ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【雪を待つ】

思えば、あなたを想い続けてきた人生だった。

晴れの日も、雨の日も、曇りの日も。

悲しくても、寂しくても、楽しくても。

私にとってあなたは全てだった。

あなたの力になりたいと願い続けた。だから、この結果は本当に私のせい。

 

「ありがとう」

 

目の前で美しい花が咲く。それは、私が育てて、別の誰かに摘み取られた花。手間をかけただけ、その笑顔はかえがたいものとなってそれが酷く私の胸に突き刺さる。いっそ、見なかった振りをしたい。

けれど現実は残酷なまでに目を逸らさせてくれない。

 

「あなたのおかげ。大好きだよ」

 

「ずーっと」

 

「友達でいてね」

 

それは世界で1番可憐で、そして私のみを傷つける刃物だった。

 

 

初めは、ただの友達だった。

いつしか窓際で微笑む君を見て目が離せなくなり、恋だと気づくまでそう時間は要らなかった。けれども彼女は友達しか必要としていないみたいで、だからこそ唯一の男友達だった私を信頼してくれた。特別感に酔っていて、将来君のとなりにいるのは自分だと信じていた。

だからこそ、『自分だけ』で君を寂しくさせる時間があってはいけないと思って男友達の輪に入れたり、逆に女子の輪に友達を連れて一緒に遊びに行ったりした。独りよがりではなくて、君も嬉しそうに楽しそうに笑っていた。

独りよがりでは、本当になかった。だからこそ。

 

「好きな人が出来たの」

 

何を言っているか分からなかった。いや、君から1番聞きたくなかった言葉だからこそ最も理解していたが、耳に入れたくなかった。

 

「君の友達の  くんなんだ。ね、親友、協力してくれる?」

 

私が見た事のない、ラズベリーの笑顔。

私以外に向けられているその笑顔を、それでも私は守らなければならない、とそう思った。まだ思っていたのかもしれない。必死に君のために頑張れば、私の良さに分かってもらえていつか告白してくれる、なんて。

 

皮肉にも私には仲人の才能が有り余るほどにあった。

何より周囲の人間は、憎い友達も含めて良い人間だった。だから恋心を知って身を引こうとしたそいつを説得し、全力で友達のために動いた。涙が零れていた。ああ、人のために動くのがとてもとても素晴らしい。

 

「君がいたから、僕はここまで来れたよ。人を好きになれるようになった。ありがとね」

 

イタズラげで、照れ隠しで、それでも感謝だけは痛いほど伝わってくる言葉を原動力に私は、止まれなかった。

その結果が。

 

 

彼女と別れた帰り道。冬が体にしのびよる夕方。

どう答えたか、なんて記憶に残っていない。

ただ、精一杯の愛想笑いと激励でその場をやり過ごした。きっと私の人生の決定的なハイライト、観客が涙するほどの名演だろう。その観客は開幕から終わりまで一人しかいないのだろうけれど。

そう考えると笑いが込み上げてくる。口を開けると堰を切ったように喉の奥から感情が込上がってきた。

 

灰色の空に独つ、その狂ったような声がいつまでもいつまでもひびき続ける。

 

私は、雪を待つ。

きっと降って私のか誰のか分からない足跡を消してくれるまで。

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