グリンフレークの街人達が抱き合うぺぺとリンダへ駆け付ける。彼等は今まるで御伽話に出る様な偉人の誕生に喜びを分かち合い、それを成したぺぺ達を胴上げして彼等を祝福した。
「アレン、お疲れ様」
「倒れたのはわざとかしら?」
「わざとな訳あるかよ……。共振、めっちゃ疲れた……」
ぺぺ達から少し離れた所でマリベル達が、地面に仰向けで寝転んでいるアレンに駆け寄り彼を労った。
「アレン殿」
「ボルックさん、残念ですが約束は約束です。リンダさんはぺぺさんの妻です」
「えぇ、その様ですな」
2人の幸せを祝福する様に街人達は、彼等の元へ歩み寄り誰もが祝言を掛けて喜びを分かち合った。そんな中でイワンが怒りの声を上げた。
「ふ、ふざけるなっ!! こ、こんなのっ……! 認められるかっ……!!」
「それなら、今ここで再戦するか? ボルックさんの手前でこんな事は言いたく無かったけど、お前は初めて会った時からムカついていた」
「な、なんだとっ……!?」
「お前の言動や行動は幼児の癇癪だ。気に入らなければ辺りに当たって横柄な態度をする。
お前の行動や言動がボルックさんの顔にどれだけ泥を被せれば気がつくんだよ? いつまで子供気分なんだ?」
「そ、そんな事、誰もっ……!?」
「そんなの言える訳ないだろ? アンタはグリンフレーク代表ボルックさんの息子なんだから」
「っ!?」
折角のお祝いムードをぶち壊され、それに加えていつもの子供の様な癇癪を受けた街人達からも今まで我慢して来た不満の声が上がる。
それを聞いてイワンは奥歯を噛み下に俯いた。それは、自身の評価が決してアレン達だけが言う評価ではないと自覚して悔しかったからだ。
「アンタがリンダさんに愛されなかったのは、そう言う大人なのに成長しない子供っぽいところだったんじゃないの?
アタシも女だからアンタみたいなクソガキっぽいところは、見ていて腹立つほど嫌いだったわよ」
「っ!? イワン様を知らないで知った口を言わないで!!」
「カヤ……?」
「イワン様は誰よりも優しい人なのよっ……! それなのにっ……!!」
「っ!? カヤッ……!?」
「待ちなさい、イワン」
悔しさと悲しさ、葛藤が複雑に混ざった様な思い詰めた表情のカヤが涙を流しながら走り去った。
それを追おうとするイワンだったが、父であるボルックに止められて苛立ちを隠さなかった。
「っ!? 父さんっ!?」
「行ってどうする? そこでカヤを慰めてお前はどうするんだ?」
「っ!? そんなのっ……!!」
「お前は散々カヤの気持ちを断って来ただろう? 私があの子の気持ちを知らないとでも思っていたのか?」
「っ!? そ、れはっ……!?」
ボルックの指摘にイワンはサッと視線を逸らした。彼女が自分に好意を抱いている事は知っていた。
それでも、自分はリンダを諦めきれず意地を張り続けてそれを袖にしたのだった。
「お前の様な優柔不断が行ってどうする? 下手な慰めは逆効果だ。それなら行かない方が「うるさい!!」 っ!?」
「アンタの言い分はもう沢山だ!! カヤはっ……! カヤだけが俺を信じてくれた!
アンタの言う通り俺は優柔不断だし、アンタ達の言う様に惨めな嫉妬心でガキみたいな意地を張っていた!
だけど! こんな情け無い俺を今でも信じてくれたアイツの悲しんだ顔を放って置くなんて出来ないんだ! だからっ……!」
「……イワンよ」
「っ!?」
「よくぞ言った。もう私から言う事は何もない。お前の伴侶はお前の好きにしなさい。ただし、これからはもう子供で居られなくなるぞ?」
「分かっている! ただ、今まで色々ごめん。ありがとう、父さん」
ボルックは振り向かずにカヤの元へ向かう息子の成長を見てホロリと涙がこぼれ落ちた。
彼が今日ここまでイワンへの当たりが強かったのは、これを機に息子の再教育と親離れをさせるためでもあった。
その過程で息子にあった肥大化したプライドを粉砕して、グリンフレークの街人達の気持ちを知る事が出来たのだ。
正直言ってかなり辛い気持ちだったが、ボルック自身も子供離れをするのだと決意を固めて挑んだのだった。
「さて、ぺぺよ……。アレン殿の提案で決闘をしたとは言え、よくも私に恥をかかせてこんな事をしでかしたな?」
「っ!? 申し訳、ありません……」
「それに加えて、ここまで手を掛けてやったのに恩を仇で返されるとは……。
息子イワンの自業自得。人徳不足だが、このままグリンフレークに居させては今後の運営に支障が出る。
よって、ぺぺとリンダ達をグリンフレークから追放処分と課す。異論は受け付けない」
ボルックの宣言に街人達は、何とか慈悲を求める様に誰もが彼等の処分を軽くする様に叫んだ。
「静まれ! 話は最後まで聞け。ぺぺよ、リンダの両親が事業を立ち上げようとした場所は知っているな?」
「え、えぇ……。グリンフレークから少し離れたあの場所ですね……?」
「そうだ。そこで村を起こして発展させなさい」
「し、しかしっ!? そんな人やお金はっ……!?」
「そうだな……。時にグリンフレークのみんなよ、先ほど私は偶然9万Gと言う大金を手に入れる事が出来た。
だから、新たな村の建設の為に雇用を増やそうと思っている。いや〜、しかし、困ったな……。
誰か、問題を起こしてグリンフレークを追放されたぺぺ達と一緒に村作りをする人が居ないものかね……?」
チラッと視線を送り白々しいボルックの態度に街人達は思わず笑ってしまい、自分がやると次々と手を挙げたのだった。
「どれ、これで人はどうにかなったな」
「それじゃ、お金は自分から」
そう言うとアレンは残りの3万Gを取り出して当初の予定通りにリンダへ渡した。
「リンダさん、結婚おめでとう。これは友人としてのささやかなお祝い金だ。受け取って欲しい」
そして、アレンが素直にお金を渡した事で流石のぺぺや街人達も彼等が手を組んでいた事に気が付いたのだった。
「……もしかして?」
「言って置くけど、アンタがリンダさんに思いを告げなかったら本気で俺が彼女を娶っていたからな?
冗談の類いで大金を支払い人を買うほど軽い気持ちでやった訳じゃないからな?」
事前にこの流れを言った時にリンダ達には、もしもぺぺが思いを告げずに身を引いた時は本当にアレンがリンダを娶る事を伝えていた。
リンダもアレン達の事情などを踏まえて了承した。その上でアレンが接吻を迫った時に本気でぺぺを思って欲しいと彼女には伝えてあったのだ。
「それなら、どうしてここまでっ……!?」
「投資」
「投資……?」
「俺達が世界救済が目的なのは言っただろ? アンタのハーブは有用そうだから何か困った時に使う為だ。
だから、必要以上に感謝しなくて良い。でも、恩を感じているならアンタの子孫にも必ず伝えてくれ。その内、投資分を貰いに行くからさ」
「あ、あぁっ! 分かった! 色々とありがとう」
「それじゃ、しばらくは村の発展を手伝うから案内よろしくな」
アレン達はキーファに用意してもらった荷馬車にぺぺ達を乗せて、グリンフレークの有志達を引き連れてその場所に向かったのだった。