お屋敷前
街の奥にある一際大きな屋敷。町長の家よりも目立つそこには有名なお嬢様が住んでおり、大勢の執事やメイド、門番などがいる。今は旅人や商人も頻繁にここに訪れている
お屋敷前に立っている門番のような男の人に僕は話しかけた
「あの、すいません。ここがお嬢様の家ですか?」
門番の人はまたかといったような顔で答えた
「旅人か?ああ、そうさ。ここは街一番の大金持ち、マキナお嬢様のお屋敷だ」
ロードが門番に声をかける
「俺達、あのでけえ船が欲しいんだ。マキナお嬢様とやらに会わせてくれよ」
「あの船をか。いいだろう、マキナお嬢様に失礼のないようにな」
門番はそう言って門を開けてくれた
「マキナさんに喜んでもらえるといいよね」
エイリークはさっき街でプレゼントとして買った小さな香水を持ちながら笑った
屋敷の中に入ると、綺麗なカーペットや石材の床、綺麗な骨董品やシャンデリアなどが飾られている大きな玄関が広がっていた
「セントシュタイン城みたい。本当にお金持ちなんだなあ」
「そうですね。屋敷も見た目通りかなり広いみたいですね」
僕の言葉にソールも優しく笑いながら二人でキョロキョロとする。隣ではサンディとロードも周りを見渡しながら首を傾げていた
「なんかさ.....広いのはいいんですケド、ちょっとホコリっぽくない?ちゃんと掃除とかされてるワケ?」
「広いし、今は旅人やら人の行き来も激しいだろうにここに誰もいないのは変だよな。というより、なんだか屋敷の大きさに比べて人の気配が少ねえ。あのお嬢様、執事とかメイドはどうしたんだ?」
「確かに。とりあえず、マキナさんの部屋探してみよっか」
ロードの言う通り確かに気配があまり感じられない。違和感を覚えつつも、エイリークが進んでいくのについて行く
しばらく廊下を歩いても執事やメイドどころか、誰ともすれ違わない。僕達の歩く音だけが広い廊下に静かにこだまする
「おかしいですね。誰かと出会ってもおかしくないはずなのに」
「ちょっと不気味じゃない?こんな人が少ない大きな屋敷に本当にお嬢様住んでるの?」
廊下や窓からの眩しい明かりとは対照的に、静かでどこか暗い雰囲気の屋敷にエイリークが少し身を震わせる
その後、大きな扉の前に着くと中から賑やかな声が漏れて聞こえてきた
「ここにお嬢様がいるみてえだな」
「なんか楽しそうだよ」
僕がガチャリと大きな扉を開けると、そこには綺麗な絨毯にテーブルやソファ、凄そうな絵画や高そうなランプなどいろんな物がある部屋の中に旅人であろう人や品のよさそうなお姉さんがいた
中でも一際目を引いたのがソファに座る赤い大きなリボンに美しい綺麗な長い金髪、赤い綺麗なドレスを身にまとい、ビー玉のようにキラキラとした目をした美しい女の子だ
「わぁ.....き、綺麗だな....」
ソールが静かにそう呟いた。周りは僕達に気づかないのか話を続けている
???「こんにちは、ごきげんよう。今日は何して遊びましょう」
綺麗な女の子がこれまた綺麗な音色の声を出した
旅人が声を出した
「うん!今日はマキナさんのためにケーキを作ってきたんだ」
旅人は変な笑いをしながら綺麗な女の子に近づく
「なにあれ、キモー。猫なで声だしてさ、アタシああいうのムリー」
サンディが嫌そうな顔をしている。ああいう不思議な声を猫なで声っていうのか
旅人はケーキを出して綺麗な女の子、マキナさん?にみせている
「ほら、美味しそうだろ?苺がいっぱい乗っかった真っ白いケーキだよ!」
マキナさんはケーキを見ると少し固まった様子だ
「.......ありがとう。素敵なケ....キ?ケキー?ね。花瓶に入れて飾っておくわ」
マキナさん、ケーキを知らないのかな?
「ケーキを知らない?お嬢様ってそんなもんなの?」
「いや、流石にちげえだろ」
エイリークもロードも流石に驚いている様子だ。旅人も少しびっくりしている
「あのー、マキナさん?それ飾るものじゃ.....んー、まあいっか!気に入ってくれてよかったよ」
すると、お姉さんもマキナさんの近くにやってきた
「マキナちゃん!あたしのプレゼントも見てちょうだい!」
「なあに?」
「女の子は食べ物よりおしゃれ!いつも同じリボンをしてるでしょ?だから新しいのをプレゼントしてあげる」
お姉さんはピンクの水玉模様のリボンを出した。すると
「いらない!」
綺麗な音色の声からは想像出来ないほど大きな声で強い拒否の言葉が出た
「え、え?な.....なんで?なんで?色も模様も可愛い.....」
お姉さんも旅人もいきなり様子の変わったマキナさんにびっくりしている
「いらないったらいらない!!このリボンは大切なお友達とお揃いなんだから!他のなんかつけないの!キライ!!あなたとは絶交よ!」
「そ、そんな....」
キッとした顔でお姉さんからそっぽを向いたマキナさんが僕達に気がついた
「だあれ?新しいお友達?」
美人だからかキッとした表情に迫力があったが、僕達に向けたのは優しい微笑みをした顔だった
「あ、どうも、はじめまして。僕、旅人のナインといいます」
「はじめ.....まして、マキナお嬢様。な、仲間のソールといいます。よ、よよよろしく.....お願いします」
「同じく仲間のロードだ」
「私はエイリーク!よろしくね!」
4人で軽く自己紹介をする。ソールが少し顔を赤らめたり、視線をあちらこちらにやったりして忙しない。どうかしたのかな
「まあ、ごきげんよう。あなた達初めて会う方ね」
「は、はい!あの.....もしよろしかったら、マキナお嬢様にお近づきの」
「単刀直入に言わせてもらうぜ。お嬢さんが持ってるあの船、俺達にくれねえか?」
マキナさんにソールがしどろもどろにしながらも、持っていたプレゼント用の香水を渡そうとするのを割って入って、ロードがいきなりテーブルを片手で叩いてロードの顔をずいっと近づけて軽く睨むようにしながら声を出した
まさかのロードの行動に部屋の時が止まったように感じた
「~~~っっ!!!!!ロードさん!!!?バカなんですか!?」
ポカンとしていたソールが赤くなっていた顔から一転、一気に顔を青ざめて大慌てでロードの首を持ってねじ曲げる勢いでマキナさんから離した。なんか、ゴキって聞こえたような
「ロードの馬鹿ーー!!!なんって事やってんのよ!!!嫌われたらどうすんの!!」
エイリークもソールに首を絞めあげられてるロードの体に凄い音を立てて殴りつけている
「ロードマジありえないんですケドー。これで船貰えなかったらゼッタイ許さないし」
「え、なに?この人達」
「変なの....」
サンディも呆れているし、それを見ていた旅人とお姉さんにも怪しまれている。これは少しよくないかも
「す、すいません。マキナさん、えっと」
なんとか話を戻そうと声を出すと、マキナさんが口を開いた
「船?......船がほしいの?あなた達」
「え、あ、はい。もちろんタダではなくてそれなりの」
僕が続きを言おうとすると
「いいわ、あげる」
「「「え?」」」
マキナさんからの発言に全員がマキナさんを見た。ソールとエイリークなんて目が飛び出そうな顔をしている
「どこへでも持っていって」
「.......い、いいの?」
「ええ、代わりに私のお友達になって........」
そこまで言った後、なにかに気づいたかのようにマキナさんは僕をジッと見つめた。顔も近づけてきたため、綺麗な顔に思わず目を背けて少し照れてしまう
「.....あ、いいなぁ....」
後ろからボソリとそんな呟きが聞こえた気がした
「あなた......あなたは......街の人達とは違う。そっちの人達はいいけど........」
「え?」
マキナさんは眉間に皺を寄せている
「あなた....マキナを迎えに来たのね?」
「?」
迎えに....?何の事だろう、マキナさんの事は今知ったばかりなのに。何の事かわからず、首を傾げる
「ごめん、何の事かさっぱり」
バタン!
「うそ!!私知ってるわ。あなたはマキナを迎えに来た。でも絶対にダメ!!私、あなたキライ!!あなたはお友達じゃないわ!そこの人達はいいけど、あなたには船はあげない!!帰って!!」
マキナさんは突然怒りテーブルを叩いて強く立ち上がると、僕にだけあたりを強くして扉に指をさして帰るように促される
思わずポカンとしてしまうと、見ていた旅人やお姉さんがマキナさんを宥めようとしてくれた
「まあまあ、マキナさん。そう怒らずに」
「そうよ、ご機嫌直して?ね?」
「キライったらキライ!!皆出てって!!あなた達もみーんなよ!!出てってーー!!!」
マキナさんはついに大声で声を張り上げた。流石の様子に僕達は全員で部屋から出た
玄関
「ちょっとサイアク!!いきなりなにキレてんの!?イミ不明なんですケド!」
サンディが不機嫌丸出しな様子だ
「.....なんで、僕だけ嫌われちゃったの?」
「さ、さあ....?俺達には別に普通だったのに」
「なんか様子おかしかったよね。でも、とりあえずマキナちゃんの機嫌直さないとナインだけ船に乗れないからなんとかしないと」
僕の問いにソールとエイリークも首を傾げながらもどうするか考える
「アレじゃね?マキナと仲のいい人とかに宥めてもらえば?」
「そうですね、探してみましょうか」
「.......ぃぃがげん......なおじて.....ぐれ」
「ダメです、お嬢様にあんな野蛮で失礼な事しでかしたんですからしばらくはこのまま引きずっていきます」
血だらけで時折痙攣もしているボロボロのロードがかすれ声で助けを求めていたが、ソールの見た事もない怖い声と睨みでそのまま引きずられていった
「(ソールも怒ると怖いって覚えとこ)」
ロード「マジで悪かった」
ソール「二度とあんな事しないでくださいね」
エイリーク「本当に!めっちゃ焦ったんだから!!」
ロード「......ぜ、善処する」
ナイン「驚いたのは僕もだけど、なんで急にあんな事したの?」
ロード「や.....ほら....言っちゃ悪いが、馬鹿そうだっただろ?常識知らずみてえだし」
ロードがそう言った瞬間ソールから凄まじいほどの凍てつく視線を感じた
ロード「や......冗談。ま、まあ.....ああいうお嬢様には、ちょーっとびっくりさせたら簡単にくれたりしねえかなって」
サンディ「結果、なんかワケわかんない理由でナインだけハブられましたケド」
ロード「マキナを迎えにきたってなんなんだろうな」
ナイン「僕、マキナさんと会ったことないのになー」
エイリーク「船、簡単には貰えなさそうになっちゃったね」