天の箱舟 中
オムイ様を先頭にしておそるおそる中に入ると、眩いばかりの黄金の空間が広がっていた。所々に黄金以外の装飾もあるが、それでも豪華絢爛な空間に私もオムイ様も少し呆然としてしまった
「す、凄い場所ですね、オムイ様」
「うむ......。流石は天の箱舟。このような空間になっておるとは。長生きはするものじゃな」
「あ、きたきた。そんなカタくならないでさ、ちょっとこっち来てほしいんですケド」
少し奥にある高そうなソファが並べられてある場所にあのサンディさんがいて手招きをしている。そこに向かうと横たわるナインがいた
「ナイン!?どうしたの!?」
「目を覚まさぬのか?起きなさい、守護天使ナイン」
私は失礼ながらオムイ様よりも早く動いてナインの側に駆け寄った。苦しそうな顔で反応を示さないナインにオムイ様も声をかけられるが、ナインに変わりはない
「これは......ジーンよ、やはり」
「......くっ、やっぱりいつかはこうなると思っていましたが、想定よりずっと早いです」
「やっぱりなんか知ってるのね。もしよかったらアタシ達に教えてくれると助かるんだケド」
「ん?達って...」
私はサンディさんの言った達という言葉に引っかかった。ここには私達とナインとサンディさんしかいない......
「!?オムイ様、お下がりください!何者かがいます!」
扉の先から気配を感じた。誰かしら、隠れてる所からしてバレないようにって感じかしら
「あー、言うより早くバレちゃったし。えっと、その、アタシもどうしてこうなってるのかはわからないんですケド、ナインって地上で女神の果実を探してるじゃない?アタシもモチロン仲間として一緒に探してるんですケド、他にも仲間がいるワケなの」
「おお、ナインにもついに仲間が。......ん?地上という事はもしや」
「.........言いづらい事ですが、オムイ様。ナインは前来た時、私に地上で仲間ができたと言っていました。つまり、それは人間の仲間ができたという事です」
「あ、ナインはちゃんとジーンにそこも話してたのね、良かった」
「むぅ......やはりそうか。血は、争えんな」
「......」
「ん?どゆ事?まあいいわ、ただ仲間達もワケわからないんですケド、幽霊が見えたりこの天の箱舟が見えたりするワケ。で、まさかの箱舟ちゃんに乗れちゃったから仲間達も心配して乗ってきてるの。扉の先にいるのはナインの仲間達である人間ってワケ」
「「人間がここに!?」」
サンディさんのありえない言葉にオムイ様と同じく驚きの声をあげる。そんな事信じられない!神聖な神の乗り物に人間が乗るだなんて!私達だってしっかりお祈りしてから乗ったというのに!
「そりゃビビりますよね、アタシだってチョービビってるんだから。あー、マジテンチョー許してくれるかな」
「と、とりあえず、そこにナインの仲間の人間達がいるのね。そこは理解したわ。ここに乗れているって事は私達も見えているって、こと?」
「......ええ、そうなの。アリえない話ですケドね」
呆れているようなサンディさんの言葉にオムイ様と顔を合わせる。これは、ナインにもやはり......。オムイ様も同じ考えなのだろう、頷かれている
「サンディ様、そのお仲間さん達と会わせていただけますか?お話したい事がございます」
「え、ダイジョーブなワケ?なんか天使ってフツー人間と会ったりしないハズじゃ」
「ええ、そうよ。ただ、こればかりは例外ね。お願いします、サンディさん」
「わかった」
扉の中
「綺麗な天使さんとちょっと可愛いおじいちゃんの天使さんだね」
「ナインさんを心配してる様な素振りしてましたし、味方の天使様でよかったです」
「あっちにも気づかれたみてーだけどな。一応警戒しておけよ、特にあの女の天使は魔力が強そうだぞ」
「アンタ達、出てきていいわよー」
サンディさんからの声がした。天使様の前に出てもいいのだろうか
「行きましょうか」
扉を開けると、当然なのだが綺麗な白い翼と頭に輪っかを浮かべた天使達の姿に少し感嘆してしまう
「本物の、天使様」
「......は、警戒されてらあ」
「わ〜、初めまして!」
「ホントになんで見えてるワケ?」
「オムイ様......この者達からやはり」
「ああ、そうじゃな。予想通りじゃ。まずはわしから名乗らせてもらいますぞ。わしはオムイ。天使達の長をしておる」
「私はジーン。救護役の天使よ、ナインとはそれなりに親しい関係よ」
「俺はソールといいます。えっと、ナインさんにはいろいろ助けられています。よろしくお願いします」
「俺はロード。ま、よろしく」
「私はエイリークっていいます。ナインはよく私の作る料理褒めてくれていつもありがとうって思ってるの!他にもナインがいて助かってる事いっぱいあるからナインを助けてほしいの。ジーン様、オムイ様、よろしくお願いします!」
俺達の自己紹介にジーンさんとオムイさんは黙って調べるように俺達を見ていた
「......まず、どこから話すべきかしらね」
「俺はまずこのナインさんの状態が何なのかを知りたいです。悪い事じゃないといいのですが」
「そうね、そうしましょう。まず、ナインのこの状態について話すにはナインの特殊能力について知ってないとなのだけど、あなた達はそれはご存知?」
「あれだろ?触れた物の過去と未来を見える力の事だろ。前にナインが説明してくれた」
「そうそう、何回かそれ使ってくれてたのよね。ただ、回数制限があるって知ってアタシビビったんだから!」
「やはりか.....。まあ、ナインも知らぬ事だから仕方あるまい」
「ええ、でもしっかり知らせなかった私も悪いので。特殊能力について知ってるならいいわ。この症状はその回数制限が来てる証よ」
「「「「え!?」」」」
まさかの情報に全員で驚きの声をあげる。だって、回数なんて余裕もってたはずじゃなかったのか
「おそらく、ナインはあなた達にこう言ったんじゃないかしら?1日5回だ、と」
「う、うん。ナインからはそう聞いてる」
「ナインのその時の言葉そのまま言うぞ。ただし、一日に5回使うと集中力が持たなくて倒れたりって感じだね。寝たりすると治るけど、連続で使うのも危ないかな、だな」
「いやロード記憶力良すぎジャネ?マジでそんな感じだった」
ロードさんの完璧とも言える言葉に全員が少し感心する、流石ロードさん。凄い記憶力だ
「そう、私の言葉をある程度そのままって感じね。使った頻度とかを思い出せる範囲で言ってもらえる?」
「昨日のフェリシダで一回、三日前くらいのグビアナ王国で一回が直近で、それ以外だと一週間前に二回だな」
「へー、そんなに使ってないのね。それなら問題はなさそうなのに」
「もしや、イザヤールが危惧しておった......。お主達、ナインとは別のような人格を見た事があるかの?」
「「「!?」」」
オムイさんの言葉に俺とエイリークさんとサンディさんで顔を強ばらせる。ロードさんは持ち前のポーカーフェイスで欠片も見せないが、予想通りといった感じなのだろうか
「ああ、二回ほど見てるぜ。口調が俺に変わって、髪がつり上がって目が黄金みてえになって、電気がバチバチしてるやつな」
「凄い強そうな雷の技使うの!私達がピンチの時になると出てくるみたいなんだけど、それも関係あるの?」
「そういえばナインさん、その姿になる時も頭の中にその特殊能力と同じ甲高い音がするって言ってました」
「それ本当!?やっぱり、つるっぱげの言った通りだわ。じゃあ......」
「うむ、これはわし達が思ったより深刻そうじゃ。その姿はいつ頃なったのじゃ?」
「初めて見たのは......そう!この天使界に戻って来てナインがめが、ヤバ。お、黄金の果実を集めなきゃって言って戻った後ね。一週間くらい前にも一回なってるわ」
サンディさんが何かを言いかけて直したな。なんだろ
「同じ一週間前にその力と合わせて人格のやつも。それならばナインの体に相当負荷がかかったであろうに」
「ナイン、その時に一回倒れちゃったんだよね。一日寝たら直ったみたいだったけど」
「なるほどね。話はわかったわ、ありがとう。とりあえず、ナインはしばらく休まないと起きないわ。いわゆる疲れて気絶してるのと同じだから。ナインは救護室で休んでてもらうわ」
「あ、あの......俺達もナインさんの側にいたいんですが」
「はっきり言わせてもらうわね。それはダメよ」
「え」
「これ以上もう、あなた達はナインと一緒にいないでほしいの」
「「「ええ!?」」」
サンディ「なーんかおじいちゃんもジーンも絶対ナニか隠してるのよねー。さっさと教えてほしいんですケド」
ソール「天使と人間では違いが多すぎますからね。簡単に言えないのは理解できます」
サンディ「まあナインがイロイロあるのはわかりますケドー、もったいぶらないでほしいのよね」
ソール「でも、俺達には少なくとも教えてくれなさそうでしたよね。なんで一緒にいちゃダメなんだろう」
サンディ「これまで散々一緒にいたんだからいいと思うのにね。ホーントイミわかんない」
ソール「警戒されてるからなんですかね。あ、俺のお菓子とか渡したら少しは安心してくれますかね」
サンディ「......ソールも時々ナインみたいなコト言うわよね」
ソール「え?ダメでしたかね」
サンディ「ううん、あんたはそのままでいなさい。いいトコよ」
ソール「えっと?ありがとうございます?」