エデンの来訪者   作:火取閃光

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第31話

「……そうか。あい、分かった。その様な手筈で行こう。お客人達よ、色々とすまんな……」

 

「いえ、これは取引です。自分達にも利益があるので気にしないで下さい」

 

「そう言って下さるとありがたい。それでは、早速だがぺぺに薬を掛けて欲しい」

 

「マリベル」

 

「分かったわ。えいっ」

 

 エンゴウの占い師パミラから貰った薬をぺぺに降り注ぐ。

 

 薬はまるで空気に溶け出す様にしてぺぺの体を包み込むと彼の体が血色の良い肌へと戻っていった。

 

「……ん、うん。ここ、は……??」

 

「っ!? ぺぺっ……!!」

 

「リンダ……?? それに、みんなも……」

 

「ぺぺよ、無理はするな。そのままで良い」

 

 無理をして起きあがろうとするぺぺにボルックは、声をかけて横になる様に静止させて事前に決めておいた説明をした。

 

 ぺぺも最初は信じられない様子だったが、次第に頷き納得した様子でその話に耳を傾けた。

 

「お客人よ、改めて感謝する。今日はもう遅い。是非我がグリンフレークへ泊まっていって欲しい。そして、明日改めて歓迎会開きたい」

 

「ありがとうございます。ボルックさんのお心遣いに感謝致します」

 

「そう言う訳だ。ぺぺも今日はゆっくり休んで明日に備えるんだ。良いな?」

 

「……はい」

 

「リンダよ、すまないがお客人達を宿屋まで案内して欲しい」

 

「ボルックさん、宿屋へ行く前に旅の準備を整えたいのですが……」

 

「まぁ! そう言う事でしたら、私の叔父が商人をしておりますので宿屋へ向かう前に案内致しますね?」

 

「是非お願いしたい」

 

 そして、俺達はボルックとリンダのご厚意に甘えると言う体でその場を立ち去り、道具屋にいるリンダの叔父に協力を仰ぎに向かったのだった。

 

 リンダの叔父は明日から行う芝居について彼女から聞かされた時は信じられない様子だった。

 

 しかし、彼女のぺぺを思う気持ちと悪役を引き受けるアレン達の思いを受けて賭けてみたくなり快く引き受けたのだった。

 

 そして、宿屋に泊まり次の日を迎える。

 

「これより、我がグリンフレークを救済してくださった英雄達へ感謝の意を込めて歓迎会を開催する! みんな、楽しんでくれ!!」

 

 ボルックの掛け声にグリンフレークの街人達はどんちゃん騒ぎを開始した。

 

 これは、石化した街人達の不安を解消する為にも行われており、街人達は英雄達を讃えながら自分達の生還を神に感謝しながら騒いだのだった。

 

 アレン達もこの歓迎会を盛り上げる為に自分達が出来る持ち芸を披露した。

 

 アレンがトゥーラで音を鳴らしてキーファとマリベルが華麗で優雅に踊り、アルスとガボと親狼が大道芸を披露すると会場は大盛り上がりだった。

 

「皆の者、宴は楽しんでくれただろうか?」

 

 ボルックの掛け声にグリンフレークの街人達は大きな声で楽しげに叫んだ。

 

「それは何よりだ。我が街を救済して下さった英雄の皆様、改めてグリンフレークの代表として感謝を申し上げたい」

 

「ボルック殿、頭をお上げください」

 

「俺達もこんなに素晴らしい歓迎を受けて感謝の極みです」

 

「ありがとうございます。それで、我等の街を救済して下さった皆様に何かお礼をしたいのです。

 

 私の権限で出来る事であればなんでも言ってください。出来る事は叶えるつもりです。何かありませんか?」

 

 ボルックの太っ腹な発言に街人達も気を緩くする様に同意して、グリンフレークの懐の広さをアレン達へアピールした。

 

「……ふむ。本当になんでもよろしいのですか?」

 

「えぇ。流石にグリンフレークが欲しいとなるとお譲りは出来ませんが、それ以外であれば私の権限で出来る範囲で叶えて見せましょう」

 

「それでしたら、是非リンダ嬢を私の妻にしたい」

 

 アレンの発言にさっきまで盛り上がっていた街人達は沈黙する。静まり返る空気と共に、彼等の脳内ではアレンの発言を理解するまで時間が掛かっていた。

 

 そして、それはリンダと婚約関係だったイワンやその側にいた若いメイド、少し離れた所にいたぺぺも同じ様に固まったのだった。

 

「英雄殿、申し訳ない。リンダの両親は過去に多額の借金をしておりまして……。

 

 それは、一時このグリンフレークを滅亡の危機を招いたほどだったのです」

 

「えぇ、それは昨日彼女とその叔父君からお伺い致しました」

 

「それでしたらご理解頂いていると思いますが、確かに彼女は借金の返済の為に我が息子のイワンの婚約者に据える事で借金を帳消しにすると言う処置を行いました。

 

 その為に彼女の身柄は言い換えれば私の所有物であると同時に、このグリンフレークの所有物でもあるのです。故に、幾ら英雄殿の願いといえどリンダをお譲りする訳にはいきません」

 

「そ、そうだーーっ!! リンダは俺の婚約者だぞっ……! ポッと出のお前になんかにっ……!!」

 

「イワンッ! お前が出しゃばるな!」

 

「だ、だけどっ……!?」

 

 イワンはいつもの様にボルックへ反論しようとしたが、普段の何だかんだで甘い父とは違う雰囲気を醸し出す街の代表としてのボルックから睨まれて恐怖のあまり硬直した。

 

「これは街の代表である私と街を救済した英雄殿の話だ! 幾らお前であろうと家督を継いでいないお前がでしゃばって良い話ではない!」

 

「う、ぐぅ……!?」

 

 ピシャリッ! と凄い剣幕で叱られたイワンはいつもの様に逃げようとするが恐怖のあまり足が動かなかった。

 

「すまなかったな、英雄殿」

 

「いえ、当然の反応だと思います。しかし、それなら彼女の借金を私が肩代わりすれば彼女を妻に娶っても良いのですね?」

 

「それは……」

 

 ボルックが考え込む様な表情で言い淀んだ。その姿を見て街人達も彼が言葉を詰まらせた意味を理解していた。

 

「昨日、彼女から聞いた残りの借金である5.5万Gです。それに加えて無理を言うのですから更に3.5万Gもつけた9万Gです。どうぞ、お確かめ下さい」

 

 魔法袋から金貨がみっしりと詰まった袋を乱雑に地面に置いた。ズッシリとした重い音と共に袋の口から輝く光に周囲は騒然とした。

 

 これには流石のイワンも口を大きく開けて愕然とする。9万Gと言う大金はグリンフレークが村から街へ成長してもかなりの大金だった。

 

 それを即金で何の躊躇いもなく支払えるアレンの経済力と自身の立場を比べてしまいイワンの心は今にも折れそうだった。

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