ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【イルミネーション】

 

 

イルミネーション。

僕はこれが嫌いだ。

チカチカと絶妙にうざったいのが嫌いだ。

眩しいと文句をつけるほどでも無いが、近くでスマホをいじっているとどうしても気になるレベルの光が嫌いだ。

嫌いと言うとおかしいと言われるのが嫌いだ。

人それぞれ好みがあるだろうに「あんなになんでもないものを嫌いがるのはおかしい」と言われるのが日常に侵食しているようで嫌いだ。

一時期しか出ない上にメインの装飾でもないのに主役ヅラをしているのが嫌いだ。

クリスマスという一時期にしか出ないのに「イルミネーション」と言うとみんな期待を寄せるような華やかな顔に変わるのがまるで自分だけ奇妙な世界で過ごしているようで嫌いだ。たかがほかの装飾が夜でも見やすいように照らすだけど役割の癖に自分で光るからと主役を食うのが嫌いだ。

 

嫌いだ。

蛾のように周囲に人が集まるのが嫌いだ。

大したものでも無いのに華やかさにつられてこんな寒い空の下やれアベックやらやれ家族連れやらが見学に来るのが風邪ひくリスクを考慮してもこっちを優先するバカバカしさが嫌いだ。

特に恋人でもない若者たちが集まるのが嫌いだ。

イルミネーションのように一時の思いで告白を告げ、一時の関係を続けて良い思い出苦い思い出と経験値のように話すのが色恋とクリスマスを神聖視しているみたいで嫌いだ。人が死んだ日だぞ、正気の沙汰では無い。

嫌なことを思い出すから嫌いだ。

飾られる季節でもないのに言葉端に出るだけで、嫌いな気持ちを思い出して憂鬱になるから嫌いだ。そして嫌な顔をするだけで異端者扱いされるから本当に嫌いだ。

 

嫌なことを思い出すから、嫌いだ。

煌めく光の中、いちばん美しい思い出が割れたガラスのように戻らなくなったから嫌いだ。

彼女が呼び出した僕に別れを告げて他の男の元へ走り去ったから。

そうなる原因が普段の僕のダメさ加減のせいだったから。

本当は君は寂しそうな顔をしていた、なんて思い出を上書きしているから。

この季節になる度に思い出すから。

嫌いだ。

たとえ僕に勇気があって努力を欠かさなかったとしても二度と届かない現実を突きつけてくるから嫌いだ。

大概の人がここで変に気遣おうとしてくるから、申し訳なくなって情けなくて女々しくて気持ち悪くて寒くて惨めで。

今でも、ずっと1人のまま気の抜けた毎日を続けてしまった僕が、光のせいでショーウィンドウにバッチリと映るから嫌いだ。反射が激しければ見えないのに。

メインの役だと思っていた、手に残った箱入りの指輪が、サブ以下に成り果てて部屋の隅に放り投げられているから嫌いだ。

周囲の人の目線が最後まで苦しくて何も見ないふりして走り去った自分を消し去りたいと思うから嫌いだ。こんな恋ならしなければよかった、なんてあの子の存在を否定してしまうから嫌いだ。

嫌なことを思い出したから本当に嫌いだ。

 

クリスマスにバイトを入れて、イルミネーションの近くで独り仕事をする自分が大嫌いだ。

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