大通り
ピエドラにあるとても広い通り道の両脇には様々な店が並んでおり、その多くは宝石や加工品、武器や防具などに宝石を付けた装備品などのお店だ。入口から突き進むとすぐにこの大通りにやってくるため、非常に多くの人達が行き交っている
「こりゃあ前来た時よりもずっと人が多いな」
「歩きにくいー。ナイン、ちょっと先行き過ぎないでね」
あまりの人混みに進むのもやっとの状態でゆっくり前に進んでいく。はぐれたらまずいので全員で手をつなぎながら人の隙間を縫うように歩いている
「あ、すいません。こんな所だと町長さんの場所聞こうにも聞けないですね」
「こんなに大勢の人がいる場所俺初めてだよ。潰されそう」
「ムサいったらありゃしないんですケド!アタシちょっと先行って開けた場所ないか探してくる!」
サンディもたまらず飛んで先に進んでいった
「お願いねー」
「ナインさん、お願いって誰に言ったの?」
僕の声に疑問に思ったのか隣にいたアサ君が首を傾げていた
「ううん、気にしないで」
「そっか。あのさ、誰か俺の事肩車してよ。それなら少し先見えるから進みやすいかもよ」
「お、そりゃ名案だな、アサ。そうしようぜ」
「じゃあ一番背の高い俺が」
ソールがそう言った瞬間
ゲシッ
「いっっ...!」
「俺でいいよな?ソール?」
「は、はい.....。ロードさんお願いします」
ロードがソールの足を踏み抜いた。ロードが怒ったような雰囲気を出してる理由がわからないけど、どうしたんだろう
「......誰だっていいけど、兄ちゃん流石に心狭すぎ。ソールさん、兄ちゃんがごめんね?」
「い、いえ、俺の発言が不覚だったので」
「とりあえずアサ、なんか見えたら教えてくれよ」
ロードはアサ君を肩車して進み始めた
「んー、もう少しはこの感じみたい。なんかに集まってるみたいな人達のせいで進めないみたいだよ」
「なんだそりゃ。ったく!通行の妨げになってんの気づかねえのかよ」
「まあまあ。ゆっくり進んでみようか」
そう話しながら進んでいるとサンディが戻ってきた
「ちょっとナイン!皆!この先にチョー人間集まってる場所あって、そこ見たら多分そこが町長の家っぽかったんですケド!皆もしかして鉱山に入ろうと町長に押しかけてんじゃね?ヤバいって!アタシ達の宝石全部取られちゃうかもしれないんですケド!どーする?マジヤバなんですケド!」
「うーん、それは中々面倒な事になってきましたね」
「このまま行けば町長さんの家に着くのは間違いないんだろうけど、そこまで凄い時間かかりそうだね」
「え?なになに?どうしたの?」
4人で腕を組んで悩み始めるとアサ君はその様子にキョロキョロし始めた
「この人混みはな、全部町長の家に向かってんだってよ。全員鉱山に入ろうとしてんじゃねえかって」
「そうなの!?こんなにたくさん!?」
「こんなん待ってたら日が暮れるどころか何日も経過しちまう。それは面倒だからな。サンディ、ちょっと悪いがその町長の家の周りなんかないか探してきてくれ」
「別にいいケド、なんかってなによ?」
「裏口とか2階への行き方とかよ」
「......何しようとしてんのかわかったケド......まあいいわ。わかった、あまり期待しないでよね!」
そう言ってサンディはまた先に飛んでいった
「不法侵入はダメですからね?」
「ま、まあそれは最終手段だ。昼に行くのはちょっと無理そうだから夕方とか夜とか、人が今より少なくなったタイミングで行ける場所があればなと思ったんだよ。お使いのためにも宝石のためにも、とにかく町長にはなんとしても会わなきゃだからな」
「確かにね。まあ仕方ないかも」
しばらく進みながら待っていると、サンディがまた戻ってきた
「あった!並んでた人間達は皆やっぱり鉱山関係みたいで、その人達は家の横に並んでるんだけど正面は町長に用事ある人だけって貼り紙してあったからそこからなら行ける!人間も全然いなかったし!」
「おっしゃ!ナイスだぜ、サンディ!」
「よかったわ!ようやくこの人混みから離れられるのね。匂いもキツくて苦しかったー」
「え?なに?行けるの?」
「はい。どうやら町長さんの家の正面から用事のある人だけ入れるみたいです」
「マジで!よっしゃー!早くそこ行こうぜ!」
行列からなんとか抜け出して僕達は町長さんの家に向かっていった
町長の家
大通りを突き進み、大きな目立つ家の前にやってきた。家の横にある特設窓口とある場所には大勢の人が鉱山に入ろうと手続きみたいなのをしている様子だ
「本当だ、正面なら入れるね」
「よし、呼び鈴鳴らしますね」
ソールが鈴を鳴らすと少ししてガチャリと扉が開いた
「はい。おや?どちら様ですか?」
中からは少し小太りの男の人が現れた。薄紫の髭が特徴的だな
「突然すみません。ジストさんでお間違いないでしょうか」
「はい、私が町長のジストです」
「よかった。俺達、セントシュタインからやってきた者です。ルイーダさんからのお届け物がありまして、こちらに伺いました」
「おお!ルイーダさんの!よかったよかった、何やら時間がかかっていたから心配していたんだよ。さあ中に入っておくれ」
ジストさんはルイーダさんの名前を聞くと嬉しそうに笑って中に招いてくれた。やっぱりこういう時はソールに頼むとすんなり入れてくれるから助かるな
「ソールは丁寧だからこういう時助かるよね」
「ねー、私もああいう風にできるようにならなきゃ」
「お偉い人とかに慣れてる感じだよな、ソールさん」
「ま、俺には無理なやり方だな」
「皆さんにも出来るようになってほしいんですけどね」
リビング
通された場所のリビングには高級そうなソファやテーブルの他に綺麗な宝石がショーケースに入れられて並んでいた。赤、青、緑、黄、黒、紫、白など様々な色の宝石がある
「ヤバすぎ!めっちゃ宝石あるんですケド!」
「うおー!宝石だ!!すっげー!!」
サンディとアサ君が興奮したように声を出した。それにジストさんは優しく笑っている
「ふふふ、よかったら見ていってくださいね。これはここの鉱山から採れた物ですよ」
「やったー!!」
そう言われてアサ君とサンディは宝石のショーケースに駆け寄った
「す、すいません、町長さん」
「いえいえ、"お二人"とも楽しそうでなによりです」
「「「「!?」」」」
ジストさんの"二人"という発言に思わず顔が強ばった。サンディが、見えているのか
ロードの顔が一気に警戒するような顔つきになった。ソールとエイリークも少し怖い顔になっている
「お、おや?そんな怖い顔されてどうされました?」
「いえ.....あれが見えているのかと思って驚きました」
「あのお嬢さんの事ですよね?見えたらおかしいものなのですか?」
「中々いねえからよ、見える人が。悪かったな」
「そうなのですね。それはすいません、あまりにも普通でしたので」
ジストさんも申し訳なさそうにしている。やはり悪い人ではなさそうだ
「ううん、大丈夫。これ、ルイーダさんからのお手紙とお荷物です。どうぞ」
エイリークがジストさんに荷包を渡した
「ありがとうございます。どれ....」
ジストさんは手紙を開いて読み始めた
「よかった、流石はルイーダさんだ。わざわざ遠いところからお越しくださってありがとうございました。もしかして、皆様は冒険者でしょうか?」
「はい、僕達五人でチームなんです。今回はちょっとお客さんも連れてますけど」
「そうでしたか。このお礼として、鉱山に入られる特別許可でどうでしょうか。この街の鉱山の事ご存知ですかね」
ジストさんからのその言葉にロードがこっそりガッツポーズをとった
「はい、知ってます。いいんですか?」
「もちろんです。ただ、お礼なのに周りの人と同じなのは申し訳ないのであなた達だけ特別に普通の人達では入れない階層にも入れて採掘出来るようにしましょう」
「マジか、町長!!いいのかよ!!」
「ええ、もちろんです。こんな事しかできなくてすいません。よかったらせっかくのこの宝石の街を楽しんでいってくださいね」
ジストさんは手馴れた手つきで紙を書いて渡してくれた。紙には特別許可証と書かれている。数字も2~5と書かれている
「普通の方は2階と3階のみですが、4階と5階も特別に入っていいですよ。あまり手もつけられてないので宝石が取れると思いますよ」
ロードがキラキラとした目でこの紙を見ている。人間の目ってこんなに輝けるものなんだなー
「ありがとうございます!」
「それと今回の街にどうしてこんなに人が集まってるのかもお話しておきますね」
「ああ、そういやそうだな。俺は前に来た事あるんだがそん時と比べ物にならねえぐらい人がいるな。どうしたんだ?」
「つい最近この鉱山から新しい宝石が取れたのです。新種の宝石でして、その名もレインボージュエル」
「「「「レインボージュエル」」」」
全員でその名前を言った。なんか、綺麗な名前だな。その声にサンディとアサ君も戻ってきた
「その名の通り虹色に輝く美しい宝石なのです。しかし、発掘された際に謎の原理なのかボロボロと崩れてしまったようで.....。鉱山から出てきた時には小さな欠片のようになってしまいました。その破片が鉱山の全てに落ちているという訳なのです。その破片だけでも遊んで暮らせるだけのお金となるでしょう。
もちろん、こちらとしては新種の宝石なので見つけ次第届出てほしいものですが.....。という訳でして、今鉱山にはお金を求めて大勢の人がやってきているのです」
「へー!じゃあその破片だけでも見つけたら大金持ちってわけか!」
「レインボージュエルなんて凄い名前ね、ちょっとセンスはあれですケド」
アサ君とサンディも興味深そうにしている
「お二人も興味ありますかな?」
「うん!」
「......は、え!?アタシの事見えてる!?キャーッ!!」
サンディは一瞬ポカンとした後、すぐに叫び声をあげて僕の後ろに隠れてしまった
「おや、びっくりさせてしまいましたかな。申し訳ありません。では、皆様も鉱山にいってらっしゃいませ」
鉱山前
大勢の人が並ぶ鉱山の近くにやってきた
「あの町長、アタシの事見えてるのチョービビったんですケド!人間なのにアタシの事みえてるのヤバいからね!って.....」
サンディはソールとロードとエイリークを見た
「なんか、そうでもないのかもって思ってきた.....。まあそれはいいとして!レインボージュエルよ、レインボージュエル!!女神の果実ではなさそうですケド!ブチアゲなカンジじゃん?もうテンションアガりまくりなんですケド!」
「楽しみだよなー、レインボージュエル!見つけられたら俺どうしようかな!うへへ」
二人とも話題のレインボージュエルに興奮している様子だ
「まあ本当に見つかるかどうかはおいといて、普通に宝石取れるだけでも金になるからな。本当ならまあまあ頑張らないとだが、今回は!この!特別許可証のおかげで楽に宝石も見つけられるかもってわけだぜ!くーっ!やっぱり冒険にはこういうロマンだよな!」
ロードも嬉しそうにしながら特別許可証を自慢げに持っている
「ロードがわかりやすく嬉しそうにしてる。採取って難しいのかな?私やった事ないよ」
「俺もですね。ピッケルとかで掘るとは聞いた事ありますが」
「へー、そうなんだ。面白そうだね」
「汚れやすいから気をつけろよな。最初は俺が教えてやるから任せな」
そうしていると、僕達の順番になった
「よーし、いくぜお前ら!宝石も金も、運が良ければレインボージュエルも!俺達のもんだ!」
「「おー!!」」
「「「お、おー」」」
意気揚々とピッケルを掲げた三人のテンションについていけず、僕達は三人に比べて小さくピッケルをかかげた
アサ「ソールさん、ピエドラまんだって!美味しそう!俺食べたいなー」
ソール「あ、本当だ。中にチョコレートだって!?俺も食べたいですし買いましょうか」
アサ「やったねー」
ナイン「ふふ、アサ君も甘いもの好きなの?さっきからそういうのばかりだけど」
アサ「え、あー、ぐ、偶然じゃない?ナインさん」
ソール「あー......ん!これ美味しいですよ、アサさん!」
アサ「本当!?俺も俺も!あー.....っ!ん!んまい!!」
ナイン「よかったね」
アサ「いやー、こういう場所には来れないからさ。今のうちにいろいろやっておきたくてさ」
ソール「確かにそうですね。いいタイミングですし、アサさんに付き合いますよ」
アサ「でしょでしょ、さっすがソールさんわかってくれるー。ケチんぼ兄ちゃんとは違うね!」
ソール「またロードさんに怒られますよ。他には何しますか?」
アサ「んーとね、もう少し食べ歩きしたいかな。あ!あれはどう!」
ナイン「元気だなー、アサ君は」