セリカ「ホシノ先輩、どうしたの…って、この子は?怪我してるじゃない!」
ノノミ「まだ10歳くらいでしょうか…?」
ホシノ「君、お名前は?」
シロコ「…シロコ。砂狼シロコ。」
セリカ「ちょっと待ってね、今手当してあげるから。」
ノノミ「シロコちゃん、何で廃墟に一人で?ご両親はどうしたんですか?」
シロコは顔を伏せ黙り込む。
ホシノ「…そっか、辛い事があったんだね。もう大丈夫だよ。私達が守ってあげるから。」
ホシノはシロコの頭を撫でながら優しい口調で言う。
ホシノ「私達はこれからある場所に向かうんだ。一緒についてくる?」
シロコは少し考えた後、小さく頷く。
ホシノ「…まぁ、拒否しても無理やり連れて行くつもりだったんだけどさ。乾パンしかないけど食べる?」
セリカ「ちょ、ちょっとホシノ先輩、こんな小さな子を連れて行くって言うの?危険よ!」
ホシノ「私達以外に、誰がこの子の面倒を見るってのさ。恐らく身寄りもいないんだろう。」
セリカ「そ、それはそうだけど…これから向かうのは戦地のど真ん中よ。もしこの子が奴等に…」
ホシノ「そんな事は私が絶対にさせない。」
ホシノがセリカの発言を遮って言う。
ノノミ「ホシノ先輩、貴方はいつも正しいけれど今回ばかりはセリカちゃんの意見に賛成です。私達はまだ奴等の謎を知らない…。この状態での交戦は即ち死を意味します。この子を連れて彼等を避けきれる保証なんて何処にもありません。」
ホシノ「じゃあこの子をここに置き去りにしろって言うの?!」
ホシノの一言で一同が静まり返る。
セリカ「…私が、この子と残るよ。」
ノノミ「セリカちゃん…。」
セリカ「…それで納得できるでしょ。ホシノ先輩。私がこの子の安全を保証するよ。」
ホシノが俯き考え込んでいると廃墟の扉が開かれる音がした。
セリカ「まさか…奴等に気付かれた……!?」
ホシノ「…隠れるよ、皆。おいで、シロコちゃん。」
一同は階段に身を潜め臨戦態勢に入り、暗闇の中で侵入者の姿を凝視する。
ノノミ「アーマーを着ていませんね…カイザーの人間ではないのでしょうか…?」
ホシノ「まだ分からない…もう少し様子を見よう…。」
侵入者も警戒している様で、一部屋ずつ周到に確認している。
侵入者はこちらに気付いたのか、じりじりと接近してくる。
セリカ「あいつ…こっちに向かってきてるわよ…。」
ホシノ「……二人はシロコちゃんを連れて裏口から逃げて。私が奴を引きつける。」
ノノミ「そんな…ホシノ先輩は?」
ホシノ「必ず後で合流しに行くから。信じて。」
ホシノは一人走り、侵入者の方向に接近する。
???「!?」
侵入者はホシノの先制攻撃を咄嗟に守り、距離をとった。
???「貴方は…たしか……」
侵入者が何かを言いかけるが、ホシノは気にせず攻撃を続ける。
???「ッ…!」
ホシノが目にも止まらぬ速さで侵入者を押し倒す。
???「待って下さい!私は敵ではありません!」
その言葉を聞いたホシノは、侵入者の首に向かって振るうナイフを止める。
???「アビドス高等学校のホシノさん……でしたよね?」
ホシノ「…君は…!」
???「お久しぶりです。以前交流会でお会いしましたよね…?ミレニアムサイエンススクールの飛鳥馬トキです。」
ホシノは臨戦態勢を解く。
ホシノ「何故君がここに…?」
トキ「…カイザーの進軍が進み、最後の砦であるゲヘナ学園が奴等に占領され、生存者を求めてここに…。」
ホシノ「カイザーの進軍…だと?一体、アビドス外で何があったの?」
トキは少し間を置いて話し始める。
トキ「…キヴォトスは、ウトナピシュティムの本舟を掌握したカイザーコーポレーションの手に落ちました。」
ホシノ「……!!」
トキは続けて言う。
トキ「この前まで実家に帰省していて、最近この事実を報道で知ったばかりなので、私も完全に全貌を把握しているわけではありませんが、全ては天童アリスさんがカイザーに攫われた事が始まりでした。そして、悲観するのも束の間、カイザーがD.Uに進軍し、SRT特殊学園、ヴァルキューレ警察学校が壊滅しました。」
トキ「連邦生徒会はカイザーと停戦交渉をしましたが成功せず、アロナ連邦生徒会長は緊急事態宣言を発令。その後、キヴォトスの全勢力を召集し、ウトナピシュティムの本舟及び天童アリス奪還作戦が実行され、カイザーとの全面戦争が行われましたが、失敗に終わり、サンクトゥムタワー及びD.U、トリニティ総合学園自治区、ミレニアムサイエンススクール自治区がカイザーコーポレーションにより占領されました。」
トキ「……私がキヴォトスについた頃にはもう手遅れでした…。私は最後の砦であるゲヘナ学園に避難しましたが、間も無くして奴等に…。」
ホシノはあまりの事実に驚愕し、言葉を発せなかった。
トキは決意めいた表情で言う。
トキ「我々は、カイザーと再び交戦するつもりです。」
ホシノ「……我々?君の他に生存者がいるの?」
トキ「ご紹介します。」
廃墟の中に続々と武装をした連中が入ってくる。