【屍の塔~恋人を生き返らせる為、俺は100のダンジョンに挑む】   作:埴輪庭

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第七話【死孕みの大蛙】

 ◆

 

 第6採掘層の探索を始めて二時間後、未踏破エリアへ接続されている長い回廊で音が聞こえてきた。

 

 クェロロロロロロ

 

 ずちゃ、ずちゃ

 

 クェロロロロロロロロロ

 

 ずちゃ、ずちゃ、ずちゃ

 

 坑道の薄暗がりの向こうから、そんな音が聞こえてくる。

 

 ──次瞬

 

「日野さん!!」

 

 片倉が大きな声をあげた。

 

 間髪入れずに、海鈴が勢いよく頭を右に半回転させる……丁度テクニカルなボクサーが頭を回してパンチの威力を殺す様に。

 

 同時に暗がりの奥から伸びてきた長大な何かが海鈴の左頬を大きく抉り飛ばした。

 

 海鈴の横を通り過ぎた何かは伸びきった勢いそのままに振り回されようとしたが──

 

「ふぅんッ!!」

 

 小堺が刃部分に細かく鋭い刃が連なるチェーンソーと鉈の合いの子のような得物をかざし、その長い何かが伸びきった所を切り裂こうと振り下ろして妨害した。

 

 これは『六道建設』が開発、販売する『巻刃』と呼ばれる個人兵装であり、言ってしまえばまさに小型チェーンソーと言った形状をしている。

 

 しかし──

 

 ──硬いッ! 

 

 小堺の手に伝わる感触は、非常に硬質なゴム状の何かを斬りつけた時のそれだ。

 

 ならばと小堺は握った鉈の柄のボタンを押し込み、ギミックを起動した。

 

 すると鉈に連なる刃がチェーンソーよろしく回転し始める。

 

 小堺の肉体は一部サイバネ技術によって義体化されており、腕部モーターが唸りをあげて出力をあげれば自動車をぺちゃんこに押しつぶすくらい訳がない。

 

 それほどの力でチェーンソーもどきを押し付けられれば、大抵のモノは切り裂かれてしまうだろう。

 

 しかし。

 

 まるで金属と金属を噛み合わせ、すり合わせたかの様な甲高い音と共に火花があがる。

 

 それは "その何か" がそれだけ硬いことを意味していた。

 

 だがその "何か" からしても小堺は警戒に値したようで、"何か" はぶるりと一度震えて伸長した時の勢いと同じ勢いで縮み、鉈を構える小堺の腕を絡め取り──

 

 金属がひしゃげる音と同時に小堺の左腕が巻き潰される。

 

 と言っても小堺に痛みはない。

 

 潰されたのは義体化した部分だ。

 

 しかしそれでも一連の攻防で四人は一方的にダメージを負ってしまった。

 

 ◆

 

 薄暗がりの奥から "それ" が姿を見せた。

 

 ──何なのこいつ……

 

 二階堂沙耶は頬に伝わる冷や汗を感じつつ、"見"の姿勢を崩さない。

 

 それの姿は強い嫌悪感を伴うものだった。

 

 一言で言えば巨大な蛙だ。

 

 赤味混じりの黒い体色で、後ろ足は太く力強い。

 

 だが何よりも特徴的なのは、全身に人間の顔が散らばるように浮き出ている点だった。

 

 よくよく見れば一つ一つ表情が異なっており、まるで生きたまま背中に取り込まれたかのように見える。

 

 ・

 ・

 ・

 

「逃げましょう!」

 

 小堺はそれを一目見るなり、逃げを打つことを決断した。

 

 先立っての交戦で彼我の実力差を思い知らされてしまったからだ。

 

 探索者は危険を恐れていてはやっていけないが、絶死に飛び込むようでもやっていけない。

 

 片倉をはじめ、沙耶も海鈴も異論はなかった。

 

 片倉は内心でこんなことを思う。

 

 ──難しい相手だ。殺れと言われれば殺れるかもしれない。でも交戦すれば俺一人が生き残るか、奴一体だけが生き残るか、どちらかだろう。

 

 それでは意味がなかった。

 

 目的は遭難者の救助なのだから、ここで命を張る理由がない。




ケロちゃん、こんなの

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