エデンの来訪者   作:火取閃光

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第34話

 この雨は石化を起こす雨ではなく普通の雨だ。しかし、街人達は石化した自身の恐怖が蘇り始めて周囲が騒然とし出す。

 

「キャーーッ!? 雨よーーっ!!」

 

「うわぁっ……!? 死にたくないーー!!」

 

「みんな、早く家の中に隠れるんだーー!!」

 

「っ!? 静まれ! グリンフレークの民よ! これは普通の雨だー!」

 

 ボルックの掛け声に反応して落ち着きを取り戻す街人達は少ない。こんな事で折角作った流れをぶち壊れてたまるかとアレン達は思い視線を合わせる。

 

「マリベル、アルス」

 

「分かったわ」

 

「行くよ!」

 

「「共振」」

 

 アルスとアレンが共にお互いの内に眠る精霊を呼び起こして共鳴現象を起こす。

 

 アレンとアルスの肩や腕には完全な形をした精霊の聖刻が浮かび上がり、互いの精霊をシンクロ状態にして力を増幅させているのが共振と言う状態だ。

 

「アルス、合わせなさいっ!」

 

「勿論!」

 

「「マヒャド!!」」

 

 蜃気楼の塔での修行で高まった魔力と共振で増幅された魔力から放たれる氷結系呪文のマヒャドは、グリンフレーク上空を覆った雲を瞬時に凍てつかせて雨を止ませた。

 

 その瞬間、雨が止みはしたが落下する巨大な氷塊に別の意味で街人達は絶叫を上げたが、この時までに闘気力高めていたキーファとガボ達がそれぞれ最高の技を放つ。

 

「行くぜー! グランドクロス!!」

 

「行くぞー! 剣王震空呀!!」

 

 巨大な氷塊へ向かう闘気力の十字斬撃と3本爪から放たれる音速を超えた衝撃波。

 

 ガボは蜃気楼の塔で親狼と共に冥界へ赴き、そこで幻魔剣の剣士達から技を教えて貰ったそうだ。

 

 何でもガボの子孫が生み出した呪いの武具を使った剣術らしく、白狼から人になる呪いを受けたガボだからこその呪いに対する親和性と絶対的な耐性が上手く噛み合ったらしい。

 

 あれだけ巨大だった氷塊が幾つもの大きな塊として落ちてくる。普通に考えれば被害はかなり大きい。

 

「風よ、水よ、我等に眠る精霊達よ! 俺にその力を貸してくれ! バギムーチョ!!」

 

 いつもよりも強い暴風が落下して飛来する大きい雹をグリンフレークの外へ吹き飛ばす。

 

 そして、雨と言う自然の災害とも恵みとも言える脅威を人の身で吹き飛ばしたアレン達をボルック含めたぺぺ達は、呆気に取られて何も言えなかった。

 

「さて、ボルックさん決闘の宣言お願いします」

 

「っ!? あ、あぁ……」

 

 何事も無かった様に振る舞うアレンを見てボルックは、ハッとして宣言しようとするが上手く言葉が出なかった。

 

「こ、これより、決闘を開始する……」

 

 決闘までの流れは事前に聞かされていた。だけど、改めてアレン達の力を見せられてボルックは不安になった。

 

「さて、決闘を始めようか? まずは元婚約者のイワンさんから来なよ。どうしたの? 掛かってこいよ?」

 

 慣れない共振を発動して疲労感を感じているアレンの表情は固い。アルスも疲労困憊を隠せないほど、共振は体力の消耗が激しかった。

 

 そんな事は梅雨知らず。体から闘気力と魔力が漏れているアレンにギロリッと睨まれたイワンの心は粉々に砕けていた。

 

「お、俺はっ……!? む、無理だっ……!! あんなの、勝てるわけがねえっ!!」

 

「それじゃ、君の負けで良いかな? ボルックさん」

 

「イワンの敗北宣言により勝者アレン殿……」

 

 息子の情け無い姿に溜息をこぼすボルックは、同時に初めて息子の行動に同情した。それは街人達も同じだった。

 

 腰が抜けたイワンは目に涙を浮かべて、下から熱い体液が地面に伝わり水溜まりが出来ていたが、失神して気絶しないだけ根性を見せた方だった。

 

「さて、次は君だな。どうする? 君も彼の様に敗北を認めて、諦めて"俺"にリンダを渡す覚悟が出来たかい?」

 

「ぺぺッ……」

 

「っ!? リンダ、情け無い姿を見せてごめん……。でも、必ず俺が君を守る。だから……っ!?」

 

 恐怖で震える体を押さえ付ける様に俯くぺぺをリンダは抱き締めて口付けを交わした。

 

 ぺぺは何が何だか分かっていない様だったが、次第に理解が追い付くとさっきまでの震えがピタリと止まり落ち着きを取り戻した。

 

「ほぉ、見せつけてくれるねぇ……」

 

 氷塊はアドリブだったが、それを燃料にして盛り上がっているリンダ達をアレンは睨み付ける。疲労困憊で余力が無いのに目の前でイチャつかれて顔が引き攣っていた。

 

「ぺぺ、私は貴方の事がずっと好き。そして、それはこれからもずっと変わらないわ」

 

「リンダ……」

 

「私も一緒に戦うわ。だからっ……!」

 

「あぁ! 一緒に戦おう!!」

 

「それでは、ぺぺ達の決闘を開始する!! 始め!!」

 

 ボルックは2人の幸せそうな笑顔を見て心が緩み、街人達も魔王に挑む勇者の如くぺぺ達を応援した。

 

 2人は駆けた。高々数十メートル程度だけどその歩みはとても力強く、そしてアレンの体に届いたのだった。

 

 体当たりを受けたアレンは後ろへ姿勢を崩しながら地面へと倒れ込んだのだった。

 

「勝負アリ! ぺぺの一撃が当たった事でアレン殿の負け! よって勝者ぺぺとリンダ!!」

 

 さっきとは違った意味で呆気に取られるぺぺ達だったが、街人達の大歓声を受けて2人は熱い抱擁を交わしたのだった。

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