その後、宿屋
ロード「おかえり」
ナイン「うん、ただいま」
ソール「お待たせしました」
エイリーク「アサ君はルイーダさんに連れられていったよー」
ロード「そうか。まあ何話してたかは詳しくは知らねえけど、粗方予想はついてる。アサの話はあまり気にしないでくれ」
ナイン「わかった」
ロード「で、この後だが途中になってたビタリ山だな」
ロードは荷物を片付けながら話している
ナイン「あー、そういえばそうだったね。向かおうとしてたんだもんね」
ソール「ふふ、ドタバタしてて途中になってましたもんね」
ロード「放り投げて悪かったな」
ロードは少し申し訳ない感じで頭をかいている
エイリーク「いいのいいの。ロードが気づかなかったらアサ君大変な事になってただろうから、ロードは正解だよ」
ロード「そう言ってくれると助かるぜ、エイリーク」
ロードは荷物が入った小さい袋を持ち上げた。すると
ビリッ
カラン
袋が破けて中から短剣が落ちてきた
ロード「げ、破けた」
ナイン「ありゃ。よいしょ」
何気なく近くにいた僕が短剣を拾おうと手を伸ばして、短剣に触れた瞬間
キィィン
集中した訳でもないのに、突然脳内にあの甲高い音が強く響き渡る
ナイン「(あ、これ....まずい)」
僕の意志と関係なく頭の中に映像が流れてきた
ドサァ
四人「!?」
僕は突然意識を失って倒れた
映像が流れてくる。どこかはわからないが、小さな子どもとその子どもを守るようにしている子どもが見えてきた
これは......小さなアサ君と、もしかして、ロードなのかな
子アサ「兄ちゃん.....俺、おなかすいた」
子ロード「ごめんな、アサ。兄ちゃんの分じゃ足りねえよな。............仕方ない、か」
子どものアサ君を抱きしめていたロードは、アサ君から離れるとこの短剣を強く握りしめた
子ロード「アサ、兄ちゃん頑張ってくるな。お金も、食べ物も、住む場所もなんでも取ってきてやる。だから、お前はここで暮らしてるんだぞ」
子アサ「え?や、やだよ!俺、兄ちゃんがそばにいてほしい!一人ぼっちは......もう嫌だよぅ.....」
アサ君が泣きそうになりながらロードに抱きついた
子ロード「アサ.......。俺もこのままずっとここで暮らしていたい。でも、それだと俺達はしんじまう。もうしぬような思いはしたくないだろ?それにアサ、何度も言ってるだろ?お前には兄ちゃんがいる。無敵で、最強で、頼りになる兄ちゃんだ。離れてても、いつだって俺はアサの味方だ。大事な弟なんだからな」
子アサ「ぐすっ.....うん。でも、兄ちゃん.......あそこには行かないで。兄ちゃん、またあそこに行ったら、本当に兄ちゃんしんじゃうよ」
子ロード「...........約束する。アサ、お前は俺が守る」
ロードはアサ君をもう一度強く抱きしめると、背中を向けて去っていった
歩くロードの目は、何かの覚悟が決まっているかのように鋭く、強く、つらく光っていた。強く握りしめたこの短剣に、わずかにロードの手から流れた血がついた。かすかに、ロードの手の震えも伝わってくる
ロードは、どこに向かっていったんだろう
???「.....ぃ、....ょぅ、か!ナイン!!」
誰かの声と揺さぶられる気配で目を覚ます。宿屋の部屋の天井だ
ロード「ナイン!!」
ナイン「あ......ロード」
ベッドに寝かされており、横にはロードとソールとエイリークとサンディがいた
ソール「よかった!目を覚ましましたね」
エイリーク「大丈夫なの、ナイン!どっか痛い?」
ロード「お前、急にぶっ倒れたんだぞ。何があった」
サンディ「チョー心配したんですケド!大丈夫なワケ?」
全員、僕を心配そうに見つめてくる。心配された事なんてあんまりなかったから少し新鮮に感じた。四人とも本当に優しいよね
ナイン「ごめんね、多分もう大丈夫」
僕がベッドから立とうとすると
ソール「いきなり動かない方がいいですよ、ナインさん。今日はこのままここでお休みする事にしたので、ゆっくり休みましょう」
ナイン「え、でも、ビタリ山にって」
エイリーク「ナインがこんなんなのに行けないよ!ナインの体調が優先!」
ロード「そういうこった。お前、昔からこうなのか?前も言ったが、丈夫なのか知らねえけど、急にこんな事されるとこっちはヒヤヒヤするんだ。あんまり無茶ばっかりすんなよ。ガキなんだから、もっと休め」
サンディ「あのサ、ナイン。ロードの短剣に触れた時だったでしょ?倒れたの。アタシの勝手な想像だったらワルイケド、倒れたのってあの力が原因?」
ソール「確かに.....あの力、便利ですが制限もありましたもんね。使いすぎはよくないとか、あるんですか?」
エイリーク「そうだ!その力ってのについて聞きたかったの!何なの?」
ロード「力?おい、何の話だよ」
ソール「エイリークさんとロードさんは知らないですよね。ナインさん、お二人にお話してもいいですか?」
ナイン「うん。二人には黙っててごめんね。僕、実は特殊な力を持ってるんだ」
エイリーク「幽霊が見えるとかじゃなくて?」
ロード「.......そういや、俺達はナインの事、知ってるようであまり知らないよな。年齢は別にいいとして、その力?ってのもそうだし、今まで何してたのかも知らない。なんで冒険者になったのかも知らない。夢、も持ってないみたいだったし.....。話せないなら構わねえが、聞いてもいいか?ナインの事。俺は、お前の事を知りたい。教えてくれ」
ソール「そうですね。ナインさん、もちろん無理やりではないので。話したいところだけ話してもらえると俺達はとっても嬉しいです」
エイリーク「私も気になるなー。皆でさ、お互いの事お喋りしよ?ナインだけってのはよくないもん。私もいろいろ教えるし、たまにはゆっくりお話するだけなのもいいよね、もっと仲良くなれそう!」
サンディ「........どーする?ナイン」
ナイン「大丈夫だよ、サンディ。ソールやロードやエイリークなら、きっと大丈夫。三人とも優しいから」
サンディ「優しいのはとっくにわかってるっての。どこまで話すか、よ。アタシも三人にずっと聞きたかった事あるしね」
ロード「サンディもか。というか、俺達になんだな」
サンディ「まあね。うやむやにしてても、なんかビミョーだしこの際スパッと聞いちゃおうかな。まあ、まずはナインの力の話が先ね」
ナイン「うん。あのね」
僕は触れた物の過去や未来が見える力を話した
ロード「すげえな、おい。そんなん聞いた事ねえな」
エイリーク「ナインすごーい!なんかあれだね、物なくした時とか役立ちそう!」
ソール「で.....制限とかは?」
ナイン「もちろんあるよ。そもそも、最初はこの力、僕も使いこなせなかったんだ。この力のトリガーは触れる事。そんなの日常でどうしたって起こるからね。その度に膨大な量の過去や未来の情報に頭がパンクして、今みたいに倒れたり大暴れした時もあったよ。
そこをゆっくりゆっくり、集中していくことで力の制御とみたい情報だけに特定するようになったんだ。ただし、一日に5回使うと集中力が持たなくて倒れたりって感じだね。寝たりすると治るけど、連続で使うのも危ないかな」
サンディ「回数制限ってワケね。あんた、なんでそんな大事な事最初に話さないワケ!?それ一番知りたい事なんですケド!」
ナイン「ご、ごめんね....」
ロード「.....話はわかった。だが、それだとおかしくないか?なんで今発動したんだよ」
エイリーク「5回なら、昨日の夜にロードの行方追うのに使った1回入れても余裕だよね」
ソール「そうですね。ロードさんの短剣拾うのにそんなに集中したんですか?」
ナイン「それがね、僕もわかんないんだ。何気なく触れば大丈夫なのに、なぜか勝手に発動しちゃったんだ。僕の意思でコントロール出来るようになったと思ってたんだけどなー」
サンディ「なるほど。ロードの短剣からはなんか見えた?」
ナイン「あ、うん。見えたよ。過去、かな。小さなアサ君とロードが見えた。アサ君をどこかに置いて、ロードがお金とかを稼ぎに行くってどこかに行く所だった」
ロード「......あー、もしかして7年くらい前の、初めてカラコタ橋にアサを置いてった時か?」
ナイン「なのかな?アサ君もまだ小さかったし、離れたくないってロードに泣いて抱きついてた」
ロード「じゃあそれだな。なんか、勝手に過去覗かれんの怖えな」
ナイン「あ!ご、ごめんね?別に見たかった訳じゃないんだ」
ロード「いーよ、ナインが悪いんじゃねえからよ」
サンディ「結局倒れた原因なわからずじまいってワケね。後はなんかある?ナイン。他にこんな事あったみたいな。あんたあまりそういう事喋らないんだから今のうちにとっとと吐いちゃいなさい」
ナイン「そう言われても.....。あー.....なんか、最近。ジャダーマの時とかかな。集中してこの力使うと、頭の中に甲高い音がするんだけど、ジャダーマの気絶した時も甲高い音が鳴ったんだよね」
四人「!!」
僕がそう言うと、四人の顔が強ばった
ソール「あの姿、ですか」
ロード「おいおい、その力ってのは本当にいいもんなのか?」
エイリーク「あの時のナイン、ちょっと怖かったよ。知らない人みたいでさ」
サンディ「アレマジでビビったんだから!それについても何もわかんないワケ?」
ナイン「うん。あんな事なった事なくてさ」
サンディ「あんたが一番謎だらけじゃない。ちょっと不安なんですケド」
ロード「とりあえず、力関係はわかった。後はどうだ?俺が気になるところだと......お前の正体とか」
ナイン「っ!?」
サンディ「!!」
ロードのその言葉に全身から冷や汗が出たようにゾクリとした。サンディも驚いて口を開けてロードを見ている。バレていた、のか?
ソール「正体?」
エイリーク「?」
ロード「..........なーんてな」
ナイン「え?」
ロード「なんだっていいぜ、別に。俺との出会いこそあれだったから最初は警戒してたが、もうお前がめちゃくちゃお人好しでバカでいいやつなのはわかってんだ。おかげでアサも助けてもらったしな。ナインがなんだろうと、俺はナインを信じるぜ。仲間、だろ?」
ナイン「ロード......。うん!仲間、だもんね」
サンディ「ちょ、ちょっと、ロード!めっちゃビックリしたからやめてくれる?」
ナイン「あのね、ソール、ロード、エイリーク。黙っててごめん。僕、人間じゃなくて天使なんだ」
サンディ「な!?」
ソール「え」
エイリーク「天使?」
ロード「やっぱりな」
ナイン「そう、天使。聞いた事はあるかな」
サンディ「ナナナ、ナイン!!?あんた、バカ!!!なんで話してんのよ!!」
ナイン「仲間だもん、やっぱり隠してるのはよくないかなって」
サンディ「だからってヤバいって!」
ロード「サンディ、俺は薄々気づいてたぜ。こいつ、人間じゃねえなって」
サンディ「え、うそ.....」
ソール「えええ!?ナインさん、人間じゃないんですか!?」
エイリーク「うっそー!?どこからどう見ても人間だけど!天使って、翼とか輪っかとかあるんじゃないの?」
ナイン「そこも話すね。実は」
僕はソール達に天使界から落ちて羽や輪っかを失った事を話した。天使の時から既にこの力はあった事やいじめられていた事も話した
ナイン「って感じで、天使っぽくはなくなったけど......まだ、天使ではあるみたいなんだ」
サンディ「やっぱり何度聞いてもそのイジメとかの話ムカつくんですケド。やっぱり天使って性格ワルイのヨネー、アタシきらーい」
ソール「イジメ、ですか。俺と似てますね、ナインさん」
ナイン「ね。だからソールのあの時の環境にとても見覚えがあったから、助けになりたくて。だから思わず声かけちゃったんだ」
サンディ「一応こんな事言うのもアレだけど、天使だから人間よりもずーっと寿命長いのよ。ナインもこんな顔してるケド、ざっと100年以上生きてんじゃない?何年イジメられてたのよ」
三人「100年!?」
三人が揃って驚いた顔で僕を見た
ナイン「あははは....まあ天使の中でも若い方だから。イジメられてたのはこの力があるって気づいてからだから......80年くらいじゃない?」
ロード「軽く言ってるが、80年そのイジメが続いてんのか.....。人間からしたら生き地獄だぞ」
ソール「俺よりずっとつらいってこんなの.....!」
エイリーク「ナイン!!ずっとお姉ちゃんが守ってあげるからね!!」
なぜかソールとエイリークに頭を撫でられている。嬉しいけど、三人とも複雑な顔をしている。どうしたんだろうな
サンディ「なんかフツーに受け入れられててよかったケドさ!あんまり突然話すのもヨクないと思うのヨネ!」
ナイン「そうだけどさー。三人を信じてるから」
ソール「おいそれと話せない内容なのはわかってましたが、想像よりずっと凄い所からきましたね」
ロード「そうは考えないよな」
エイリーク「天使なんて本でしか聞いた事なかったから、あまり実感わかないけどね」
サンディ「三人とも中々懐デカイわよねー」
ソール「それにしても、サンディさんはナインさんの事結構知ってますよね。一緒にいた時間長いんですか?」
ナイン「そうでもないよね。ウォルロ村で初めて出会ったから、時間としてはソールとそんな変わんないよ」
サンディ「まーね。アタシはほら、天使とかも知ってるし、ナインが天使なのを知って接触したから、ソール達とはちょっと出会いが違っただけ。既に羽根も輪っかもないからチョー疑ってたケド」
ロード「まー、天使にあるはずのもんがないと天使とは思えねえよな」
エイリーク「ナインは天使の姿に戻らなくていいの?」
ナイン「うーん、そこまで困ってないからね。僕は、今が一番楽だよ。ソールやロードやエイリークやサンディがいてくれる今が好き」