ドラゴンクエストIX 地上で輝く星空に   作:サムハル

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18.黒騎士レオコーン

 

シュタイン湖

 

 

セントシュタインより北に位置する少し大きな湖。特にこれといった物はない普通の湖であり、時折魔物や人間達が水を汲んだり飲みにやってくる

 

 

昼にセントシュタインを出発してからいろいろあって夜になってしまった。辺りは静まり返り、どこからか虫のさざめきが聞こえてくる

 

 

ナイン「普通の湖だね」

 

 

 

ソール「そうですね、変哲もないただの湖ですね」

 

 

 

ロード「本当にいんのかよ、黒騎士は。いねえんなら俺はそれで終わりだから楽なんだが」

 

 

 

サンディ「ってゆーか、どこにも黒騎士なんていなくない?呼んどいていないってどゆコト?どうする?このまま待ってみる?」

 

 

 

ロード「帰ろうぜ、いなかったって事で終わり」

 

 

 

サンディ「えー、でもこのまま帰っても王様納得しないっぽかったし」

 

 

 

ソール「そうですよ。王様に何もなかったは流石に無礼なんで、少し待ってみましょうよ」

 

 

 

ロード「だりぃー、来るかもわかんねえの待つってのかよ」

 

 

 

ナイン「まあまあ、ここはあまり魔物も来ないみたいだし、少し野宿の準備しながら待ってみようよ」

 

 

 

ロード「それはお前が野宿やってみたいだけだろ、ったくよー」

 

 

しばらくして

 

 

ソールが持ってきてくれていたテントをはり、ロードと僕が集めた薪を焚いて野宿の準備が終わろうとしていた

 

 

サンディ「黒騎士来ないんですケド!女子との約束ブッチするなんてありえないんですケド?」

 

 

 

ソール「女子って....フィオーネ姫様の事ですか....」

 

 

 

サンディ「アタシ達野宿終わって明日帰っていくない?王様には一日待ったけど黒騎士なんていなかったって言っとけばいいし」

 

 

 

ロード「よーし、賛成ー」

 

 

 

ナイン「まあ仕方ないかな」

 

 

 

サンディ「なんて話したら現れてる、とか!」

 

 

サンディはおもむろに湖の方を見た

 

 

サンディ「マ、マ、マ......マジっすかあーーー!?」

 

 

 

三人「!?」

 

 

サンディの慌てように三人で一斉に湖を見る

 

 

波ひとつなく月が鏡のように映し出された水面に、静かに黒騎士が立っていた

 

 

慌てて武器を取り、サンディは急いで僕に引っ込んだ

 

 

ソール「......気配、ありました?」

 

 

 

ロード「いや。気を抜いてたつもりはねえ。なにもんだ、こいつ」

 

 

 

ナイン「どうやって水の上に立ってるの、人間じゃない?」

 

 

黒騎士は気づいた僕達に馬を走らせてこちらへやってくる。水の上を跳ねるような馬の動きに美しいと感じてしまった

 

 

黒騎士「誰だ....キサマらは.....。キサマらに用はない、姫君はどこだ」

 

 

 

ソール「姫様は渡しません!」

 

 

 

ロード「悪いが、お前にはここでフェードアウトしてもらうぜ」

 

 

 

黒騎士「姫君を渡せ、わが!うるわしの姫を!!」

 

 

黒騎士は背中の槍を取り、こちらに向けてきた。鎧の顔の部分が外れて、骸骨の顔が顕になった。赤い目が光ってこちらを睨みつけている

 

 

ロード「とっとと消えた方がいいぜ!」

 

 

ロードが得意のすばやさで黒騎士に詰め寄る

 

 

ロード「はっ!」

 

 

黒騎士目がけて短剣を振るう

 

 

黒騎士「はあ!」

 

 

黒騎士はマントをたなびかせて、一瞬ロードの視界を遮る

 

 

ロード「!」

 

 

その動作のまま、持っていた槍をなぎ払う

 

 

ガァン!

 

 

ロードの短剣と擦れ合う音がしてロードは距離を離される

 

 

ナイン「こっちからもだよ!」

 

 

攻撃後の隙を狙って反対から僕が斬りかかる。黒騎士の槍が光を纏い始める

 

 

ナイン「!!」

 

 

 

黒騎士「らいめい突き!」

 

 

雷を纏った槍が剣とぶつかり合う

 

 

ガキン!バチバチバチ!!

 

 

ナイン「あぐっ....」

 

 

金属同士で感電して手がビリビリとしてくる

 

 

黒騎士「ふん!」

 

 

 

ナイン「いた!」

 

 

黒騎士にそのまま振り飛ばされる

 

 

ソール「はあ!」

 

 

ソールが正面からしかけていく

 

 

ロード「こっちもだぜ!」

 

 

同時に横からロードも向かっていく

 

 

黒騎士「さみだれ突き!」

 

 

黒騎士の狙いを定めた突きがソールとロードをそれぞれ狙っていく

 

 

ガアン!ガアン!

 

 

ソール「くっ!」

 

 

 

ロード「ちっ!」

 

 

 

ナイン「強い」

 

 

 

ロード「へっ、こうでなくっちゃな!」

 

 

 

ソール「戦い慣れてますね」

 

 

 

黒騎士「こちらから行くぞ!」

 

 

黒騎士が馬を走らせてこちらへ猛スピードで向かってくる

 

 

黒騎士「らいめい突き!」

 

 

 

ソール「ここは俺が!」

 

 

ガアン!!

 

 

ソールが盾を構えて黒騎士の槍を受け止める

 

 

金属が金切り音をあげて火花が散る

 

 

ソール「ぐぐぐぐ....」

 

 

 

ロード「そのまま持ちこたえてろ!馬から落ちちまいな!」

 

 

ロードが跳びあがり、黒騎士に蹴りをいれる

 

 

黒騎士「ぬう!」

 

 

バランスを崩した黒騎士は馬から転落するがすぐに受身を取られる

 

 

ナイン「やあ!」

 

 

落ちたところを狙ってレイピアで突き刺す

 

 

黒騎士「ぐっ!」

 

 

ガアン!

 

 

顔を狙ったがそらされてしまい、兜の隅に当たる

 

 

黒騎士「さみだれ突き!」

 

 

 

ナイン「ぐっ!」

 

 

 

ソール「わ!」

 

 

槍を振り回すかの如く乱暴に突き刺され、僕とソールが足や鎧に当たってしまう

 

 

黒騎士「ホイミ!らいめい突き!」

 

 

黒騎士はすぐに体勢を整えて回復魔法を唱える、そのまますぐに槍に雷を纏わせて貫いてくる

 

 

ロード「ちっ!」

 

 

攻撃しようとしていたロードを狙った突きをロードは上手くかわした

 

 

ナイン「やあ!」

 

 

黒騎士へ僕が大きく踏み込んで突き刺そうとする

 

 

黒騎士「ふん!」

 

 

黒騎士も同じく槍で立ち向かおうとする

 

 

ナイン「今!」

 

 

僕は咄嗟に持っていた武器を投げ捨てた

 

 

二人「!?」

 

 

 

ソール「ナインさん!?」

 

 

無防備となった僕に黒騎士の槍が向かってくる

 

 

ロード「馬鹿野郎、何考えて!」

 

 

 

ナイン「ふん!」

 

 

パシっ!

 

 

向かってくる槍を両手で挟んで掴まえた

 

 

黒騎士「ぬうっ!?」

 

 

突然の事に黒騎士は突き刺した姿勢のまま動けなくなった

 

 

ロード「!?今か、はあ!」

 

 

 

ソール「よ、よし!はあ!」

 

 

ロードとソールが両方から黒騎士の体に斬撃を食らわせる

 

 

黒騎士「ぐうっ.....」

 

 

 

ナイン「えい!」

 

 

僕は掴まえた槍を黒騎士が怯んで力が弱まった瞬間に奪い取り、投げ捨てた

 

 

黒騎士「くう.....」

 

 

 

ロード「チェックメイトだぜ、黒騎士」

 

 

ロードが短剣で黒騎士の首元寸前で止めている

 

 

黒騎士「なにゆえ......なにゆえ姫君はキサマらのような者を私の元へつかわした。メリア姫はもう、私の事を.....。あの時交わした約束は偽りだったというのか!」

 

 

黒騎士は悔しさと悲しさを滲ませた声でそう言った

 

 

メリアって.....誰のことだ?

 

 

ロード以外の二人も同じ事を思ったのか、顔を合わせる

 

 

サンディ「三人とも、この黒騎士なんかキモくない?メリアって、誰の事?確かあの姫の名前って.....」

 

 

 

ソール「姫様の名前はフィオーネ、です。メリアというお姫様ではありませんよ」

 

 

 

黒騎士「そ、それはまことかっ!?」

 

 

項垂れていた黒騎士はソールとサンディに突然顔を上げて二人に寄っていく。ロードも少しびっくりしたようだ。ドクロの顔でそんなに近づかないでほしいな

 

 

サンディ「キャーーーッ!!なに!?マジ無理なんですケド、キモすぎ!!マジビビるから!」

 

 

サンディが悲鳴をあげながらすごい早口で僕の元に戻ってきて鎧の中に入っていった

 

 

ソールも流石に少し冷や汗をかいている

 

 

黒騎士「なあ、教えてくれ。あの城にいたのはメリア姫ではなく、別の者だというのは.....本当か?」

 

 

 

ソール「は、はい.....。黒騎士さんの、人違いだと思われます。メリア姫様という方ではありません」

 

 

 

黒騎士「なんてことだ......。あの姫君はメリア姫ではなかったのか。言われてみれば、彼女はルディアノ王家に代々伝わるあの首飾りをしていなかった.....」

 

 

 

ソール「ルディアノ.....?」

 

 

 

ロード「聞いた事ねえ所だな」

 

 

短剣をしまったロードがこちらにやってきた。ルディアノ、という場所があるのだろうか

 

 

黒騎士は静かに立ち上がった後、黙って夜空を見上げている。綺麗な星空である。輝く星の中のどこかに天使界もあるのだろう。そーっとサンディも鎧から出てきた

 

 

黒騎士「私は深い眠りについていた。そしてあの大地震と共に何かから解き放たれるようにこの見知らぬ土地で目覚めたのだ。しかし、その時の私は自分が何者なのかわからないほど記憶を失っていた。

 

 

そんな折、あの異国の姫を見かけ自分と.....メリア姫の事を思い出したのだ」

 

 

 

ナイン「......君の、名前は?」

 

 

 

黒騎士「私の名はレオコーン」

 

 

 

ソール「おお、カッコイイ名前」

 

 

 

レオコーン「そして、メリア姫というのはわが祖国ルディアノ王国の姫。私とメリア姫は永遠の愛を誓い、祖国での婚礼を控えていた仲だった」

 

 

 

ソール「わぁ....騎士とお姫様の恋ですか。素敵だな」

 

 

 

ロード「童話みてえだな」

 

 

 

サンディ「じゃあなに?ぶっちゃけ、この黒騎士はフィオーネ姫と元カノを間違えちゃったワケ?どんだけ似てたのよ、フィオーネ姫とメリア姫ってー」

 

 

 

レオコーン「いずれにせよ、私は自らの過ちを正すため今一度あの城へ行かねばなるまいな」

 

 

 

ナイン「え、いや、それはちょっと」

 

 

 

ロード「おいおい、また面倒な事になるぞ」

 

 

 

サンディ「やめときなって。ややこしくなるだけだって」

 

 

 

レオコーン「ややこしくなるか。それもそうだな、だがどうすれば」

 

 

 

ソール「あの!俺はソールといいます。俺、あのお城、セントシュタイン城の兵士です。俺の方から王様やフィオーネ姫様に伝えておきます」

 

 

 

レオコーン「ソール、か。すまないな、ではそなたの方から伝えておいてくれないか?もう城には近づかない、と。ルディアノ城ではきっと本当のメリア姫が私の帰りを待っているはず。私はルディアノを探すとしよう」

 

 

レオコーンは綺麗に礼をすると、そのまま去っていった

 

 

ソール「行っちゃいましたね」

 

 

 

ナイン「いい人だったね。礼儀正しい人だ」

 

 

 

ロード「人、ではねえだろ。そもそも、どこで目覚めたのかは知らねえが旅人の俺でもルディアノなんて聞いた事ねえ。この世界に本当にあんのか?それかもしかして.....」

 

 

 

ナイン「違う世界ってこと?」

 

 

 

ロード「んなにぶっとんでねえよ!まあいい、とにかく明日またセントシュタインに帰るぞ」

 

 

 

次の日、セントシュタイン城

 

 

ロード「なんで俺までこんなとこに.....」

 

 

 

ナイン「そりゃあ一緒に黒騎士と戦ったんだから当たり前でしょ」

 

 

 

ソール「大丈夫ですよ、もう通報なんてしませんから」

 

 

 

ロード「頼むぞ、本当に」

 

 

 

兵士長「お、ソール。無事でよかった」

 

 

前の方からソールの先輩、兵士長さんがやってきた

 

 

兵士長「どうだった、黒騎士は。無事って事は期待していいんだよな」

 

 

 

ソール「はい、黒騎士は無事に逃げていきましたよ」

 

 

 

兵士長「おー!流石だ、ソール!先輩として鼻が高いぞ。それに旅人も見た目に寄らずやるな。ぜひ王様と姫様にもその話を。喜ばれると思いますので」

 

 

 

ナイン「ありがとうございます」

 

 

 

兵士長「....ん?お前さん.....見た事あるような」

 

 

 

ロード「.....なんだよ、ジロジロ見んな」

 

 

 

ナイン「何かありました?」

 

 

 

兵士長「いや、なんか、手配書に似たような顔があった気がして」

 

 

 

ソール「せ、先輩!何か用事あったんじゃないですかね!」

 

 

 

兵士長「そうだ!これから訓練で指導しなきゃいけないんだった、失礼します」

 

 

兵士長さんは訓練所に向かっていった

 

 

ソール「ふ〜」

 

 

 

ロード「サ、サンキュー....」

 

 

 

 





ソール「なんかカッコイイ人でしたね、レオコーンさん」


ロード「だからあれは人ではねえだろ。魔物の類だろ」


ソール「でも、あんだけ騎士道に溢れてるのは素敵ですね。少し憧れます」


ロード「.....ま、忠誠があるってのはいいよな」


ソール「にしても、ルディアノですか。王国って言ってましたけど少しくらい名前を聞いてもよさそうなのに」


ロード「人の色恋沙汰に顔突っ込みたくねえが、どうやら童話みてえに綺麗には終わらねえみてえだぞ」


ソール「え、そうなんですか。このままお姫様と再会してハッピーエンドじゃ」


ロード「ただの俺の予想だ。気にすんな、そうなるのが一番ではあるからな」


ソール「なるほど。ロードさん、年上なだけあって知識も経験も豊富で凄いですね」


ロード「なんだよ、お前まであいつみたいな事言ってきやがって」


ソール「頼りになるのは本当の事なので」


ロード「へいへい、先輩に頼ってられるのも今のうちだからな」

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