次の日、船の中 食事場
朝ごはんのいつもの時間に俺とロードさん、エイリークさん、サンディさんは座って話しながらナインさんを待っていたが、ナインさんは一向にやってくる気配がない
「なんか遅いね、ナイン。まだ寝てるのかな」
「昨日の事がありますからね。もしかしたら悲しいのかもしれませんね」
フェリシダでの出来事を思い出して全員が少し顔を暗くした
「それは仕方ねえが、だとしても飯は食わねえとだめだろ。呼んでこようぜ」
「そうね。寝てたら叩き起こしちゃいなさい」
ロードさんとサンディさんが向かったのを見て俺とエイリークさんもナインさんの部屋に向かった
ナインの部屋
ナインさんの部屋の前で俺がノックをした
コンコン
「ナインさーん、おはようございます。起きてますかー?」
中からは返事がない
「ナインさん?」
「ねえ、ちょっとダイジョーブ?」
サンディさんも少し心配そうに扉に近づいた
「入ってみよ。入るよ、ナイン」
エイリークさんが扉を勢いよく開けた。なんとなく、フェリシダでのアンナさん達の事が浮かんでしまった。状況が似てるからな
中に入るとナインさんはベッドで横になっていたが、苦しそうな顔をしている
「ナインさん、ナインさん」
「おい、ナイン。目を覚ませよ」
「ナイーン!!!起きてー!!」
ロードさんが揺さぶったり少しはたいたり、エイリークさんが大きな声で呼びかけたりするもナインさんは苦しんだ顔のまま反応しない
「ちょっ、これ本当にダイジョーブ?」
「息はしてますし、脈も普通ですね。熱とかもないですし......」
さっといろいろ触らせて貰って調べるも特に異常は苦しそうな顔以外見当たらない。どうしたんだろう、ナインさん。話してくれないことには俺達にはわからない
「サンディ、なんか知らねえのか?」
「えー、アタシは別にナインの専門家じゃないんですケド」
「こんな事あったりするの?私心配だよ」
「ナインさんって、こんな言い方よくないんですけど俺達とは違うじゃないですか。天使でしたよね。サンディさんなら何かご存知ないかと思うんですけど」
全員がサンディさんを困ったような顔で見た
「んー......前も言いましたケド、ナインって天使の中でも変わってるのよ。イロイロね。だからナインの事に関しては自分でなんとかしてもらうしかないのよね」
「つまり、今その本人がこうしてる以上俺達にできる事はないってことかよ」
「まあね。前にナインが話してたシショー?イザヤールだっけ?その天使に会えればもしかしたらとは思いますケド、そんなんムリ......」
そこまで言いかけたサンディさんが突然固まった
「どうしました?」
「できなくも、ない。イザヤールってのがムリでも、天使には会えるわよ。でも......」
サンディさんはそう言ったあと少し困ったように俺達を見た
「どういう事だ?」
「天の箱舟ちゃんに乗って天使界に行くの。天使界ってのは名前の通り、天使達の住む場所のコトね。ただ、ソール達人間を連れていくワケにはね......」
「あの噂の天の箱舟にですか!?」
「別にいいじゃん。ナインが苦しそうなんだよ?私達も連れてって!」
「ダメ。天の箱舟には当たり前ですケド、人間なんて乗せたコトないの。そもそも見えないんだから。何が起こるかわからないんだからやめた方がいいわ。アタシがナインを連れてってみる」
「だからって俺達はこのまま黙ってナインが回復するのを見えもしない所で見てろってのかよ。それはちょいとひでえんじゃねえの?サンディ」
「それに、ナインさんいじめられてたんですよね。その天使界?でずっと。そんな場所でナインさんを守って看病してくれる人なんているんですか」
「そうじゃん!ほら、サンディ。ナインをそんな所にサンディだけで行くのは危ないよ!私達も行かせて!大人しくしてるから!」
「う〜......あーもうわかりましたよ!後でアタシがテンチョーに説明するから、とりあえず三人とも箱舟ちゃんの所に行くわよ。それと見えても乗れるかまではわからないからネ!乗れなかったら諦めるのよ!」
サンディさんは少し開き直ったような、半分ヤケクソのような顔でそう言った。そうは言ってもサンディさんもナインさんが心配なんだよね
「はい、それで大丈夫です」
アユルダーマ地方 青い木
サンディさん曰く、このダーマ神殿の近くにあるこの木が出発点らしいが、青い木なんて言ってたけど俺には普通の大きな木にしか見えないな。チラリとロードさんとエイリークさんを見るも二人とも少しキョトンとしている。多分同じなんだろうな。サンディさんやナインさんにしか見えないって事なのかな
「とりあえず箱舟ちゃんを呼んでっと」
サンディさんが懐から謎の笛を取り出した
ピーッ!
耳障りのいい笛の音が響くと、空から前に見た金色の列車が走ってやってきた
「うわわわわ!」
「おー、近くで見るとスゲー。高そう」
「キレー。まるで魔法みたい」
俺だけ焦ってロードさんとエイリークさんは揃って違う意味でウットリしている。肝が据わってるといつも思うよ、俺
「さ、乗ってみて。無理なら大丈夫だから」
一向に目を覚まさないナインさんを箱舟の中に入れた後、おそるおそる1歩を踏み出してみる
ガシャン
金属を踏んだ感覚と共に少しだけ沈み込む。すり抜けたりはせず、そのまま中まで進めた
「うわー、なんかあの時の空間みたいですね。まだこっちの方が綺麗だけど」
中は金色の列車そのもので、椅子や扉、窓など全てが金色となっている。しかし、所々に赤や黄色、青、緑の装飾が入って落ち着いてみえる
「おー、中もゴージャスじゃねえか。リッチな気分だぜ」
「へー、すごーい。本当に夢みたい」
「ホントーに乗れちゃうし。もうマジでイミわからなさすぎるんですケド。まあもういいや、とりあえずこのまま天使界へレッツゴー!」
ポーーーッ!
高らかな汽笛が鳴り響く
列車が空間から現れて連結していき、光の煙をあげて天に登っていく。登っているのに中では特に重力が関係してないようで向きが変わったりしない、とことん不思議な乗り物なんだな
「すごいすごい!ダーマ神殿がもうあんなにちっちゃくなったわ!」
「へー、こりゃあいい体験だ。快適だぜ」
「これから未知の場所に向かうってのによくそんなに気楽でいられますね、二人とも。俺は少しドキドキしてますよ」
「ホントよね。アタシもこんな事態アリエなかったからチョードキドキなんですケド」
サンディさんの近くには相変わらず苦しそうな顔のままのナインさんが横になっている
「天使界にはいつ頃つくんだ?」
「スグよ。天の箱舟ちゃんは速いんだから。そろそろ見えてくるんじゃない?」
サンディさんのその言葉にまた全員で窓を見る
鳥を追い越し、白い雲を突き抜け、輝く太陽を遮るものがなくなった時、そこには見たこともない大きな塔のようなボロボロになった建物があった
「あれが、天使界ですか?」
「ええ、そうよ。天使界も見えちゃうんならマジで天使が見えるハズだわ。あー、マジでこれからどうしよ」
「なんかボロボロね。なんでこんなにボロボロなの?」
「アタシもなんでか詳しくは知りませんケド、前に一度ナインがこうなったのは自分のせいだって言ってたのよね」
ナインさんのせいで、塔が、いや天使界がボロボロに?何の関係が?
「なんでナインのせいなんだ?こいつ、なんかしたのかよ」
「さぁ?アタシも聞きそびれちゃったからそこまでは知りませんケド。......ま、もしかしたらまたいつものナインの考えすぎなんじゃね?こーんなボンヤリしてるのにそこまで大層なコトできないデショ」
「あの意味わからんもう一人のナインだったとしても、か?」
「あ」
ロードさんの言葉に全員が顔を強ばらせた。サンディさんもちょっと居心地悪そうな顔になっている
「や、ナインを責めるつもりはねえんだ。ただ、全く言われのないって可能性だけじゃねえって考えちまっただけだ。わり」
ロードさんも咄嗟に申し訳なさそうに頭をかきながら謝った。ロードさんの意見もわかるな、俺は
「とにかくさ!この際天使さん達にナインの事いろいろ聞いてみようよ!もしかしたら何か私達の知らない事知ってて教えてくれるかもよ」
エイリークさんが空気を変えるように明るめな声を出してくれた
「そうですね」
俺が窓を見ると、天使界の周りを回って止まりそうになっている。塔の上の方にとても大きな立派な木があるのが見えた。なんだろう、あの木。普通の木ではなさそうな感じがする
「立派な木ですね。なんか神々しい雰囲気がある」
「もしかしてあれって」
「あの木から不思議な力を感じるわ。もしかして聖書とかに載ってる」
「へー、人間達もわかるモンなのね。そ、あれは世界樹よ。天使達が大切に守ってるの。アタシにとってもちょっと関わりがあんのよ」
サンディさんと世界樹に関係が?少し首を傾げたが、外にチラリと人影が見えてサッと隠れた。チラリと見ただけで大きな白い翼があるのが見えて少しドキッとした
「サンディさん、外に誰か見えました」
「わかった。とりあえずまずはアタシが話すから、あんた達は隠れてなさいよね。いきなり出てきたらオコだから!」
外では
「また天の箱舟が来てくださるとは。もしや、ナインがまた帰ってきてくれたか」
「オムイ様、少しお離れになった方が」
「いいのよ、あんたこそオムイ様の邪魔しないの」
長老のオムイ様と門番天使、私ジーンがやってきた天の箱舟を迎えようとして待機していた。私は中にいるであろうナインが見えないかチラチラ気にしているが、特に何も見えない。ナイン、無事よね?
プシュー
扉が開いて中から降りてきたのはナインじゃなかった
「ドモ。えっと、アタシサンディ」
少し小さなピンクの光の妖精のような姿。見た目や話し方は妖精とはかけ離れているけど、この子は一体?
「お、おお。サンディ様。えっと、あなたは一体」
オムイ様も少し虚をつかれたような顔をしながらも申し訳なさそうにたずねている
「アタシはこの天の箱舟の運転手よ、一応ね。あー、そういえば前にここ来た時もここの三人は見覚えがあるわね。ちょーどいいわ」
後半を少しブツブツと言ったサンディという天の箱舟の運転手さんはオムイ様に近づいた
「ねー、おじいちゃん。あんたってもしかしてチョー偉い天使だったりする?ちょっと聞きたいコトあるんですケド」
コソコソと話すサンディさんに門番天使が警戒して武器に手を当てた
「やめんか。かの神聖な天の箱舟の遣いに手を出すでない」
「ちょっと!アタシにそんなブッソーなものヤメてよね!」
私が止めようとするより早くオムイ様が止められ、サンディさんがサッと門番天使から距離をとった
「仲間が大変失礼致しました、サンディ様。その通りでございます。私はオムイ。この天使界にて長をやらせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします」
オムイ様は丁寧に頭を下げている。私もオムイ様に合わせて頭を下げる。門番天使は渋々ね。早くつるっぱげ戻ってこないかしら、こいつとは本当に私合わなくて無理なんだけど
「やった!ビビッときたのよね、アタシ天才!ちょっとそこの武装した天使はアレですケド、おじいちゃんにチョー大事な話があんのよね。借りてもいい?」
サンディさんと目が合った。多分私に聞いてるのよね
「えーっと。あの、私ジーンといいます。もしよかったら私も一緒してもいいですか?」
「んー?そーいえば、ピンク髪のあんたもナインとなんか話してたような.....」
「!?」
サンディさんの呟きにナインと聞こえてびっくりする。この子、ナインと関わりがあるの?
「いいわよ。じゃ、おじいちゃんとジーンの二人ね。入ってきて」
サンディさんはそう言って天の箱舟に戻っていく。え、天の箱舟に入っていいの?
私のそんな驚きと疑問をオムイ様も同じように感じているようでお互い顔を合わせて固まってしまったわ
エイリーク「ボロボロだけど、なんか凄いところだね。神聖な空気がする」
ロード「なーんか清廉潔白って感じで俺は苦手だ。サンディが苦手なのもちょっとわかる気がするぜ」
エイリーク「んー、確かにね。まあ教会とかと似た空気がするわ。ロードには似合わないかも」
ロード「サンディの話通りなら天使ってのはどいつもこいつも頭が固いんだろ?それにナインのイジメの話でも聞いたが、まあまあ傲慢なんじゃねえの?やな場所だぜ」
エイリーク「ナインを守ってあげないとね!ナイン、大丈夫だよ!お姉ちゃんの私に任せてね!」
ロード「サンディが連れてくる天使がナインの味方である事を願うばかりだな」