エデンの来訪者   作:火取閃光

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第29話

 真っ昼間の酒場は客があまり来ておらずガラリとして居た。酒場の本領は夕方から夜に掛けてがピークだ。

 

 そんな中でも1人ポツンと咽び泣きながら酒を飲む若い男性がいた。この男こそがポルタ達が言う薬師を知って居る人物だった。

 

「ひっく、あんだってぇ……?」

 

「だ、か、ら! アンタはどっから来たのって聞いて居るのよ!?」

 

 酔っ払いは本当にやけ酒をして居たのか目は赤く腫れており、飲酒で頭と呂律が回って居なかったのて何度も聞くがマトモな答えが返ってこない。

 

「あぁ〜〜!! もう!! コイツにマヒャドを叩き込んでも良い!? マヒャド撃つわよ!? 絶対に目ぇ、覚ましてやるわよ!!」

 

 右手に集まる氷の魔力に周囲の温度が段々と下がっていく。マリベルはガチギレだった。

 

「ちょっ……!?」

 

「それは流石に死ぬって!?」

 

「貴重な情報源を殺すなよ!?」

 

「死んだ後にザオリクするわよ!!」

 

「そう言う話じゃねぇーー!!」

 

「うるさーい!! それ以上、邪魔立てするならあの男の前にアンタ等をボコすわよ!?」

 

 キーファとアルス、アレンに羽交締めされてアレンにはマヒャドを打ち消す為に炎の魔力であるメラゾーマぶつけ合い、なんとか暴れる彼女を抑える事に成功した。

 

 しかし、次第に彼女の魔力が増えていく。マリベルはガチで目の前の男を殺してから蘇生する気で居る。何としてでも止めなければとアルス達は視線を合わせて頷いた。

 

「ガボ! 僕達でマリベルを抑えておくから店主に頼んで水持って来て!!」

 

「分かったぞ!」

 

 流石のガボ達もアルス達の必死さとマリベルの漏れ出す魔力にガチでヤバい事を本能的に感じ取ったのか、バケツ一杯の水を持って来て酔っ払いにぶちまけた。

 

「ぶはっ……!? な、なな、なんだっ!? 何が起こった……!?」

 

 冷水を顔面にぶちまけられた酔っ払いは事の状況を上手く理解出来ていないが酔いは覚めた様だ。

 

「手荒にしてすまないが貴方に聞きたい事があって来たんだ。酔っ払っていた貴方では話にならなかったからな」

 

「だとしても!? いきなり冷水をぶちまけるヤツがあるかー!? ぶっえくしゅっ……!?」

 

「へ、へえ〜〜……。それならやっぱりこっちの方がお好みかしら……??」

 

「ひ、ヒィッ……!?」

 

 男の体が一気に冷える。それはきっとマリベルが怖いだけでは無く物理的に体温が下がっているのだろう。何故なら、両手に氷の魔力を集めていたからだ。

 

「あ〜〜……。アンタは覚えてないが俺達って割と結構な時間を使って穏便に済ませようとしていたんだが……」

 

「僕達の仲間が遂にブチギレちゃってね……」

 

「終いには貴方を殺して蘇生させてから酔いを覚まさせるって荒技に出ようと……」

 

「も、もも、もう良いです!! 申し訳ございませんでしたー!!」

 

 マリベルの手にはマヒャドを放つ為に溜めた魔力があり、申し訳なさそうに視線を逸らすアレン達を見て、酔っ払った自身がやらかした事を悟り土下座をしたのだった。

 

 そして、その男から占いも行う薬師について聞くとなんと彼はエンゴウの村出身者でグリンフレークには買い出しに来ていたらしい。

 

 ただ、買うモノは買ったのにエンゴウの村に戻る為の道が無く、果てにはキメラの翼を使ってもまるで反応がない事に気が付いて絶望のあまり酒に浸っていたそうだ。

 

 これはきっと悪い夢だと。自分がエンゴウに帰れないのはその夢のせいだと現実から目を逸らしていた。

 

「つまり、占い師でもあり薬師でもあるのはパミラさん?」

 

「っ!? あの婆さんをご存知ですか!?」

 

「えぇ、まぁ……」

 

「あのお婆さんから僕達も世話になった事があるんです」

 

「まさか、こんな所でエンゴウの村を知っている方達と出会うなんてっ……!? うぅっ……!!」

 

 男はホームシックのあまりに号泣していた。その姿に流石のマリベルもため息を溢しながら同情していた。

 

 そして、情報を聞いたお礼に色々と溜め込んでいた鬱憤を晴らす様に話を聞いてあげてると、男は少しスッキリとした気持ちで宿へ向かった。

 

「なるほど……。グリンフレークはエンゴウの村と繋がった場所にあったのか……」

 

「話は聞けたんだし、一旦戻って過去のエンゴウへ向かう?」

 

「でも、あの人をこのまま放置って言うのも何だか気が引けちゃうな……」

 

「……だよな。あの人にもエンゴウの生活もあるんだし……」

 

「それなら、オイラの様に未来に連れて行ってから送り届けるぞ!」

 

「いや、それは一回俺達だけでエンゴウの村に行ってからだな」

 

「アレン、どうしてだ?」

 

「あの人が買い出しに来ている時間とエンゴウの村の時間がズレている可能性があるって事だ」

 

「確かに……。それはあり得るね……」

 

「つまりアレか……。擬似的なダイアラックで生き残った少年みたいな感じか……?」

 

 キーファの例え話を前世では浦島太郎状態と言っていたっけとアレンは思った。

 

 過去は過去でもこのグリンフレークが火山爆発前のいつの時代なのかは俺達には判断が出来なかった。

 

「そう言う事。エンゴウはエンゴウでも時間軸がズレて居たら結局帰っても違和感しか無いと思う」

 

「それなら一層の事このまま放置して、僕達が過去改変を行って世界が元通りになるまで待って貰うの?」

 

「それはオイラでも、ちょっと可哀想って思うぞ」

 

「ガウ……」

 

「どの道、過去のエンゴウに向かうんだしその時に聞けば? それで、時間軸がズレて無かったら未来経由で帰してあげれば良いんだし」

 

「マリベルに賛成だな。それと、エンゴウの村にはマリベル達だけで行ってもらいたい」

 

「アンタは?」

 

「俺はちょっと未来で用事が出来たからそれをしに、な?」

 

「なら、俺もお前について行くわ。俺も用事が出来た事だし?」

 

「キーファもなの? まぁ、良いわ。過去のエンゴウにはアタシ達だけで行ってくるわ」

 

「その用事、早く終わらせてね」

 

「オイラ達に任せるのだ!」

 

「ガウ!」

 

 そして、旅の扉で未来に帰ってからマリベル達は過去のエンゴウの村へと向かったのだった。

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