ウォルロ村 入口
ルイーダさんと出来るだけ足速にウォルロ村に戻ると入口には心配そうな顔をしたリッカちゃんとその後ろには少し落ち着かなさそうなニードが待っていた
二人は僕を見つけると走ってやってきた
リッカ「ナイン!!!もう、また心配ばっかりかけさせて!!」
リッカちゃんは泣きそうな顔で抱きついてきた。あ、ニードの顔が凄い事になってる
ナイン「ごめんね、リッカちゃん。でも、他ならないリッカちゃんのお願いを無視する訳にはいかなかったから」
リッカ「それはそうだけど.....って、ナイン?」
ナイン「ん?.....あ」
リッカちゃんが抱きついた腕にはあの時脇腹が貫通した怪我の血が少し付いてしまっていた
それを見たリッカちゃんとニードから笑顔が消えていく
なんだろう、とても嫌な予感がする
リッカ「またこんな怪我して!!!!せっかく治ったのに!!」
ナイン「え、え、いや、これは....」
ルイーダ「ふふふ、とっても仲良しな所悪いけど少しごめんなさい。ねえ、ここに宿屋ってあるわよね。そこに案内してほしいんだけど」
リッカちゃんの気迫にたじろいでいると、少し眺めていたルイーダさんが割って入ってきてくれた。助かった
リッカ「え、宿屋ですか?も、もしかして貴方がルイーダさんですか?」
ルイーダ「ええ、そうよ。私の事知ってたの?」
リッカ「えっと、宿屋はこっちです。詳しい事は宿屋でお話しますね」
リッカちゃんはルイーダさんを連れて宿屋に向かっていった
ふー、なんとかなった。これで
ニード「一安心とか思ってないだろうな?ナイン」
ナイン「あ」
それから、僕はニードにげんこつをもらった後、怪我について散々怒られてしまい、宿屋に向かうのが遅くなった。あと、抱きついた件は僕悪くないのにー
宿屋
宿屋に入ったルイーダはキョロキョロと周囲をこまかく見て、少し感心するように頷いていた
ルイーダ「流石リベルトさんの宿屋ね。細部にお客さんをもてなそうって心遣いが感じられるわ」
リッカ「私心配してたんです。ルイーダという名前の女の人が村に来ようとして行方不明って聞いて。無事で本当によかったです」
ルイーダ「そうだったの、ありがとう。あの頃、貴方はまだ幼かったけど私の名前を覚えていてくれたんだ。ところで、リベルトさんはどこかしら?私、あの人に用事があってここに来たの」
リッカ「.....やっぱり、父さんに何か用があったんですね。でもすいません、父さんは.....2年前に....なくなったんです」
リッカは俯いて悲しそうな表情で静かに言った。それを聞いたルイーダは驚愕の表情を浮かべた
ルイーダ「えええ!?なくなった!?な、なんてこと.....あの伝説の.....が、それじゃあ、うちの宿屋はもう......」
ぶつぶつと呟いていたルイーダは途中でもう一度周りを見渡した後、リッカへ詰めよった
ルイーダ「リベルトさんがなくなったって事はこの宿屋、あなた一人でやってるのよね?」
リッカ「え....ええ。そうですけど、それがなにか?」
ルイーダ「ここって小さいけどいい宿ね。お客さんへのもてなしの心がすみずみまで行き届いてるわ」
リッカ「ありがとうございます。父さんが私に残してくれた自慢の宿屋ですから」
ルイーダ「うん!流石は伝説の宿王の娘ってところね!」
リッカ「あの、さっきから伝説って.....どういう事ですか?」
リッカは少し首を傾げた
ルイーダ「ねえ、リッカ。セントシュタインで宿屋をやってみる気ない?」
リッカ「へ.....?ええええーーーー!!?」
困惑と驚き。そんなリッカちゃんの心情を表したような叫び声が、ようやく宿屋に向かっていた僕とニードの耳に聞こえてきた
それから、僕とニードも交えた話をルイーダさんはしてくれた
リッカ「ナイン、さっきはなかったのにその大きなたんこぶはなに?」
ナイン「これはそこの」
ニード「それはいいだろ、リッカ。まずはその、リッカの親父さんが伝説の宿王?ってやつの話聞こうぜ」
ナイン「むぐぐぐ」
ニードに思いっきり口を押さえられて話せない.....。リッカちゃんもその様子に少し首を傾げたが、興味はやはりルイーダさんの話に戻ってしまった
ルイーダ「リベルトさんは話していなかったのね。リベルトさんはセントシュタインにいた頃、若くして宿屋を立ち上げるとそこからどんどん他のライバル達を追い抜いてたちまち大きな宿屋にしていったの。
それから更に宿王グランプリってので優勝して、正真正銘の宿王となったの。セントシュタインでは有名人なのよ、宿王リベルトって」
リッカ「.....じゃあ、父さんはセントシュタインにいた頃に、その伝説の宿王になったって事なんですね」
ニード「俺達はそんなの初めて聞いたな」
リッカ「そんなの.....とても信じられません。私の知ってる父さんは穏やかで、小さな宿屋でも私と一緒にやれるのが嬉しいって.....そう言ってたんです」
ルイーダ「そこがわからないのよね。どうしてあの宿王がこんな田舎に引っ込んじゃったのかしら?......まあとにかく、宿王の去ったセントシュタインの宿屋は今大ピンチなの。そこで伝説の宿王に復帰願って立て直してもらおうって話になったんだけど.....。
まさかリベルトさんが2年も前になくなってたなんて。知らなくてごめんなさい」
ルイーダさんは丁寧にお辞儀をした
リッカ「いえ....こちらこそわざわざ来てくれたのに」
ルイーダ「謝ることはないわ。セントシュタインの宿屋には代わりに貴方を連れていくから」
ナイン「え!?」
ニード「え、そうなのかリッカ!?」
リッカ「その話.....無理がありませんか?私じゃこの宿屋をやっていくのさえ、精一杯なんですよ。それに、やっぱり私、父さんが伝説の宿王だったなんて信じられません」
ルイーダ「そう言ってもねえ....事実は事実だから。しかも貴方は確実に宿王の才能を受け継いでるわ!私には人の才能を見抜く力があるのよ」
ナイン「へー、凄いですね、ルイーダさん」
ルイーダ「ふふ、ありがとう、ナイン」
リッカ「......いけない、もうこんな時間。そろそろ夕食作らないと。私、失礼しますね。それと、私セントシュタインになんて行きませんから!」
リッカちゃんは投げ捨てるようにそう言うと走って出ていった
ニード「ま、待てよ、リッカ!え、と、失礼します!」
ニードも慌てて追いかけていった
ルイーダ「.....ふふ、結構頑固な子ね。これは長期戦になるかな」
ナイン「ルイーダさんはここで泊まっていきますか?」
ルイーダ「ええ、しばらくかかりそうだし、ここに泊まるわ。もしよかったらあの子の説得、お願いしてもいい?仲良いんでしょ?」
ナイン「うーん、考えておきますね」
ルイーダ「ええ、気が向いた時でいいわ。よろしく」
リッカの家
リッカちゃんの家に帰ろうとすると、扉の前に遺跡の中で見たおじいさんの幽霊が立っていた
ナイン「あれ、あの時の。何してるんですか?」
???「うひゃう!!び、びっくりしたなあ。驚かさないでくださいよ、もう。......って、あなた私の事見えるんですか!?私とっくに死んでるんですよ!?」
なんだかノリのいいおじいさんだなー
ナイン「ふふふ、見えてますしお話もできますよ」
???「そうなんですね。キサゴナ遺跡の時も思いましたが不思議な人だなあ。あ、遅れましたね。私、リッカの父親のリベルトと申します」
ナイン「あ、どうも。リベルトさん.....ん?リベルトさん!!?」
たった今話にあがってた本人じゃないか!!!思わずびっくりしてしまった
リベルト「ひゃあ!あ、あなた私を驚かせるの好きなんですか!?やれやれ....流行り病でぽっくりいってからはや二年。ご覧の通り未だに地上をさまよっています。ところであなたのお名前は?」
ナイン「あ、すいません。僕はナインといいます。リッカちゃんにはよくお世話になってます」
リベルト「おお、そうでしたか、ナインさん。......ん?ナイン、ナイン....,.ええ!?守護天使様!?」
なんか、似た流れをリッカちゃんに名乗った時もやった気がする
驚いているリベルトさんに一応はぐらかそうとした時
???「そこ、ちょっと待ったぁーーー!!」
謎のピンクの光が突然こちらに向かってやってきた
ナイン「.......」
僕が横になっている傍ではリッカちゃんが包帯と消毒を持って手当をしてくれていた
リッカ「ナイン、痛くない?」
ナイン「大丈夫だよ、リッカちゃん。これくらいどうって事ないから」
リッカ「そんなわけないでしょ!脇腹少しなくなってるんだから!」
ナイン「少し失敗しちゃってね、へへへ」
リッカ「もう!私怒ってるんだからね!」
ナイン「う、うん。ごめんね、リッカちゃん」
リッカ「こんな大怪我しないとルイーダさん助けられなかったの?」
ナイン「大きな魔物がいてね、ルイーダさんが襲われてたんだ。僕もあんな大きな魔物見た事なかったから少し苦戦しちゃったんだ」
リッカ「......ナインが強いのはわかってるけどさ、逃げてもよかったんだよ」
ナイン「......逃げる、か。そうだね、僕もその方がいいと思う」
リッカ「ナイン?」
ナイン「でも、こうやって僕なんかを助けてくれるリッカちゃんのお願いだったから、どうしても僕は叶えたかったんだ」
リッカ「ナイン.....。ふふ、ナインって本当に守護天使様みたいな事言うね」
ナイン「え....そ、そうかな」
リッカ「ありがとう、ナイン。凄く嬉しい」