???「そこ、ちょっと待ったぁーーー!!!」
突然現れたピンクの光は勢いよく僕に向かって.....
ナイン「あ、僕に向かってきてる!?」
気づくのが遅れたせいで僕のお腹にぽふんと何か当たる感覚がして、光は姿を表した
???「いったぁ〜い....。ちょっとぉ、ボケっとしてないで上手くかわしなさいよ!そんなぽやぽやしてんのにお腹は案外硬いしなんなのよ!ま、それはいいや。そこのおっさん!あんたの発言聞き捨てならないんですけど!」
ピンクの綺麗な蝶のような羽根を生やして、ふよふよと浮いている小さな妖精のような女の子が現れた。妖精というには、少し、いや、かなり色黒だし金髪で早口だし.....なんか想像と少し違う
リベルト「は、はあ。なんでしょう?」
???「今天使とか言ったよね?アタシもそう思ったけどイマイチ確信が持てないのよねー....。その人には光る頭の輪っかも背中の翼もないのよ!これって変くね?」
痛いところを突かれて心が痛む。やはり、僕は天使にはもう思われない。でも、人間というわけでも.....ない。僕は......なんなんだろう
リベルト「そう言われれば、まあ確かに。でも変というならあなたの方が.....。いったいどちら様なのでしょう?」
いけない、暗い考えを振り払うように頭を振って謎の妖精の方を見る
???「フフン.....それを聞いちゃいマス?そうね、聞かれちゃったら答えないわけにはいかないわね。聞いて驚けっ!アタシは謎の乙女サンディ。あの天の箱舟の運転士よ!!」
妖精ことサンディは謎のピースやコテンと首を小さく傾けて謎のポーズを取って高らかに名乗った
ノリノリなところ悪いが、僕やリベルトさんには何をそんなにノリノリになっているのかわからず、二人してポカンとしてしまう
リベルト「は.....はあ」
ナイン「サンディって....言うんだね」
サンディ「さて、このアタシに名乗らせたんだからあんたも自分の正体教えてほしいんですケド?どう見てもただの人間なのに天の箱舟や幽霊が見えちゃうあんたは一体何者なの?」
ナイン「......じゃあ信じられないと思うけど、話すね」
僕はこれまでの事を話した
サンディ「ふーん.....。じゃああんたは、あの時の大地震や激ヤバ雷のせいで天使界から落ちたんだ。それで気がついたら翼も輪っかもなくしてこの村にいたワケね。なーんか信じられないんですケド。翼や輪っかはなくしたのに魂を見る力は残ってるってなにそのハンパな状態」
ナイン「それを言われると苦しいけど.....でも、これが本当の事なんだ」
サンディ「まあいいわ、もし本当に天使だってなら魂を昇天させてみてよ。それができてこその天使よ!ちょうど幽霊のおっさんもいる事だしー」
リベルト「ええ!?わ、私ですかぁ?そりゃ私だってこのままでいいとは思ってませんけど」
サンディ「どーせなんかショボい未練を引きずってるから幽霊なんかやってんでしょ?よーし決まり!このおっさんの未練を解決してやって昇天させてやんのよ!そしたら天使だって認めるし、天の箱舟に乗せてナインを天使界に送ってあげるわ」
ナイン「!!」
天使界に......帰る......。そう言われて、心の中にいろんな事が思い浮かぶ。イザヤールさん、オムイ様、ジーンさん.....。そして、僕を蔑んでいた天使達
本当なら、嬉しいはずなのに、喜ぶべきはずなのに.....僕は天使界に帰るのがなんだかとても嫌に感じていた
サンディ「まあそういうわけだからしばらくあんたと一緒に行動するんでよろしくね!あ、そうそう。ついでにあんたの観察記録もつけてあげる」
サンディはそう言うと素早く僕の鎧の隙間の中に入っていった。便利な光の力だな
ナイン「えっと、なんか嵐みたいでしたね」
リベルト「そ、そうですね。ともかく、よろしくお願いします。私の未練というのかはわかりませんが、気になる事を言うなら、もしかしたら宿屋の裏に埋めたアレかもしれません」
ナイン「埋めたアレ?わかりました、見てきますね」
大滝近くの丘
宿屋の裏にある茂みの影に何か硬いものが埋まっている
ナイン「これって.....」
掘り返してみると地面の中から金色に輝くトロフィーが出てきた。トロフィーには汝を宿王と認めこれを贈る。セントシュタイン王と刻まれている
サンディ「なにこれ、トロフィーじゃん。なんでこんな所にあるワケ?それにこれがあのおっさんの未練?」
ナイン「うん、そうかも。リベルトさんの娘さんにこのトロフィーの事伝えてなかったみたいで今少しトラブルが起きてるんだよね。ちょうどよかったかも」
サンディ「ふーん。ま、さっさとこれあのおっさんに見せにいきましょ」
リッカの家
ナイン「これが埋まってましたよ」
僕はトロフィーをリベルトさんに見せた
リベルト「おお!これこそまさに宿王のトロフィー、うーむ懐かしいなあ」
ナイン「なんであんな所に?」
リベルト「実は、この村に帰ってきた時封印したんですよ。リッカのために.....セントシュタインへの思いを断ち切るために.....。幼い頃のリッカはとても病弱でした。あの子のためを思って私はこの村に帰ってきたのです。それが死んだ妻の......あの子の母親の願いでもありました。
私は母親をなくしたリッカを連れこの村に戻り、そしてこのトロフィーを封印したのです。そんなトロフィー、あの子が見たらなんて思うか.....」
僕はそっと触れていたトロフィーに意識を集中させて久しぶりにあの力を使った
ナイン「.....リベルトさん、僕、このトロフィーをリッカちゃんに見せてきます。実は今、ルイーダさんがあなたに助けを求めに来てるんです。なくなった事を知らずに。でも、リッカちゃんから説明を受けたんですが、リッカちゃんはあなたが伝説の宿王だという事を信じていないようです。
封印したからなのか、それとも優しいお父さんだったから凄い人のイメージがないのかもしれません。でも、リベルトさんが話した事はきっとリッカちゃんにとって大事な話だと思います。このトロフィーには、伝説の宿王リベルトの記憶だけじゃありません。父としてのリベルトさんや子どものリッカちゃん、そしてリッカちゃんのお母さんの温かい家族の記憶も持っています。
これは貴方が伝説の宿王であると共に、家族を大切にしたいという素敵な想いを刻んだ物、貴方の生きてきた証その物です。リッカちゃんに、これを贈りましょう」
リベルト「ナインさん......。ええ、ぜひお願いします」
リッカの部屋
こんこん
ナイン「リッカちゃん、今少しいいかな?」
リッカ「え、うん。大丈夫よ。どうしたの、ナイン」
がちゃ
中からリッカちゃんが扉を開けて迎えてくれた
ナイン「見せたい物があってね」
トロフィーをリッカちゃんに渡す
リッカ「トロフィー?.......これ、宿王と認めるって.....。セントシュタインの王様からうちの父さんに?そんな!?ルイーダさんの話は本当だったんだ!?でも、だったらどうして父さんは宿王の地位を捨ててまでウォルロ村に帰ってきたの?父さん、何を考えてたの?私、さっぱりわかんないよ」
ナイン「それはね」
僕が話そうとすると、部屋からがちゃと扉が開いてリッカちゃんのおじいちゃんが入ってきた
おじいちゃん「その事についてはわしから話そう」
リッカ「おじいちゃん」
おじいちゃん「リベルトから口止めされていたのでずっと黙っていたがもう話してもいいだろう。リッカや、お前は自分が小さいころ病気がちだった事を覚えているだろう?」
リッカ「う、うん。あまり外に出られなかったよね」
おじいちゃん「うむ、その体質は母親譲りのものじゃ。本来なら成長するに従って弱っていき、やがて死に至る。実際お前の母親も体が弱く、若くしてなくなっておるな」
リッカ「でも、私は元気になったよ。体が弱かった事なんて忘れてたくらい」
おじいちゃん「それはこの村の滝の水、ウォルロの名水を飲んで育ったおかげじゃろう。ウォルロの名水は体を丈夫にし、病気を遠ざけるというからのう」
リッカ「じゃあ.....じゃあ、父さんがセントシュタインの宿屋を捨ててこの村に戻ってきたのって.....」
おじいちゃん「そういう事じゃ。あいつは自分の夢よりも娘を助ける道を選んだのじゃよ」
おじいちゃんがそう言うとリッカちゃんは崩れ落ちて大粒の涙を流し始める
リッカ「私が......父さんの夢を......奪ったんだ.....私のせいで」
ナイン「リッカちゃん.....」
おじいちゃん「そう思わせたくなくて口止めしていたのだろうな。リッカよ、つらい事実をすまないな。じゃが、乗り越えるのじゃ」
おじいちゃんはゆっくりと部屋から去っていった
リッカ「うぅ.....私がいなかったら....」
ナイン「違うよ、リッカちゃん。お父さんはセントシュタインの宿屋を捨てた事を後悔なんてしてなかった!リッカちゃんを絶対に助けるんだって、そのためならなんでもするんだと強い覚悟でこの村に戻ってきたの。その足枷になるトロフィーは宿屋の裏に埋めて封印して、ただただリッカちゃんを悲しませないように、母親をなくしたばかりのリッカちゃんが苦しまないようにって......。
リッカちゃんのお父さんは凄く優しくて、強いすごい人だよ。リッカちゃんが笑っていてくれれば、元気でいてくれれば、生きていてくれれば、お父さんは凄く嬉しかったんだ」
リッカ「ナイン.....。う、うわぁぁぁん!!!!あああぁぁぁ!!!」
泣きじゃくるリッカちゃんを優しく抱きしめた。リッカちゃんは優しい子だから、母親も父親もいなくなっても頑張らなきゃとどこかでずっと気を張ってたのかもしれない。そう思うくらいにはまだ若いのにしっかりしすぎていたから
そんな気が緩んでしまったように、リッカちゃんはしばらく泣き続けていた。僕はずっと優しく背中をさすっていた。リッカちゃんの後ろからはリベルトさんが優しく包み込むように抱きしめていた
その後、泣き止んだリッカちゃんはゆっくりと話し始めた
リッカ「昔ね、父さんが時々見せていた遠くを見るような表情がずっと気になってたんだ。今思うと、セントシュタインの宿屋を思い出してたのかもしれない。.........ナイン、私決めた。私、セントシュタインに行く事にするわ。私に何が出来るかわからないけど、ルイーダさんの申し出を引き受けてみるよ!」
リッカちゃんはそう言うと、宿屋の方に向かっていった
リベルト「ありがとうございます、ナインさん。私の言いたい事を全てお話してくれて。まさかリッカが私の夢を継いでくれるなんて....。あの子も大きくなったものです。これでもう思い残すことはありません。私が見ていなくてもあの子は立派にやっていけるでしょう」
そう言うとリベルトさんは優しい光に包まれていく
リベルト「どうやらお別れのようですね。本当にありがとうございました、守護天使様」
リベルトさんは優しく微笑んだ後、すうっと消えていった
サンディ「......いっちゃったわね。中々やるじゃん!こりゃあんたの事天使だって認めないわけにはいかないか。約束通り天の箱舟に乗せて天使界まで送ってってあげるわ。感謝しなさいよ〜」
ナイン「あ、あはは.....サンディ、その件なんだけどさ」
サンディ「ちゅーか、あんた天使だったら星のオーラを回収しなくていいの?そこに転がってるんですケド」
サンディはリベルトさんがいなくなった場所をツンツンと触っている
僕には、何も見えていない
ナイン「え.....あれ、うそ。星のオーラ、そこにあるの?」
僕のその言葉に僕とサンディでしばらく沈黙が起こる
サンディ「へっ!?あんた、星のオーラ見えてないの?見えなくなっちゃったの!?」
ナイン「そ....そうみたい....」
サンディ「マジ!?前言撤回したいんですケド〜、こんなやつ信用していいのかな?」
ナイン「あはは....」
サンディ「まあ、星のオーラとか天使の役割とか知ってるみたいだし?少しくらいは信用するけど。でも天使として微妙すぎるわよね〜」
それから数日後、峠の道の土砂崩れは取り除かれ無事に開通したと連絡がきた
僕とリッカちゃんが旅立つ日がやってきたのだ
サンディ「へ〜、あんたこーんな殺風景な所でお喋りしてたわけ?」
ナイン「うん、一応ね。あ、でも椅子とかテーブルとか飲み物も」
サンディ「そんなんなかったらお話にすらならないわよ!ねえ、アタシここにもしばらく顔出すようにするから、デコっていい?いいよね?」
ナイン「で、でこ?まあ、いいけど」
サンディ「やった!じゃあめちゃくちゃ可愛くしよっと!何置こうかな、どんな色にしようかな。やっぱまずはピンクだよね、あとキラキラもほしいなー、あとそれからー」
ナイン「あ、あははは....。他の人も来るからあまり変にならないようにね」
サンディ「あったりまえだしー!アタシにかかればチョーセンスよくてチョー可愛くて、めちゃかわな部屋になるから!任せて!」
ナイン「あ、あははは....」