お屋敷の外
マキナさんの怒鳴り声が聞こえたのか門の前には人だかりができていた。出てきた僕達を見つけた先程のお姉さんが話しかけてきた
「もう!あなた達が変なことしてマキナちゃん怒らせるから!こっちは生活がかかってるのよ!どうしてくれるの!?」
お姉さんは泣きそうな顔をしている
「ごめんなさい、僕もなにがなんだかわからなくて」
それを聞いていた男の人が苦笑いしながら話しかけてきた
「まあまあ。マキナさんは昔から病弱で外で遊べないから、いつも一人屋敷の中で窓の外を寂しそうに眺めてたんだよ」
それを聞いて三人で少し驚きながら顔を見合せた
「そ、そうなんですか?なんか、そんな風にはみえないくらい元気でしたけど」
「ああ。ここしばらくはずっと元気みたいだ。寝たきりも多かったようだけど、元気でいてくれるならマキナさんも嬉しいはずだよ」
「.......」
その後、宿屋
宿屋についた僕達はロードを回復させた後、今後の事を話し合っていた
「また明日話し合いしてみる?それとも、これからでもマキナさんと仲良い人探しに行く?」
僕がそう提案すると、エイリークも少し考え込んだ
「私はゆっくりでもいいと思うけど、明日マキナちゃん機嫌戻ってるかな?もう少し時間置いてもいいかもしれないわね」
「ロードは?」
「だりぃー、わざわざお嬢様の癇癪にこっちが合わせなきゃなんねえのかよ」
ロードは興味なさそうにテーブルに足を置いて椅子に体重をかけてつまらなそうにしている
「ちょっとロード、ヤる気なさすぎじゃね?アタシもあのお嬢様意味わかんないですケド、もうちょい考えなさいよ」
「.........」
「で、ソールはソールでなんでそんな静かなワケ?話聞いてる?」
サンディはさっきから考え込んで黙り込んでるソールの肩を叩いた
「あ、サンディさん。はい、大丈夫ですよ。ちょっとお嬢様の事、考えてました」
「マキナさんの事?」
「なんか思いついたの?」
僕とエイリークはソールに近づく
「そんな、特に思いついたわけではありませんが。ほら、外出た時にマキナさんが病弱だったって教えてもらったじゃないですか」
「うん、そうみたいだね」
「ケーキもご存知なかったようですし、旅人さんと友達になりたいとか物々交換みたいな事してる理由ってマキナさんは外の世界に興味あるんじゃないですかね」
「確かに!それならマキナちゃんに外の世界を見せてあげれば機嫌直るんじゃない?」
エイリークは閃いたといった顔で笑っている
「俺もそう考えました、どうですかね?マキナさんも元気なようですし少しだけ外に誘ってみませんか?」
「うん、いいかもしれない。僕も賛成」
「アタシも!あの世間知らずのお嬢様にいろんな物見せて満足させればなんかうまくいきそうじゃね?」
和気あいあいとしてきた所にロードがダルそうな声を出した
「めんどくせー、俺はパス。そもそも船は貰っていいって言われてんだし、ナインだけちょっと袋に詰めて隠しながら俺達で船に乗ればよくねえか?」
「僕、持ち物みたいになっちゃった」
ロードの案に苦笑いする。隠れるためとはいえ扱いがなー
「ナインさんになんて事させようとしてるんですか。そもそも、それじゃあ黄金の果実はどうなるんですか。お屋敷にあったのは間違いないんですよね?それに、マキナさんの病弱が治った原因はもしかしたら黄金の果実かもしれませんよ」
「.........ちっ」
「舌打ちしない」
ロードの舌打ちに目ざとくソールが注意した。なんかあの一件からロードに珍しく強気なソールがみれるな、新鮮
「とにかく、俺はパス。ナインもあの感じだと誘っても嫌がられるだろうし、お前もやめとけ。やるならソールとエイリークでやんな。俺達はテキトーにショッピングでもしてるわ」
「え!!アタシもショッピングしたいんですケド!!アタシもロード達についてこ」
「え」
「いいなー!!私もショッピングしたいし、食料もチェックしなきゃなの!」
「え」
ロードからのショッピングというワードにサンディとエイリークが思いっきり食いついた。だけど、これだと....
「ソール、だけ?」
「おー、そうなっちまうなー。悪いな、ソール」
ロードはしてやったりといった顔でニヤニヤとしてソールをみている
「ええ......。そ、そんな.....俺だけじゃ流石に不安ですし」
ソールは急に顔を赤くしてモジモジとし始めた。なんだかマキナさんと会ってからソールの様子が少しおかしいな
「ソール、マキナさんと会ってからどうしたの?顔赤くなる事多いよ?平気?」
僕は心配になってソールの赤くなった顔に手を当てる。熱はなさそう
「あ、ああ.....大した事じゃないですよ、ナインさん。心配してくれてありがとうございます」
「ガキはわかんねえだろうから教えてやるよ。ソールはな、あのお嬢様に一目惚れしてんだぜ」
ロードはずっとニヤニヤしている
「な!?」
ソールは驚いた顔で硬直した
「一目惚れ?」
僕は聞きなれない言葉に首を傾げる
「えー!!そうなの、ソール!まあ確かにマキナちゃん綺麗だったもんねー」
「マジで!?チョーウケるんですケド!!ソール、あんた早く言いなさいよ!」
エイリークとサンディは驚きながらも楽しそうな顔をしている。いい事、なのかな?皆笑顔だし
「ロードさん.......」
ソールはさらに顔を赤くしてプルプルと震えてロードを睨んでいる
「へーんだ、この俺様にあんだけの事してくれたんだ。これくらいの仕返しで済んでる事に感謝すべきだぜ」
「元はあんたが悪いんだよ.....。はぁ.....ナインさん、一目惚れってのは出会った瞬間に相手の事を好きになるって意味です。俺はそこまでじゃないですよ、ロードさんの誇張表現です。エイリークさんもサンディさんも面白そうにしないでください。たしかに、ちょっと綺麗だなとは思いましたけど」
「ソール、そんなに早口で喋れたのね。わかりやす」
ソールはいつもよりペラペラと早口で言い切った。それを見てサンディは少し呆れている
「ってー事で、お誘いの件はソール一人が適任だな。俺達はソールのデートを邪魔しちゃいけねえからショッピングしてようぜ」
「くそ.....」
ロードはずっと面白そうにしており、ソールはロードを睨み続けている。気にもしないロードについにソールから炎が吹き出てくるようにみえた
「流石に怒らせすぎじゃない?ソールがかわいそう」
「いいんじゃね?こいつ、旅に出た時より感情豊かになってるしな。一向に敬語も取ってくれねえけど、最初の頃の常に笑顔の仮面してます!ってのよりいい傾向だろ」
ロードの言葉にソールと出会った時を思い出す。確かにずっと笑っていた、多少無理しても笑っている顔に違和感を感じたのは僕も覚えていた
「言われてみれば.....。なんかたまに口調も砕けてきてるしね、アタシはソールの口調ちょっとニガテだったのよねー」
「そうなんだ。ソールの真面目さが出てて私は気にしてなかったけど。でも、同い年なんだし確かに敬語じゃなくてもいいよね」
思わず全員でソールを見た。ソールは居心地悪そうな顔をしている
「.......敬語は癖なんですよ。簡単に抜けるものじゃないんです。まあ......最初に比べたら皆さんにも慣れましたから、いつかは外したいなと思ってますよ。仲間なんですから敬語の必要ないんですし」
「うん、ありのままのソールでいいんだからね。ゆっくり慣れていこう」
「ナインさん.....ありがとうございます」
その夜、お屋敷の庭
マキナさんの部屋にある大きな窓からは小さな庭が広がっている。そこの窓からいつもマキナさんは景色を眺めていたという話を聞いたソールは庭にやってきた
「結局俺一人だし.....。ま、まあ、からかわれないだけいいけどさ。俺が案を出したんだし責任は俺にあるよな。頑張らないと」
ソールは小さく呟きながら窓に近づいていく。ちょうどマキナさんが窓を開けて景色を眺めていた
「(少し、かっこつけた方がいいかな)夜分遅くに申し訳ございません、お嬢様」
「だあれ?」
俺の声にマキナさんが少し身を乗り出して俺と目が合った
「あなたは.....」
「今日のお昼は俺の仲間達が大変ご迷惑をおかけしました、マキナお嬢様。俺の名前はソールといいます」
「あの時の。ごきげんよう、ソール。こんな所にどうしたの?」
相変わらず綺麗な声と優しそうな笑顔だな。ついうっとりしてしまうのをなんとか理性で追い払い、話を続ける
「夜の景色を楽しんでおりました。そしたらマキナさんの姿が見えたので。マキナさんはなにをされていたんですか?」
「景色......。わたしは外を眺めてたの。ずっとこの屋敷の中ですごしてきたから、外の事を何も知らないの。ねえ、ソール。わたしとお友達になってくれる?」
「お友達ですか?いいですよ。マキナさんにプレゼントもあるんです。お昼の時に渡しそびれたんですが、香水です」
ソールはお近付きの印として買った香水を渡した。赤い小さな袋に金のリボンをつけて、中にはアネモネの花の香りがする香水が入っている
「こうすい?それはなあに?」
「香水というのはですね、中身失礼しますね。こうやって手や首に吹きかけるだけで.....花のいい香りがしませんか?」
俺は中身を取り出すとさっと自分の手に香水を吹きかけて、マキナさんに近づけた
「......まあ。本当ね、いい匂いだわ。こんなものがあるのね」
「香りの花の名前はアネモネです。ちょうどこのお庭にも咲いていましたよ。あれですね」
俺は少し遠くにある花壇を指さした。そこには白や紫の花が咲いている
「これがあのお花の香りなのね。ソールは物知りね」
「ありがとうございます。マキナさん、もしよかったら、少しだけ外に出てみませんか?」
「わたしが?でも......なにもしらないわ」
「俺が教えます。俺が付いていますから、少しだけ初めての外の世界を感じてみませんか?」
「ソール.........。ええ、じゃあ少しだけ」
マキナさんはそう言うと窓に足をかけて飛んできた。大胆さに驚きながらも、迷わずマキナさんをキャッチする
「大丈夫ですか?」
「ええ、ありがとう。.......わぁ....」
マキナさんはおそるおそる裸足で草の生えてる場所に降りた。その顔は恐怖と期待が入り交じった顔だったが、足を着いた瞬間驚いたような顔になった
「これが、くさ、ね。ふかふかしてる。だいち、すてきね!」
マキナさんは嬉しそうな顔で草を踏んだり、飛び跳ねたり、地面を掴んでみたりしている
「いかがですか?初めての外は」
「最高よ、ソール!本当にありがとう!あのね、わたしずっとあのふんすいってのに触ってみたかったの。いいかしら?」
「もちろん。さあ、行きましょう」
俺はそっとマキナさんの小さな手を握った。少し冷たいその小さな手は俺のゴツゴツとした手と全然違った
「ソールの手、あたたかいわね」
「よかったです」
エイリーク「なんかいい雰囲気じゃない?マキナちゃんも外に出てくれたし」
ロード「兵士だからか?なーんかエスコートが板についてんな。ちょっと癪に障るぜ」
サンディ「なんかナインやロードやエイリークじゃなくて、ソールだったのはある意味適任だったかもね。あんた達だと不安だわ」
ナイン「僕もみたいのに....」
少し離れた路地裏からソール達を見張っていた。夜までに買い物をある程度終わらせて面白そうだとこっそりついてきたのだ。だが、ロード達が我先にと顔を出しているせいで、後ろの僕には何も見えていない
ロード「なんでだよ。俺だってあれくらい余裕だし攫う事だってできるぜ」
エイリーク「攫うとか言ってるんだからダメに決まってるじゃん。私はなんで?」
ロード「お嬢様の事ほっといて一人で楽しんでそうだからな。エイリークには向いてねえよ」
エイリーク「なんですってー!」
サンディ「ちょっと!こんな所でイチャイチャしないの!」
ナイン「あははは....ソールがいないとこっちも大変かも」