少し時は戻り、研究室
僕はエリザさんと共に研究室の前までやってきた
エリザ「ルーくんを呼ぶ時のノックには少しコツがいるんですよ。このリズムでノックしてみてください」
ナイン「わかった」
コンコン、ココンコン
エリザさんの言った通りのリズムで扉を叩いた。すると、中からドサバサと音がする
ルーフィン「エリザ!?エリザなのかい!?」
ルーフィンさんが慌てた様子で勢いよく扉を開けた
ナイン「ど、どうも」
ルーフィン「ナイン....さん。今のは、あなたの仕業ですか。わざわざエリザのノックを真似するなんてタチの悪い!こんな事はもう二度とやめてください!」
ルーフィンさんはそのまま部屋に戻ろうとする
ナイン「あ、ルーフィンさん。待って!」
そんな時、僕達の後ろからおじさんが声をかけてきた
おじさん「お!ルーフィン先生!はやり病を止めてくれてどうもありがとな!町の皆に代わってお礼を言わせてくれ!本当にありがとう!あとよ、早く立ち直ってくれよな!皆、あんたとエイリークちゃんを心配してんだぜ!」
ルーフィン「.....ど、どうも」
おじさんはそのまま笑って去っていった
ルーフィン「な、なんなのだ。一体」
エリザ「ナインさん、私からの最期の言葉としてルーくんに伝えてください」
ナイン「ルーフィンさん、病魔を封印したことで救われた人達に会ってみてください。エリザさんからの最期の言葉です」
ルーフィン「エリザからの.....。だが、僕はお義父さんを見返す事ばかりに囚われてて誰がはやり病になっていたのかを知らない。........ナインさん、僕を案内してくれませんか?今更ですが、どんな人達がはやり病にかかってどんな思いを抱えていたかを知りたいんです」
ナイン「うん、一緒に見に行こう。皆、ルーフィンさんに会ってお礼を言いたいみたいだった」
教会
シスターと神父が祭壇を掃除していた
シスター「まあ!ルーフィン先生!はやり病を止めてくださってありがとうございました」
神父「エリザさんの件は.....お気の毒でした。ルーフィン先生には遠く及びませんが、町の皆が深く深く悲しんでおります」
ルーフィン「......そうでしょうね。彼女は皆から好かれていましたから」
他の家にもそれぞれ入っていった
おじいちゃん「ゲッホ!ゲッホ!うぇっほ!!うう、苦しい.....」
ナイン「あれ!?まだ苦しんでる人がいる!」
ルーフィン「馬鹿な!病魔の呪いはもう解けたはず!どうして」
おばあちゃん「ルーフィン先生、はやり病をありがとうございました。このじいさんは放っておいて大丈夫ですよ。はやり病が治って大喜びしたのも束の間、すーぐに風邪ひいて寝込みおった。腹出して寝てたんですから当たり前です」
ルーフィン「そうなのか.....よかった」
ナイン「焦ったよー。びっくり」
おじいちゃん「うう、ばあさんが前までは手厚く看病してくれてたのに冷たいんじゃ.....もしや、愛が冷めたのか.....うう」
ルーフィン「えっと、大丈夫ですよー」
他の家
おじさん「ルーフィン先生!はやり病を止めてくださって本当にありがとうだ!いつカミさんや息子にかかっちまうのかと思ってずっと不安で.....。あ、すまねえだ。エリザさんの事は.....お気の毒だったなぁ」
他の家
若いお父さん「ルーフィン先生!妻と娘のはやり病を治してくれてありがとうございます!」
ルーフィン「奥さんと娘さんどっちもですか」
若いお父さん「このままじゃ俺も眠れずしまいでいつ倒れるかと思ってました。ルーフィン先生は俺の恩人でもあります!本当にありがとうございました!」
お父さんの声に娘さんが走ってきてルーフィンさんに抱きついた
娘さん「ありがとう、ルーフィン先生!」
ルーフィン「こんな小さな娘さんが....。誰がはやり病に苦しんでいたかも知らずに......僕は一体何を見ていたんだろう」
宿屋
バニー「あら、あなたがはやり病を治してくれたっていうルーフィン先生?」
ルーフィン「はい。という事は、あなたも?」
バニー「はい、はやり病が治らなかったらダーリンとお別れしてたかも。ダーリンは寝てるし、お礼にぱふぱふくらいなら許してくれるかな」
バニーの姿をした女の人は不思議なポーズでルーフィンさんに迫っていく。何をしようとしてるんだろう
ルーフィン「わ、わわ!」
すると、怒った顔のエリザさんが前に出た
エリザ「ちょっと!何してくれちゃってんの、この人!純情なルーくんを惑わせないで!」
ルーフィン「ナインさん、早く出ましょう!」
バニー「ありがとねー」
バニーの人に向かってエリザさんが舌を出している
広場
ルーフィン「ありがとうございました、ナインさん。おかげでエリザの言いたかった事、わかったような気がします。今までの僕は何をやるにも自分のことばかりで、周りが見えていなかったんですね。
だから、エリザの体調がおかしい事にも気づかないで....まったく情けない話です。今日町を回ってみて、初めて自分がいかに多くの人に関わっているのか気づきました。これからはその事を忘れず、このべクセリアの人々とともに生きていこうと思います。それに、皆に感謝されるのも悪くない気分でした」
ルーフィンさんは優しく笑った。先程の暗い顔とは打って変わっていた。町の人達と話すだけでここまで変わるなんて、人間はやっぱり強いな
エリザ「ルーくんを助けてくれて本当にありがとうございます。おかげで私、死んでるのに夢を叶えられちゃいました」
サンディ「夢?」
エリザ「ルーくんの凄い所を町のみんなに知ってもらう事」
エリザさんはルーフィンさんを見た
町を見渡しているルーフィンさんの顔はどこか晴れ晴れとしていた
エリザ「ルーくんにこの町を好きになってもらうこと。それが私の夢でした。本当にありがとう」
エリザさんはそう言うと明るい光に包まれていく
エリザ「あわわ、もう時間みたい。ルーくん.....町の皆と一緒に楽しく過ごしてね」
エリザさんはそう言って優しくルーフィンさんの頬に口付けをした。そのまま静かに笑って消えていった
サンディ「......夢、ね」
ナイン「......ルーフィンさん、エリザさんの夢って知ってた?」
ルーフィン「エリザの夢?いや.....知らない。そんな事も、わからなかったのか」
ナイン「ルーフィンさんの凄い所を町の皆に知ってもらう事。そして、ルーフィンさんにこの町を好きになってもらう事、だって」
ルーフィン「........そうですか。ふふふ、エリザらしいです。ありがとう、エリザ。僕は君のおかげで、この町を好きになれそうだよ」
ルーフィンさんは優しく笑って夜空を見上げた。その笑い方は先程のエリザさんとそっくりだった
ナイン「.......ルーフィンさん、もう一つ行きたい場所が。いや、行かなきゃいけない場所があるんだ」
ルーフィン「え、どこですか」
ナイン「町食堂だよ。エイリークのお父さんとお母さんも、エリザさんみたいにはやり病でなくなっちゃったんだ」
ルーフィン「なんですって!?エイリークさんは、どうしてるんですか」
ナイン「塞ぎ込んでるんだ。なんとかしてあげたいんだけど」
ルーフィン「......彼女は、パンデルムと戦っていた時にもこのベクセリアの町の皆の幸せを願っていましたね。僕とは違って、ずっと彼女はこの町の事を考えていたのに.....。行きましょう、町食堂に。僕もなにか彼女の力になれるかもしれません」
ナイン「うん!お願い、ルーフィンさん」
少し時は遡り、ルーフィンとナインが町を回っていた頃
食堂
ガチャ
裏口の扉が開いた
ロード「俺にかかればこれくらい一発だぜ」
ビーク「おー、凄いな。ロードさん手馴れてんな!」
ソール「お、お邪魔します....」
ダリア「エイリークはきっと今お部屋にいると思います」
ロード「でも、家に入れたはいいが、何を話せばいいんだ?」
ビーク「そうだな。少しお話しましょう。このお店の名の由来から」
ソール「由来?デイブレイクですか?」
ダリア「はい。エイリークの生まれる前のお話です」
ロード「ずっと重苦しい雰囲気だよな、息がしにくいぜ」
ナイン「そうだね。まあなくなった人間がいるから仕方ないとは思うけど」
ロード「まあああやって死んでも誰かに想われてるって幸せな事だよな」
ナイン「ずっと一緒にいれるみたいだよね」
ロード「お、ガキのくせにいい事言うな。そうだな、忘れない事がなによりも大切なその人の存在証明かもな」
ナイン「ふふふふ」
ロード「なんだよ」
ナイン「ロードって優しいよね。口ではいろいろ言うけど、行動とかそういう想いとかを大切にしてる。凄くいい事だよ」
ロード「.......俺はお前のそういう所が嫌いだ」
ナイン「えー」
ロード「突然大人ぶりやがって。俺の方が年上なんだぞ!」
ナイン「ふふふ、そうだねー。ロードは頼りになるから」
ロード「もう少しお前はしっかりしてもいいんだけどな」