ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【仲間】

 

 

裏切られた。そんな直感が頭を突き抜ける。

なんて迂闊だったんだろう、自分の馬鹿さ加減にほとほと嫌気がさす。

時間はちょうど午後14時、逢い引きを企画している人がいるなら丁度絶好調くらいの時間帯だ。例えがおかしい?だってその絶好調を眺めているんだもの。

目線の先ではクラスのマドンナあやせさん、かたや隣はクラスが認めるイケメン香川。あいつの短所はうどんと呼び間違えられるくらいしかないくらい、良い奴なのだ。現に俺と友達やってくれてる時点で俺から疑うことは何もない。あやせさんだって優しさの塊魂でこれまた俺の友達を小学校からずっと続けてくれてる。最近忙しいのか2人とも話せてないけど。

けれど今日、その謎が解けた!誰が見ても美男美女カップル!だが、だが!

歯を食いしばり、涙をこらえ、地面見つめる。

2人とも友達なのだ。あやせさんとそういう関係かコノヤロウという嫉妬的な感情はちょっとだけあるけど、それ以上に2人とも俺に話してくれなかった、それだけの事が俺を追い詰めていた。冷静に考えたら誰々と付き合ったとかわざわざ誰かに話すことでもないんだけどさ。

けれども心の奥底で繋がった同士と思っていたふたりがこんな関係になってたなんて、それを知らないことを俺は勝手に裏切りと判断してしまった。そしてそんな自分がとてもとてつもなく恥ずかしい存在と感じてしまう。だって俺がとやかく言える立場ではなく2人の感情の方が優先なんだから。

 

俺は静かにその場を離れる。自分が買うはずだった本のことも忘れてフラフラと家に帰る。はたから見たら危ないヤツだろう。けれどフラフラ帰るうちに決心は固く決まった。

 

次の日から、2人と意図して話さないようにした。

俺がいると邪魔かもしれない、何か話したい雰囲気を醸し出していたけれど、俺に対してそういう気遣いも2人にさせるのは申し訳ない。勝手に友達と思っていた。俺からの餞別って訳だ。

そのまま何日かすぎてもそのままの状態だった。2人は相変わらず俺と話そうとしていたが、心を鬼にした俺は無敵だった。

もちろん、辛かった。だってかけがえのない友達とは今も尚思っているんだから何より辛い。でもふたりの幸せが1番だ。

 

「なぁ、なんで避けてんだよ」

 

後ろからの声と、腕を掴む感触。振り返ると香川がそこにたっていた。

ついに年貢の納め時か……。

俺は務めて冷静な声を出そうとしながら答えを返す。

 

「お前の勘違い「そんなことない」

 

だが、それさえも後ろから聞こえた声に防がれる。

気づけばさっきまで誰もいなかったはずの廊下にあやせさん。前後を挟まれた俺は進退窮まり、答に窮す。

上手いことが言えない口がするりと滑るのもむべなるかな。

 

「お前らの間に俺はいない方がいいかなって思ってさ」

 

そんなことを口にした瞬間、ゴツめの衝撃と弱くても刺さる衝撃が同時に俺を襲う。

 

「ゲフッ」

「「次に冗談でもそんなこと言ったら絶交する」」

 

2人とも燃えるような爆発的な瞳で俺を見つめる。それに挟まれた俺に逃げ道はなく。

 

「だったらなんで俺に何も言わずに2人でいたんだよ……。俺のせいで言いづらかっただけで2人とも付き合ってるんだろ」

 

失言は止まらない。

 

「違うし、だからこそ」

「君に話しかけたかったのに避けてたじゃん」

「「誕生日プレゼントちゃんと渡したかったのに」」

「へっ……?」

 

喉奥からへんな息が漏れる。

そんな俺に構わず、にっこり笑顔で(ただし圧を放ってるし、2人に掴まれてる腕は微妙にミシミシ言ってる)俺に袋を渡す。

 

「君この本欲しがってただろ」

「こっちの新刊も欲しいよね?」

 

やがてぽたりぽたりと廊下に水滴が落ちる。

暖かい手のひらの間隔に激しさを増すが、それでも決して手のひらが離れることは無かった。だから雨に負けないようにただ一言伝える。

 

「ありがとう」

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