カラコタ橋
大きな川を横断出来るように石でできた頑丈な橋。その周りには放浪者や盗賊などのならず者達が拠点や寝床としており、世界で一番治安の悪い場所として有名。恫喝や盗みなどの犯罪が日常茶飯事であり、通る旅人達への被害も相次いでいる
橋の近くにやってくると、独特な匂いとともにピリピリとした空気が全体から感じ取れた
ナイン「ここがカチコチ橋か」
ロード「カラコタ橋な。固めんな」
エイリーク「なんかくさーい。あまり綺麗じゃなさそう」
ソール「.....見られてる雰囲気を感じますね。警戒されてるんでしょうか」
ロード「品定めだよ。カモかどうかってな」
ナイン「で、ロードの用事ってのは?」
ロード「おー。とりあえず.......あ?」
ロードが周りをキョロキョロとすると、前の方を見て止まった
ナイン「ん?」
全員で前の方を見るとこちらに歩いてくる青白い女の人の幽霊がいた
ロード「また幽霊、か?」
エイリーク「えー、こんな所で?なんか怖いかも」
女の幽霊は橋の上から周りを探すようにキョロキョロと見渡している
サンディ「ねー、ナイン。あの幽霊、もしかして峠の道で会った時のアイツじゃね?」
ナイン「あ、確かに」
???「.......いない。この町にも」
女の幽霊はそう言った後、僕達に気づいた
???「もしかして.....」
そう言って僕達に近づいてきた
エイリーク「え!待って待って!無理かも!」
ソール「おっと!エイリークさん、そんな強く掴まないで!痛いですから!」
ロード「な、なんだよ....」
女の幽霊は驚くソール達を無視して僕の顔を覗き込んだ
ナイン「な、なんだろう.....あのー」
???「......違う、違うわ。どうかしてる、旅人を天使と見間違えるなんて」
ナイン「!?」
女の幽霊は残念そうにしながらそのまま去っていった
エイリーク「なんだったのー?」
ソール「天使....?」
ロード「.......変な女」
サンディ「相変わらず暗そーよね。まあいいわ、ロード、とりあえず用事済ませちゃってよね」
ロード「そう、だな。用事ってのは会いたいやつがいるんだ。そいつは.....お?」
ロードが話す途中で僕の後ろから駆けてくる人の気配がした
さっと僕の横をフードを深く被った少年が走り去っていく
???「貰ってくぜー!」
少年の手には僕の腰に付けていたナイフが入ったナイフホルダーが握られていた
ナイン「あ!」
ロード「やれやれ」
ゲシッ
???「わあ!!」
ドサァ!
ソール達の横を走っていく少年にロードが足を引っ掛けて転ばせた。少年は転んでしまい、持っていた僕のナイフホルダーを落としてフードも取れてしまった。少し短めのあまり整えられてない深緑の髪色に青の瞳の少年だ
???「なにすんだよー!」
ロード「まったく.....。やるならもっとスピーディにやれよ、アサ。得物に気を奪われすぎだ」
ロードは少し呆れた顔でその少年の名前を呼んだ。知り合い?
アサ「え.....。ええ!?に、兄ちゃん!!」
四人「兄ちゃん!!?」
アサと呼ばれた少年がロードを兄ちゃんと言い、思わず僕達全員がロードを見た
ロード「言いてえ事はわかるがちょっと待ってな」
ロードはそのまま転んだままのアサ君に近寄っていく
ロード「はぁ.....。アサ!!誰彼構わずこういう盗みはすんなって昔から言ってるだろうが!!!」
ロードはアサ君の首に腕を回して思いっきり締め上げている。アサ君が凄く苦しそうな顔をしている
アサ「ぐぎぎぎ.....ごめ、ごめ.....ん、にいちゃ.......。ぐるじぃ....ギブ、ギブ!」
アサ君も必死にロードの腕をタップしている
ロード「大体こんなナイフじゃなくてもっといいもん狙いやがれ!こんなん取ったって大した事ねえんだからよ!!しかもそれに浮かれやがって!俺はそんな風に教えた覚えはねえ!!」
アサ「ごめ.......にいちゃ、もう.....む......り」
ジタバタとしていたアサ君がプツリと切れたようにだらんと抵抗しなくなった
ロード「ふぅ.....仕置き完了っと」
ソール「随分と手荒なお仕置ですね....」
サンディ「どーゆー事?ロード、この子は一体なんなの?」
ロード「弟が悪かったな。まずはほら、これ」
ロードは落ちていたナイフホルダーを渡してくれた
ロード「こいつはアサ。俺の実の弟だ」
気絶しているアサ君の首根っこを持ってこちらに向けているが、白目をむいているせいで似ているようには感じない
エイリーク「へー、ロードってお兄ちゃんだったんだ。結構歳離れてるの?」
ロード「まあな、アサは13歳。まだまだ手のかかるガキなんだ」
ソール「アサさん、ですか。ロードさんと同じ盗賊なんですね」
ロード「.....ま、まあな。あんまりやってほしくはないんだが、こんな場所で生きてるからな。どうしてもこういう風にしかなれねえんだ。とりあえず、用事があんのはこいつだったんだ。本人からやってきてくれて手間が省けたぜ」
ナイン「気絶しちゃったけど」
ロード「.........まあ、仕方ねえな。とりあえず俺達の家に来いよ。少し話すからよ。あ、狭くて汚ねえけど気にしないでくれ」
ナイン「うん、全然大丈夫」
サンディ「まあこんな場所だしね。綺麗な場所は期待してないわ」
ロードに案内されて橋の下へやってきた。そこではいろんな人達がジロジロとこちらを見ているが、ロードが一睨みするだけでそそくさと去っていった
エイリーク「わ、一気にいなくなった」
ソール「おー。不快な視線もなくなりました。流石ロードさん」
ナイン「なんかここの偉い人みたいだねー」
ロード「まあちょっと前まではここにいたが、その頃から俺が一番強かったからな。俺がいれば誰も手出しはできないってわかってんだ。アサにも俺がバックにいるから迂闊に手出しは出来ねえんだぜ」
サンディ「でもロードは冒険者で、もうあちこち旅してたんでしょ?アサをこんな所に置いてけぼりでいいワケ?」
ロード「それはまあ.......いろいろあんだよ。俺だって出来るならアサをもっといい環境においておきたいが、そうもいかねえからよ」
アサ君の家
橋の下の隅にあるアサ君の家。少し大きな藁葺と木を組み合わせた家のような中に、同じく藁葺と木を組み合わせたベッドと囲炉裏がある程度だ
ロード「狭くて悪いな」
ソール「大丈夫ですよ」
アサ「うーん.....」
ロード「おい、アサ。いつまで寝たフリしてんだ。とっとと立て」
ロードはアサ君の体を軽く蹴った
アサ「いた!ちょっと兄ちゃん!!弟に対して扱いが雑なんじゃないの!突然帰ってくるしさ!」
ロード「うっせえ、家まで運んでやったんだ、感謝しろ」
アサ「ふーんだ!......あ、そういえばここの人達って?なんか兄ちゃんと一緒にいたけど」
ロード「俺の仲間だよ。こいつらと今旅してんだ」
アサ「兄ちゃんに仲間!?うそ!!あの一人ぼっち大好き兄ちゃんが!!?」
ロード「おーおー、随分と誤解されるように言ってくれるじゃねえか、アサ。いい覚悟だ!!」
アサ「ぎゃああああ!!ごめんなさい!!!」
またロードとアサ君で暴れ始めたのを僕達は少し苦笑いしながら見ていた
ソール「あははは....ロードさんの手が出るのは元からだったんですね」
エイリーク「アサ君元気で可愛いねー」
ナイン「ちょっとロードに似てるね、髪とか目とか」
サンディ「まだアサの方が可愛げあるわよね。ロードは悪人面って感じだしー」
ロード「誰が悪人面だ、ギャル妖精!」
アサ「いてて.....よ、妖精?兄ちゃん、何言ってんの?」
ロード「あ?お前には見えねえのか?」
アサ「何が?旅人さん達なら三人でしょ?」
ロード「ほら、ここに」
ロードはサンディのいる場所を指さすが、アサ君は首を傾げている
サンディ「アタシは普通の人には見えないからね」
ロード「は?.......そう、なのか。まあいいや」
アサ「じゃあ、兄ちゃん。この人達紹介してよ」
ロード「俺かよ。あー......お前らやっとけ」
ナイン「僕はナイン、ロードと一緒に冒険者やらせてもらってるんだ。よろしくね、アサ君」
ソール「俺はソールです。お兄さんにはいつもお世話になってます。アサ君、よろしくお願いします」
エイリーク「私はエイリーク!アサ君、お腹すいてない?よかったら私がなんか作ってあげよっか」
アサ「マジで!?うん、俺腹減った!!なんか食いたい!」
エイリーク「可愛いー!もちろん!お姉さんに任せといて!」
エイリークはゴソゴソと用意を始めた
アサ「ナインとソールとエイリークな。よし、覚えた!」
ロード「さんを付けろ、アサ。仮にも歳上だぞ」
アサ「えー、一々細かいよ、兄ちゃん。そんなんだと将来ハゲるぜ?ピカーンって!」
アサ君はニコニコしながら頭に両手を当てて手を開いて光るような表現をした
ロード「あぁん?」
ロードが物凄い顔で睨みつけている。僕も怖い
アサ「ひっ!」
笑顔から一気に青ざめたアサ君は近くにいたエイリークに抱きついた
エイリーク「わあ!どうしたの?アサ君。.....あ!ロード!またそんな怖い顔して!!アサ君怖がってるじゃない!!」
アサ「えーん、エイリークさん、兄ちゃんが怖いよー」
エイリーク「ほら!!凶暴なお兄ちゃんで大変だよねー、アサ君。お姉さんの所なら安心していいからね。ロードなんてボコボコにしてあげるから」
アサ「え、ボコ....。う、うん!ありがとう、エイリークさん!」
アサ君がぎゅっとエイリークを抱きしめた。エイリークも嬉しそうにしている
しかし、僕達からはニヤニヤとした顔のアサ君がロードを嘲笑うように見ていた
ロード「.......あんの、クソガキ......さっき散々殴ったのにまだ足りねえみてえだなあ......」
ナイン「あははは.....」
ソール「まあこれもある意味仲がいいというんでしょうが....」
ピキピキと青筋がたちまくっているロードを見て僕とソールは苦笑いしていた
サンディ「ヤレヤレって感じなんですケド」
ソール「ロードさん、お兄さんだったんですね。納得です」
ロード「納得?」
ソール「面倒見よかったですからね。アサさんで慣れてたんですね」
ロード「別に面倒見なんかよくねえよ。アサは....大事な弟だからな。俺が守ってやらねえと」
ソール「そうですね。でも、これまでも一人でここにいたって事はある程度戦えるんですか?」
ロード「最低限はな。どっちかと言うと戦闘よりかは逃げの方の技を覚えさせてる。ガキの力なんてたかが知れてるからな、人からも魔物からも逃げられるようにしてる」
ソール「なるほど。あの盗みは?」
ロード「あれは......一応生きる術の一つとして教えた。ただ、あまりやるなとは言ったし、狙うなら金持ちか意地汚そうなやつを狙えって言ったんだが.....まだそこまで判別はつかねえって所だな」
ソール「まあそこは難しいですよね。じゃあロードさんはカラコタ橋出身だったんですね」
ロード「.........なんだよ、悪いか?」
ソール「いえいえ。ロードさんってあまり自身の事話されないじゃないですか。少しでも知れてよかったですよ」
ロード「別に.....そんなつもりはなかったんだ。最初こそあれだったが、今はある程度お前らを信用してるからな」
ソール「ありがとうございます」