ロード「さっと終わらせようぜ!」
ロードが短剣を持って走り込んでいく。体感いつもより確かに素早くなっているようにみえる
ロードがそのまま魔物の横腹付近に短剣で切りつけた
ズバッ!
青い血が流れているが、魔物は一切動じない
ナイン「ど、どうしたんだろう」
ソール「効いてないんですかね。俺も!れんごく斬り!」
今度はソールが炎を剣にまとわせて跳び上がり、背中に思いっきり斬りつける
ズバン!ジュゥゥ...
大きな切り傷と火の痕が残る
魔物「どー?」
魔物はさっきと同じく何もわかっていない様子で首を傾げている
ニード「お、おい、こいつマジで効いてないみたいだぞ!」
ロード「どういう事だよ、手応えはあったぞ」
ナイン「今度は僕も.....ん?」
僕が呪文を唱えようとすると、背中からの傷で滴る血に魔物が気づいた
魔物「どー.........!!!!どーーー!!!!」
ドスンドスン!!
魔物は傷がある事に今気づいて痛みがやってきたのか、ゴロゴロと周囲を痛がるように転がり始めた
三人「今気づいたのかよ!!」
その様子にソールとロードとニードの声が揃って見事に洞穴にこだまする
ナイン「あはははは!なんか面白いね、この子」
ロード「なんなんだ、まったく。調子が狂うったらありゃしねえ」
ニード「これなら俺様でもやれそうな気がしてきたぜ」
ソール「甘く見るのは.....と言いたい所ですが、なんだかこれだと」
魔物「ど〜......ど、どー!!」
全員「!?」
魔物の可愛い顔から一気にしかめっ面に変わり、僕達に目を向ける。すると、勢いよく槍のような尻尾を振ってきた
ぶん!
キラッ
尻尾を振るった瞬間、何かが光る
ソール「なんだ.....まずい!!ナインさん、ニードさんを!!」
ナイン「!?」
僕も飛んでくるそれに気づくと同時にニードに覆い被さる
ニード「ぐお!?」
ニードと共に地面に倒れこむ
シュシュシュシュシュ!!
その頭上を凄まじい勢いで掠めるように大量の何かが駆け抜けていく
また、それがソールとロードにも向けられていく
ロード「これ、水か!!!」
ソール「こんな量、避けきれ、ぐわ!!」
ロード「いってえ!!!何も着てねえから、皮膚が切れる!!」
ソールとロードの腕や足、腹に顔など様々な場所が勢いよく飛んでくる水滴が掠めていき、切り傷が出来ていく
ナイン「ソール、ロード!!」
ニード「な、なんだよ、あれ!!水滴がそんなに痛い事あんのかよ!」
ソール「ぐっ.....圧縮された塩水みたいです。水を圧縮して、勢いよく放つ。勢いがついた水の威力を舐めてはいけません。川が大地を削るように、水はなんでも切り裂きます」
ロード「水は鉄だろうと切り裂こうと思えば切り裂けるんだぜ。俺らの皮膚なんていとも簡単に真っ二つだろうな。直撃したら体とはおサラバだぞ」
二人が苦しそうな顔でこちらに下がってくる
ナイン「急いで回復しないと。ホイミ!」
ソールとロードの体に急いで魔法陣を描いて回復魔法をかける
ロード「サンキュー。とりあえず、逃げるぞ!」
一旦流れている血だけを止めると、そのまま走り出す
ソール「はい!」
ナイン「ニードも!」
ニード「なんだよ、全然可愛くねえよ、こんなの!!マジでこええ!!」
魔物「どー!!」
魔物も怒った様子でこちらに向かってくる。しかし、足が遅いのかどんどん遠くなっていく
ニード「足は....早くないみたいだな」
ロード「あの鈍感さなら当然か」
ナイン「待って、何かしようと.....」
僕がかなり遠くであの魔物が立ち止まったのを注意深く見ていると、あの魔物の口が開いた
ナイン「まずいかも!!」
三人「!?」
僕は大急ぎで三人の前に出て盾を構える
ソールも慌てて盾を構える
魔物「どどどーー!!!」
ドドドバァ!!
魔物の口から大砲のように水が勢いよく吐き出された。太く大きな水の大砲は洞穴全てを削って埋めつくしていく
僕達も瞬く間に水に飲み込まれて勢いよく押し流されていく
浜辺の入口
海や砂浜に近寄れなくなり、多くの観光客がたむろしていた。その近くでリッカとエイリークは網などを借りて料理を作っていた
エイリーク「これでこんがり焼いて完成なはず!野菜もお肉もしっかり焼けるかなー」
熱された網の上にはお肉や野菜が所狭しと並んでいる
リッカ「こんなに大きな切り方でよかったかな」
エイリーク「大丈夫大丈夫、男達なんて皆これくらいの方が嬉しいはずだから」
リッカ「そうなのかな。あ、でもいい匂いがしてきた」
エイリーク「ね!どうする?ナイン達まだまだかかりそうだし、焼けそうなやつから周りの皆に配る?」
リッカ「あ!いいですね、それ。皆さんもきっと喜ぶかも!」
エイリーク「だよね!皆もきっと幸せになるよね!よーし、皆さーん!!この野菜やお肉達焼けたら食べる人いますかー!」
リッカ「たくさんあるのでぜひ貰っていってくださーい」
エイリークとリッカの声に周りにいた観光客達が押し寄せてくる
女の人「よかった、お腹すいてて困ってたの!ありがとう!」
男の人「いい匂いはこれだったのか!サンキュー!」
おじさん「若い子が作ってくれたもんが食えるなんてな!」
一瞬でワイワイと賑やかになっていると
ドオオン!!!
砂浜の奥から大きな音がした。全員がそちらを見ると
エイリーク「わ!!なにあれ!」
リッカ「水?」
大量の水が地面から吹き出したように大きく昇っており、ずっと水が溢れている
おっさん「なんだなんだ、あんなに水が勢いよくでてるなんて」
おばさん「あっちに何かあるのよ。ほら、立ち入り禁止になってる場所のあたりだわ」
女の子「こわーい」
リッカ「エイリークさん、あそこってもしかして」
エイリーク「うん、きっとそうだよ。行こう、リッカ!ごめんなさい、皆さん。これ、好きにしていいので!」
リッカ「すみません、私達失礼します!」
エイリークとリッカは急いで水が吹き出している場所に向かって走っていった
男の人「お、おーい、今砂浜は進入禁止だぞー!」
エイリーク「大丈夫だからー!」
男の人「大丈夫って.....なにがだよ」
砂浜
大量の水が吹き出した場所では
ロード「げえほっ!!ごほ!!ごほ!!」
ソール「はー....はー.....」
ニード「死ぬかと思った.....ぜぇ....ぜえ」
ナイン「いやー、キツかったねー」
僕達四人とも地面に転がってなんとか息を吸っていた。大雨のように降ってくる塩水が今はまったく気にならない。とにかく息をしないと苦しい
ニード「お前は....はぁ....もっと、苦しがれよ」
ソール「あの.....魔物は?」
ロード「なんか.....気配がなくなった。どこに行ったんだ」
ようやく吹き出す水がなくなった時
リッカ「エイリークさん、皆いましたよ!」
エイリーク「本当だ!おーい、大丈夫ー!?」
ナイン「エイリーク、リッカちゃん!」
エイリーク「凄い事になってるね、どうなってんの?」
リッカ「この雨みたいなの、なんなんですか?」
ソール「中に魔物がいて、その魔物が海を干上がらせてた原因なんですけど、水を思いっきり吐き出されて押し流されてきたんです」
ロード「この水は全部そいつが出した水だ。倒せてねえからこの近くにいるかもしれない、気をつけろよ」
エイリーク「魔物?............何色?」
エイリークが周りをキョロキョロとした後、もう一度こっちに顔を向けた
ナイン「オレンジ色だったよ。ニードと同じ色の水着のやつ」
エイリーク「やっぱり。もしかして、ニードのおしりの下にいるそれで合ってる?」
エイリークが指さす先を全員で見ると
魔物「キュ.....」
ニードのおしりの下で伸びた姿のあの魔物がいた。しかし
全員「ちっちゃ!!」
さっきまで僕達の2倍はありそうな大きさだったのが、今は指1本で摘まめるくらいの小ささになっている
ニード「な、なんなんだよ.....この風船みたいな魔物は」
ロード「風船......そういう事か。こいつ、あの尻尾で体内に水を溜め込む性質があるんだな!今こいつはありったけの海水を使ったから萎んで、本来の姿になったってわけだな!」
ソール「なるほど。あの姿は海水で膨らんだ姿だったんですね。で、これが本当の姿と」
リッカ「ソールさんもロードさんも怪我してる。この魔物、強かったんですか?」
ニード「強かったぜ。殺されるかと思った」
エイリーク「そうなんだ。今はそう見えないけど」
ナイン「とりあえず、それどうする?ニード倒しちゃう?」
ニード「え、俺が?」
ナイン「一応動き止めたのニードみたいだし?」
ニード「知らないうちに敷いてただけなんだが」
ソール「まあこの姿だと感じないですけど、やはりあの姿の戦闘力は馬鹿になりませんので倒してしまいましょう」
ニード「わかった。えい」
ぷち
魔物「ど.....」
しゅうん
ニードが指に力を入れて潰すとそのまま魔物は煙となって消えた
エイリーク「おめでとう、ニード!強い魔物やっつけたよ!」
リッカ「凄いよ、ニード!」
ニード「なんか......複雑だ」
その後、ビーネさんの家
ビーネ「なるほど!あの間欠泉のようなものはそんな魔物の仕業だったか!盗られた海水はあの吹き出した水で戻ってきているようだし、しばらくすれば元通りになるだろう。調査だけでなく解決までしてもらうとはかたじけない!ありがとう、ナイン達!」
ビーネさんは勢いよく頭を下げてくれた
ビーネ「さて!まずは礼をしないといけないな。まずこれが調査を達成してくれた礼だな。依頼書にも書いてあった通りだ」
ビーネさんの手には大きな三又の槍がある
ビーネ「この街で漁師達が使う槍を更に戦闘用に改良したやつだ。グラコスのやりという。よければ使ってほしい」
ナイン「エイリーク、槍だって」
エイリーク「私使えるし、ちょうどいいわね!ありがとう、ビーネさん!」
ビーネ「それならばよかった。そして解決してくれたお礼として、なにぶん用意はしていなかったのでな。大したものは用意できなかったが、これでも構わぬか?」
ビーネさんはチケットを渡してくれた
ナイン「これは?」
ビーネ「ここにあるリゾートホテルの宿泊券となる。私の書き込みもあるので、それをホテルに出すだけで最高級の待遇をしてくれると約束しよう」
ソール「ここのリゾートホテル!?」
ロード「マジかよ、おっさん!!そんな事していいのか!?」
ビーネ「もちろんだとも!むしろ、これしか用意できなかったのが非常に申し訳ないくらいだ」
ニード「そんなにすげえのか?」
リッカ「どうなんだろ」
ロード「ここのリゾートホテルはな、所謂貴族御用達の場所で、俺達には縁のないような場所なんだぞ」
ソール「前にセントシュタインの王様達も利用したと聞いていますよ」
ナイン「あ、フィオーネさんも来た事あるんだー」
ソール「ナインさん、フィオーネ姫様です!!」
ニード「マジかよ!!!え、いいのか!!」
リッカ「え、えええ!!!私、そんな、どうしよう。ドレスなんて持ってないよ」
ビーネ「はっはっは!そんなものはいらぬぞ。貴族や王様達も潮風でやられる事をわかっているから、そういうのは着てこない。その格好で大丈夫だ。なにより私の指示だ、誰も文句は言うまい」
ニード「おっさんかっけえ!!ありがとな!」
エイリーク「なんか、すごい事になってきたね」
ナイン「ねー、なんだかとってもこの街を満喫してるみたい」
ビーネ「ナインの言う通り!救世主のお主達にはぜひとも心ゆくまでこのブールシーを満喫していってほしい!」
サンディ「ふう.....やっぱり海ってサイコーよね」
サンディは一人で専用の白い椅子と机とビーチパラソルの下で優雅に南国ジュースを飲んでいた
サンディ「海ってアタシにマジでピッタリジャネ?もー一心同体ってカンジ?ヤバ、ウケるんですケド」
サンディの声も波の音がかき消していく
サンディ「ってゆーか、リッカとニードがいるせいでアタシ出るに出れないんですケド。人も多いしサ、まあ自由になれるから別に構わないケド、やっぱり話し相手がほしいのよね」
チラっと周りを見ても誰もいない
サンディ「........あーあ、つまんないの。早く誰か来てくれないかなー」
サンディ「なんか話すのが当たり前みたいになってて、一人ってのが久しぶりなカンジ。ずっとそうだったハズなのになー、アタシどうしちゃったんだろ」
サンディ「ま!たまにはそういうのもイイよね!」