キーファ達が過去の異変と対峙している頃、リーサ王女の2度目の命のきのみを食す時が来た。
最初にジュースとして食して早10日。この頃には病弱や虚弱体質もほとんど改善され溢れた生命力も落ち着きを取り戻した。
アレンは思う。微かにあるゲーム時代の宝箱に命のきのみが入っていたのはこう言う事なんだと思った。
リーサの様に病弱や虚弱な体質で亡くなる王妃や王女は過去のグランエスタードの歴史を紐解いても少なくない。
つまり、異変によって消された島々の本来ある王族達もその時の保険にきのみや種を大切にしまっていたのだ。
「まぁ!? 意外と大きいのですね!?」
「まぁ、直で食べても内側はほんのり甘い程度で、外側がちょっと硬くてザクッとしか食感で甘さが凝縮された感じだよ。
多分、長い間腐らない様に化石や琥珀みたいな感じの機能なんだと思う。今回はどっちで食したい?」
「んん?? どっち、とは……??」
「俺やキーファ同様に冒険者風にそのまま直に食べてみるか? それとも粉砕とまでは行かないけど料理長が腕を振るって調理するか?」
「そう言うことですか……!? うーん……」
「焦らなくても良いよ。調理して効果が無くなる様な失敗が起きても後3回は使える」
「それなら……今回も料理長にお任せします。そして、残りの3つは私達の子孫の為に大切に残しますわ」
「……本当に良いのかい?」
それはどっちの意味でもリーサに聞いた。
リーサは昔から病弱や虚弱だったから自由に外へ冒険出来る兄キーファに対して並々ならぬ思いを寄せていた。
キーファ兄のする事を真似る。そんな子供っぽい事をしてしまうのが彼女だと思いあえて食べ方を聞いた。
だけど、この10日の間に彼女は年相応に成長したのだと思い彼女を改めて見た。
残りの3つを大切に抱える彼女からは子供っぽさではなくて未来に苦しむ子孫達への慈しみがありバーンズ王共々目を丸くして驚いた。
そして、料理長が調理するまでの間、俺がトゥーラを彼女が歌を披露して共に音楽を奏でた。
結局、俺はトゥーラしかマスター出来なかったけどそれで良いと思った。
途中、聞き専門だったバーンズ王も打楽器を持ち出して宴と呼ぶには少ないけどちょっとした騒ぎをして料理を待つ。
バーンズ王もリーサ王女の力強く、それでいて美しい歌声に亡き妃を思い出して笑いながら泣いていた。
「まぁ!? とても美味しそうですわ!! いつもありがとう、料理長さん」
料理長はあんなにも元気になられたリーサ王女を見て感動のあまりに声が出せず男泣きしていたのを見て更に笑いが起こる。
彼女が調理された命のきのみを食す時も俺とバーンズ王、グランエスタード音楽隊の引退した古参勢が音楽を奏でる。
そして、彼女が命のきのみを食事終えると更に顔色が良くなり血色も俺達と変わらないくらいに明るくなった。
「……アレン、ありがとう。貴方達のお陰で私も王女の責務を果たす事が出来そうです」
「リ、リーサッ……!?」
「お父様……いえ、お父上、これまで虚弱で行えなかった王女としての責務を果たしたいと思います。
私が元気で王族の責務を果たせば、お兄様を縛るモノが無くなり冒険をさせる為の手助けになると思います」
「っ!? あぁっ……!!」
力強くキリッとした表情を見て誰があの時の虚弱体質で儚かったリーサ王女だと認識出来るのか?
それくらいに彼女はとても元気になりそれを見たバーンズ王が堪えられず嬉し泣きをした。
「リーサちゃん……いや、リーサ王女に進言します」
正装でくれば良かったなぁと内心で後悔しながらリーサの前で跪いて頭を下げる。
バーンズ王を除く周囲の人達もアレンに習って各自が行える最大の敬意をリーサに示した。
「何かしら? アレン」
あの気弱で自分の意見も言えず人の意見に流された様なリーサの言葉には強い自分の意思が感じられた。
「何事も焦ってはなりません。少しずつで良いのです。貴女のペースで無理なく行ってください」
無理をしては元も子もない。そう笑って発言したアレンを見てリーサは微笑んだ。
「勿論だわ。だって、私にはこんなにも多くの人達が支えてくれているのだもの」
「それを理解しているなら余計な進言だったかな?」
「ふふっ。やっぱり貴方に敬語は似合わないわ。リーサの名の下に命じます。これからもいつも通りの態度でお願いね?」
「勿論だ。改めてよろしくね、リーサちゃん?」
お互いを笑う若者の様を見て涙を流すバーンズ王含む大臣達は自分が老た事を感じたくらいには嬉しく思った。