ロード「じゃあ、ここには昔本当にブルー村ってのがあったんだな」
サンディ「ってゆー事はさ、今アタシ達が見てた村がブルー村なのはわかったけど、あのヤバすぎる人間達と火はなんだったワケ?」
シェリー「順を追って説明いたしますね。お分かりの通り、皆様が見てた神木様のある村がブルー村です。ですが、今見ていたブルー村はもう100年以上も前の姿なのです。100年以上前に、あの男達によってブルー村は焼き尽くされました」
ソール「そんな.....」
エイリーク「許せない....あんなに綺麗だったのに」
ソールとエイリークは睨むような顔で手を強く握りしめている
ナイン「シェリーさんはどうなったの?」
シェリー「あれは私が人間に化けていただけなのです。あの時には既にもう誰もこの村にはいませんでした。私のみ咲いていたのです。あの炎で私も燃え尽きたかと思ったのですが、奇跡的に微かに生き延びたのです。こちらをご覧ください」
シェリーさんが横にズレると、そこには黒くなった小さい焼けた木の幹だったような物があった。大きい木片と言っても差し支えないその姿にあの時の巨大樹とは思えず言葉を失ってしまう
ロード「.....こんな、小さくなっちまったのか。こんなん、少しでも蹴ったら折れちまいそうだぞ」
シェリー「はい、そうです。強い衝撃がくればきっとその時はもう.....。私は絶望しました。村の人間達に祀られ、私の咲かせた花達を見て笑ってくれて、楽しそうに過ごしてくれて......それだけで、私は嬉しかったのに。どうして......どうしてこんな目にあわなければいけないのかと」
シェリーさんは木の姿の体を震わせて悲しそうな目をしている
ソール「シェリーさん......」
シェリー「人間達に笑顔でいてほしい。そんな思いがいつの日か、私をこんな姿にした人間達を許せない心が生まれてしまったのです。その心のせいで、私は......こんなに醜い魔の物となってしまいました」
エイリーク「それは.....シェリーさんは悪くないから」
シェリー「それでも善の心の私は、諦められなかったのです。こんな姿になっても、例えもう二度とあの花を咲かせられなくても、人間達をまた笑顔にする事ができると。そのために何年も何年も......暑い夏も、寒い冬も.....魔物から隠れるようにひっそりと......ずっと力を貯め続けたのです。気づけば約100年。そうした結果、私は幻を見せる力を獲得したのです」
ナイン「幻惑魔法ってのが確かあったよね」
ロード「マヌーサだろ。これはあんなちゃっちいものなんかじゃねえよ。幻なんて言ってるが、幻にしてはあまりにもはっきりしすぎてた。記憶を見せた、そう表現した方がいいくらいには凄いやつだったぜ」
サンディ「シェリーはなんでそこまで人間に笑顔でいてもらいたかったワケ?あんな酷い事されたってのにさ」
シェリー「......ブルー村に、とあるお爺様がいました。ブルー村の最後の住人でした。そのお爺様は毎日私にお話してくださいました。おかげで私は寂しくありませんでした。私はそのお爺様からとある物をいただいたのです」
エイリーク「とある物?」
シェリー「名前です。お爺様から私に、シェリーという名前をいただいたのです。意味は"幸せ"」
ソール「シェリーさんの名付け親だったんですか。幸せ.....いい意味ですね」
シェリー「お爺様は私にこう言ってくれました。
[シェリー、お主の美しさは全ての人間を幸せにする事ができるじゃろう。だから、わしがいなくなっても、人間達にお主の素晴らしい花を見せて幸せを運んでやってくれ]と。
なので、私は諦められなかったのです。お爺様からいただいた名前に恥じない私でありたいと、そう思ったのです」
ナイン「.......凄いね、シェリーさん。つらかったのに、苦しかったのに、よく諦めずに......」
シェリー「うふふ、桜は我慢強いんです」
ロード「なんで、俺達だったんだ?その幻の力を、なんで俺達に?」
シェリー「........どうしてでしょう。私にもわかりません。ただ.....」
シェリーさんは僕を見た
シェリー「きっとこの人間達ならと、そう思ったのです。あなた達から強く優しい心を感じ取った気がするのです。そして.....」
シェリーさんは今度はソール達を見た
シェリー「私は間違ってなかった。皆様とても優しい素晴らしい方でした。特にソール様、あなたが言ってくれた言葉に私はとても感動いたしました。幻とはいえ、あんなに褒めていただけるのがとても久しぶりで嬉しくて.....。本当にありがとうございました。本物がこんなので申し訳ありませんでした」
ソール「こんなのなんかじゃないですよ。シェリーさん、あなたは今でも美しいです。あの姿でなくなっても、心はあの時と同じくらい.....いえ、あの時以上に輝いています。俺、あなたのその強い覚悟とひたむきな優しさに感動しました」
ソールはシェリーさんの細い木の腕を取って跪いた
シェリー「......ソール様....そんな、よしてください。私.....魔物ですよ?もう桜だって咲かせられない。神木だなんて.....誰からももう思われない。ブルー村も、誰ももう覚えていない。私は......過去に執着しているだけ」
シェリーさんの木の顔から涙がこぼれた
ソール「俺が.....俺達が覚えています。今、シェリーさんが見せてくれた幻を、ブルー村の姿を、あなたの本当の姿を覚えています。一生忘れません」
ナイン「うん!あんな綺麗な立派な桜、初めて見た!僕も絶対忘れないよ!」
ロード「だな。シェリーのその強い心も全部覚えておく。シェリーが俺達に繋いでくれたんだからな」
サンディ「アタシも!それに忘れるワケなくない?だってアタシ達、もうトモダチじゃん」
エイリーク「うんうん!皆で食べた山菜も、シェリーさんもブルー村も、もう私達の大切な思い出。ありがとう、シェリーさん!私、あなたの桜を見れて嬉しかった!」
皆の言葉にシェリーさんの涙が止まらない
シェリー「ううぅ.....うっ....うう.....」
ソール「シェリーさん、人間の笑顔を願うあなたのその気持ちは決して執着なんかじゃありません。人間を"愛する心"なんです。とても大切な心ですよ」
ソールがその言葉をシェリーさんにかけると、シェリーさんの木の体から光が溢れてくる
パキパキ
光が木の幹を割っていく
パリィィン!
木の姿が割れてピンクの光が僕達を包み込む
ソール「ああ!」
目を開けると、焦げたような黒い幹は白く輝く幹に、黒く淀んだような葉っぱは鮮やかなピンクの花になった
シェリー「ありがとうございます、皆様。私の中の魔の心が消えて、本当の姿に戻る事ができました」
エイリーク「凄い、本当にあの桜みたい!」
ロード「よかったじゃねえか」
シェリー「皆様に私の命をかけて、最高の感謝を。見ててください。これが、私の最後の力です」
シェリーさんは自身の黒く小さな木を抱きしめた。すると
ピカッ!
小さな木は眩い光を放ち、みるみるうちに大きくなっていく
全員「な!?」
ナイン「これって....」
ロード「こんな事が.....あんのかよ」
サンディ「うっそ.....チョーヤバすぎなんですケド。感動する〜」
エイリーク「信じられない.....」
ソール「シェリーさん.....」
僕達の頭上にはあの時と同じ....いや、遥かに凌駕するほどの巨大な桜の木がピンクの光を放っている
ビタリ山を覆い尽くすほど高く、美しく、気高く咲き誇るその美しさと輝きに全員が息を飲む
季節外れのもう二度と咲かない奇跡の桜が開花した
サンディ「~♪」
ロード「どうした、サンディ。鼻歌なんか歌って随分ご機嫌じゃねえか」
サンディ「え、わかるー?わかっちゃいますー?」
ロード「うわ、めんどくせ。話すタイミング間違えたわ」
サンディ「ちょっと!露骨にイヤそうにすんなし!まあいいわ、アタシどこが違うかわかる?」
ロード「ちっ、女のそういうのダルいんだよ。俺に振るな」
サンディ「ノリ悪すぎなんですケド。ヤレヤレだっての、ほらこれ!髪飾り!」
ロード「あ?.....ああ、そういやいつもの濃いピンクのやつじゃねえな。それ、桜の花か?」
サンディ「そー!シェリーがね、アタシとエイリークにくれたの!似合わなかったらすみませんとか言って。アタシにかかればなんだって似合うに決まってるでしょ。どう?めちゃカワでしょ」
ロード「おーおー、めちゃカワめちゃカワ。ま、いい雰囲気じゃねえの?俺はいつものより好きだぜ」
サンディ「ふふーん、でしょー?アタシもわりと気に入ったし、しばらくこれ付けてよっかなー」
ロード「ナインとかソールにも見せてこいよ。特にソールなんて喜ぶんじゃねえの?」
サンディ「そうね!あの二人にも自慢してこよ!またね、ロード!」
ロード「おー」