船
内部の説明も終わり、甲板にあがると高さから見える景色がとても気持ちよかった。サンマロウの景色も地上から見える景色とはまた違う姿に思わず感心した
「へー、船の上からってこう見えるんだ。凄いねー」
「とりあえず、この後について話していくぞ」
全員で甲板の中心に集まって輪になった
「船の操作なんかは俺に任せておけ。指示には従ってもらうぞ、やり方はこれから教えていくからな。で、だ。今の俺の職業だとちょっと不安なんだよな。そんじょそこらの船なら問題ねえが、ここまで大きな船で知識があんのが俺だけだとちょっとな」
「ふむふむ、それなら転職って事かな?ダーマ神殿にまた行く?」
僕はロードの説明で職業と聞いてそう結びつけた
「そういうこった。これからアユルダーマ地方、つまりダーマ神殿に戻ろうと思う。お前らもどうせなら転職するか?」
ロードはソール達に顔を向けた
「そうですね。レンジャーの本も貰いましたし、俺はレンジャーになろうかな」
「私は魔法使いかなー、やっぱり番人もそうだったけど魔法使える人必要だよねって思ってさ」
「僕はどうしようかなー。なんかやってみてもいいけど.....」
皆が転職するなら僕も転職しようか考えるが、パッと何になろうか思いつかずに少し腕を組んで悩んでしまう
「無理に転職する必要はないと思うが、なりたい職業がねえならこんなのがあるんだ。やってみたらどうだ?」
ロードは僕の様子を見た後鞄をゴソゴソと探り始め、1冊の本を出した。なんだかソールが貰ったレンジャーの本と似たように分厚い本だな
「それは?」
「上級職、バトルマスターの本だ。これがあればバトルマスターに転職できるぜ」
「バトルマスター!凄いですね、ロードさん。そんなの持ってるなんて」
バトルマスターという言葉にソールが反応した
「ソールは知ってるの?」
「なんか強そーな名前ね。ぶっちゃけあんた達向きね」
「バトルマスターは名前の通り戦闘のスペシャリストです。様々な武器の知識や戦闘についての事を知れますし、魔物についても詳しくなれますよ」
「以前ちょっとした経緯でバトルマスターの人に目をつけられてな。これ貰ったんだ」
「なるほどね。ナイン、どうせならなってみたら?」
エイリークの言葉に僕も頷く。どうせなら強くなっておくことに越した事はないだろうな
「うん、なってみようかな。ありがとう、ロード。そういえばロードは職業どうするの?」
「おう、まあお前らなら平気だろ。俺は前に船乗りだったんだが、どうせならもうちょいカッコつけさせてもらって海賊にでもなろうと思う」
「海賊?」
「なんか悪いイメージありますけど」
「まあ人によってはな。要するに、船の知識と戦闘を合わせたような職業だ。ちょっと面白い技も使えるみてえだし、悪いイメージも俺なら特に問題ねえよ」
ロードはニヤリと笑ってそう言った。確かに似合うかもしれない
「なんかいいなー。アタシにも転職とかできないかな」
「サンディもなれたらいいのにね」
「当たり前のように皆で接してましたけど、普通の人には見えないんでしたっけ、サンディさん。それだと難しいかもしれませんね」
「アタシだって戦士とか武闘家になって、ムカつくのを殴りたいんですケド!」
サンディはシュシュシュとパンチを繰り出している
「案外凶暴だな、このギャル妖精も。とりあえず向かうぞー」
ロードの操縦で船が動き始めた
ダーマ神殿
「快適だったねー、船って海風が気持ちいいね」
「魔物なんかもあれだけ大きいとあまり向かってこなくて助かりましたね」
船での会話をしながらやってきた。相変わらずの人の多さに大神官さんも変わらない様子だ
「おや、ナインさん達。お久しぶりです。本日はどのようなご要件で?」
「大神官さん、こんにちは。今日はまた転職をお願いしたくて」
「転職ですね。ではそれぞれ何の職業に転職されますか?」
「僕はバトルマスターに」
「俺はレンジャーです」
「俺は海賊で」
「私は魔法使いでお願いします!」
「うむ、承知した。全知全能なる職業の神よ、この者達に新たな道を示したまえ」
大神官さんがそう言うと、不思議な光に包まれていく。前と同じように頭の中に新しい技や情報が入ってくる
「うむ。これでナインはバトルマスターに、ソールはレンジャー、ロードは海賊、エイリークは魔法使いとなった。何かあればまた来るとよい。本などで装備や武器について情報も集めるのだぞ」
「ありがとうございました」
後ろの待っている人達に迷惑かけないようにそそくさと大神官さんのそばを去った。去り際に大神官さんは優しく笑って手を振ってくれた
「よし、また少し腕試ししたりして慣れていこうか」
僕がそう言うと全員も頷いた
「お互い使いなれてない武器もあるだろうし、船の上でいろいろやるか」
甲板
「ふっ!」
ガキン!
「へっ、やるな。これならどうだ!」
ロードの素早い剣での攻撃をガードする。ロードはニヤリと笑ってそのまま剣にかけていた力を抜いた。それに思わず僕が前のめりになる
「くっ」
「はあ!」
「危ない!」
ガキン!
前のめりになって体勢を崩しながらもなんとか剣筋を合わせて攻撃を防いだ
「守ってるだけじゃ」
「だけじゃないよ!」
崩した体勢のまま、足をロードに振り上げる
ブン!
ロードもギリギリで躱して距離をとった
「へー、やるじゃねえか。反撃もしっかり出来るようになってきたな」
余裕そうにしているロードの頬に冷や汗が流れているのを僕は見逃さなかった
「ナインさんは防御型ですよね。盾といい、今といい相手の攻撃を防ぐのがお上手ですね」
近くで新しく使う弓の練習をしながら見ていたソールがそう言ってきた
「防御型.....まあ確かに突っ込んだりする事はこれまでもあんまりなかったかな」
「俺とは逆だよな。まあナインらしいが、攻撃の手もしっかり持っておけよ。それにしても、船の上だと日差しがあっちぃな.....汗が吹き出てくるぜ」
ロードはそう言って上着を脱いだ。確かに地上よりも高く遮るものがないからか日差しが暑く感じる。もちろん激しく動き回っているせいもあるんだろうけど
「またそうやって脱いでるとエイリークさんやサンディさんに怒られますよ」
そう言って苦笑いしているソールも薄い白のシャツにタオルで首やお腹をずっと拭いている
「さっきね、エイリークが氷魔法の練習として飲み物に氷入れてくれてたよ。せっかくだからこれ飲もうよ」
端にエイリークが用意してくれた大きな水が入った容器をあけた
「うわ!」
「げ!あの女、なんて事してくれてんだよ!」
容器を開けてみると、容器に入っていた水が大きな氷のせいで全て凍っていた
「あちゃー、これじゃあ飲めないですね。ヒンヤリはしますけど....」
「ったく、ちょっと文句言ってくるわ」
ロードは少し怒りながらもどこか呆れた顔で中に入っていった
「エイリークは今部屋で魔導書読んでるんだっけ」
「はい、魔法使いになったから風魔法だけじゃなくて火や氷の魔法も使えるんだとか」
「なるほど。戦略に幅が出てきたね」
「そうですね。俺も回復魔法は引き続き使えるので、俺はまた後方支援ですね」
そうしていると
バタン!
ロードが入っていった扉が勢いよく開かれてロードが慌てて飛び出してきた。ドタバタと大きな音がする
「ロード!女の子の部屋にそんなムサ苦しいカッコで入ってくるとかマジありえないんですケド!!」
「んなに怒る事ねえだろ!!」
「真面目にやってたのに邪魔しないでよね!」
「あっぶね!!ヒャドなら投げるんじゃなくて当てろよ!」
「........賑やかに、なったね」
「はぁー、まあもう慣れましたけどね」
ドタバタと大きな音をたてて追いかけっこしている様子を見て、僕とソールは困ったように笑っていた
その夜、キッチン
全員で晩ご飯を食べ終わり、ゆっくりしているとロードが全員に声をかけてきた
「とりあえず、次の目的地なんだがな。今回のサンマロウもそうだったが、女神の果実はやっぱり人の多いところなんかにはやってきやすいだろうな。だからまた大きめな街に向かおうと思う」
「そうですね。もし黄金の果実がなくても何か情報があるかもしれませんし」
「やった!大きな街ならまたショッピングとか出来るって事でしょ!楽しみ!」
ロードの提案にサンディはガッツポーズをしている
「特に次行く街はサンディ、お前が大好きなもんだらけだぜ」
「え、アタシ!?マジで!?」
「次行く街は、ズバリ!宝石の街だ」
「「「宝石の街?」」」
ロードのドヤ顔と共に出た宝石の街という名前に僕とソールとエイリークは揃って首を傾げた
「マジで!?うっそ、そんな街があんの!?ありえないんですケド!!アタシ絶対行く!!行くしかないんですケド!!」
サンディはまさに大興奮といった様子で大はしゃぎして飛び回っている。よく見たら目が宝石みたいになってるし....
「わかるぜ、サンディ。俺も大好きな街の一つだ、金儲けし放題なんだぜ。へっへっへ、セントシュタインでの金も少なくなってきたし、またここらでたんまりと金貰っておこうぜ」
ロードも悪い顔で笑っている。女神の果実は?
「なんか趣旨変わってるし。まあ行くのはいいとして、場所はどこら辺なんです?俺はよく知らないんですが」
「おっと、そうだったな。街の正式名称はピエドラ。場所はここから南に行った場所だ。サンマロウからも船が出てる島で旅人や冒険者もわんさか集まる大きな街だぜ」
「なんで宝石の街なの?宝石でできてるの?」
「はは、それだったら今頃戦争になってるだろうな。残念ながらそんな夢溢れる場所ではねえよ。ただ、その島ははるか昔からありとあらゆる宝石が採れる鉱山があってな。その影響で昔から繁栄してたそうだぜ。今でもいろんな宝石が採れるってんで、街には宝石を使った商品や物がたくさん売られてる。だから宝石の街。いいよなあ、響きが......夢があるぜ」
ロードが思わず唸るように一人で頷いている。ロードってこういう夢があるような事大好きだよね
「なるほどね。私も少し興味あるかも、せっかくだし観光がてら行こっか」
「うん、本当に女神の果実もあるかもしれないし。じゃあロード、明日からまたお願い」
「おうよ!って、言いてえところだがちょっとセントシュタインに行ってもいいか?」
「ん?どうしてですか?」
「ちょっと!!この空気ブチ壊しにするとか空気読めなさすぎるんですケド!」
「悪かったな。アサの様子を見ておきたくてよ。慣れねえセントシュタインだろ?どうしてっかなと思ってな」
「確かに!アサ君大丈夫かな?変装してリッカの酒場で働いてるんだもんね」
「ロードさんはいいお兄さんですね。俺も気になりますし少し様子見ていきましょうか」
「寄り道で悪いな、サンディ。まあというわけで数日かけて宝石の街に向かうから少し我慢してくれよ」
「......まあ、確かにアサも気にはなるから構いませんケド。出来るだけ早く街に向かってよね!」
「りょーかい」
ナイン「おー、ここがキッチンか。そこまで大きいわけではないけど、船の中なら充分だよね」
エイリーク「あ、ナイン!船の中見てたの?どう?私のキッチン!整理したけど変じゃない?」
ナイン「うん、全然。なんかテーブルとかこの感じ懐かしいね。デイブレイクみたい」
エイリーク「わかってくれる!?デイブレイクを真似たつもりはないんだけど、やっぱり染み付いてるみたいでどうしてもそれっぽくなっちゃった」
ナイン「いいと思うよ。エイリークにとって大切な場所なんだから。僕も嬉しいよ」
エイリーク「うふふ、ありがとね、ナイン。他にもね、ここに調味料とか食器はこの棚とかいろいろ置いてみたの!」
ナイン「あ、本当だ。なんか楽しそうだね」
エイリーク「もちろん。好きにしていいなんて初めてだもの、これでいろいろやりたかった事もできると思うわ!料理も楽しみにしててね!サンマロウでいろんな調味料も手に入れられたし」
ナイン「そうなんだ。じゃあ今日のご飯から楽しみにしてるね。また手伝える事あったら教えてね、なんでも手伝うよ」
エイリーク「うん!ありがとね、ナイン!」