ロード「大丈夫か、お前ら」
ナイン「僕はなんとかね。ソール、その傷は大変だ。たくさんホイミしなきゃ」
ソール「......」
ソールはポカンとしたような表情でイシュダルのいた場所を見ていた
ナイン「ソール?」
ソール「んぇ、あ!す、すいません!父から教わった技、全然できなかったのに、なんで突然出来たんだろうなって考えてました」
ナイン「......確かその剣、お父さんが愛用してた剣なんだっけ」
ソール「!?そっか.....。そのおかげで倒せました、よかった」
ロード「よかったはともかく、回復をしないとだろ。ほら、薬草もがぶ飲みしとけ」
ロードが飲み込みやすいように薬草をたくさんすり潰している
ソール「い....え、えっとー、ホイミの方が....」
ロード「あ?MPが持ったいねえだろ。ほら、とっとと飲む」
ソール「いや、俺薬草苦手で!!あの、許してください!」
ロード「知らん、冒険者なら甘えんな」
ソール「やー!!!ナインさん、助けて!」
ナイン「レオコーンさん、大丈夫?」
僕は仲良くじゃれる二人をスルーして未だに膝をつくレオコーンに話しかけていた
ソール「ナインさん!?」
レオコーン「......すまなかった、ナイン達。そなた達の手まで借り、ようやくルディアノにたどり着けたというのに......宿敵イシュダルも倒せたというのに.....」
涙声でレオコーンさんは苦しそうに話している。なんで、そんなに苦しそうなんだろう
ロード「......ルディアノはこの有様だもんな」
ロードが手を拭きながらこちらにやってきた。奥に口の中に大量の薬草ぶち込まれて気絶してるソールがいる
レオコーン「うむ.....。時の流れと共に王国は滅び、私の帰りを待っていたはずのメリア姫ももういない.........。私は、戻ってくるのがあまりにも遅すぎた」
ナイン「........」
???「遅くなどありません」
優しい声と共に玉座の扉が開かれる
そこには、見た事ない首飾りを付けたお姫様が立っていた
レオコーン「その首飾りは......メリア姫!?そんな......あなたは、もう」
メリア姫「約束したではありませんか。ずっと、ずっとあなたの事を待っている、と。さあ、黒薔薇の騎士よ。私の手を取り踊ってくださいますね?かつて果たせなかった婚礼の踊りを」
メリア姫はレオコーンさんに優しく手を差し伸べる
レオコーン「.......メリア姫。この私を......許してくださるのですか?」
メリア姫は優しくレオコーンさんに微笑んだ
レオコーンさんは静かに立ち上がると、メリア姫の手を取り二人は踊り始めた
ボロボロの部屋、高貴な装飾も伴奏も何一つない場所で二人は優雅に踊る。互いを見る視線、手、ステップ。どれもがかけがえのない、この瞬間だけは、何よりも大切な時間だとなぜかそう感じた
ソール「.......美しいですね」
ロード「復活はええな。.......ようやく、レオコーンが救われるな」
その時、玉座の前の廊下からどんどんと魔物が押し寄せてくる
すぐ近くから聞こえてくる魔物の鳴き声にメリア姫が不安そうな顔をする
ナイン「こんな時に魔物!?」
ロード「ちっ、空気の読めねえやつらだ」
ソール「今は二人にとって大切な婚礼の時間なんです。俺がいきます!」
ロード「一人じゃあの量はキツイだろ、俺も行く」
ソール「ロードさん、ありがとうございます」
ナイン「僕も」
ロード「お前はレオコーン達を見てろよ。せっかくの時間だ、観客が一人もいないってのは.......寂しいぜ」
ソール「そうですよ、ナインさん。魔物は俺達に任せて、ナインさんはレオコーンさん達を見守ってあげてください」
ナイン「ソール、ロード.....。わかった、無理はしないでね」
ロード「たりめえだろ、魔物なんかにやられっかよ」
ソール「少し口が苦々しいですけど、全然動けるんで!」
二人はそのまま部屋を出ていった
少しして戦闘している音が聞こえてくる
その間にもレオコーンさん達の踊りは続く。メリア姫も安心したような表情に戻っていた
少しして
踊りの最後、ポーズを決めようとした時
ぱあああ
レオコーンさんの体から優しい光が溢れ出し、天に浮いていく
メリア姫「あ.....」
ナイン「レオコーンさん.....」
レオコーン「ありがとう、異国の姫よ。あなたがメリア姫でない事はもうわかっていた。しかし、あなたがいなければ私は絶望を抱え、永遠に彷徨っていた事でしょう」
フィオーネ姫「あなたはやはり.....黒薔薇の騎士様だったのですね。初めてお会いしたあの時から、ずっと運命のようなものを感じておりました」
レオコーン「メリア姫の記憶を受け継ぐあなたならば、そのように思われたのも不思議な事ではありません」
フィオーネ姫「私が、メリア姫の.....記憶を」
レオコーン「ナイン、今はおらぬがソールに、ロード。そなた達のおかげですべての真実を知ることができた。あの時のイシュダルへのソールの叫び、私は何百年ぶりに喜びを感じた。本当にありがとう。ソールに本当に嬉しかったと伝えてくれ。もう、私に思い残すことはない。ありがとう.....」
レオコーンさんはそう言うと、眩い光に包まれて消えていった
光に包まれて消えた後も、フィオーネ姫と共にずっと見上げ続けていた
すると、ソールとロードも戻ってきた
ロード「急に魔物達消えたぜ、なんかあったのか」
ソール「あれ.....レオコーンさんは?」
フィオーネ姫「黒薔薇の騎士様はメリア姫様の元へいかれました。思い残すことはないそうです」
ナイン「ソール、レオコーンさんがソールがイシュダルに叫んだあの時、何百年ぶりに喜びを感じたって。本当にありがとうって言ってたよ」
ソール「........そ、うですか。ふふ、それなら.....よかった。俺、レオコーンさんの役にたてたんですね」
ロード「思い残すことなく成仏できたんならめでたしだな」
ナイン「あ!フィオーネ姫、そういえばここまでどうやって!?」
フィオーネ姫「ごめんなさい、ナイン様、ソールさん、ロードさん。あなた達におまかせしたはずなのに、あの方のことを考えていたらここまで来てしまいました。お父様に黙って、お城の兵士を連れて参りました。それにしても......不思議な事があるものですね。
あの方と踊っている間、どこからか声が聞こえたのです。優しい女の人の声で、よくきてくれましたね、フィオーネ。ありがとうって」
ソール「その声って.....」
ロード「まさか」
フィオーネ姫「ふふふ、不思議ですね。それでは私、一足先にお城に戻りますわ。この事を皆様にお伝えしないと。ナイン様、ソールさん、ロードさん。あなた方へのお礼もお城で改めてさせていただきますわ。必ずお城まで来てくださいね」
フィオーネ姫はそう言うと綺麗に礼をして去っていった。去り際にソールの先輩である兵士長さんがこちらに軽く手を振っていった
ナイン「.....僕達も戻ろうか」
ロード「そうだな。王様達からの報酬ってなんだろうな」
ロードと二人で部屋を出ようとすると、ソールだけがまだ部屋に残っていた
ナイン「ソール?」
ソール「あ!すいません。今行きますね」
ソールは僕達を追って部屋から出ていこうとする
くるり
部屋から出る直前でソールは部屋に再度振り返った
ソール「レオコーンさん、メリア姫様とずっとお幸せに」
次の日、セントシュタイン城下町
野宿して次の日、城下町に帰ってくると、そこには既に住民達が列を作って僕達を待っていた
男性「英雄様、ナインさんパーティーが帰ってきた!」
女性「キャー!無事に黒騎士を退治してくれてありがとう!」
老人「これでまた安心して過ごせるわい」
ナイン「わぁ....す、凄いね」
ソール「ひぃ、は、恥ずかしいです」
ロード「.....な、なんなんだよ、これは!」
ナイン「手、振り返しとこうか」
僕が手を振ってくれている女性達や子どもに振り返すと、そこから大きな歓声がわきあがった
それに合わせて周りも一斉に手を振り始めた
ロード「おい!なんか余計にそういう感じになっちまったじゃねえか!」
ナイン「あははは....まあ感謝されるのはいい事だよ」
ソール「うぅ....そんな、褒められるような事ではないのに」
よく見ると、広場の立て札にも僕達の事が書かれている。セントシュタイン国王と書いてあるのもあってもう国全体がこういうムードなんだなと思った
セントシュタイン城 玉座の間
ソール「王様、お后様、フィオーネ姫様!ナイン、ソール、ロード、無事に帰還いたしました!城下町の住民への御触れ、大変感謝いたします!」
ソールを先頭に入ると、玉座の間には兵士全員と王様達も全員待ってくれていた
王様「おお、戻ってきてくれたか!ナイン、ソール、ロード。この度はよくやってくれた!話は全てフィオーネから聞いておる。思えば、あの黒騎士も哀れなやつだったのう.....わしも反省しておるよ。お主達にも強く当たってしまいすまなかった」
王様は僕達に頭を下げた
ソール「!!い、いえ、王様!滅相もありません!頭をあげてください!」
ロード「悪かったって反省してんだしいいんじゃね」
ソール「そういう話じゃないんで黙っててください」
ロード「お、おう....」
王様「それにしてもお主達は実にあっぱれな冒険者達だ!わしはお主達が気に入った!それでは約束通りお主達に褒美をさずけよう。城の宝物庫の鍵を開けてある。そこにある宝を全て持っていくがいい!」
ソール「な!?」
ロード「マジかよ、王様!!!ふとっぱらすぎじゃね!!!やっほーーい!!」
目をキラキラと輝かせたロードが嬉しそうにしている。その反面、ソールは驚いた顔で口が開いたままになっている
フィオーネ姫「ふふふふ」
その様子をフィオーネ姫が優しく笑ってみている
王様「ほほほ、そんなに喜んでもらえるならばよかった。それと黒騎士事件のせいで封鎖していた北東の関所も通れるようにしておいた。関所の向こう側にはまた大きな町がある。覚えておくといいだろう。そしてソールの件じゃが、ソールとナインの意見次第じゃがどうする。このまま兵士としてナインの戦力として助けになるか、兵士に戻ってくるか」
ソール「......ナインさん、どちらがいいですか。俺は.......ナインさんとのこの黒騎士を経て、とても楽しかったです。それに少し、強くなれた気がします。まだまだこれからも、ナインさんとは一緒に冒険したいです、強くなりたいです。お願いします!」
ソールは不安そうな、でもどこか明るいような顔で頭を下げてきた
僕に断る理由なんてないよね
ナイン「うん、もちろん。今回、ソールがいなかったらきっとどうにもならなかった場面がたくさんある。ソール、これからもよろしくね」
ソール「はい、ナインさん!いつでも力になります!」
僕とナインは笑顔で握手をした
王様「うむ、それではソールは引き続きお主の仲間としておくぞ。もちろん、ソールとナインがいいのならばいつでもこの城に戻ってきて兵士としても歓迎するからの。さて」
王様はお后様とフィオーネ姫に目配せをして、二人とも頷いた
王様「わし達はここでお主達の無事を祈っておる。セントシュタインの救世主、ナイン、ソール、ロード!」
三人は祈りのポーズをしてくれた。王家の者がする祈りのポーズなんて、なんか特別な力がありそうだ
宝物庫
ソール「開けますよ。ロードさん、くれぐれもテンションあがりまくらないでくださいね」
ロード「へっへっへ、そりゃ無理ってもんだぜ。さあ、早く早く」
ロードはウキウキとした笑顔で手をポキポキ鳴らしている
ソール「はぁ、王様もわざわざこんな事までしてくれなくてよかったのに。はい、どうぞ」
ガチャ
宝物庫を開けると中には見た事ない王冠や首飾り、宝石や武器などが置いてある
ロード「さっすが大国!!」
サンディ「ちょっと、この宝石チョー可愛いんですケド!!え、何このリボン!ヤバ!!アタシも貰っちゃおーっと!」
ロードと一緒にサンディまで中を我先にと漁り始めた
ソール「サンディさんまで.....まったく」
ナイン「ふふふ、二人とも楽しそうだね。お金に余裕、たくさんできそう」
ソール「残した方が国のためにもなりそうですが、この感じだと無理そうですね」
ロード「おい見ろよ、昔のコインだぜ。今はプレミアもんだ!」
サンディ「見て、ナイン!これ、アタシにどーよ?めちゃ似合ってんでしょ」
しばらく二人はお宝の海ではしゃいでいた
サンディ「ソール、あんたそれ何書いてんの?」
ソール「あ、サンディさん。これは旅のお金の管理ですよ。何にどれだけ使ったのか、どれだけお金を貰ったのか、って感じで管理してるんです」
サンディ「うわ、めんどくさ。なんでそんなのやんのよ」
ソール「こうしないと今どれだけお金があって、何を買えるのか、宿に泊まれるのか、とかに直結しますからね。元泥棒もいますし」
サンディ「ふーん、大変ねえ。使わなくなった物とか全部売っちゃえばよくない?」
ソール「それでもいいとは思いますが、三人いると装備も使い回せたりするので」
サンディ「ナインやロードはお金自由に使ってるけど」
ソール「はい。自由に使っていいお金の金額を渡してるのでその中でやりくりしてもらってます」
サンディ「え?そうなの?なんかロードは財布二つあったけど」
ソール「.........すいません、サンディさん。俺、ロードさんに大切なお話の用事が出来ました。ちょっといってきますね」
ソールはなぜか剣を持って出ていった
サンディ「......もしかして、アタシなんかまずい事言った?し、知ーらないっと!」