には余計に効いた。次第に俺は元の穏便な性格を取り戻していく。

 

23歳の夏。

洋子と結婚した。ずっと隣で支えてくれた、大切な人。中学、高校でからかわれたからと俺が遠ざけたことを未だにからかってくるのだけ、悪いところだがそこも含めて愛おしい。こいつにだけは嘘をつかないように。そう俺は決意を改めて固めた。

 

数年がたった。

洋子との間に生まれた子供は、夫婦からも弟からも溺愛されるくらいかわいい。その日も愛する我が子の成長に心絆されて、その後仕事へ向かう。近所に住んでたおじさんに声をかけ、意気揚々と。

気が緩んでいたのかもしれない。それがいけなかったのかもしれない。

突如警報が鳴り響く。方角は……「嘘だろ」

 

爆発的な火災が見える方にあるのは、妻子がいる方向。

おじさんも、弟も。

 

急いで現場に急行すると、妻とおじさんがいる。

だが弟も子どもの姿もない。察することは出来た。

 

「必ず助けてくる。」

 

俺は消火活動をつつがなく続けられるよう後続に指示を出してから、火の海へと足を突っ込む。嘘はつかないと決めたのだから。

 

どこもかしこも酷い状態だった。逃げ遅れた人の焦げた匂いもした。

そんな中、子供の泣く声がした。聞き覚えのある声。

急いで向かうと、熱に耐えて我が子を守る弟の姿があった。酷い火傷だがギリギリ助かる。

 

意識を失った弟と、泣いている我が子を背負い来た道をもどる。あと少し。

 

そこで、焼け落ちた柱が倒れ込んでくる。咄嗟に息子と弟を外へ放り投げることが出来たのは、1生で1番の仕事だったろう。我が子が手を伸ばす中、俺は最後に飛びっきりの嘘を言う。

 

何年も経った後にようやく気づいた。この言葉の意味を理解して。

 

「また会いましょう」

 

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