その後、リッカの家
リッカちゃんと共に帰った僕は家でリッカちゃんと話していた。帰る道中で少し気持ちは落ち着いたようだ
リッカ「ナインが村の外に出てたって聞いて本当に驚いたんだから!」
ナイン「ごめんね、リッカちゃん。あまり心配かけるのもよくないかなと思ったんだけど、すぐ終わると思ったからついつい」
リッカ「でも、全然平気そうでよかった。ナインって私が思ってるよりずっと強かったんだね」
ナイン「うん、少しはね。ありがとう、リッカちゃん」
リッカ「......ねえ、ナイン。もし、もしナインがよかったらでいいんだけどさ......頼めないかな?私、やっぱり行方知らずになったルイーダさんって人の事が気になるの。だから、キサゴナ遺跡に.........ううん、やっぱりいい。いくらなんでも危険すぎるもの。ナインもまだ病み上がりだし、そんな事頼めない」
リッカちゃんは苦しそうな顔をした後、そのまま静かにキッチンへ向かっていった
ナイン「....流石にこんな事聞いて放っておくなんてできるわけないよね」
僕は軽く身支度を済ませるとそのまま家を出ていった
ウォルロ村 入口
村の入口に向かうとそこにはニードが立っていた
ナイン「ニード」
ニード「やっぱりなー、ナインなら絶対向かうと思ってたんだ。行くんだろ?ルイーダさんを探しにキサゴナ遺跡に」
ナイン「うん。リッカちゃんも気にしてたしね。また、黙って出てきたけど」
ニード「本当なら俺も着いていきたいとこだが、流石にあそこは魔物が多すぎるからな。ピンチになったらまた親父やリッカに迷惑かけちまう。代わりにこれやるよ」
ニードは世界地図と魔物図鑑を渡してくれた
ナイン「これ、世界地図だ。それにニードの魔物図鑑」
ニード「お前旅人のくせになーんも持ってねえからな。これくらい持っとけよ。それ持って少しは勉強しとけ。あと、リッカには俺から説明しとくから心配すんなよ」
ナイン「いいの?」
ニード「当たり前だろ。本当なら俺様がパパっと助けに行ってやれればリッカも見直してくれるんだろうけどな!ま、今回はナインに譲ってやるよ。その代わり、絶対無事に帰ってこいよ。お前まで行方不明になったらタダじゃおかねえからな」
ナイン「ニード....。うん、ありがとう。約束するよ。またニードに殴られたらたまらないから」
ニード「おう、そうしろ。もし約束破ったらたんこぶだらけにしてやるからな」
ナイン「ふふふ、ニードは怖いな。じゃあ、行ってくるね」
ニード「おう」
ニードはすれ違おうとする僕に手のひらを向けてきた。なんとなく、手のひらを僕も合わせたらパチンと小気味よい音がなった
なんだかそれだけで、少し勇気が湧いた気がした。こんな気持ち、初めてだ
キサゴナ遺跡
森の奥地にそびえる寂れた小さな遺跡。ボロボロになって崩れそうな遺跡であり、要所要所には毒沼や沼、大きな水溜りや穴などがあり足場が悪い
ナイン「やっぱり魔物の気配が強い。ここが、魔物が突然湧いた原因なのかな」
錆びて重くなった扉をゆっくり開いた。ズズズと重たい音が響く
ナイン「変な匂いがするなー、これが遺跡っていう匂い?」
中には目立つほど魔物はおらず、ゆっくりと突き進む。薄暗くどこからかポタポタと滴る雫の音と自分の足音だけがこだましている
少し突き進むと石碑が置いてあった
"悪しき魔物の犠牲者をこれ以上増やさぬためこの遺跡の道を封印する"
ナイン「ニード達の言ってた通りだ。石碑より先には通れないようになってるね」
なんとなく石碑の周りを調べてみてもなにも起こらない。すると、後ろに気配を感じた
振り返ると、おじいさんの霊が現れていた
おじいさんに近づいていくと、おじいさんはどこかにふよふよと移動していった。その先には見落としていた小さな細道があった
ナイン「あの先に何かあるのかな」
おじいさんについていくと、これまたボロボロになった戦士像が置いてあった
???「この....像の.....せなかに....」
おじいさんはそう言うとすーっと消えていった
ナイン「あ....いなくなっちゃった。背中?」
像の背中を触ると小さなボタンが隠されていた
躊躇いなくボタンを押すと、どこかでまたずずずっと何かが動く音がした
元の道に戻ると、石碑が動いており先に進めるようになっていた
ナイン「おー、よかった。これで進める」
地下一階
ナイン「わー、今度こそ魔物だらけ」
階段を降りていくとより暗くなっており、そこには魔物がわらわらといた
すぐにニードから貰った魔物図鑑を開いて確認していく
ナイン「ドラキー、わらいぶくろ、メラゴースト、ふふふ。ニードったらやっぱり勉強熱心なんだね」
所々にはニードが書いたであろう文字が書かれている
ナイン「よし、ゆっくり進もう」
少しして
ナイン「あぶな!!」
ガアン!
ナイン「ゆうれいって名前なのに実体あるってどういう事!?」
魔物の名前の矛盾に驚きながらも鎌での攻撃を避け、石の壁に突き刺さって動けなくなった所を切り裂いた
ナイン「あとここ、お化けみたいな魔物多いな。なんでか聖水持ってるし....」
実戦経験としてどんどん魔物を倒していくが、少し疲れてきた。大きな扉も見えてきたし、そこに入って休もうかな
ずずずと大きな扉を開くと、開けた空間に出た。ここも周りと同じく地震の影響か落石や落盤が酷く、あちこち岩だらけである
ナイン「あ!」
少し進んだ先に落ちていた大きな岩の近くには青い髪の女性が足を押えて倒れていた
???「あらビックリ!こんな所で人に会うなんて珍しい事もあるものね」
ナイン「もしかして、ルイーダさんで間違いないですか?」
ルイーダ「あら、私の事知ってるの?それより、この瓦礫をどかしてくれないかしら?怪我は大した事ないんだけど、足を挟まれちゃって動けなくて困ってたの。またあいつが来る前にこんな所早く脱出しないと」
ナイン「わかりました、待っててください」
僕がそう言ってルイーダさんの足にある瓦礫を押そうとした瞬間
ドスン!
大きな揺れと足音が奥から聞こえてきた
ルイーダ「き....来たわ、やつよ!」
ナイン「やつって?」
ドスン!!
再び大きな足音がする。どんどん落ちてくる瓦礫の煙の中から何かがこちらを見ている
ルイーダ「やつから逃げようとして落ちてきた瓦礫に挟まれたの。頭上にも気をつけて!」
ブルドーガ「ぶおおお!!」
柱のように大きな巨体が咆哮をあげて僕を睨みつける
ナイン「くっ!」
剣を構えて対峙する。こんな大きな魔物を相手にした事などないが、今は倒さなきゃどうしようもない
恐怖で少し足がすくむが、その時イザヤールさんの過去の教えが頭に聞こえてきた
イザヤール「ナインは小柄だからな、自分より大きな相手や魔物と対峙した時の事を教えておこう。基本的に力では勝てないと思え、その分相手より自分が勝る部分を見つけるのだ。速さ、身軽さ、高さ、視界の広さ、なんでもよい。そこを中心に攻めていくのだ」
少し胸がチクリと痛くなったが、イザヤールさんの教え通りに行こう
ブルドーガ「ぶおお!!」
魔物が勢いよく突っ込んできた
ナイン「!?」
回避しようとするが、想定以上の巨体とスピードに回避が間に合わない
ドガァァン!
そのまま突き飛ばされて石壁に吹き飛ばされる
ルイーダ「ちょっと!?こいつに真っ向から立ち向かうのは危険よ!」
ナイン「大丈夫です、防げたんで」
ルイーダ「え!?」
魔物の体が当たる直前に両足で魔物の体を蹴り、その勢いをクッションにして壁まで突き飛ばされたため、直撃よりダメージはない
ナイン「直線に立つと危険だね。よし」
勢いよく走り、魔物の足や側面を狙って剣を振るう
ガン!
切れる感覚よりは、岩を殴った感覚に近い
ナイン「硬いねー、手間取りそうだ」
ブルドーガ「ぶるるるっ!」
魔物は足をドンドンと鳴らしている。それに合わせてどんどん岩が落ちてくる
ナイン「脆い場所でそんなのやられたらたまんないね」
落ちてくる落石に気をつけながら魔物に近づいて切りつける
しばらくはこのヒットアンドアウェイで行こう
そう考えながら魔物の突進を避けると
ブルドーガ「ぶるん!」
ナイン「な!?」
突進の後即座に振り返り、再度僕に狙いをつけて突進してきた
ドォン!
流石に対応できず直撃する。魔物と共に石壁に叩きつけられた
ナイン「ぐ....うっ.....」
魔物の角が鎧を突き破り、脇腹に刺さっている。血がポタポタと止まらない
ルイーダ「きみ!!」
ナイン「これは.....痛いね....。でも、残念だったね.....。僕は、これよりもずっと強い痛みを知ってる。ただの暴れん坊には....負けないよ!」
顔を顰めながら、魔物と体の間に足を入れ込む。魔物の吐息が間近で聞こえてくる
ナイン「僕を捕まえたのはいいけど.....どうやら、君も動けなくなったみたいだよ!」
角はそのまま石壁に刺さっており、僕と共に魔物も動けなくなっていた
足を入れ込んで出来たスペースに剣を下から入れる
ナイン「やあ!!」
そのまま魔物の顎から上に向かって切り裂いた
ズバン!
胴体や足に比べて柔らかかったそこはそのまま切れて、魔物は倒れた
魔物は煙となって消え、やっと石壁から動けるようになった
ナイン「はぁ....はぁ....いててて、ホイミ」
傷口にゆっくりと緑の魔法陣を描いて魔力を込めて回復させる。これで血は少し止まったみたいだ
ナイン「あ、ルイーダさん。今助けますね」
急いでルイーダさんの足にいる瓦礫をどかした
ルイーダ「ありがとう。あなた、見かけによらず強いのね。おかげで助かっちゃった」
ナイン「無事でよかったです。あ、僕はナインって言います。旅....芸人です」
ルイーダ「そう、ナインね、よろしく。さあ、いつまでもこんな所にいてまた魔物に襲われてもつまらないから外に出ましょう、ナイン」
キサゴナ遺跡 入口
ルイーダ「ここまで来ればもう安心ね。はぁ....もう薄暗い遺跡の中はたくさん!そういえば名乗り遅れたわね。知ってたみたいだけど、私はルイーダ。セントシュタインの城下町で酒場をやってるわけアリの女よ。ナインはどこから来たの?」
ナイン「僕はウォルロ村からです」
ルイーダ「え?ウォルロ村から来たの!?そうだった、私ウォルロ村に急いで行かなくちゃ!」
ナイン「はい、村に行きましょう」
ルイーダ「へぇ、こんな所で話してたんだ。皆さん初めまして、ルイーダよ」
ナイン「よろしくお願いします、ルイーダさん。ルイーダさん、酒場ってなんですか?」
ルイーダ「ん?酒場知らない?酒場は各地によっていろいろあるけど、基本は冒険者達や街の人達が集まって騒いだりする場所、かしらね」
ナイン「へー、楽しそう!いろんな人間が集まるのはいいですね」
ルイーダ「人間?まあいいわ、そうね。いろんな情報が集まるから冒険するならまずは酒場に行って情報を集めたり、仲間を集って冒険に行くのも楽しいわよ」
ナイン「仲間かー、僕にも仲間出来たりしますかね」
ルイーダ「もちろん。仲間と言ってもいろいろあるしね。その場その場で組む冒険者もいるし、ずっと固定メンバーで冒険する人達もいるわ。ナインの好きにするといいわよ」
ナイン「よーし、じゃあ次に行く場所では酒場を探してみようかなー」
ルイーダ「.....ふふ、ええ、そうするといいわ。楽しみにしてるわね」