しばらくして
ニード「くっそ、マジでふざけんなよ、ナイン!!」
ナイン「ごめんってば、ニード」
あの後、奥に生えていた薬草や大きな蜘蛛の糸を取ったりしていたが、僕が方向感覚がないせいで元の道に戻れず、ニードが持ってきてくれていた地図すら読めず、魔物を振り払いながらニードがなんとか元の看板のある道まで戻ってきた
ニード「はぁ....ようやく戻れた。案外遠くまでウロウロしてたんだな」
ナイン「楽しかったね、冒険」
ニード「うっせえ!ホイミがなきゃ体力危なかっただろうが!命の危機まで味わう必要はなかっただろ!」
ナイン「まあまあ怒らないで。さて、峠の道まで行こうか」
ニード「流石に時間かかりすぎてるしな。この道をまっすぐだ。いいな、まっすぐだぞ?」
ナイン「大丈夫だってー」
ニード「さっきの見た後だと信用ならねえなあ!」
峠の道
大きな山の中にある森を切り分けたような場所で、周囲にはたくさんの木々があるが、大地震の影響であちこち木が倒れていたり、落石も多い。道もでこぼこしており少し歩きにくい
ニード「ようやく着いたな。土砂崩れが起きたのはこの森の奥らしいぞ」
ナイン「わかった。少し進んでみようか」
少し進んだ先には
そこには木々をなぎ倒した跡と共に金色の大きな列車が一両落ちていた
ナイン「な!?こ、これって!!」
動く気配も誰かの気配もしないが、見間違うはずがない。これはまさにあの時、黒い雷によって墜落した天の箱舟の先頭を走っていた車両だ。まさかこんな所に落っこちているとは
僕が驚いた顔で箱舟を見ていると、不思議そうな顔をしたニードが僕の肩を叩いてきた
ニード「なーにまたボケっとしてんだよ?普通に地震で木が倒れてるだけだろ。そんなに驚くような事か?相変わらず変なやつだな」
ナイン「(ニードでも見えてないのか。......まさか、僕はまだ天使、だから?)」
その考えに少し体の力が抜けていく
ニード「土砂崩れはこっちだぞ。大丈夫か?」
ニードが少し離れた場所でこちらへ手を振っている。とにかく、考えないようにしよう。見える、だけだ。僕には......どうしようもできない
天の箱舟に触れようかとも考えたが、余計な事はしないでおこう。そのままニードの元に向かっていく
ニードとナインが見えなくなった頃、天の箱舟の場所では謎のピンクの光が現れた
???「なにあいつ.....?もしかして、この天の箱舟が見えてたわけ?そんな事ありえる?」
しばらくニードと共に進むと、セントシュタイン城への案内の看板の奥に大きな土砂崩れが起こっていた。森が崩れて大きな壁のようになって道を塞いでいる
ニード「.....なんてこった。土砂崩れってこれかよ、正直なめてたぜ。こんなの俺とナインだけじゃどうにもなんねーな。......くそ、上手くすりゃ親父のハナをあかしてやって村のヒーローになれたってのに」
ナイン「仕方ないね、やっぱり通れなかったし戻ろうか。どんなのか見れただけでも充分だよ」
その時
???「おーーい!!」
ニード「うひゃ!」
土砂崩れの奥から誰かの声が聞こえてきた
???「そっちに誰かいるのかーー!!!おーーい!!いるなら返事してくれー!」
ナイン「ニード、向こう側に誰かいるみたい」
ニード「お、おう。おーーい!!ここにいるぞ!ウォルロ村のニードさまだ!!」
兵士「やはりウォルロ村の者か!我らはセントシュタイン城に仕える兵士だ。王様から峠の道の土砂崩れを取り除くよう命じられてやってきたのだ」
ニード「聞いたか?セントシュタインの王様が動いてくれたらしいぜ」
ナイン「うん。凄いね、これはいい報告が出来るよ」
ニード「へへ、だな!問題は解決したも同然だな。俺達がわざわざ来るまでもなかったって事か」
兵士「ウォルロ村の者よー、一つ取り急ぎ確認したい事があるのだ。地震の後、ウォルロ村にルイーダという女性が来たという話は聞いてないか?城下の酒場に務めるご婦人だがウォルロ村へ行くといって町を出たきり消息が知れないのだ」
ルイーダさん、って人か。聞いた事ないなー
ニード「ルイーダねぇ....。知らねえな!大体そんな女がうちの村に何の用があるってんだ!?」
兵士「そうか。実は彼女はキサゴナ遺跡からウォルロ村へ向かったという噂もあるのだ。だが、その遺跡も地震の影響なのかいつの間にか道が塞がってしまったようで確かめる方法がないのだ」
ナイン「イザコザ遺跡?それってさっき僕達が話したあそこ?」
ニード「キサゴナ遺跡な、なんだよそのトラブルめいた名前。そこで合ってるぜ。まさか女一人であの遺跡を抜けようとはしないだろ。何かの間違いじゃねーのか?」
兵士「わかった。とにかく、村人達にはもう間もなく道が開通すると伝えておいてくれ。出来れば他の村人にもルイーダさんの事を聞いておいてもらえると助かる」
ニード「おーけい、わかった!このニードさまがバッチリ伝えておくぜ!」
ナイン「来た意味あったね、よかった」
ニード「へへ、村の皆喜ぶだろうな!」
ニードは嬉しそうに笑った。きっと、村の皆の役に立てたのが嬉しいんだろうな
ニード「よし、帰ろうぜ、ナイン。あ!しっかり俺の後ついてこいよな!」
ナイン「ふふふ、うん」
ウォルロ村 村長の家
僕達は村長にこの出来事を報告した
村長「.....なるほどな。もう間もなくセントシュタインの兵士達が土砂を取り除いてくれるわけか」
村長は話を聞いた後目を瞑りながら静かに言った
ニード「ああ。この事を知ったら村の連中もきっと安心するぜ」
村長「何を得意げになっておる!二人だけで魔物がおる中峠の道まで行くなど危ないだろう、この馬鹿者が!!」
村長は目を開いた後怒った表情で机をバンと叩いた
ニード「な.....なんで怒られるんだよ?俺とナインが行かなきゃわかんなかった事だぜ」
村長「別に知らなかった所で道が繋がれば自ずとわかった事だ。命を危険に晒すほど価値のある情報ではないな。だから馬鹿だと言っておるのだ」
ニード「........そうかよ」
ニードは下を向いて唇と手を強く握りしめている
ナイン「少し話に入りますね。村長さん、勝手な行動だったのはごめんなさい。でも、馬鹿というのは酷いと思います。ニードは村の皆を安心させたくて、例え危険でも旅人の僕に頼んで、ニードも魔物と戦いながら峠の道まで行ったんです。
村の皆を安心させたい、その気持ちは本当に馬鹿なんですか?僕には、とっても凄い事だと思います。村のためにこうやって動いてくれる人がいたから、より早く情報も得れましたし、より早く村の皆も安心します。危険な行為だったのはわかっていますが、こうやって無事に帰ってきました。せめてニードには頑張ったねとかよくやったの言葉くらいかけてあげてください」
ニード「ナ....イン」
村長「.......ふむ。はぁ、すまないな、村人よ。確かに我が息子だからといって、言葉がよくなかったな。悪かった、ニード。馬鹿は言い過ぎた、お前がそんなに戦えるとも思っていなかった。村のために頑張ってくれてありがとう」
ニード「親父.....こ、これくらい俺様にとっちゃ当たり前だぜ!」
村長「だが!!今旅人も言ったように危険な事をしたという事は忘れるなよ!私はお前が心配で馬鹿と言ったのだ。お前の命に比べたら今の情報などいらん!村のために動いてくれるのは嬉しいが、他の事で動くのだ!」
ニード「ぐ....わかったよ!あともう一つ、ルイーダとかいうねーちゃんがこの村に向かったまま行方不明だから探してほしいって話だったぜ!」
その時、村長の部屋の前からドタバタと走る音がした
リッカ「ちょっと!その話本当なの!?」
リッカちゃんが焦ったような顔で部屋にのりこんできた
ナイン「リッカちゃん!?」
ニード「リッカ!なんでここに?」
リッカ「なんでってあんたがナインを村の外に連れ出したりしてるからでしょう!?って、それよりもセントシュタインのルイーダさんが行方不明って本当なの!?」
ナイン「リッカちゃん、知ってるの?」
村長「そういえばリッカはセントシュタインの生まれだったな。知ってる人なのかね?」
リッカ「父さんのセントシュタイン時代の知り合いにそんな名前の人がいたはずなんです。もしかして、ルイーダさんは父さんが死んだ事を知らなくて会いにこようとしてるのかも」
村長「なるほど。しかし、心配なのはもっともだが探そうにも手がかりがなくてはな」
ナイン「そういえばイザコザ遺跡から来ようとしてたんじゃないかって言ってたよね」
ニード「だからキサゴナ遺跡な。そうそう、そうだったはずだ」
村長「うーむ、それが本当だとしたら探しに行くのは危険すぎるな。あそこは昔から魔物がいたが、この大地震でより危険になっておるはずだ。リッカ、今日の所はナインを連れて帰りなさい。あまり思い詰めぬようにな」
リッカ「は、はい....」
心配そうな顔をしたリッカちゃんの手をゆっくり引いて村長の家を出ようとすると、ニードと村長が送り迎えしてくれた
ニード「ナイン、今回はありがとな。楽しかったぜ」
村長「すまなかったな、旅人。ニードが迷惑をかけた、私もな。今回は村のために頑張ったニードを少しまた褒めてやろうと思う」
ナイン「はい、ぜひそうしてあげてください。ニード、またね」
村長「ふむ、いいのかね?私がこんな所に呼ばれて」
ナイン「はい、ぜひぜひ。ニードは少し無茶をするから心配ですよね」
村長「うむ、子どもの頃からそうでな。いじっぱりでやんちゃで大変なのだ」
ナイン「でも、そのニードに僕は今回たくさん助けられました。魔物図鑑を持ってきて魔物を教えてくれたり、地図も持ってきて案内してくれました」
村長「ほう、あのニードがそんな事を。どうでした?旅人から見てニードの戦いぶりは」
ナイン「もちろん慣れているとは言えませんが、コツを掴むのは上手いように見えましたよ。何回かやるだけで攻撃に躊躇がなくなりました。まあ、攻撃ばかりな所はありましたが」
村長「そうか、剣に興味があったからな。しかし、それならばニードはもしや門番みたいな役割が向いておるのか?」
ナイン「門番がどこまで戦える必要があるのかはわかりませんが、もしもの時としての戦力にはなれると思いますよ」
村長「ありがたい情報感謝する。ニードもなにやら旅人を信頼している様子だった。これからもニードをよろしくお願いいたします」
ナイン「はい、もちろんです。僕の大事な友達なので」