次の日の昼
ナイン「ロードー」
ベッドでゴロンとしながら、短剣を触っているロードに声をかけた
ロード「なんだよ、ナイン」
ロードは軽く視線をこちらにやってすぐに短剣に戻した
ナイン「えへへへ」
ロード「......そんなに名前呼ばれんのが嬉しいかよ。ちょっと怖えぞ」
ソール「ずっとロードさんに名前呼ばれたがってますよね、ナインさん」
ロードとソールは少し苦笑いしている
エイリーク「ナイン可愛い。クソガキなんて呼んでたからだよ、ロード」
ロード「.....クソガキなのは別に間違ってねえだろ」
ナイン「だってロードに名前呼ばれたのって、最初の財布盗まれた時と、ジャダーマの時くらいだったから」
ロード「........マジか。こいつ、数えてたのかよ」
ソール「全然わからなかった。ナインさん、よく知ってますね」
エイリーク「ナインすごーい、記憶力いいんだ」
ソールとエイリークは感心したような、ロードは軽く困惑したような顔になった
その時
コンコン
アサ「ナインさん達、俺だよ。アサ。入ってもいい?」
ナイン「あ、アサ君だ。いいよー」
ガチャ
アサ「おはよう、ナインさん達、兄ちゃん!どう?この服綺麗だろ!」
アサ君は昨日着ていたボロボロになった布の服ではなく、白と水色のラインが入った服を着ていた。サスペンダーがついたズボンと小さな付け外し可能な蝶ネクタイがついている。髪も変わってアレンジされており、ボサボサだったのが綺麗に整えられておでこがでており、先端の方で少しウェーブになっていた
エイリーク「えー!アサ君、めちゃくちゃ可愛くなってる!」
ソール「おお、結構変わりましたね。よく似合ってますよ」
ロード「アサか!結構変わるもんだな」
ナイン「ルイーダさんが?」
アサ「そう!ルイーダさんって人がやってくれたの!こうすれば簡単にはバレないだろうって。あの人凄いね、詳しく話してないのに俺が身バレしたくないのわかってたんだぞ」
ナイン「ルイーダさんってそういう所あるよね」
ロード「俺はあの女は少し苦手だ」
アサ「それでね、髪の色とか目の色も変えられるんだけど、どうする?って。俺はどっちでもいいけどね。どうしたらいいかな」
ロード「カラコンにヘアカラーまでやってくれんのか。本当かなわねえな。お願いしてもらえよ。隠れるなら徹底的に隠れた方が安心だからよ」
アサ「わかったー。じゃあそうするね!あと.......ナインさん達、ちょっとこっち来てくれる?」
アサ君はゆっくり部屋の外に手招きしている。全員で向かおうとすると
アサ「あ!兄ちゃんはダメ!ナインさんとソールさんとエイリークさんだけ!」
ロード「あ!?なんでだよ!」
アサ「なんでもだよ!兄ちゃんには秘密の話すんの!あっちいってて!」
アサ君はグイグイとロードを遠ざけようとしている
僕達は少し顔を見合わせている
ロード「ったく......なんなんだよ。悪い、ナイン、ソール、エイリーク。アサに付き合ってやってくれないか?」
アサ「よーし、行こうナインさん達!」
ナイン「わ、わかったよ、アサ君」
ソール「大丈夫ですよ、ロードさん。少しの間荷物お願いします」
エイリーク「いってくるねー」
呆れているロードを部屋に置いてアサ君は僕の手を取って部屋から出ていった
宿屋裏
人気の少ない場所にアサ君はやってきた
ナイン「それで、アサ君。突然どうしたの?」
アサ「まずはさ、昨日の事またお礼言いたくて。本当にありがとね!ナインさん達が来てくれなかったら俺も兄ちゃんもどうなってたか.....。三人は命の恩人だよ!ありがとう!!」
アサ君はまた深々と頭を下げた
ナイン「もういいのに。よかったよ、アサ君もロードも無事で」
ソール「何度もありがとうございます、アサさん。でも、仲間なんですからこれくらい当たり前ですよ」
エイリーク「これからはここでゆっくり安心して働いていこうね」
アサ「うん!本当に助かったよ、またここに来たら俺にも会えるだろうからいつでも来てくれよな!それと、さ.......兄ちゃんの事なんだけど.......いい?」
アサ君は少し言いにくそうにしながらモジモジしている
おそらくこれが本題で、ロードを遠ざけた理由なんだろう
ナイン「いいよ」
アサ「あのね......俺からは深くは言えないし、あまり話せない事なんだけどさ。昔から兄ちゃんって、ずっと俺の事大事にしてくれててさ.......俺の事第一にしてくれてるんだ」
アサ君は下を向いて両手を強く握りしめながら話し始めた。顔は見えないが少し苦しそうだ
ソール「.....はい。それは見ていたらわかりますよ」
アサ「うん。でもね、その分兄ちゃんは、自分の事を疎かにするんだよ。俺のためなら、なんでもやるんだ。暴力とか、暗殺とか......いろいろ......やってきたんだ」
エイリーク「暗殺.......そっか」
アサ「隠してるんだけどね。俺は、兄ちゃんが大好きだけど......俺じゃあ兄ちゃんの心は救えなかったんだ。俺じゃあ足枷にしか.......ならないんだ。兄ちゃん、ずっと苦しそうだったんだ。いつも一人で何処からかお金稼いだり、ボロボロで死にそうになりながら帰ってきた事もあったんだよ......」
ソール「そんなに.....ですか」
アサ「前に兄ちゃんといた人達の事は、兄ちゃんは気まぐれって言ってた。でも、ナインさん達は仲間だって俺に紹介したんだ。兄ちゃんの口から仲間なんて言葉が出てくるなんて思わなくて、俺めちゃくちゃ驚いたよ。
兄ちゃんにとって、初めて仲間と呼べる存在が出来たのかもしれないって。今回のナインさん達の行動や言葉を聞いて確信したよ。兄ちゃん、きっと今がとても楽しいんだよ!兄ちゃんの笑顔とか久しぶりに見たもん!俺にはさせてあげられなかった笑顔を、兄ちゃんはナインさん達にしてた」
僕は頭の中でハイタッチした時のロードの爽やかな笑顔を思い浮かべた。確かにいい笑顔をしていたと思う
アサ「ナインさん達には気を許してるんだと思うの。だからさ、そんなナインさん達を信じて、俺からお願いがあるの」
ナイン「なにかな」
アサ「兄ちゃんには.....俺もだけど.....今回の件以外にも隠してる事がたくさんあるの。もう気付いてるかもしれないけどね。兄ちゃんはずっと隠したままかもしれない。
でも........もし、もしだよ?........もしも、兄ちゃんが秘密を話してくれた時は.............兄ちゃんを嫌いにならないでほしいの。仲間のままでいてあげてほしいの。
その判断を兄ちゃんがするまでに、きっと兄ちゃんはたくさん苦しんだだろうし、傷ついたと思う。そしてその原因は.......俺にあるから。どうか、自分を傷付ける事に慣れちゃった兄ちゃんを......助けてあげて」
途中からアサ君はボロボロと泣きながらもゆっくり話してくれた。身体を震わして涙をこぼすアサ君を三人で抱きしめた
ナイン「大丈夫だよ、アサ君。僕達はロードを嫌いになんかならない」
ソール「そうですよ。ロードさんは俺達が助けてみせます。待っててください」
エイリーク「うんうん.....アサ君もつらかったよね.....お兄ちゃんが苦しんでるのに助けてあげられなくて......。でももう大丈夫だよ、私達がいつか必ずロードもアサ君も、二人が幸せになれるようにするから」
エイリークもアサ君に釣られてボロボロ泣き出していた
アサ「ありがとう......ありがとう......。ぐす......あのね、ナインさん達。いつかこれも、兄ちゃんから言われるかわかる時がやってくるんだけど、ちょっとだけ」
ナイン「どうしたの?」
アサ「前に兄ちゃんと一緒にいた人達には兄ちゃんは、ゾーイって名前だったんだよ」
ナイン「ん?......どういう事?」
ソール「ロードではなく、ですか?」
エイリーク「ふぇ?なになに、どうゆう事?」
アサ「俺からはこれだけ。じゃあ、本当にありがとう!兄ちゃんと仲良くしてね!」
アサ君は走って宿屋に戻っていった
ナイン「.......名前を変えていたって事?」
ソール「もしかして.......ロードも、偽名って事ですか?」
エイリーク「え、うそ........。ん?でもさ、ロードは反応してんだし問題ある?」
ナイン「確かに!問題ないかも!」
ソール「それは.....まあ慣れてるんでしょう。偽名に。でも、だからと言って別に構いませんよね。仲間ですし」
エイリーク「そうそう。きっとアサ君は本名知ってるからびっくりしちゃったんだろうけど、本人が納得してるならいいんじゃない?」
ナイン「そうだね。変わらないままでいっか」
アサ「やっぱりエイリークさんの飯うめー!おかわり!」
エイリーク「ふふふ、ありがとね、アサ君。いっぱい食べて元気になってね!」
ソール「アサさんは好き嫌いないんですか?」
アサ「んー、あんまりないかな。食べられるものはなんでも食べなきゃだしね。毒、もちょっと苦しいけど耐性はあるよ」
エイリーク「毒!?そんなのダメだよ!」
ソール「なんでそんなものを.....。これからはそういうものは食べないでくださいね」
アサ「もちろん!俺だってすすんでそんなの食べたくないもんね。あ!ソールさん、俺もお菓子食べたい!」
ソール「いいですよ、アメとキャラメルどっちがいいですか?」
アサ「キャラメル!口の中幸せになるんだー」
ソール「美味しいですよね、俺も好きですよ」
エイリーク「ソールはこの部屋に来る度に食べてるもんね」
ソール「あはは....甘いものが好きなのでつい」
アサ「俺、チョコも好きだよ。甘いし栄養価も高いし腹もふくれるからあると優先的に食べるぜー」
エイリーク「うんうん、チョコは結構便利だよねー。アサ君、よく知ってたね」
アサ「金持ちの旅人とかが食べてたんだぜ。なんでか聞いたらそう教えてくれたんだ」
ソール「勉強熱心ですね。流石ロードさんの弟」
エイリーク「はい、おかわりどうぞ」
アサ「やったー!エイリークさんサンキュー!」
ソール「がっつかなくて大丈夫ですからね」