黒煙があたりに舞っている。眼前には頭部を複数回撃たれ、身体を無惨に斬り刻まれている友人の亡骸。
ナグサ「───私の所為で……私がッ!!皆を殺したんだ……。」
アヤメに意思を託されたというのに、私は逃げる事しかできなかった。
私に期待してくれている皆に失望されたくなかったから。
私が逃げた所為で、弱い所為で、馬鹿な所為で、大切な人を全て失った。
残酷な現実を直視する事は出来なかった弱い私は、自決を図った。
その時だった。懐かしい声が聞こえると共に視界が暗黒に包まれた。
気づけば見覚えの無い建物の中にいた。ここは地獄だろうか。目の前に人が立っているのに気づく。
そこにいたのは、アヤメだった。
ナグサ「アヤ…メ……?」
私は即座に彼女から顔を背けた。私はアヤメが目の前で窮地に陥っているというのに、何もできなかった。彼女に託された使命も全うできず、使命から逃避していたのだから、合わせる顔がない。
両頬を掴まれ、無理やり顔を合わされる。
アヤメ「ナグサちゃん、現実から目を背けては駄目だよ。」
ナグサ「……っ」
アヤメ「確かに貴方は部長の座を自ら拒否し、皆を導けず、大切な人も失ってしまった。」
アヤメ「でも、貴方にはまだすべき事が残っているでしょう?」
ナグサ「アヤメ……私には無理だよ…私はアヤメの様に強くも賢くもない。此度は大切な人の窮地に手を差し伸べる事すらできなかった……それに私は…」
???「其方の友に救われた命を無駄にする気かの?」
途中で発言を遮られ白髪の女性に質問をされる。
ナグサ「…貴方は…?」
???「嗚呼、其方と会うのは初めてか。妾は百鬼夜行の予言者、クズノハ。」
クズノハ「其処で起きた惨事から目を背ける気かの。其方の友を見殺しにした時と同じ様に。」
ナグサ「……!!」
クズノハ「もう一度問おう、其方は亦、逃避するのか?」
私は、本当の自分が露呈することを恐れ、周りを騙し、自分自身を騙る事しかできない臆病者だった。そして、眼前の恐怖から背を向ける事しかできなかった弱者だ。
───けれど、もうアヤメの意思を無碍にはしたくない。
アヤメ「今度は、ナグサちゃんが他の誰かを助けてあげて。信じているよ。ナグサちゃん───。」
ナグサ「待って!アヤメっ!」
視界が光に包まれ、目覚めると、黒煙と憎悪が舞う浮世に戻っていた。
アヤメに救われた命、託された意思は決して無駄にはしない。
私はただ、目に映るカイザー兵を殺し続け、夜が明けた頃には、カイザー兵は撤退していた。
後日、私は自治区内にカイザーの残党がいないか巡視しながら、クズノハの言葉を思い出す。
────其方の身体は不治の病に侵されている。もう半月も持たないじゃろう。その身体で敵との交戦は無理じゃろう。そこで一つ、助言をしてやろう。
桜の木の側に、手負の女の子がいるのに気付く。
────其方は近い未来、一人の人間と邂逅するじゃろう。其奴に意思を託せ。
ナグサ「そこの君。」
私は彼女が自決を図っているのに気付き、咄嗟に口に咥えている拳銃を木刀で弾いた。
ナグサ「貴方が……」
貴方が────意思を継ぐ者なんだね。