ドラゴンクエストIX 地上で輝く星空に   作:サムハル

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29.DayBreak

 

食堂

 

 

コンコン

 

 

食堂の扉を叩いてみても反応はない

 

 

ルーフィン「寝てますかね」

 

 

 

ナイン「いや、中に人の気配がするんだけど」

 

 

ガチャ

 

 

扉が開くと、ソールとロードが立っていた

 

 

ソール「あれ、ナインさんにルーフィンさん!?」

 

 

 

ロード「お前ら、なにやってんだよ」

 

 

 

ナイン「えー!?なんでソールとロードがここに?というか、どうやって中に」

 

 

 

ルーフィン「ナインさんのお仲間のソールさん、ロードさんでしたっけ」

 

 

 

ロード「ちょっとな。お前に言って信じてもらえるかはわからねえが、エイリークの父親と母親の幽霊がいたんだよ」

 

 

 

ナイン「ええ!?二人も幽霊見えたの!?」

 

 

 

ソール「初めてですよ!急に見えて話せて驚いてるんですから!」

 

 

 

ロード「やーっぱお前も見える人だったか。なら話は早い。二人から話を聞こうとしてたんだ。お前も来いよ、学者のやつも」

 

 

 

ルーフィン「幽霊と話だって?なんだ、何が起こってるんだ」

 

 

 

ナイン「細かいことは気にしないで。中に入ろう」

 

 

食堂のテーブルでダリアさんとビークさんが座っていた

 

 

ダリア「ナインさんもいらしたんですね。ルーフィン先生まで。はやり病を止めてくださってありがとうございました」

 

 

 

ビーク「ナインさんまで幽霊が見えるとはな。エイリークはそういうのまったく見えないけどな」

 

 

 

ナイン「どうも、ダリアさん、ビークさん。お二人もはやり病にかかっていたんですね。全然気づけなかったです」

 

 

 

ルーフィン「そこに、いるんですか?あの.....遅くなってすみませんでした。もう少し早ければ」

 

 

ルーフィンさんは申し訳なさそうに頭を下げた

 

 

ビーク「いいんだって、ルーフィンさん。なんとなくわかって覚悟してた事だ。気にしてない」

 

 

 

ナイン「ビークさんが気にしてないって」

 

 

 

ルーフィン「それならよかったです。でも、せっかくの食堂が」

 

 

 

ロード「そうだ。今からこの食堂の話をしてくれるんだってよ。なんでも名前の由来だとか」

 

 

 

ナイン「名前?デイブレイクの事?」

 

 

 

ビーク「はい。今から20年ほど前、俺達は結婚して夢だった食堂を開く事にしたんです。料理なんてからっきしだったんですがね」

 

 

 

ダリア「私がどうしてもと言って彼にお願いしたんです。ですがその時、私のお腹には赤ちゃんが。エイリークが宿っていたのです」

 

 

 

ソール「そんな時期にお店を?」

 

 

 

ビーク「元々俺は大工だったからな。店を建てるの自体に問題はなかったんだが、一つどうしても悩んだ事があった。この店の名前だ」

 

 

 

ロード「デイブレイクか。なんでそれになったんだ?」

 

 

 

ダリア「いろいろ候補はあったんですが、どれもパッとせず。私の名前と彼の名前を取ってDとBは使いたかったんですが....」

 

 

 

ナイン「それだけだといっぱいあるよね」

 

 

 

ビーク「はい。そして、娘の名前も同時に決まっておらず、そちらも決めねばなりませんでした」

 

 

 

ソール「うわあ、いろいろ重なっちゃったんですね」

 

 

 

ロード「.....ん?待てよ、DAYBREAKからDとBを消すと、もしかして」

 

 

 

ダリア「あ!正解です!ロードさん、賢いんですね」

 

 

 

ビーク「ははは、先に言われてしまったな。夜の間ずっと二人で考えてもまとまらなくてな。夜明けがきたんだが、その時にふと思いついてな」

 

 

 

ダリア「真っ暗な夜から希望の光がさすようにやってくる陽射しのように明るく優しい子であってほしい。そして、そんな温かい太陽のような場所がいい。ここはそういう願いを込めて生まれたのです。そして、エイリークという名前の由来にも繋がります」

 

 

 

ソール「......素敵ですね。エイリークさんは、名前に恥じない明るくて優しい方ですよ」

 

 

 

ナイン「うん。中々いないよ、あんなに暗かったベクセリアの中でも明るく振る舞える子は」

 

 

 

ルーフィン「......今、彼女は?」

 

 

 

ダリア「ここにいないということはお部屋ですね。寝てくれてると嬉しいのだけれど」

 

 

 

ナイン「よし、まずはエイリークのいる部屋に行こうか」

 

 

 

ソール「なんか、幽霊と会話なんてありえないような事やってるのに慣れてきてる自分が怖い」

 

 

 

ロード「早く慣れておけ、一々驚いてたらキリないぞ」

 

 

 

ソール「ロードさんは適応力早すぎるんですよ!」

 

 

エイリークの部屋

 

 

ビーク「すまないが、俺達はここにいる」

 

 

 

ダリア「今のエイリークに私達がいるっていっても混乱させるだけですから。それに、もしかしたらよくない方向に向かう可能性もある。それだけは避けないと」

 

 

 

ソール「そうですね。わかりました、ここは俺達が引き継ぎます」

 

 

 

二人「お願いします」

 

 

こんこん

 

 

エイリーク「だれ」

 

 

 

ナイン「エイリーク、僕だよ、ナイン。ソールとロード、それとルーフィンさんもいるよ」

 

 

 

エイリーク「え?どうやって入って......もしかして裏口?お母さん達しか知らなかったはずなのに」

 

 

ガチャ

 

 

ドアが開いてエイリークが顔を見せてくれた

 

 

明るく笑っていた彼女は目の周りが赤く腫れ、クマもできており、まったくの別人となっていた

 

 

ロード「おい、氷だせ。目を冷やさねえと」

 

 

 

ルーフィン「エイリークさん.....気持ちは痛いほどわかります。僕もエリザをなくして、ずっと悲しみに苛まれました。でも、町の人達は僕達に感謝してくれてました。そして、皆さん心配していました。少しだけでも顔を出してみませんか?町の皆の笑顔や感謝の言葉ってすごく力になります」

 

 

ソール「)こそっ、ナインさん、なんかルーフィンさん変わりましたね?何かあったんですか?」

 

 

 

ナイン「ふふふ、ちょっとね」

 

 

ロードにヒャドで小さな氷を渡しながらソールに微笑んだ

 

 

エイリーク「ルーフィンさん......。でも、私.....お母さんとお父さんにずっと悪い事してたんだよ。はやり病になってるって、まったく気づかなかった」

 

 

 

ルーフィン「僕も同じです。エリザもそうでしたけど、きっとダリアさんとビークさんも隠してたんだと思います。心配かけさせないようにと」

 

 

 

エイリーク「私が.....無理させてたのかな。食堂をおやすみして、休ませてたら......」

 

 

 

ロード「たられば言ってても仕方ねえぞ。こうなったもんは変えられねえ。受け入れるのが難しいのはよくわかるが、いやいや言ってても何も始まらねえし立ち上がれない。ゆっくり受け入れろ」

 

 

 

ルーフィン「ちょ、ちょっと厳しいんじゃないですか。傷心中の子ですよ」

 

 

 

ロード「はっ、甘い事言ってるなよ。現実なんてこんなもんだ。非情で冷酷で無慈悲だ。そんな事ばっかりだ」

 

 

ロードはゆっくりとエイリークに近づく

 

 

エイリーク「ロード.....」

 

 

 

ロード「現実にやられて、涙が止まらなくて、動けなくて。それで立ち止まってしまう事は山のようにこれからもおとずれる。お前は、その度にこうやって塞ぎ込むのか?そうやってれば何かが変わると思ってんのか?」

 

 

ロードの言葉に僕は胸が痛くなった。天使界での僕の行動を思い出してしまった

 

 

ロード「お前、言ってたよな。きっといい事があるって。いい事なんてな、願って祈って待ってるだけのやつにはおとずれてくれねえ。自分で立ち上がって、必死にあがいたやつにだけおとずれてくれるかもしれねえ小さな幸せだ。このままじゃ、一生お前にいい事はやってこねえぞ」

 

 

 

エイリーク「........だって、私一人じゃ、なにもできない。お母さんもお父さんもいない。食堂だって、もう......。私にはなにもないもん!!!」

 

 

 

ナイン「諦めないで、エイリーク。なにもない事なんてない。そうじゃなきゃ、町の人達はエイリークを心配したりしないし、こうやって僕達だって来ない。エイリークがこれまで皆にあげた優しい心が、今皆からおかえししてくれてるんだよ」

 

 

僕はエイリークの手を両手で包み込んだ

 

 

ソール「エイリークさん、親を失って、やる目標もみえなくなって、苦しいですよね、つらいですよね、痛いですよね。一人じゃ確かになにもできないかもしれません、どうしようもないかもしれません。俺だって、きっと一人じゃなにもできません。

 

 

でも、エイリークさんも言いましたね。俺達とならもしかしたらどうにかできるかもって。だから、俺達を頼ってください。寄りかかってください。その別れのつらさは仲間が埋めてくれます。俺達、仲間じゃないですか」

 

 

ソールが優しくそばに来てエイリークの肩に手を添えた

 

 

エイリーク「ナイン、ソール.....。食堂、どうしよう。私一人じゃなにもできないよ」

 

 

 

ロード「本当に何も出来ないのか?」

 

 

 

エイリーク「え?」

 

 

 

ロード「俺にはそうは思えないけどな。もちろん、これまでよりずっと大変だろうぜ。母親と父親がやってた分を全部お前がやる必要があるからな。ただ、母親と父親がやってた事を誰よりも一番見てたのはお前だろ。全部わかるとはいかなくても、お前だからわかる事はたくさんあるんじゃねえの」

 

 

 

エイリーク「.....そりゃ、そうだけど。でもそんなの」

 

 

 

ロード「てんでダメだな。もういい、話にならねえ。帰るぞ、お前ら」

 

 

ロードはそのまま部屋から出ていこうとする

 

 

ソール「ええ、待ってくださいよ、ロードさん」

 

 

 

ナイン「なんで突然」

 

 

 

ルーフィン「厳しいですって!もっと優しく!どうして傷つくような事をするんですか!」

 

 

 

ロード「ああ?お前らはわかってねえのか?こいつは確かに心が傷ついて動けねえ状態だけどな、もう立ち直る事だってできるはずだ。涙を流しながらでも、痛くて動けなくてもつええやつは立ち上がる事ができる。無理やりでも前を向いて、やるべき事をしっかり捉えられる!

 

 

俺達は今その可能性を見せた、優しさを差し伸べた。それでもこいつが下を向いて勝手に何も出来ないと、立ち上がれないと決めつけてるうちは、立ち上がる事なんて絶対できねえ!

 

 

いいか?よく聞けよ。立ち上がらないのはお前自身の責任だ。誰のせいでもない、お前のせいだ。お前が今やっている事は、現実逃避だ。そのまま放置してると、本当に食堂も仲間もなにもかもなくなるぞ」

 

 

 

エイリーク「そんなの嫌だ!!」

 

 

ロードのその言葉に下を向いていたエイリークは勢いよく顔をあげた。その勢いで流していた涙が飛び散る

 

 

ロード「なら立て。泣いてていい、傷ついたままでいい。前を向け。この食堂が大事なんだろ。両親の夢だったんだぞ。娘のお前が両親の夢を終わらせていいのか」

 

 

 

エイリーク「終わらせたくなんかない!お母さんもお父さんも、ずっと幸せそうだった。楽しそうに笑ってた。私はそれが大好きだった!!ずっと、笑顔でいてほしかった」

 

 

エイリークは泣きながらゆっくりと立ち上がる。涙をぬぐってもぬぐっても止まらないが、立ち上がる

 

 

ルーフィン「エイリークさん....」

 

 

 

ロード「そのまま閉じこもってても両親は笑わないだろうぜ。お前自身が両親にこれからも笑顔でいてもらうために動きだせ。夢も幸せも諦めるな。まだ何も終わっちゃいない、お前が動けば、また夢も幸せも新しく動き出す」

 

 

 

エイリーク「うん.....。そうだね。私、負けない。こんな悲しみなんかに負けない!私はお父さんとお母さんの娘!エイリーク!お父さんとお母さんの夢はまだ終わらない。終わらせない!私がこの食堂、デイブレイクを受け継ぐの!」

 

 

エイリークの瞳に光が宿る。さっきまでの顔はなくなった

 

 

朝日が昇った。部屋の窓から射し込む太陽の光がエイリークの顔を照らし出す。紺色の髪と朝日が混ざってサファイアのように光ってみえた

 

 

ロード「そうだ、負けるな。もがいて足掻いて夢を叶えてみせろ。きっと、いい事おこるだろうぜ」

 

 

 

 





サンディ「ぐすっ.....ううう」


ナイン「え、サンディが泣いてる!ど、どうしたの!?」


サンディ「いや.....エイリークが.....ちゃんと立ち上がって偉いなって」


ナイン「あー.....そうだね。エイリークは優しいだけじゃなくて強い子だよね。あんなにつらそうにしてたのに、もう前を向き始めた。ロードの言葉のおかげなんだろうけど、凄いよね」


サンディ「中々できる事じゃなさそうよね。アタシだって落ち込んだら中々テンションアゲられないのに」


ナイン「ロードの言葉もかっこよかったなー。昔の僕にも聞かせてあげたいくらい」


サンディ「そう!ロードよ!!あいつ、女の子にあんな厳しい言葉かけるとかデリカシーないワケ!?ちょっとムカついたんですケド!」


ナイン「ルーフィンさんと同じ事言ってるね」


サンディ「ええー!あんなのと一緒とかマジで嫌なんですケド!やめてよ、ナイン!」


ナイン「ふふふ、いつものサンディに戻ったね」


サンディ「まあ?エリザのおかげで少しはマシになったみたいですケド」


ナイン「これからが楽しみだね、ルーフィンさんもエイリークも」

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