翌朝、目が覚めるとホットストーンを持っていた為なのか服は寝汗以上にびっちゃりしていた。
ホットストーンは自室の宝箱へ入れて厳重に鍵を閉めてから不思議と頭痛が起きなかった。
アレは一体なんだったのだろうか?
虹の聖水探しの時に目の端にホットストーンが前でも何も起きなかったから余計に分からず仕舞いだ。
思い出そうとしていた記憶は誰かに必死に声を掛けられる様なとても悲しい気持ちだけが蘇った。
「酒場の店主やみんなには悪い事をしたな……」
ホンダラと俺の会話は聞くに耐えないほと醜い物で酒の味がより一層悪くなるモノだ。今度、弁償しようと心に決める。
「おはよう、アレン!」
アルスが元気よく挨拶をする。それを機に俺も気分を変えて挨拶し返してキーファのいる王城へ向かった。
「おう! お前等、よく来てくれた!!」
朗らかな笑みを浮かべキーファの出迎えにお互いが拳を突き出して軽い挨拶を交わす。
「あの後、どうだった?」
「しばらくは安静にして様子見、だそうだ。まぁ、医者も間違いなく快方へ向かって行っているって言っている。
今までの検査結果から考えるとほんのちょっと常人よりもまだ弱い感じだけど、リーサもよく食べられる様になったし良かったさ!!」
「そうか、そうか……!!」
「良かったね! リーサちゃん!!」
「応よ! だけど、しばらくはマリベルはリーサの付きっきりになるから冒険から離脱せざるを得なくなった」
「まぁ、仕方ないだろ。しばらくはキーファが前衛、アルスが中衛、俺が後衛でサポートする」
「よろしく頼むぜ! 相棒! アルスもガンガン自由にやって良いからな!」
「うん! 任せるよ、2人とも!!」
その後、数日はキーファが妹君リーサの心配に2〜3日掛けてから俺達は青色の石板をハメて過去へテレポートする。
そして、街に辿り着くとそこは石化した街人の後としか言えない荒れ果てた場所で廃村と称しても過言じゃ無かった。
そんな中でも1人寂しく暮らす老人はこの街をダイアラックと呼びこの石像達は紫色の死の雨によって石化して十数年の歳月が経ったそうだ。
彼は若かりし頃に偶々村の外へ買い出しをしていたから死の雨から逃れられたらしい。
世界中を旅して石化を戻す天使の涙を使うが時既に遅く、石化した住人達は元には戻らなかったそうだ。
丁度、そんな時にアルスが幽霊を見たらしく石像達の残思とも呼べる幽霊からヒントを貰い老人と共に隠し地下空間で少年を発見した。
その少年は十数年も経っているにも関わらず保存状態はかなり良く風化も凌いでいた。
「この少年に天使の涙を使おう!!」
アルスに強く説得された老人は恐る恐る天使の涙を振りかけると石化した少年は徐々に元へ戻る。
「あれ〜〜?? オジサン達は誰〜〜??」
その言葉を聞いて老人は涙を流して少年を抱きしめた。
自分がやった事が無駄だったと思っていたが最後の最後で希望を見つけられたのだからだ。
そして、少年は老人に現状を聞いてとても悲しんだが前を向く事を決心したそうだ。
「今回の異変も胸糞悪かったが、それでも救えられて良かったと思うよ」
「だよな! ヨシ、現代へ帰ろう!」
晴れやかな空を見るとなんだがとても懐かしい様な気持ちになるが俺達は現代へ帰還してダイアラックを目指す。
そこには何もなく1人の少女がいた。ここに移民の街を作りたいらしく誰か誘って欲しいとの事だ。
取り敢えずその話は一旦保留にして貰い、その少女ティアと共に急ぎバーンズ王達に確認を取ってもらった。
ティアは当然ここで生まれ育った訳ではなく、つい先日家族と乗っていた商船が沈没して流れ着いたらしい。
幸いながらダイアラックは過去の異変より土地が回復して、自然豊かな無人島だった事もあり何とか生きて来れたそうだ。
バーンズ王に確認を取ったのはダイアラックがエスタード島とかなり近い位置に復活しており、仮に移民の町を作った時に漁業をする場合でいざこざが起きる事を予想したからだ。
この事に関してはバーンズ王や大臣を始めとした政務関係者達も同意見となり、ダイアラックはグランエスタード王国が所有する新たな領土としてそこの開拓をティアに任せると言う形で収まった。
これにはティアも不満を漏らすかと思ったが妥当な判断だと納得した。正直言って自分1人ではエスタード島の半分近くあるダイアラックは手に余っていた。
移民の町を作りたかったのもこのまま1人寂しく生きていく事がとても不安だったからであり、ちゃんとした王国のサポートが受けられるならそれで構わないと言う事だった。
その為、ティアは一旦城下町にある孤児院で暮らしながらバーンズ王の計らいで、学者達から領地開拓と経営について学ぶ事になった。
元々が商家の令嬢であり、それなりに教養も学んでいるのか学者達からの評判も上々だった。
取り敢えずダイアラックに関しては兵士長達の遠征訓練先として仮設住宅を建造する。
そして、ティアが領地開拓について学びが終わり移民の町を作れる様になれば、その割合を少しずつ減らす方向で決まったのだった。
ティアをバーンズ王達に預けたアレン達は石板を探し当てて次の過去へ行こうとした時、マリベルがちょっと待ってと呼び止めた。
「今回はアタシがリーサちゃんの看病役をしたけど、次はアレン貴方の番じゃない?」
「えっ? いや、リーサちゃんは俺達の友達で妹みたいな存在だけど未婚の女性だからマリベルに決まったんじゃないか?」
「それはっ……!? そうだけど……! アンタ達が冒険している間もリーサちゃんの具合も安定しているし、ちょっとズルいって思ったのよ……」
涙目になり視線を逸らす彼女はちょっといじけた様になって寂しく思っていた。
リーサが元気になる姿を見るのは苦痛ではない。むしろ、幼馴染として彼女が元気になって良かったとすら思う。
それでも、冒険から外された彼女は何処となく寂しさと言うか仲間外れにされた感じがあった。
だから、アレン達に甘える様に心の思いを吐露した。
リーサの看病役はとても重要な任務だけど自分も冒険がしたいと言う思いにアレンではなくてキーファが共感した。
「まぁ、マリベルの言わんとしたい事は分からんでもない」
「っ!? キーファ!?」
まるで仲間に裏切られた様な声を上げるアレンだったがキーファはアレンの肩に手を置いた。
「アレン、俺はお前の腕も信用している。お前は働き過ぎなんだ。ちょっとは休んでも良い」
「リーサちゃんをよろしくね!」
「そう言う事でリーサちゃんを任せたわよ!!」
「〜〜っ!? お前等な〜〜!? 気を付けて行けよ! リーサちゃんは俺が診ておくから!!」
グランエスタード城下町で決められた事だったがルーラで飛ぶ仲間達を見送りそのままリーサの看病役をした。
彼女も驚いていたが食事の後の検査では外で待機して、検査が終われば俺が音楽を奏でて彼女が歌った。
前までの彼女ならか細い声で歌っていたが、今は腹から声を出す歌声を聞いてなんだか嬉しくて涙が出た。そんな日々を過ごした。