炎の巨人が呼び出したモンスター達は火山に生息する様なモンスターとは一線を画していた。
全身が炎で出来ているモンスターはまるでただの斬撃の様な物理攻撃が効かない。
「っ!? それならっ……!!」
キーファとアルスは闘気力を剣に纏わらせる。闘気剣だ。同様にアレンも全身に闘気を漲らせる。
闘気の根底にあるエネルギーは生命力だ。闘気力を拳や武器に纏わせる事で実態が無いモンスターを捉える事が出来る様になる。
「闘気剣! 真空斬り!!」
「氷結斬り!!」
キーファの放つ真空斬りは雑魚のフレイムには効いたが巨人には特に効力がない斬撃だった。
しかし、アルスの氷結を纏った剣技は炎の巨人にダメージが入ったらしく絶叫を上げる。
《オノレ! ニンゲンフゼイガ!!》
「2人ともサポートに入る! マリベルは後方から支援! 雑魚の相手と護衛は任せて2人は巨人を頼む!!」
激昂して地響きと火炎の息を吐く炎の巨人とフレイム達を相手に戦う俺達。拭った汗が直ぐに蒸発していく環境下の戦闘。
火送りがされる度に増えていく巨人の圧力とフレイム達の多さに流石に周囲の熱気は最高潮を超えて参ってくる。
「パミラ婆さん、ちゃんと仕事しろよっ……!!」
思わずパミラに八つ当たりの様な悪態を吐く。丁度そんな時だ。後ろの少年が隣に立っていた。
「君っ……!?」
「すまなかったな。回復をありがとう。僕も参戦するよ」
《イマサラ、ニンギョウゴトキガッ……!!》
「そうでもない。僕は炎には慣れている。全員、奴に氷系を当ててくれ!!」
「っ!? キーファ! アルス! マリベル!!」
「何が何だか分からねえがっ……!!」
「やってみるよっ……!!」
「指図するなしっ……!!」
「行くぞーー! ヒャダルコ!!」
俺の合図に全員が持つ氷雪系の最大攻撃が炎の巨人へ与えられる。
しかし、その瞬間彼が放つ業火球と上から送られる火に相手は回復する。
《グッハッハッハ! ワレニ、ホノオ、ナゾッ……!? ナゼ、ダッ……!?》
「熱膨張さ。冷やされた後に急激に温められたからお前の体が崩れただけだよ」
そして、炎の巨人が崩れた事でフレイム達も消滅して戦闘が終了した。
「助かったよ、少年。体は無事か? えーっと……??」
「はい、大丈夫です。自己紹介がまだでした。僕はグレン。魔王の邪悪な気に囚われていた所を助けてくれてありがとうございます」
グレンと自己紹介を交わしながら彼の事情を聞いた。
彼はフレアとバーストの息子で火の一族の最後の1人だそうだ。幼い頃に両親と離れ離れになったらしい。
その時は師匠と呼べる人が彼を保護してくれたらしくその人の元で修業に明け暮れた日々を送っていた。
しかし、師匠が不在の13歳の現在、魔王の配下に一族が追放となった原因をしり自身ですら気が付かなかった憎悪に取り込まれて今日に至ったらしい。
そう言って彼は自身の額に宿る不思議な紋様を見せる。
「これが僕達、火の一族に継承された火の精霊の紋様です」
彼は赤い髪の毛をパッと掻き上げるとそこには赤い不思議な紋様の様なアザがあった。
俺達は不思議なモノを見る様な目でそれを見ていた時に、火山が揺れる様な振動が聞こえてそのまま退避する。
なお、炎の巨人を倒した時や帰り道に石板を見つけたのでそれを拾い来た道を帰るとそこにはドス黒い巨大な炎の塊が浮いていた。
まるでさっき感じた邪気の様な塊に村長達はようやくパミラの言う事が正しかったと嘆き恐怖に包まれていた。
「パ、パミラよっ……!? ど、どうすれば良いのだっ……!?」
「ふーん……。儂はどっかの小僧共に耄碌したババアだと言われて嘲笑の的になってしまったからのう……。儂の占いなんぞ当たらないらしいわい……」
パミラの皮肉めいた言葉に村長含むパミラを嘲笑した村人達が青褪めた様な表情をする。
それを見て俺達は冷たい視線を向ける。青ざめるくらいなら最初から嘲笑しなければ良いのにと。
「っ!? お、おぉっ!! お主達、よくぞ戻ってきたのうっ……!? んん? その少年は……?? っ!? まさかその顔立ちにその髪色と紋様っ……!?」
「それは後にしましょう。それよりもこの邪気の籠ったドス黒い炎の処理です。パミラさん、どうすれば?」
「……その少年に虹の聖水を渡すのじゃ。彼ならきっとこの炎をどうにかしてくれる筈じゃ……」
「グレン、お願い出来るか?」
「……分かりました。それとお婆さん、勘違いしないでくれよ。僕達は貴方達を許した訳じゃないからな……」
「……分かっておる」
「━━━━━━━━エンゴウの精霊よ、鎮ってくれ」
邪気に満ちた炎は火の一族である彼と虹の聖水によって浄化されて消えてなくなり火山が穏やかさを取り戻す。
その光景を見た村長世代はグレンを見て気がつく。
火の一族でその顔立ちがかつて追放したフレアとバーストを彷彿させる様な顔立ちの少年である事を。
村長達に見られたグレンはキィッと睨み付ける。彼等の所為で両親や一族が村を追われたのだから。
モンスターに囚われたとは言え無自覚だった気持ちに気が付いた彼の恨みを感じて村長達は青ざめる様に視線を逸らした。
きっと村の危機を救ってくれたのだから恨みを許して貰えるとでも思っていたのだろう。
そんな甘い事を考えていたからグレンの睨みにそそくさと火山から逃げる様に村へ帰って行った。
「本当にこの時代に残るのか?」
夜が明けて俺達はエンゴウの村から旅の扉まで来ていた。
グレンを見たフレア達の追放に関わった世代はその罪悪感に彼とは話さず家に引きこもる様になっていた。
「えぇ、結局師匠と逸れてしまったのできっと探して貰っている最中です。ここにいた方が師匠も探しやすいでしょう」
「でも、エンゴウは……」
「……正直言えば、あんなくだらない事で両親や一族を追放した事は許せません。
でも、きっと両親なら許すと思うんです。だったら、直接の被害を受けてない僕がどうこう言う筋合いはありません」
「しばらくは儂の店に来ると良い……。それがせめてものエンゴウの民としての償いじゃ……」
「お言葉に甘えさせて貰います。それと火山の時は……」
「良い。お主にはそう言われる事をエンゴウの民はしておるからな……」
グレンはパミラの言葉に感謝した。パミラとしてもフレアとバーストは孫の様な存在だったから受け入れていた。
「それじゃ、俺達は行くよ」
「また、会いましょう」
「おう! その時は一緒に飯でも食おうぜ!」
「その時を楽しみにしているわ」
「僕も楽しみにしているよ。また、会える気がするしね」
そして、俺達はエンゴウの旅の扉を使い現世へと帰って行った。