エデンの来訪者   作:火取閃光

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第23話

 大賢者ベゼルによって蜃気楼の塔の中に入った俺達はと言うとその見た目とは違う広大な敷地に驚愕するばかりだった。

 

「ハハッ! 最初はここへ来た者達は誰もがそう驚くさ。勿論、若かりし頃の私もね」

 

「えっ!? ベゼルさんは30代でしょ?」

 

「おっ? 嬉しい事を言ってくれるな。だけど、私は魔王と戦う選ばれし者達を育てる為に何百、何千年を生きているんだ。

 

 この姿は一時的に年齢操作の秘術を使って維持しているだけで実際はお爺さんなんだ」

 

「うっそだー!? そんなのありえないって!?」

 

 キーファがベゼルの言葉を信じ切れてはいない。ガボやアルスも同様だ。

 

 しかし、賢者に踏み込んでいた俺達はベゼルに内包された魔力量の多さにそれも可能だと理解せざるを得なかった。

 

「なら、証拠を見せてやろう。キーファ、前に出てみてくれ」

 

「はい……」

 

「サンズ・オブ・タイム」

 

 ベゼルが取り出した砂時計みたいなアイテムと同時に聞き慣れない呪文を唱えると見る見る内にキーファの体に変化が訪れる。

 

「ふにぁ〜〜!? も、もとに、もどして〜〜」

 

 ベゼルがキーファに向けて秘術を使うと彼を一瞬にして幼児へと時を戻した。

 

 そして、秘術を解かれた彼は元に戻る。アルスもガボもキーファ自身も何をされたのかまるで理解していない。

 

「これは時の砂と言って時間を戻す事も、逆に早める事も可能な大賢者が秘術と共に受け継がれてきたアイテムなんだ。

 

 私はこれを用いて姿や形を変化させている。まぁ、最も大賢者カダルを受け継いだ時点で不老となっている。

 

 元の姿はもう少し幼いんだ。そうだな……。キーファや今のグレンとそう変わらない時期に受け継いだんだ。

 

 さて、無駄話はここまでにしよう。蜃気楼の塔は私でさえ全てを把握している訳ではないが君達の役に立って事は間違い無いだろう。着いてきなさい」

 

 そう言うベゼルの足は躊躇うことがない。

 

 本当に全てを把握していない者の歩く速度ではないほど躊躇いがない。それほど大賢者の知識と賢者の直感が彼を歩ませていた。

 

「まずはキーファよ、この部屋にある槍を持ち自身の運命を知りなさい。もしも辛くなったらこう叫べ。ザメハ」

 

 キーファと一時的に別れて次はマリベルの番だった。

 

「本当は知恵を豊かにする目的だったが、君にはその段階はもう既に過ぎている。

 

 賢者の端くれとしての君にはまず多くの呪文を使いこなして貰う。この部屋はダンジョンと化している。

 

 特定の魔法を習得するまでは出れない部屋だがそれが終わる旅に扉が現れる。アバカム、と言えばつぎに進めるだろう」

 

 そして、次はガボ親子の番だったが大賢者と言えど彼等に何を伝授すれば良いのか未知数だった。

 

「ガボお前には……そうだな、冥府に眠るお前の一族を呼び覚ます訓練を行ってもらう。

 

 親狼には……そうだな種族としての進化の為に別の訓練を行って貰おう。今のままでは魔王の配下に殺されてしまう。良いな?」

 

 そして、ガボと親狼は別々の部屋でトレーニングをして貰い、最後に俺とアルスだけが残った。

 

「さて、気が付いているかは分からないがお前達を最後にしたのは理由がある。それはお前達に刻まれたアザについてだ」

 

「アザ、ですか……??」

 

「これが一体なんだと言うのです?」

 

 あれは右の背中と言うか肩の辺りを触り、アルスは右のアザを触った。

 

「グレン見せてやれ」

 

「はい、マスター。前にも言った通り俺は火の精霊と共にある一族の末裔で火の紋章を覚醒している。これがそうだ」

 

 そう言うとグレンは自身の額にある火の紋章を見える様に髪の毛をたくしあげて見せた。

 

 相変わらず不思議な模様だ。そう思ってみていると少しだけその模様が違う事が分かった。それはアルスも同様だった。

 

「少し、前に見た時とは違う……??」

 

「っ!? アレンもそう思ったっ!? 僕もそう思う!!」

 

「そう思ったのも無理はない。お前達と別れた後、マスターに頼んでもう一度修行を再開した。

 

 俺がこの姿なのはお前達と別れて5年が過ぎているからだ。その間に自身の中に秘める火の精霊を調伏したからこうなった」

 

「お前達はグレンと同じ精霊に選ばれた者達だ。アルスはその腕のアザがある通り水の精霊。

 

 アレンはその背中にあるアザがある通り風の精霊がその身に秘めている。

 

 お前達の課題は自身に秘める精霊の調伏だ。そうすれば自ずとアザは完全なモノへ変化する。

 

 精霊の調伏は私のサポートは与えられず自分自身で解決するしかないのだ。

 

 それが話し合いで済むのか、はたまた問答無用に体の主導権を手に入れる為に攻撃するかは精霊次第だ。頑張れよ」

 

 説明が具体的すぎると思いまさかと思いながら恐る恐る質問した。

 

「……まるで体験してきたみたいな言い草ですね? もしかして……??」

 

「……その通りさ。大賢者カダルを受け継ぐ前に原初の精霊・炎の精霊オウエンの調伏をした事があってね。とても苦労したものさ」

 

「……つまり、ここには精霊に選ばれた深い縁者が集まったみたいですね。ちょっと面白くなりました」

 

「それじゃ、やろうか」

 

「そうだね。お互いに調伏出来る様に健闘を祈り合おう」

 

 お互いに別々の部屋へ入るとそこには開けた大草原に風が強く吹き荒れていた。

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