鉱山 地下2階
ピエドラにある宝石が採れる大きな鉱山。地下に広がる巨大な空洞には昔から宝石があり、今でも地下深くには多くの宝石が眠っているため、多くの冒険者や旅人が一攫千金を狙ってやってくる
多くの人達が汚れながら地面や壁を掘っている。通路を歩きながら人がいない壁の前にやってきた。ロードがここで僕達に採掘のやり方を教えてくれる
「まあ場所はどこでもいいだろうぜ。違いなんざ初めはわからないからな、ここと3階は人が大勢いるから宝石を見つけるには頑張らないとだぜ。やり方はこうやって」
ロードは手袋をしてピッケルと水を持ってやり方をテキパキと教えてくれている。僕はこの鉱山に入ってから少し違和感を覚えていた
「なんか.....ここ、変な空気だね。嫌な力ってわけじゃないけど.....感じた事ないなにかを感じるような」
「そうなんですか?俺は特になにも」
「んー。いろんな匂いはするけど、私もそこまで変なのは感じないかも。サンディはどう?」
「えー、アタシはそういうのよくわかんないわよ。雰囲気はベツにフツーって感じ」
僕達でキョロキョロしても特になにもない。僕の気のせいなのかな
「おい、ちゃんと聞いてんのか?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
ロードがチラリとこっちを見た。喋ってるとロードに怒られちゃうな
「すいません、ロードさん。ナインさん、まずはこのまま宝石探しましょうか。俺も一応警戒しておきます」
「ごめん、ソール。そんな気にしないでいいからね」
そうしてロードからやり方を教わり、周辺を全員でお試しとして掘っていく。ロードが見ながら適宜アドバイスを貰っていた
「アタシ、もう少し下見てきてもいい?」
「いいよ、僕達はまだここにいるから」
「すぐ戻るからねー」
サンディはそう言って奥へ飛んでいった
「そういえばここって魔物とかいねえのかな」
「確かに。あまり気配は感じないですけど」
「俺も聞いた事はねえな。地下深くにはもしかしたらいるのかもしれねえが、人の手が入ってんだしほとんど大丈夫なんだろうよ」
「じゃあサンディも自由にしてても大丈夫そうね」
しかし、しばらく待ってもサンディは戻ってこなかった。時計がないためわからないが感覚としては1時間を超えている
「遅くない?サンディ」
「確かにな。ちょっと探しに行くか」
「でも、サンディさんが戻ってきた用に誰か一人残った方がいいですね。俺、ここに残ってますよ」
「なになに?さっきからサンディって誰の事言ってんの?」
アサ君は会話がわからず首を傾げている。サンディが見えないから仕方ないよね
「えっとね、僕の仲間でもう一人いるんだよね。女の子。その子が見えなくなったから探しに行きたくて」
「へー!じゃあ急がないと!」
「じゃあソール、お願いね。もしサンディが戻ってきたらこっちに来て教えて。私達先に進むから」
「はい、お気をつけて」
僕達はソールを残してサンディを探しに3階に向かっていった
サンディside
「なにこれ....」
サンディは地面に落ちていたキラキラと光る宝石を見つけていた。それを触ると
「キレイじゃん。って、うわ!」
サンディが宝石を見つめて反射する自分の顔を見た瞬間、黒く光った
「チョービビったんですケド、いったい......」
サンディの目からゆっくりと光が消えていく
「あれ.....この宝石......アタシにピッタリじゃね!?だって、こんなに虹色なのよ!」
サンディがもう一度宝石を見ると虹色に輝いていた
「なんかテンションアガりまくり!」
サンディはその宝石を持ってまた進んでいった。しかし、どこからか小さな声がした
「イイコ ミーツケタ」
3階
2階と変わらずここにも多くの人達が作業をやっている。しかし、どんなに見渡してもサンディの姿はない
「うーん、いないね」
「サンディー、どこなのー」
エイリークが大きな声を出すも反響するだけで返事はない
「ギャル妖精のやつ、こんなに離れる事あるかよ。テンション上がりすぎだっての」
「妖精?そのサンディって子、妖精なの!?」
ロードの発言にアサ君がびっくりしたような声を出した
「うん、見た目はね。本人は妖精じゃないって言ってるけど。だから普通の人には見えないんだって」
「へー、妖精って本当にいたんだ。ナインさん達も兄ちゃんも妖精が見えてるのすげえ」
「でも、こうやっていなくなる事なかったんだけどね。探すのも大変ね」
「どうする?4階まで降りる?」
「どこまで行ったかわからねえからな。ここにも誰か一人残した方がいいかもな」
「じゃあ私が残って探してみるね」
「お願い、エイリーク。ありがとね」
「暇だったら宝石も探してみてくれよ」
4階
ここからは人がおらず、許可された僕達だけが入れる階だ。さっきまでいた人の気配がまったくなくなり、少し怖い雰囲気を感じる
「いるとするならここら辺なのか?サンディー」
「サンディさーん!俺にも姿見せてー」
ロードとアサ君の声が響き渡るがやはり返事はない
「本当にどこに行ったんだろう。大丈夫かな」
「流石におかしいな。見える人間に攫われたか?」
「ええ!?それはまずいよ!」
ロードの発想にびっくりしてしまい、つい大きめの声が出た。僕の大きな声が響いた
「可能性がないわけじゃねえよ。それはそれとして、ここら辺掘ってていいか?宝石見つかりやすそうだ」
「兄ちゃん.....」
ロードは考えているように見せてからニコニコと横の壁を指した。アサ君も呆れたような顔をしている
「まあいいけどさ。僕はこのまま5階に行くね」
「おー、頼むわ。アサ、お前もここに残れよな」
「俺も?まあ俺はサンディさん見えないから仕方ないか。ナインさん気をつけてね」
「うん、ありがとう。ロード、ほどほどにね」
「はいよ」
5階
ここも4階と同じく人がおらず、ついに僕一人だけとなってしまったため心細さが出てきた
「サンディー!」
僕が大きな声を出して呼びかけた。洞窟に声が響くと
「なによー!」
「!?」
サンディの声が響いて返ってきた。僕はその声のもとに走っていく。すると、奥からピンクの光がやってきた
「ナイン、早くない?どうしたの?」
「サンディ!やっと見つけた!って、それ」
サンディは大きな白く濁った宝石を持って飛んでいた
「どーよ?これ。アタシにピッタリでしょ?」
サンディはどこか嬉しそうに笑っているが、目に違和感を覚えるような不思議な感覚がした
「大きい宝石だね。これ見つけてたの?」
「そ。他にもなんかないかなと思ったケド、流石に見つからないみたい。キレーでしょ?虹色よ」
サンディが虹色と言うが、僕にはどう見ても白にしか見えず首を傾げる
「虹色?そうかな。白じゃない?」
「えー、何言ってんのよあんた。虹色しかありえないっての」
「んー?まあいっか。とりあえず皆心配してるから戻ろう」
「別にこれくらいで心配なんかしなくていいのに。アタシはべつにダイジョーブなんだから」
「行こう、サンディ」
サンディにそっと手を伸ばしたが、サンディはこちらを見ずに宝石から手を離さず隣に浮かんでいた
その後、ピエドラ 宿屋
全員と合流して鉱山から出てきた。ソールとエイリークは何も見つけられなかったが、ロードは数個宝石を手にして喜んでいた
「へへ、これ売れればまた金が潤うな。また明日も行こうぜ」
「それは構いませんが....」
ソールはチラリとサンディを見た。サンディは僕達とは少し離れた所で大切にあの宝石を持っている
「サンディさん、どうしたんですかね。あの宝石、そんなに嬉しかったんでしょうか」
「白にしか見えないのに、サンディは虹色って言ってるのよね。あれがレインボージュエル?」
サンディはあれから皆に軽く謝るも、宝石から一切手を離そうとしていない
「まあ宝石好きなんだし嬉しいんじゃねえの?」
「それは私もわかってるけど.....なんか、違和感あるのよね」
「僕も。サンディっぽくないような」
僕とエイリークは少し首を傾げるが、ソールとロードはそこまで気にしていない
「まあ明日には戻るだろ」
「宝石欲しがってましたからね」
「なーなー、明日も鉱山行こうよー。俺も宝石ほしい」
「まあもう1、2日行きましょうか。明日は俺達も下に行きますね」
「おー、皆でやって金稼ぎだ」
次の日
サンディの様子は相変わらずだが、鉱山にやってきた。全員で4階まで降りてきた
「わー、人が全然いないのね。ちょっと怖いかも」
「さっきまでの雰囲気とは少し変わりましたね。俺もこれは少し怖いかも」
ソールとエイリークは人が大勢いた所しか知らなかったので、こんなに広く誰もいない空間に少し怖気付いた様子だ
「アタシまた先に行ってもいいよね」
すると、サンディが一人でまたふよふよと奥に進んでいく
「待って、サンディ。今日は皆と一緒に」
昨日の件もあり、流石にまた一人で行動すると大変だからと言葉に出しながら咄嗟にサンディに手を伸ばして体に触ると
「キャッ!」
意識してなかったのか、少し触っただけでサンディはかなり驚いた様子でフラフラと横に落ちる。その拍子にサンディの手から宝石が離れてしまった
「あ」
宝石に手を伸ばそうとするも、届かずに宝石が落ちていく
パキン
地面に落ちた宝石が音を立てて、小さくヒビが入って二つに割れてしまった
その光景に全員少し固まってしまう。割れた宝石を見つめていたサンディがプルプルと身体を震わせて大きな声をあげた
「なんて事してくれんのよ、ナイン!!!!」
「ご、ごめん.....」
思わず謝るもサンディの怒りは収まらない
「あんたのせいでアタシの宝石が割れちゃったんですケド!!どーしてくれるつもり!!!」
「う....ほ、ほら、他の頑張って見つけるから」
「アタシにはこれじゃなきゃダメだったんですケド!!」
「まあまあサンディさん、ナインさんだってわざとやった訳じゃないですから落ち着いて」
「そ、そうだよ、サンディ。サンディがまた昨日みたいにいなくなると困るからナインも心配して」
ソールとエイリークがフォローしてくれるが
「うっさいわね!!大体、昨日からあんた達なんなワケ!?アタシは別に一人でもヘーキなんですケド!仲間でもないのに、そんな甲斐甲斐しくされる筋合いないんですケド!!」
その言葉に全員がサンディをびっくりしたように見た。サンディがそんな風に僕達の事を言うのは初めてだったからだ
「.....おい、ギャル妖精?」
「ロードもそんな風に呼ぶのやめてって前も言ったわよね!?もう皆知らない!!ゼッコーだから!!!フン!!」
サンディはそう言って一人で割れた宝石を持って進んでいってしまった。しかし、誰も止める者はいなかった
しばらく黙り込んでいると、アサ君がキョロキョロと心配そうにしながら声を出した
「えっとー、なに?なんかあった?」
「......ちょっと、僕がやらかしちゃってサンディを怒らせちゃった。すごく怒ってて、またどこかに行っちゃった」
アサ君に力なく返事した。アサ君もそれを聞いて少し申し訳なさそうな顔をした
「そうなんだ。でも.....また一人は危なくない?」
「うん。でも.....仲間じゃないって言われちゃったのよ」
アサ君が今度は驚いた顔になった
「うぇ!?そんな事言ったの!?ずっと一緒にいたんだよね?」
「はい。俺達の中では一番最初からいたお仲間なんです」
「怒ってたにしても、流石に言い過ぎな気がするよ、俺。なんか.....そんな事言う人.....妖精?なの?」
「少なくとも俺はあそこまでキレてんのは初めて見たし、前は俺達の事仲間って言ってくれてたんだ。なんか、変だよな。いくらなんでもサンディはあんな事言わねえ気がするんだが」
三人が沈んでいる中、ロードだけはサンディに不信感を抱いているようだ。僕は、そう言われたショックで少し立ち直れなくなりそうだ
「サンディ......」
少しだけ目に涙が浮かんできた。僕のせい、だもんね
「........どうしますか?」
「どうするって言っても.......よし。とりあえずサンディの機嫌直してもらうためにも、宝石新しいの見つけてみるか。あれよりでけえの渡せばコロッと機嫌戻るんじゃねえの?それこそレインボージュエルとかよ」
ロードの提案にソールとエイリークも少し持ち直したようだ
「そうですね。よし、頑張ります!」
「うん。仲直りしないとだもんね、私も張り切る!」
「俺も!仲間のためだもんな、なんか見つけたら教えるね!」
「ナインも落ち込むのはわかるがとりあえずやるぞ」
ロードに声をかけられてなんとか僕も動き出した、動かないよりは何かしていた方がいいだろうな
「うん」
サンディの行ってしまった方向を見つめながら僕はロード達の所に行った
ロード「お、何やってんだよ、エイリーク」
エイリーク「あ、ロード。ねえねえ、あのぬいぐるみ可愛くない?」
ロード「ぬいぐるみぃ?ああ、あのモーモンのやつか。うわ、なんかブローチみたいなん付けてやがる、生意気」
エイリーク「なによー。ねえ、買っていいかな」
ロード「欲しいなら好きにすればいいんじゃねえの?」
エイリーク「ほら、必要はないでしょ?私のためだけってなんかさ....食材に多く使った方がいいし」
ロード「はぁ.....別にエイリークが使える金で好きなもん買っても誰も怒らねえよ。お前ももう少し気楽にいけよ」
エイリーク「うーん、そうなのかな」
ロード「仕方ねえな。俺が買ってやるよ」
エイリーク「え!悪いよー」
ロード「俺も別に買いてえもんないからいいって。ほらよ」
エイリーク「......あ、ありがとう。ロード、大事にするね!」
ロード「おー、俺だと思って丁重に扱えよな」