ドラゴンクエストIX 地上で輝く星空に   作:サムハル

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3.天使界

 

 

 

天使界

遥か空高くにそびえる大きな塔。全ての天使達がここにおり、人間界と行き来している。図書室や医務室、訓練室など様々な部屋があり、常に大勢の天使がいる。てっぺんには輝く世界樹がある

 

 

 

一階

 

 

イザヤール「遅いぞ、ナイン」

 

 

僕が疲れて戻ってくるとすでに待っていたイザヤールさんが少し呆れたような顔をしていた

 

 

ナイン「はぁ...はぁ...。すいません、でもイザヤールさん速いから....」

 

 

 

イザヤール「さて.....。地上から戻ったら長老オムイ様に報告するのが守護天使のならわし。前にも教えたな」

 

 

またこの天使はこっちの状態無視するんだから

 

 

そんなことを心にぼやきながらイザヤールさんを見る

 

 

イザヤール「オムイ様は長老の間にいらっしゃるはずだ。私は別の用事があるから先に行かせてもらうぞ」

 

 

そう言うとイザヤールさんはスタスタとどこかへ歩いていった

 

 

ナイン「あ、わかりました。今日もありがとうございました」

 

 

イザヤールさんがいなくなり、なんとなく視線が気になり周りを見回すと、僕を遠目に見ている天使達がまたヒソヒソとこちらを見ながら話している

 

 

天使男「またあの奇妙なやつが帰ってきた」

 

 

天使女「まあ、ほんと。イザヤール様もよくあんな不気味な子を育てるわね。私ったら怖くて仕方ないってのに」

 

 

ナイン「......ふぅ」

 

 

慣れたものだ。天使達は皆プライドが高い、それでいて他者に排他的だ。僕なんかは、格好の餌食だろう。イザヤールさんがいればある程度は抑えられるが、一人になった途端こうだ

 

 

ナイン「.....人間なら、優しい人もいるのに」

 

 

先程の青い髪の女の子、レッカちゃんだったかな。その子をふと思い出す。あの子のような優しい心を持つ天使がたくさんいてくれたら

 

 

そんな無理な願いを抱いてしまい、頭を振って考えを振り払う

 

 

ナイン「まずは報告だもんね。長老の間に行かないと」

 

 

まだ聞こえる噂話も耳に入れないようにすればなんて事はない。イザヤールさんと出会う前まではずっとこうしてたんだ。もういい加減この悪意にも慣れないと

 

 

 

しばらく歩いていると

 

 

ナイン「あれ?」

 

 

どこかで道を間違えたのだろうか、長老の間に向かっていたはずが気づいたら全く違う場所の図書室へやってきていた

 

 

ナイン「あはは、間違っちゃったかな」

 

 

来た道を戻ろうとすると

 

 

???「あれ、ナインじゃない。帰ってきてたんだ」

 

 

奥から僕の名前を呼ぶ聞き慣れた声がした。振り返ると

 

 

???「やっぱり。おかえりなさい、無事で何よりだわ」

 

 

 

ナイン「どうも、ジーンさん。今帰ってきたところなんです」

 

 

ピンクの髪を綺麗に途中で束ねて、おだんごにした女性の天使、ジーンさん。皆に優しく、時には厳しく分け隔てなく接する皆の憧れの存在だ。普段は医務室にいて訓練や人間界で魔物から怪我した時などにとても力になる方だ。僕もイザヤールさんとの訓練でそれはそれはお世話になった

 

 

ジーン「最近めっきり姿を見なくなったから人間界に行ったんだろうなとは思ってたけど、怪我しないか心配したわよ。特に、あのつるっぱげにまたいいように使われてないかってね」

 

 

イザヤールさんとジーンさんは同期?の天使らしくお互いに相手の評価が厳しい。イザヤールさんはジーンさんの事を腹黒天使と言っている

 

 

ナイン「そ、それはまあ、今回は大丈夫でした。イザヤールさんの守護天使のお仕事を受け継いだんです。ウォルロ村の守護天使としてイザヤールさんに認められました」

 

 

 

ジーン「あら、そうなの!?やったじゃない、ナイン!!新米天使もこれで大きく前進ね。その調子でナインの周りでごちゃごちゃ言ってるだけで全然活躍もしないやつらを見返してやんなさい」

 

 

 

ナイン「ふふふ、はい。頑張ります」

 

 

 

ジーン「あ、そうだ。ついでで悪いんだけど、ちょっとお願い事聞いてもらってもいい?」

 

 

ジーンさんからお願い事?珍しいな、普段なら自分でなんでもやるのに

 

 

ナイン「いいですよ、なんですか?」

 

 

 

ジーン「実はさっきここに読もうとしてた医学書を置いてたんだけど、他のを持ってきたらなくなってたのよね。勝手になくなるとは思わなかったけど、探してもらえない?」

 

 

ジーンさんは本が置いてあったであろう机を触っている

 

 

ナイン「へー、わかりました。いつごろ置いてたんですか?」

 

 

 

ジーン「ほんの数分前よ。よろしくね、ナイン」

 

 

 

ナイン「(それくらいなら視えるな)」

 

 

ジーンさんが触っていた机に意識を集中させて目を閉じながら僕も手を触れる

 

 

キィィン

 

 

頭の中で甲高い音が鳴り響く。そのまま集中を続けると、ある映像が頭に流れてきた

 

 

図書室

 

 

ジーン「よいしょっと。あとはこの医学書の他にあれも持ってこないと」

 

 

ジーンさんが医学書をこの机に置いた。そのまま他の場所へ歩いて行く。見えなくなった頃、その机にやってきた天使がいた

 

 

天使女「あら?これ、医学書?あー、多分ジーンが探してたやつね。医務室まで持っていってあげましょ」

 

 

ここの図書室の司書天使さんだ。そのまま医学書を取ると図書室から出ていった

 

 

そこで僕は目を開けた

 

 

ジーン「どうだった?見えた?」

 

 

 

ナイン「はい、視えました。司書さんがジーンさんの医学書だとわかって医務室まで持っていってくれたみたいですよ」

 

 

 

ジーン「あ、そうなのね。よかった〜、無くしたかと思って焦ったわ。ありがとう、ナイン。.....でも、こんな事のためにその力使わせてごめんなさい。頭痛くなったりしてない?」

 

 

ジーンさんは少し表情を暗くして大きく頭を下げた。僕のこの力は他の天使達は持っていない

 

 

触れた物の過去と未来を見る力。残留思念とでも言おうか。

 

 

例えば、本に触れるとどうやってこの本ができたのか、誰が作ったのか、読んだ人はどんな人かなどの過去、これからこの本はどうなるのか、またどんな人が読んでどんな扱いをされるのかなどの未来まで視る事ができるのだ。

 

 

視える過去と未来は限度があるが、それでも一気に流れてくる情報量は凄まじい。初めはうまく制御できず、脳がパンクして何度も発狂したり倒れたりしていた。

 

 

今では集中しなければただ触れるだけなら何も起こらないし、集中すれば過去と未来好きな方を視れる。さらに未来を少しだけだが変える事もできる。先程の本の例えなら、このままの未来だと悪い人に渡ってしまう本を違う人に渡るようにする事ができる。ただし、違う人に渡るだけでそれがいい人かどうかはわからない。いつ渡るのかもわからない、といったようにかなり変えられる範囲は狭いが多少の調節ができる

 

 

そんな力を持っているからこそ、周りの天使達からはずっと化け物のような扱いだった。僕だって、好きでこんな力手に入れたわけじゃないのに

 

 

ナイン「大丈夫ですよ。もうこれくらいならなんともありませんし、この力が少しでも恩人のジーンさんのタメになったなら幸せです」

 

 

 

ジーン「恩人って....もう、大げさね。ちょっと庇っただけじゃない」

 

 

 

ジーンさんは僕の力を知ってもなお、対応を変えず優しかった。それでいて、他の天使達から標的にされていた僕を庇い、言い返してくれたのだ。その影響もあってジーンさんも少し陰口を言われるようになったのだが、彼女はそれすらも「最近チヤホヤされるだけなのも飽きてきてたし、ちょうどいい気分転換になるわ。いつまでもずっといい子ちゃんでいられるわけないっての」と笑っていた

 

 

 

ナイン「それでも!あの時の僕には、ジーンさんがいなかったら.....ダメになっていたかもしれません。本当に助かったんです、ありがとうございました」

 

 

深々とジーンさんに頭を下げる。本当はもっともっとジーンさんには感謝しなきゃいけないけど、これ以上の表現の仕方を僕は知らない

 

 

ジーン「やれやれ....。まあいいわ、お礼されるのも嬉しいし。また今度たくさんお話しましょ。引き止めちゃってごめんね。なんか用事でもあった?」

 

 

 

ナイン「あ.....すっかり忘れてた。僕、オムイ様のところに報告に行こうとしてたんでした」

 

 

 

ジーン「え!?あ、そっか!さっき守護天使として認められたって!ごめんね、ナイン!っていうか、それなら真反対じゃない!なんでここにきたのよ!」

 

 

 

ナイン「な、なんかぼやーっとしてたら...」

 

 

 

ジーン「はぁ〜.....。まったく。じゃあ医務室行くついでに送ってってあげる。行きましょ」

 

 

 

ナイン「ありがとうございます」

 

 

 

二階 医務室

訓練室の隣に医務室がある。この道を進むとオムイ様がいる長老の間だ

 

 

 

ジーン「ちょっと待っててね、これ置いてくるから」

 

 

 

ナイン「わかりました」

 

 

ジーンさんが医務室の中に入っていった。すると、少し静かになった空間にある男女の声が聞こえてきた

 

 

ラフェット「驚いたわよ、ナインがもう守護天使になるなんて!あなたよく許したものね」

 

 

 

イザヤール「違うのだ、ラフェット。私はまだ早いと判断したのだ。それをオムイ様が....」

 

 

どうやらラフェットさんとイザヤールさんのようだ。ラフェットさんとイザヤールさんは喧嘩ばかりだが、どうやら仲は悪くないらしい

 

 

内容はこれ、僕聞いちゃっていいのかな

 

 

ラフェット「あはは、まあそうだろうとは思ったわ」

 

 

ラフェットさんの軽い笑い声が混じった反応にイザヤールさんが反応した

 

 

イザヤール「笑い事ではない!ナインはまだ未熟だ。人間界で何かあったらどうする!?君はエルギオスの悲劇の事を忘れたのか!?」

 

 

エルギオス?誰だろう、それは。僕は聞いた事のない名前だ

 

 

ラフェット「エルギオスの悲劇ね。もちろん忘れてはないけれど、その話をする事はこの天使界でタブーになったのじゃなかったかしら?」

 

 

 

イザヤール「.......」

 

 

お互い静かに黙り合ってしまったが、僕これ聞こえちゃってよかったのかな〜、忘れようかな〜

 

 

ジーン「待たせたわね、ナイン。さ、オムイ様に報告に行きましょう」

 

 

 

ナイン「はい」

 

 

ちょうどいいタイミングでジーンさんが戻ってきてくれた。よし、今の会話は聞かなかったことにしよう

 

 

 

長老の間

門番天使に守られた奥に立派なヒゲをたくわえた少し小太りのおじいちゃん天使がいる。この方がオムイ様だ。永き時を生きる天使の中でも最長の天使であり、歳は千年とも万年とも言われている

 

 

 

オムイ様の前で膝を曲げて頭を下げる。一緒にきてくれたジーンさんも同じポーズをしている

 

 

 

オムイ「よくぞまいった、イザヤールの弟子ナインよ。わしが天使界の長老オムイじゃ。守護天使として地上での初めての役目ご苦労じゃったな。

 

 

とはいえ今まではイザヤールに同行してもらったのだったのう。じゃが!これからはそうではない!.....どうじゃ?一人でもやっていけそうか?」

 

 

 

ナイン「は、はい。不安ですが一人でもしっかりとお役目をこなしていきたいと思います」

 

 

オムイ様の目を見て少しの不安さと正直な気持ちを伝える

 

 

綺麗な黒い目だ。まんまるでどこか見透かしたような、でも温かいようなそんな雰囲気がした

 

 

オムイ「ほほう。ナインはなかなか自信家かもしれんのう。けっこうけっこう。若いモンはそれくらいでなくてはな。

 

 

さて、ではそんなナインに次の役目を与えるとしよう。地上でお前は人間達の感謝の結晶。星のオーラを手に入れたはずだな。次にお前がなすべきは天使界のいただきにある世界樹にその星のオーラをささげる事じゃ。

 

 

樹はやがて育ちその実を結ぶであろう......。さあ、世界樹のもとへ向かうがよい」

 

 

 

ナイン「はい!」

 

 

一礼をしてその場を去ろうとすると

 

 

門番天使「この疫病天使が調子に乗るな」

 

 

ボソリと去り際に呟かれたセリフに少し胸が痛んだ

 

 

そんな痛みを無視して長老の間から廊下に出るとジーンさんが険しい顔になった

 

 

ジーン「安心して、ナイン。後であの無能な門番天使、つるっぱげに頼んで後悔させてあげるから。医務室に運ばれたらその次は私の番ね、ふふふふ」

 

 

な、なんかジーンさんがとても怖い。少し門番天使さんが可哀想に思えてきた。とにかく、次は世界樹へ星のオーラを捧げないとな

 

 

ナイン「じゃあジーンさん、わざわざ付いてきてくれてありがとうございました」

 

 

 

ジーン「ええ、世界樹には私もほとんど行った事ないけど大丈夫よ。終わったらまた声かけて。人間界でどんな事やってきたとかどんな人間がいたとか興味あるから教えてね〜」

 

 

ジーンさんは笑って去っていった。方角はさっきまでラフェットさんとイザヤールさんがいた方だ。多分今の事を報告しに行ったんだな。うん、しばらくは訓練室にも医務室にも行かない方がいいかも

 

 

 

 

 

 




ここではキャラ同士の会話を少し入れていきます


ナイン「えっと、初めまして皆さん。天使見習いのナインです」


イザヤール「......」


ナイン「えっと、あの、イザヤールさんもなんか言いましょうよ」


イザヤール「何を言えばいいのだ。私にはわからん」


ジーン「やれやれ、これだからお堅いつるっぱげは。こんにちは、人間の皆さん。ジーンといいます。次回もまたお楽しみにしてくださいね」


ナイン「あ、そういう感じです。ありがとうございます、ジーンさん」


ジーン「ふふ、なんだか楽しそうじゃない」


イザヤール「わからん。とりあえず、今回の話としてはナインの力と周りからどう思われてるのかがわかったな。あんなやつらは放っておくのが一番だ。ナイン、私はお前が弟子で心から嬉しいと思っているぞ」


ナイン「イザヤールさん.....。はい!僕もイザヤールさんが師匠でとってもよかったです!」


ジーン「あら本当に〜?ナイン、前に医務室に運ばれてきた時はイザヤールの事嫌いって言ってたわよ?」


イザヤール「な!?」


ナイン「え!?あ、いや、それは違くて!だって、あんなに剣を体に打ち込んできて、痛くて仕方なくて!」


イザヤール「........そんな」


ナイン「違うんです、イザヤールさん!!大好き、大好きですー!!」


ジーン「うふふ、本当に面白いわよね〜。それじゃまたね〜」

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