次の日、アンナちゃん家族の家
朝ごはんを食べ終わり出発の準備を整えてから皆で家の前にやってくるも、家の電気は消えていた
「あれ、まだ寝てるのかな」
「あと少しでお昼ですよ。留守ですかね」
コンコン
扉をノックするも返事も物音もかえってこない
「あれー?本当にいないかもしれないわね」
「......なんか、嫌な匂いがする。入るぞ」
ガチャ
ロードが眉間に皺を寄せて扉を開けた。鍵はかかっておらず、扉を大きく開け放った先には
「!?」
全員が思わず息を飲んだ。信じられない光景に目を疑った
目の前に広がっていたのはベッドに横たわるアンナちゃんと、その傍で首を吊っていたナンシーさんだった。ナンシーさんの足下には椅子が倒れている
「え......なんで?え?」
「ハ?え、イミ、わかんなすぎ」
「は、はやく助けないと!」
エイリークの言葉にソールとロードが動いてナンシーさんを縄からおろすも
「ダメだ。もうなくなってる。それなりに時間はたってるみてえだ」
「どうしてですか!!アンナさんは」
エイリークがアンナちゃんに手を当てる
「......しんでる。い、いやあああ!!!」
エイリークが冷たくなったアンナちゃんを抱きしめて涙を流す
僕はずっと信じられずに立ち尽くしていた
......僕が、ランプを、渡してしまったから......?
僕のせいであの優しい二人がしんでしまうきっかけになったんじゃないかと考えて脳みそが支配される。その時、僕の体を揺さぶる気配に感覚を取り戻す
「おい、ナイン、ナイン!」
「ハッ!あ、ロード」
「しっかりしろ。お前の力、使えるか?何があったのかを知りたい。お前も知りたいだろ?この二人がこんな半日でしんじまうなんてただ事じゃねえ。頼む、お前が頼りだ」
「あ、うん、うん。今やってみる」
僕は倒れていた椅子に触って集中する。キィィンと頭の中に甲高い音がする。頭の中に映像が流れ込んできた
ナンシーさんが昨日、あれからアンナちゃんの前でランプを開けた
ランプからモクモクと煙が立ちのぼり、中から緑色の肌に紫の服を着てターバンを巻いた者が出てきた。人ではなさそうだけど、こいつはなんなんだ
「あなたが私を呼び起こしたのですね」
「は、はい。あの、あなたは?」
「私はランプのまじん。さあ、あなたの願いを教えてください」
「!!あの、私の娘のアンナは生まれつき重い心臓病を持ってて、もう少しで命が尽きてしまうんです!娘の命を助けてくれませんか!」
ナンシーさんはランプのまじんの言葉に顔を明るくして、願うように祈りながら必死にそう言った。しかし、その後に返された言葉は僕の想像を絶するものだった
「ふふふふふ、そうですか。あなたの願いはそうなのですね。では、あなたのその大切なお願いを、奪ってあげましょう」
「え?」
ランプのまじんはアンナちゃんに手を向けた。まじんの緑の手が怪しく光り始める
「うっ...ううっ、く、苦しいよ」
アンナちゃんが胸を押えて苦しみ始めた
「アンナ!!なんで、どうして!!あなたは願いをかなえてくれるんじゃなかったのですか!!」
「そんな事しませんよ。人間は何をそんな綺麗事を、私はこうやって願いを叶えられると愚かに信じた人間達の絶望する顔が大好きなのです。それではあなたの願い通り、大切な人の命ちょうだいいたします」
「やめて!!!」
「おかあ......さ...ん」
ナンシーさんは必死にアンナちゃんを抱きしめるがアンナちゃんは苦しそうにしてナンシーさんを握りしめている
その手が力なくプランと垂れ下がった
「あ......ああ......アンナ?アンナ?」
「それではさようなら」
ランプのまじんはひとりでにランプへ戻り、そのままランプごと消えていった
アンナちゃんは目を閉じてピクリとも動かない
「あああ......ああああああ!!!!」
ナンシーさんの泣き叫ぶ声が響き渡る。ナンシーさんの悲しみも絶望も街の外に流れる陽気な音楽が全てかき消していく
ナンシーさんはしばらくずっと泣いていたが、ふと何かを決めたように動き出した。メモに何かをかきのこし、椅子と縄を準備して、アンナちゃんをベッドに横にした
「ごめんなさい、ごめんなさい。アンナ、あなたを苦しませる事しかできなかった私を許して。ごめんなさい、ナインさん、ソールさん、ロードさん、エイリークさん。私はもうこんな世界耐えられません。ごめんなさい」
ナンシーさんは涙を流しながらそのまま首を吊った
そこで映像は終わった。僕は途中から手に力を込めすぎて爪が手のひらにくい込んで血が流れているのすら気にもとめずにずっと力を込めていた
ランプのまじんのあまりにも酷い残酷さと、それを用意してしまった愚かすぎる僕自身への怒りが胸の内を暴れて収まらない
「大丈夫?ナイン。なんかみえた?ヘーキ?」
サンディが心配そうに見つめてきた
「......うん。怒りでどうにかなりそうだけど。あのランプ、なんでも願いをかなえるランプなんかじゃなかった。ランプのまじんが願いを奪うものだったんだ。アンナちゃんの命を願ったから、ランプのまじんはアンナちゃんの命を奪った!!それに絶望したナンシーさんは......懺悔しながらしんでしまったんだ」
「「「「!!」」」」
僕の言葉に全員が目を見開いた
「そんな......」
「ランプが、そんなものだったのかよ」
「ナニソレ!?マジで許せないんですケド!!」
「ナイン、これ.....」
エイリークがアンナちゃんの所に置かれていた紙を見せてくれた。ナンシーさんの字だろう
ナインさん達へ
ランプを見つけて持ってきてくださりありがとうございました。ですが、どうやら私達は最初から全て騙されていたみたいです。あのランプは願いを奪うランプでした。私が願ってしまったばかりに、ランプのまじんによってアンナが息を引き取ってしまいました。ごめんなさい、明日は私にはもう来ないようです。アンナを最後に苦しませてしまった私など、母親を名乗る資格はありません。ごめんなさい、アンナ。ごめんなさい、ナインさん達。私は心が弱いのでアンナの死が耐えられません。私も共にいかせてもらいます。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
ここからはずっとナンシーさんのごめんなさいが続いている。ナンシーさんの気持ちを思うととてもつらく悲しい気持ちになる。それと同時にランプのまじんへの怒りが湧き上がる
ソールとロードも顔つきが鋭くなった
「おい、お前ら。復讐の時間だ、そのゴミクズをスクラップにしてやろうぜ」
「そうですね。消し去ってしまいましょう」
「ぐすっ...うん。私も絶対許さない。特大のぶちかましてやるんだから」
「皆、いくよ」
「「「「「おー!」」」」」
流れる涙を拭って立ち上がり、僕達は再びあのランプがあった場所に向かった。この怒りも悲しみも絶望も全て、あいつにぶつけてやろう。そうでもしないと気が晴れそうにない
ロード「誰もいねえか。まあそりゃそうだよな。あんな事があった後だ、誰もここに来る余裕はねえわな」
ロードは一人で椅子にどかっと座った
ロード「とりあえずあいつをふちのめしたらあいつらのメンタルも心配してやらねえとな。ぶっ壊れは、しねえだろうが相当ショックだろうな。あれは堪える......俺だってそうなんだからよ」
ロード「ま、ってわけで俺もここらで退散。またな」