【屍の塔~恋人を生き返らせる為、俺は100のダンジョンに挑む】   作:埴輪庭

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第二十話【沖島 瑞樹という女】

 ◆

 

 今、片倉は百人町のマンションのベッドに腰掛け、ウォーカーをいじっている。

 

 あれからMAYAの家を辞去し、そのまま決めたマンションへ入居したのだ。

 

 特に何ということもない普通の1LDKだ。それで家賃が15万というのは高く感じるかもしれないが、探索者向けであること、そして都内の賃貸であることが大きい。

 

 奥多摩から荷物が届くまで2、3日かかるが、どんなチームに応募するか吟味もしなくてはならないため、時間がかかる分には問題はない。

 

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【初心者歓迎】トー横ダンジョン攻略チームメンバー募集!

 

 投稿者: [TARO]

 投稿日: [***********]

 

 内容: 男2、女1のチームです!バランスを考えて女性募集!トー横ダンジョンの攻略に向けてチームを組みたいと思います。初心者から経験者まで歓迎!一緒に楽しくダンジョンを攻略しませんか?協力プレイが好きな方、ぜひご参加ください!

 

 参加希望はレスでお願いします。

 

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【急募】トー横ダンジョン

 

 投稿者: [沖島瑞樹]

 投稿日: [***********]]

 

 内容: トー横ダンジョンのデータを収集、攻略。ある程度の日数データ収集して踏破率を上げた後は、攻略を目指します。

 メンバーは2名。最低でも週3日は探索できる人を希望します。場合によってはダンジョン内でのビバークもあり。

 

 経験豊富な探索者

 情報共有ができる方

 戦闘での柔軟な対応が可能な方

 

 興味のある方はご連絡ください。

 

 §

 

【土日探索できる人希望】経験者優遇

 

 投稿者: [ジン]

 投稿日: [***********]]

 

 内容: 格闘技経験者、探索者経験2年以上の人募集です。

 

 近接戦闘が得意な人いませんか?

 マイペースで少しずつ踏破率を上げていきましょう。

 プライベート重視です。

 性別などを聞いてくる人はブロックします。

 

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 ──楽しくダンジョン攻略か

 

 それがなんだか妙におかしく聞こえて、片倉は思わず笑ってしまった。

 

「まあ、少なくともこのTAROという人の募集には応募できないな」

 

 片倉はそつなくこなせるタイプだが、流石に女にはなれない。

 

 そして、とりあえずという感じで沖島という探索者の募集へ応募することにした。

 

 ジンという探索者の募集も気になったが、マイペースで少しずつという文言が引っかかったのだ。

 

 応募の旨と、自身の簡単な経歴をレスすると、すぐに反応が返ってくる。

 

 ──『一度顔合わせがてら簡単な面接をしたいのですけど大丈夫ですか?』

 

 片倉は是を返す。

 

 臨時のチームメンバー募集とはいえ、命を預け合う間柄になるわけだから、人柄なり見ておきたい気持ちもわかる。

 

 ──『じゃあ、早速これから空いていますか?できれば新宿で会えればと思うんですけど』

 

 テンポがいいなと思いながら、片倉はこれにも是を返す。

 

 ──『でしたら東口すぐのクロスロード新宿っていうビルはわかりますか?3Dのワンちゃんで結構有名なんですが。そこの地下に喫茶犬神っていう落ち着いたお店があるので、そこでお話しましょう』

 

 そうして何度かやり取りをしてから2時間後、片倉は件の喫茶犬神で募集主と向かい合って座っていた。

 

 ◆

 

 募集主はモスグリーンのワンピースを着た女で、まだ若かった。

 

 眼鏡をかけた小利口そうな顔つきをしている。

 

「はじめまして。沖島瑞樹と言います」

 

 瑞樹は軽く会釈して頭を元の位置に戻すと、喉に片倉の手──人差し指と中指が当てられていた。

 

 瑞樹は動けない。片倉から発される精神の圧が彼女の全身を縛鎖している。

 

「初めまして、片倉真祐です。ところでその力。もし悪意が込められていれば攻撃していました。制御に余程自信があるのでなければ、初対面の相手にはやらない方がいいですよ」

 

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「本当に驚きました。今まで誰にもバレたことないのに……」

 

 数分後、瑞樹と片倉は何事もなかったかのようにテーブルについて話をしていた。

 

「確かにわかりづらかったですが、それなりに場数を踏めば何となくわかるものですよ。でも悪くない──いや、身を守るという意味ではかなり有効かもしれません」

 

 瑞樹の力は一言で言えば大したことはない。

 

 あくまで瑞樹の基準になるが、相手が瑞樹に悪意や邪な思いを抱いているかどうかがなんとなくわかるといったものだ。

 

 はっきり言って、ダンジョンではクソの役にも立たない能力だが、人の悪意という、ある意味ダンジョンより恐ろしいモノからは身を守りやすくなるだろう。

 

「ぱっと見ですけど、片倉さんは大丈夫そうだから面接は合格って伝えようとしたら、まさか殺されそうになるとは思ってもみませんでした」

 

 瑞樹の目つきはやや恨みがましい。

 

「脅しはしましたが殺そうとはしてません。でも初対面の相手にPSI能力を使うのは、バレたらかなり悪印象ですよ。まあ、わざとバラすみたいなこともないわけではないですけど」

 

 片倉はセンターの受付嬢のことを思い出す。

 

「気を付けます……えっと、それで、改めてお伝えしますけど、合格です!でも、なんでトー横に?片倉さんならもっと稼げそうな、難しいダンジョンにもいけそうな気がしますけど」

 

 瑞樹が尋ねると、片倉は事情を説明した。

 

 少し前まで奥多摩に行っていたこと

 

 都心のダンジョンに現れるようなモンスターとはしばらく戦っていなかったこと

 

「なるほど~……トー横関係の依頼は結構出ていますもんね。じゃあ踏破率を上げつつ攻略目指す感じで大丈夫そうですね。それにしても、経験豊富な人が入ってくれて助かります!メンバーはもう一人いるんですけど、やっぱり二人だけだと不安な所がありましたし」

 

 それから片倉と瑞樹はいくつか情報交換をし、個人IDも交換した。

 

「それじゃあ、もう一人にも伝えておきますね。初探索はさっき話した通り明後日ということで」

 

 片倉は頷いて伝票を取ろうとしたが、「あ、ここは私が払っておきます」と先に奪われてしまう。

 

 いや、それは、と言いかける片倉に瑞樹はなおも言う。

 

「さっきいきなり変なことしちゃったお詫びですから」

 

 それならということで片倉も納得し、瑞樹の如才なさにやや安堵も覚える。

 

 探索者は変な話、キワモノが多いからだ。

 

 ──まあとりあえずやっと落ち着いた感じだな

 

 住居が決まり、チームも決まり、最初に探索するべきダンジョンも決まった。

 

 ──こっちでの感覚が戻れば……

 

 その次は本格的な攻略を目指す──そう片倉は考えていた。

 

 少なくともこの時点では。




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