ごちゃまぜ習作集   作:お否さま

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【1年間を振り返る】

 

きっと僕の道は他の人よりももっとずっと選択肢が少なかったんだろう。

辛い道では無かったと思う。ただ前に歩くだけ。

例えば少し大きな石とか水たまりがある時だけ思いっきり力を入れて飛び越えたり飛び越えられなかったり。とにもかくにも自分で選ぼうとした人生ではなかったと思う。

最初から選ぶものが少なかったかどうかは分からない。顔も頭も恵まれてない時点で狭まっていたとはいえ、それでもかけがえのない友達を作るとか、一生物の趣味に打ち込むことだとか何かしらできていたのではないか、そんな妄想が頭をよぎってならない。

だけど僕は恐らくほとんどの選択肢を否定してきた。

友達と思ってる人の友情を信じることが出来ず、連絡するのをやめた。好きだった趣味は共有できる人がいないと投げ捨てた。努力できたはずの勉強は一人でやって何も変わらないとそれ以降頑張るのを辞めた。

捨てた選択肢は戻ってこなかった。

戻ってこない選択肢は、僕に得られないものを突きつけてきた。

どう頑張ってもそっちの道にはいけないと今更ながらに気づいた。例えば学生の頃からの友達と映画を見に行くだとか、思いを伝えあった大事な人との経験を積むとか。

なんもかんも遅すぎた。

 

私は悪くない、なんてどうにも言えない。

そんなことが許されるほど悲惨な人生じゃなくてただ僕が努力をしなかっただけの平坦で何も無い人生。

楽しいことより、楽なことを。つらいことより何も無いことを。誰よりも望んだ結果の人生を歩んでいる。

喜ぶべきなんだ。そう願ったのは僕なんだから。

でも実際に胸を締め付けるのは奥の見えない暗い洞で、あかり一つもない。

何も無い訳では無い。

神社に行った、ガールズバーですごした、勉強をした、美味しいものを食べた。全部一人で。1人が悪い事じゃないのは、二人でいる喜びを知っているものだけだ。独りだし、今まで何も積上げていなかったから何かを推察したり感じ取ることもまるでできなかった。

ただ大きいなぁ、綺麗だなぁなんて感想を抱いてガラスのような自尊心に慰めを与えていただけ。結局何も変わってないと知ったらぐしゃりと潰れてしまうくらいの心に。最初こそ、周囲につられて心が舞い上がっていても、大きな海に生物がいなかった時に私は強く感動することは出来ない。

ただ砂浜に頭をうちつけて何も見ないふりしかできないだろう。きれいだった、とまた自分を誤魔化して。

 

思えば僕の生涯はいつもそうだ。どの瞬間を切り取っても独りで何もなせず何も残せない。

だから、1年間を振り返って僕は常に僕の人生に60点を付ける。

それ以上の伸びしろを感じず、見るのも不憫な点数を。

それでも歩き続けて幸せをつかもうとする、哀れな奴隷を憐れみながら。

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