お風呂場
男性禁止の花園。王女様や召使い達が肌を綺麗にしており豪華な広いお風呂場となっている
「結局こうなっちゃった」
「ま、もう後はなるようになるデショ。ナイン達がいない分、アタシ達で張り切っていかないとねー」
「う、うん。ちょっと不安だけど」
私とサンディはここへ王女様と一緒にお風呂にやってきていた
時は戻って玉座の間
「「「「え?」」」」
ユリシス様からのまさかの提案に全員でポカンとしてしまう
「私、別にこの果物食べたいわけじゃありませんの。スライスしてお風呂に浮かべるの。そしたらもっと綺麗な肌になるわ。エイリーク、あなたもどう?一緒にくれば止められるわよ」
女神の果実をそんな風に使うの!?ユリシスさんからのまさかの使い道に僕は更に驚いた
「なんだよその使い方」
「でも、食べないなら......いいのか?」
「いやいや!ダメに決まってんデショ!寧ろ欠片でもヤバいのにそんなスライスされたらもっとたくさんの人間が被害にあうカモだし!」
ソールの言葉にサンディが慌てて否定した。確かにサンディの言う通りだ
「あの...そもそもそれをやらないってお考えとかは」
「そんなのムリよ。私、この使い方が一番だと思うの。止めたいなら止めてみなさい」
エイリークの言葉もユリシスさんは気にした様子もなくプイッとそっぽを向かれた
「うーん......わかった。じゃあ一緒に行くね」
「ええ、そうしましょう」
エイリークは少し迷ったようにしながらも、ユリシスさんの考えに乗っかった
「サンディもお願い」
「もち!アタシもサポートするし!ナイン達は待っててよね。ってゆーか、勝手に入ったらゲキオコだから」
「う、うん」
「でも、危なくなったら呼んでくださいね」
「そうだぜ。女神の果実が暴走したらエイリークとサンディだけじゃ絶対対応できねえからな」
ソールとロードは少し心配しながらサンディに言った。二人の言う通りいざという時の突撃は考えておかないとだね
「それはそうね。そん時はヨロシク!」
「あのー...ユリシス様。お昼の件なのですが」
コックさんが耐えかねたように声を出した
「あー、お昼なんてどうでもいいわ。それより大事な事があるんだから」
「ええ...。で、ですが、ユリシス様のお題にかなった物をこちらのエイリークさんが提案してくださったのです」
「ん?エイリークが?」
興味なさそうにしていたユリシスさんが少し興味を示した。うんうん、サンドイッチ美味しいよ
「はい!王女様の臭くなくて固くなくて酸っぱくなくて苦くなくて、芋でも卵でもシチューでもないものの希望の物です。私が作ったサンドイッチ!クーラーボックスを使ってるから新鮮なんだよ!食べてみて!」
エイリークはサンドイッチをユリシスさんに渡した
「へー、あなた料理ができるの。うちの料理人にならない?こいつ文句ばっかりで使えないのよ」
「ごめんね。私はやりたい目的もあるからそれは無理だけど、こうやって料理なら出せるよ」
「そう。毒ではないわよね?」
「もっちろん!毒だったら処罰してくれて大丈夫だから」
「ふむ」
ユリシスさんは一口サンドイッチを食べた
「ほう.....これは......ん......」
訝しむようにしていたユリシスさんは一口食べるとさらに一口、また一口とパクパク食べていく。気に入ってくれたかな
「どうどう?感想教えて」
「悪くないわね。少し庶民的だけど、飽きてきた味でもないし苦くも酸っぱくもない。エイリーク、これもっと作りなさい」
「やったー!ありがとう、王女様!お風呂の後頑張って作るね!」
「ええ」
コックさんと一緒に僕達も少し胸を撫で下ろした
お風呂場
「ま、サンドイッチ気に入ってもらえたのはよかったわよね。そりゃエイリークの料理気に入らないとか言われたらアタシマジでブチギレだから」
「私も安心したよー。さて、王女様はどこかな」
ユリシス様が服を脱いでやってくるまで少し待っていると、召使いさん達やお着替えさん達と一緒にやってきた
「さてエイリーク、あなたにはこの果実を切ってもらおうかしら。料理人ならできるでしょ?」
「ええ!?私が!?ダメだってば」
「ちょっと!この王女、アタシのエイリークに何させようとしてくれてるワケ!?」
サンディが怒った顔で王女様を叩いているが残念な事に効果はない
「出来ないならいいわよ。それならここからエイリークは出ていって他の人に切ってもらうから。危険な事を知ってるあなたなら安全に切れるでしょ?」
「そういう問題じゃないんですケド!!」
「ど、どうしよ〜...」
ナインside
僕達は玉座の間から出た所にある2階の庭で体を動かして過ごしていた
「.......そこ!」
ソールの狙いをすました矢がヒラヒラと落ちる木の葉を貫いた
「コツ掴んだみてえだな。いい精度だ」
「おー、ソールすごーい」
「中々動きを予測して当てるのは難しいですけど、いい勉強になります」
何十発と外しながらもだんだん精度を上げようやく出来るようになった。僕は雷を鎧に纏う魔法防御を、ロードは新しく使えるようになった水の技を使った剣術を新しく特訓していた
「少し喉乾きましたね。それにしてもこんな2階でも立派な池があって凄いですね」
僕達の側には庭を飾る大きな池がある。庭の中心にある立派な池だ
「便利だよねー、涼しいし」
「......ま、何かには使えそうだよな」
そんな風に話していると
「ん?お前......」
庭の奥から綺麗な女の人が現れた。カッコイイ鎧を身につけた騎士のような人だ。その人はソールを見て表情を変えた
「ん?あ、こんにちは」
「お前......精霊が使えるのか」
「え、精霊って......あ!桜の?」
ソールのその言葉に僕もブルー村での事を思い出した。確かあの後ソールに桜の精霊がついたと教えられたんだっけ
「ああ、そのようだ。意志の強そうな女の子だ。珍しいな」
「とある縁がありまして。俺には見えないんですよ、いるのは本当なんですね。よかった」
「悪いがお前は?」
「すまない、名乗るべきだったな。私はパスリィ。パラディンだ」
「パラディン?」
「えー!パラディン!?あの聖騎士様ですか!?」
パスリィさんという方の自己紹介で出たパラディンというワードにソールが思いっきり反応した。なんか凄いのかな
「知っていたか、青年の名前は?」
「俺はソールといいます。レンジャーをやらせてもらってます。あの!俺、セントシュタインの兵士でもあるんです。パラディンは兵士の憧れ!屈強な盾と防具で仲間を守り、聖なる剣と心で敵を倒す憧れの職業!本物に会えるなんて......!」
「なんかこいつ、キャラ変わったな...」
キラキラしたような目でパスリィさんを見るソールにロードが少し呆れたような引いたような声を出した
「へー、パラディンってカッコイイんだね。パスリィさん凄い」
「お褒めに預かり光栄だな。ソールの言う通りだ、そして精霊と心を通わせて戦うのもパラディンの戦い方の一つ。ソール、君のその桜の精霊と心を通わせられればパラディンとしての道が開ける。どうだ?精霊は特殊な者にしか見えないし、興味を示さない。やってみるか?」
「俺が......パラディンに!はい!やってみたいです!」
「ああ、その意気だ。まずはレンジャーとして桜の精霊の事を知っておくのだ。知る事こそ心を通わす第一歩。何かあれば私を尋ねてくれ」
パスリィさんはソールに名刺を渡して去っていった
「わぁ.....かっこよかったなー」
「よかったね、ソール。いつかパラディンになれるかもよ」
「はい!」
「お堅いねー、俺はあんなんゴメンだぜ」
「確かにロードが鎧着てるのあまり想像つかないかも」
パスリィさんが着ていたような鎧をロードと重ねてみると少し不思議な感じがしてふふふと笑ってしまった
「ま、それはいいとしてそろそろ風呂場の方に俺達も待機しといた方がいいんじゃねえか?なんかあったらエイリークかサンディが呼んでくれるだろ」
「そうですね。もしもの時のために向かっておきましょうか」
「うん、わかった」
僕達は1階にあるという風呂場の方へと向かっていった
エイリークside
「ねえ、そろそろ諦めてほしいんだけど」
私はまな板の上にのせられた黄金の果実を前にずっと渋っていた。王女様が痺れを切らしたような顔になってきている
「ほっときましょ、エイリーク。こんなのの言う事聞く必要ないって!」
サンディはそう言うけど、このまま王女様が納得してくれないと回収もできないよ
「う〜......じゃ、じゃあ少しだけだよ?本当に少しだけ」
「あら、ようやくその気になってくれたの。遅いわよ」
私のその言葉に王女様も少しイライラがなくなったみたい
「ちょっとエイリーク!マジで危ないかもしれないって!」
「でもサンディ、このままじゃ何も始まらないもん。とりあえず、少しだけやってみる。私に何かあったらすぐここ飛び出してナイン達呼んで」
「......わかったわよ。何もない事祈るケド、少しでもヘンだったらスグ言いなさいよ。アタシ、エイリークがあんなバケモノみたいになったら耐えられないから」
サンディは心配そうな顔をしながらゆっくり離れた。友達を悲しませるのはよくないもんね。私はゆっくり黄金の果実の先端を切り落とした
「わぁ......」
あまり触ったような感覚はなく、スッと刃が通った。薄透明な黄金色の綺麗な断面に言葉を失う。これは確かにすごく綺麗だわ。特になにか起こったような変化もない
「ほら、何もないでしょ。食べたら危険なのはエイリークが言った通りなのかもしれないけれど、切るくらいならなんて事ないの。さ、エイリーク。それがわかったんだからどんどん切っていって」
王女様も果実の美しさに目を惹かれつつ、はやるようにそう言った
「エイリーク、マジで大丈夫なワケ?」
「うん。私は大丈夫。でも、王女様、やっぱりこれ人間には有り余るような不思議な力があってこれ以上は」
「またそれ!?もう!それはわかったから早く切ってちょうだい!皆待ってるんだから!」
「でも......」
そんな風に王女様と話していたから私は気づかなかった。まな板の置かれたテーブルの上にアノンちゃんがこっそりやってきていたなんて
最初に気付いたのはサンディだった
「ちょ、エイリーク。そこ、あのペットが」
「え?」
私がサンディの言葉に振り返ると、いつの間にかアノンちゃんがまな板の上におり、私の切った黄金の果実の匂いを嗅いでいた
「アノンちゃんも早くお風呂入りたいわよねー?ほら、早くしなさい!」
「待って、エイリーク!そのペット食べちゃうかも!止めて!!」
確かに!!マズイ!
「ダメ、アノンちゃん!!」
私のその必死の言葉はかなわず、アノンちゃんは小さな口でカプリと黄金の果実を噛んだ
その瞬間
ずずずずず
アノンちゃんを中心にどんどん煙がやっていきアノンちゃんが見えなくなる
「アノンちゃん!?どうしたの!?」
「ヤバい!!あのペットにやられたわ!」
「皆、一先ず離れて!!!」
慌てる王女様や召使いさん達をとにかく引っ張って離れる。周りはどんどん煙に包まれていき、煙の中から大きな体をした何かが出てきている
お風呂場であり皆あまり服を着てないのをいい事にお風呂場に飛び込んだ
「何が起こってるのよ!!」
全員でさっきまでいた場所を見た
「グオオオオ!!」
「「「「「キャーーーーッッ!!」」」」」
お風呂場の天井に届きそうなほどの巨大な黄色い二足歩行のドラゴンが大きく吠えた。その姿と声に全員で思わず叫び声をあげた
どうしよう、これ
エイリーク「うー、サンディと一緒とはいえ私一人だとちょっと不安だよー」
ソール「仕方ありませんよ。俺達もお風呂には行けませんから」
エイリーク「そうだけどさー、ナイン達がそんなところ入ったら私も怒るし」
ナイン「せっかくだからお風呂楽しんできなよ。お城のお風呂なんて凄そうだよ」
エイリーク「お気楽ー。でも、それもそうかもしれないわね。立派なお風呂なのかしら」
ソール「ふふふ、そうですよ。エイリークさん、あまり肩肘張らずにリラックスしていけば大丈夫です。何かあれば俺達も待機してますから」
エイリーク「うん....。そうよね!せっかくだし楽しむことにするわ。ありがとう、ナイン、ソール」
ナイン「いってらっしゃーい」