次の日、町長の家
「サンディ様、ご注文されていた物ができました。こちらでいかがでしょうか」
ジストさんの家に昼頃向かうと、既に昨日頼んでいたレインボージュエルがそれぞれはめられたハート型のブローチが並べられていた
「マジで!?チョー可愛いんですケド!早くて助かるー!ありがと、町長!」
サンディは上機嫌でそれを手に取った
「皆も早くつけてつけて、オソロしよ!」
「うん。ありがとね、サンディ」
「こういうの付けるの初めてです」
「わー、皆でお揃い!いいわね!」
「.........」
僕達はすぐに装備に付けてはしゃいでいたが、ロードは少し顔をしかめて取ろうとしていない
「兄ちゃん、つけないの?」
「......俺にこんなん似合わねえよ」
「ちょっとロード!早く付けてよね!」
「サンディ、俺だけ見逃してくれね?ちゃんと持ってはおくからよ。これ付けんのは......ちょっとよ」
「えー、まあ別にキョーセーじゃないからいいですケド...」
「わりぃな、失くさねえようにはしとく。気持ちだけ貰っとくわ、サンキュー」
ロードはサンディに軽く手を挙げて笑いながらポケットにブローチをしまった。なんとなくロードが気になってそのまま見つめてしまった
「ん?なんだよ、ナイン。あ、お前も俺につけて欲しかったとかか?」
「ううん、なんでもないよ。僕もブローチなんて付けた事ないからうっかり失くさないようにしないと」
「確かにー、ナインがこの中で一番うっかりなくしそうでコワいんですケド。ちゃんとあるか毎日確認してよね」
サンディがジト目で僕を見てくる。なんとなく自分でもなくしそうな気配がするので気をつけておこう。またサンディと喧嘩なんてしたくないからね
「あはは、うん。大事にするよ、気をつける」
「それではセントシュタインに戻りましょうか。ルイーダさんに無事荷物渡せた事とアサさんを送り返しましょう」
「あーあ、なんかドタバタしたからもう少し観光したかったなー」
「わがまま言ってんなよ、アサ。大体お前がブーブー言ってたから」
「まあまあロード、そんな風に言わないの。アサ君、またよかったらどこか観光に行きましょ。私達も楽しかったわ」
「エイリークさん....うん!俺もめっちゃ楽しかったからまた皆で観光したい!そのためにも俺、また頑張ってお金貯めとく!」
「貯金は大事ですからね。それじゃあ船まで行きましょうか。ジストさん、ありがとうございました」
「いえいえとんでもない。こちらこそ皆様の旅がよきものになる事をここからささやかに祈っております。ピエドラを救ってくださり本当にありがとうございました。またいつでも歓迎いたします、それではお気をつけて!」
ジストさんは深々とお辞儀した後、笑って手を振り返してくれた。僕達も手を振りながら船がある場所まで戻っていった
次の日、セントシュタイン城下町
リッカの宿屋
「ただいまー!」
アサ君が笑顔で宿屋の扉を開けた。すぐ近くにいた銀行員のレナさんが笑って話しかけてきた
「お、新米君が帰ってきた。おかえり、アサ。楽しかった?」
「あ、レナお姉さん。ただいま!うん、いろいろあったけどいっぱい宝石取れたんだ!」
「へー、本当に取れるもんなんだね。で、どうなの?持って帰ってきた?」
「記念に1個だけ。ほら」
宝石を売る時にアサ君も記念として一つ持ち帰っていた。紫の宝石だ
「キャーッ!本物!?アサ、最高よ!これ売らない!?経費にしましょうよ」
「ダーメ!これは記念なの!俺のだからダメ!」
アサ君はそう言って手に持っていた宝石をしまった
「えー......まあ仕方ないか。お、ルイーダが来たわよ」
話していると見つけたのかルイーダさんもやってきた
「おかえり、皆。ジストおじ様に荷物は届けられたかしら」
「うん。無事に届けてきたよ。ありがとうって言ってた」
「そう、よかったわ。わざわざお使いありがとね、ナイン。助かっちゃった。お礼としてはあれだけどゴールドでもいい?交通費代わりに」
ルイーダさんはゴールドが入った袋を渡してくれた
「気にしないのに」
「サンキュー」
お礼欲しさにやったわけではないから断ろうとすると、横からロードがスっと手を伸ばして袋を受け取った
「フフフ、まあ君なら受け取らない訳がないと思ってたわ。じゃあこれで決まりね。それとねナイン、善意なのはわかってるけどこういうのはあまり断らない方がいい事もあるのよ。嫌な捉え方をされる場合もあるから。例えば、お金じゃお礼に釣り合わないと捉えられたら厄介になるわよ」
「そうなんだ。わかった。ありがとう、ルイーダさん」
「こっちこそありがとね。それじゃあアサ、ゆっくり楽しんだでしょうから今日からまた働いてもらうわよ」
「はーい!じゃあナインさん達、兄ちゃん、またな!」
アサ君は笑って手を振った後、ルイーダさんの後をついて行った
「さて、僕達はどうする?」
「次の目的地とかは決まってるの?」
「まあ目星は付けてある。ただな......」
ロードは少し言いにくそうにしている。なんだかハッキリ言うロードが濁しているのも珍しい気がする
「何かあるんですか?」
「んー、俺が苦手ってだけだ。ピエドラは外れだったが前も言った通り人の多い場所なら女神の果実がやってきやすいだろう。だから次も大きな国に行こうと思ってる」
「そうね。今回のピエドラもたくさん人がいたものね。あまり黄金の果実は知らないみたいだったけど」
「よし。お前ら、脱ぐぞ」
「「「......え?」」」
ロードから出た言葉に固まった後思わず聞き返してしまった
「うわ......ロードマジサイテー。イミわからなさすぎるんですケド」
サンディは冷たい目でロードを睨みながら体を手で隠している。それを見たエイリークもハッとしたように少し顔を赤らめて自分の体を手で隠している。その仕草は、なんだろう
「ロードさん......」
ソールも呆れたような睨むような顔をしてエイリークとサンディの前に移動した
「な!?ち、ちげえよ!!誰がお前らみてえな裸見て喜ぶってんだ!!次の街行くにはこの装備は暑すぎるから脱いで軽くなれって話だよ!!」
ロードも三人の様子に怒ったような顔で怒鳴った。僕はロードの言葉に自分の装備を見た。それなりに頑丈な鎧と盾、今はなんともないがこれだと暑すぎるのか
「暑いって...もしかして、砂漠に行くんですか?」
「そうだよ。砂漠の国グビアナ王国だ、古来から存在する由緒正しい王家の王国。硬っ苦しいやつらばかりで融通効かねえし、どこもかしこも暑すぎるしで俺はとことん苦手なんだよ」
「サラッと言いましたケド、ロードアタシ達の事バカにしたわよね?どうするエイリーク、やっちゃう?」
サンディはボソッとエイリークに話しているがエイリークはもう気にする様子もない
「砂漠かー、昔お父さんに聞いた事あるわ。確かそこの国ではグルメフェスっていうのがあって、そこでお父さんとお母さんが優勝したとか」
「ほー、グルメフェスね。確か年に一回やってた気がするな」
「私もやってたら出てみようかな」
「いいんじゃない?エイリークの料理美味しいもん」
「そうですね。もし優勝まではいかなくてもきっといい所まではいきますよ」
「エイリークなら優勝間違いなしでしょ!ソール、そんな弱気なコト言わないでもらえる?」
「ふふ、ありがとう!」
「ソール、全員の装備を一旦変える。このまま防具屋に行くぞ」
「あー......わかりました」
ロードの言葉に少しソールが悩んだ素振りをみせた
「どうしたの?」
「いえ!久しぶりにお城に顔出そうかと思ってただけです。また時間ある時にします」
ソールにそう言われてふとソールの先輩の兵士長さんの事が思い浮かんだ。ソールも尊敬してたし、大事にしてくれとお願いされていた。ソールの姿を見せた方がいいかもしれない
「じゃあ行ってきなよ」
「いいんですか?」
「まあ別に金さえ渡してくれればどうとでもなるぜ」
「それじゃあ、申し訳ないですがお願いします」
ソールは自分のカバンからゴールドを渡した
「夜には宿に戻りますので!」
「うん、行ってらっしゃい。兵士長さんによろしくね」
「はい、ありがとうございます!」
ソールはわざわざ僕達に礼して宿を出ていった
「兵士長さんって?」
エイリークが首を傾げた。エイリークのいない時だし知らないよね
「ソールが加入してくれた時にね、ソールの先輩である兵士長さんからこんな手紙貰ったんだ」
僕は大事にしまっておいた兵士長さんからの手紙を出してエイリークとロードに見せた
「へー、兵士長さんからソールは可愛がられてたんだね」
「ま、あの真面目具合なら先輩からしたら優秀ないい後輩だろうよ」
「うん、だからソールも兵士長さんも会いたいだろうなと思ってさ。勝手にごめんね」
「全然!ナインは優しいね」
「そうなのかな」
ソールside
城の前に来ると兵士達が門番をしている。一人が俺に気づいた
「ん....?お前、ソール!!」
「え、ああ、お疲れ様」
鎧姿だと誰かわからないが、なんとなく声色から同期のカネツさんのように思えた。俺と同じタイミングで兵士に入り、俺を最も嫌っていた人物だ。剣の腕はかなり高いが性格に難がある。厄介な人に出会ってしまった
「なんだ?兵士がつまんなくて冒険者に逃げた弱虫野郎が城に入れるとでも思ってんのか?」
「(そうだ....。ナインさん達といて忘れそうになっていたけれど....俺は、こういう扱いだったんだよな)」
久しぶりの罵倒に少し驚きつつも、どこか懐かしい感覚を覚えた。こんなのよくないよな
「なんとか言えよ!」
「カネツさん、門番である仕事の自覚はあるの?今、君がしている行動は門番としての行動じゃない。今の君の仕事は城に入る人の行動を監視しながら」
俺がそう言っている最中にカネツさんは舌打ちしながら兜を外して、蔑むような顔で俺を見て胸ぐらを掴まれた
「てめえ....なに偉そうに指図してんだよ!よくそんな強気に俺に言えたもんだな!!前までお前はヘラヘラしてただけだってのに!!」
「そうかも。冒険者になってから少しは変われたのかもね」
笑ってカネツさんを見ると頭に血が上ったのか顔を赤くした
「っっ!!馬鹿にしやがって!!こい、訓練場だ!!今すぐてめえをぶちのめしてやる!!」
カネツさんは俺の返事を聞かずに引きずるように俺を連行していく。流石に歩けるから途中で振りほどいたけど、勝手に門番の仕事放棄していいのかな
訓練場
懐かしい光景だ。そんな時が経った訳でもないのに、いろいろありすぎて随分久しぶりに思えてきた。何人か俺の姿を見て驚く者や目を背ける人もいた
「わからせてやるよ!!ソール!!前からお前だけ兵士長に気に入られててムカつくんだよ!」
「先輩は真面目に仕事をする人を気に入りやすいだけだよ。カネツさん、君がもう少し真面目に仕事に取り組めば」
「うるせえ!!!とっとと武器取れよ!!ぜってえぶちのめしてやる!!」
カネツさんは前から思い込みが激しいというか、決めたら中々考えを変えてくれないからこうなったらもう動かない。ため息をつきながら俺は剣と弓を取った
「弓?遠くからチマチマやるってか?弱虫なお前に、ピッタリじゃねえか!」
カネツさんは俺が武器を取るやいなや合図もなしに即座に俺に走り込む。前より少し早くなっている
「合図くらいしよう、カネツさん」
その反則じみた行動にまたため息をつく。その間に間合いに入り込んできた。俺を懲らしめてやろうとギラギラとした殺気立つ目で俺を見ている。前の俺なら怖くて防げなかったかもしれない
「貰った!!」
でも、残念だったね
ガアン!!
激しく剣のレプリカがぶつかり合う大きな音が鳴る
「チッ!」
防いだ事に少し驚かれつつも、即座にカネツさんは俺から離れた。防御に使った剣を上に放り投げる。カネツさんはその剣に目を取られた。俺から目を離した隙に俺は弓を構え放っていた
「バーニングショット」
パァン!!
矢の先端に僅かに炎を纏い一直線に放った。わざと狙いを外した矢はカネツさんの頬スレスレを飛んでいき、訓練場の壁に当たり破裂した。掠めた小さな傷が炎で火傷に変わり、思わずカネツさんが手を頬にあてた
「あっっっちぃ」
ありえないと思っているような顔で俺を見ている。残念だったね、俺はあれから強くなったよ、ナインさん達のおかげで
破裂した音を聞いて上から兵士長さんが駆け下りてきた
「どうした!?なんか大きな音が......ソール!?お前どうしてここに!」
「お久しぶりです。顔を出そうと思って」
「顔を出そうってお前......ここじゃなくてもいいだろう。それにカネツ!!お前門番は!?」
「.........すいません」
カネツさんは深々と頭を下げて訓練場を出ていった。見ていた他の人達も慌てて作業を始めた
「.........カネツの頬のあの火傷、ソールお前か?」
「はい。イチャモンを付けられてしまったので....反則までしてきたのでやり返してしまいました」
俺が少し申し訳なさそうに言うと先輩は少しキョトンとした後、大きな声で笑った
「はははは!!なんだ、ソールお前なんか変わったな!どうだ?冒険者は!楽しいか!」
「はい。いろいろな場所で頑張ってますよ。いろんなのとも戦ってます。宝石にしてくる魔物とか、海のぬしなんかもいたし、大きな人喰い蜘蛛とか」
「.........な、なんかやべえやつらばっかだな?あの旅人めー、俺の可愛いソールにそんなやばすぎる戦いばっかりさせやがって。まあ....ソールが元気ならいいか。よかったな」
先輩が戸惑ったり怒ったりいろんな表情をした後に優しく俺の頭を撫でてくれる。大きな手の平が懐かしい
懐かしい....?
ふと思った感情に自分で疑問を持って首を傾げた
「王様にも顔見せていけよ。フィオーネ姫様なんてたまに聞いてくるんだぜ、今頃どこで冒険してるのかってな」
「そうなんですか!それなら少しお話もしないとですね」
そんな疑問は放り投げて、先輩と玉座に向かっていった。どのお話をしようかな
兵士長「なんっだ、この部屋!!」
ソール「あははは....まあそうなりますよね。気にせず入ってください。ほら、お菓子もありますので」
兵士長「いや、気にはなるだろ。お邪魔します、んで?わざわざこんな所に呼んでどうしたよ、ソール」
ソール「ナインさんから許可貰ったのでよかったら軽くお話しようかと。そういえば先輩、先輩のお名前聞いてもいいですか?」
ジーザ「俺?なんだ、忘れたのか?ジーザだ。聞き覚えないか?」
ソール「あ、そうでしたね。いえ、ずっと先輩呼びしてたからつい」
ジーザ「まあ仕方ねえわな!ソールはあれから強くなって、俺を越しちまうかもな?」
ソール「そんな!先輩にはまだまだですよ」
ジーザ「俺より若いんだから未来は明るいぜ。大きくなったもんだな」
ソール「先輩....。また今度、稽古お願いします」
ジーザ「ああ!もちろんだ!」