エデンの来訪者   作:火取閃光

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第46話

 キーファがユバール族の守り手となった日は流石に宴や旅立ちも一旦保留となった。

 

 少ししてライラと無事に帰って来たマリベルだったが、アレンやアルス達と顔を合わせる事なくテントに戻った。

 

 アルスの胸の中で一頻り泣いたガボは疲れてしまったのか母狼と共に眠り、次の日にはある程度心の整理がついた様だ。

 

 しかし、マリベルはと言うとまだ時間が掛かりそうだった。その間はユバールの女子供達に呪文を教える事で気を紛らわせていた。

 

 その中にはキーファも参加していて、ライラを通じて少しだけ話せているみたいだった。

 

 また、キーファは蜃気楼の塔で行った修行で格段と魔力が増えており、現在ではアレンやマリベルよりちょっと少ないアルスに次ぐ程の魔力を有していた。

 

 恐らくこれまで食した不思議なきのみに加えて、勇者の祖先として覚醒した事がきっかけだったのだろう。

 

 今ではメラやギラだけではなく、ホイミやキアリーと言った簡単な呪文を習得しており子供達に教えていたのだった。

 

 対するアルスとアレンも心の整理と気を紛らわせる為にガボやダーツ達と一緒になって、魔法の適正が低い者達や若い衆へ武技の伝授をしていた。

 

 先日起きたモンスターの大襲撃で獣人(オーク)系が多くい為に鉄の槍がかなりの本数入手する事が出来た。

 

 状態が良い物は少なかったが、半ばから折れた物も擬似的な剣として運用する超短槍や老人でも扱える様な短い鉄棍として運用が可能なので拾った物を渡していた。

 

 更に言えばアレン達が乗って来た馬車もユバール族が有効に活用して貰う為に譲渡した。

 

「いや、こんなに貰うのは……」

 

「いいえ、是非貰って下さい」

 

「しかし……」

 

「貴方達の旅はもしかしたら俺達以上に過酷な旅になるかと思います。武器や戦う術だけではなく、大自然を相手にする事もあるでしょう」

 

「この馬車を使って必ず生き残って欲しいんです。お願いします」

 

「……あい、分かった。アレン殿とアルス殿のお気持ち、確かに承った。ユバールの族長として改めて感謝を申し上げたい。本当にありがとう」

 

 そうしてユバールの族長を含めた老人達はアレン達へ感謝を述べた。また、貰ってばかりでは気が引けるとしてビバ=グレイプの苗と種を幾つかと一族秘伝の旅の扉の作り方を教えて貰ったのだった。

 

 どうやら彼等は一時的に旅の扉を発生させる事が可能らしく、海を越えなければならない時に先人達が残した旅の扉の跡地に再度繋げて旅をしていた。

 

 族長はその術理が記された貴重な本をアレン達へ譲渡した。流石に受け取れないと断ったが、これは族長やそれに連なる者達が術理を理解する為に複写した代物だった。

 

 だから、1つくらい無くなってもこれ程の多くの物を貰えるなら高く無いと族長は笑って譲ってくれたのだった。

 

 そして、2〜3日が過ぎた頃にアレン達が元の世界へ帰る事を決めたので、ユバール族総出で見送りをしに向かった。

 

 時渡りの旅の扉がある場所は丁度、ユバール族が向かう旅の扉が隠された場所と同じ方角だった。

 

 神の祭壇へ向かう時とは違い急ぐ必要がないので、アレン達は2〜3日掛けてゆっくりと向かった。

 

「……アレン」

 

「ん? どうした、マリベル?」

 

「あの時は、殴ったり酷い事を言ってごめんなさい……。この数日間、頭を冷やしたらアレンの気持ちを無視していたわ……。本当にごめんなさい」

 

「……謝るべき事は俺にもあった。ごめんな、マリベル」

 

「な、なんで、アンタが謝ってんのよっ……」

 

「いや、俺も冷静になってさ……。マリベルが言う様に全部を受け入れた気になっていた。

 

 これが正しいって、キーファを傷付けたくないから自分の気持ちを押し留めた事に気が付いたんだ……。

 

 やっぱりさ、マリベル……。俺も、キーファと離れるのは心が痛いよ。簡単に受け入れるなんてやっぱり無理だよ……」

 

 震える拳を握りしめて涙が零れ落ちるのを痩せ我慢していたアレンは自身の心の内をマリベルに明かした。

 

 アレンがキーファの選択を受け入れている様に見せていたのは、そう考えていないと気がおかしくなりそうだったからだ。

 

 確かに前世の記憶としてキーファと別れる日が来る事は頭では理解していたし、先日キーファ自身が言っていた話も納得がいっていた。

 

 だけど、それを含めても彼と過ごした10年近い月日はアレンにとっても重かった。まるで半身が捥がれるくらいに心が痛かったのだった。

 

「そう、なんだ……。まぁ、そうよね……。でも、アイツが考え抜いた答えなんだもんね……」

 

「うん……。だから、俺はさ……。辛くても、悲しくても、キーファの選択が間違っていないって祝福してやりたいんだ。ごめんな……」

 

「ううん……。もう、気にしていないわ……。確かに、これが最後かもしれないから、後悔はして欲しくないわよね……」

 

 旅の扉に到着する少し前にアレンはマリベルと和解した。お互いに思う所はある。だけど、それはキーファを想ってこそだった。

 

 そして、謎の神殿にある封印されし石板と繋がる時渡りの旅の扉に到着した。

 

 その頃には普段と変わらず話すマリベルとアレンがいて、キーファだけではなくアルス達やユバールの民達もホッと一息吐いたのだった。

 

「さぁ、着いたぜ。これで、本当にお別れだ」

 

「キーファ……」

 

「お前とマリベルが仲直りしてくれて良かったぜ。あのまま別れていたら、きっと一生後悔していただろうからな……」

 

「フンッ! それはアタシとガボに相談なく勝手に決めたアンタの罰になって良いんじゃないかしら?」

 

「クハッ! 手厳しいけど、全くその通りだぜ」

 

「全くもう、マリベルは素直じゃないんだから」

 

「嘘は良くないぞ、マリベル!!」

 

「お前の照れ隠しはバレバレなんだよ」

 

「う、煩いわね!? アンタ達は黙ってなさいよ!!」

 

 アルスとガボ、アレンのツッコミを受けて顔を真っ赤にして恥ずかしがったマリベルを見て笑いが起きた。

 

 それは涙が出る程に良く笑い、一通り笑いが収まると穏やかな顔をしたキーファがライラの手を握り締めた。ライラも震える彼の手を安心させる為に強く握り返したのだった。

 

「……ここからは俺とお前達は別の道だ。奪われた世界の人達がお前達が来るのを待っているぜ。

 

 俺は守り手としてこの時代に残る。ユバール族と言う希望を必ずお前達の時代に繋げて見せるさ」

 

「あぁ、ユバール族の事を頼んだぞ」

 

「こっちでも元気でね」

 

「オイラ達はずっと友達だ!」

 

「ライラを幸せにしてやりなさいよ」

 

「あぁ、勿論だ」

 

 キーファとの最後の別れは誰も悲しい涙を流さない様に溢れる感情をグッと堪えて笑い合った。

 

「アレンとアルス」

 

「ん?」

 

「どうしたの?」

 

「こんな事話した事はなかったけど、多分お前達2人は何か運命を背負った奴等なんだと思う。

 

 俺、本当はお前達が羨ましかったんだぜ。だからこそ、何者でもない俺は旅をする事で俺にしか出来ない何かを見つけたかった……。

 

 だけどな、いざ冒険してみたらそんな事を忘れるくらいに楽しかった。確かに苦しい時や辛い事もあった。

 

 それでも、今は後悔なんてしないくらい充実した日々を過ごせた。今まで一緒に旅が出来て本当に楽しかったと心から思えるよ。ありがとな」

 

「僕も同じだよ、キーファ」

 

「キーファ、俺はさ……。マリベル達の前でああ言ったけど、本当は俺もお前と別れるのは辛いし悲しいかった。

 

 お前と過ごした日々は本当に楽しかったし、本当はこれからもずっと一緒に旅もしたかった。

 

 でも、それ以上にお前が一生懸命になって考え抜いたこの選択を祝福して応援したかったんだ。

 

 俺はキーファと出会えて本当に良かった。お前と過ごした日々は一生の宝物だと思う。俺の方こそ大切な宝物をありがとうな」

 

「……ヘヘッ、おう!」

 

 アレンとアルスが握手を交わした事をきっかけにマリベル達もキーファだけではなくユバールの民達と別れの挨拶をした。

 

「みんな、親父とリーサに会ったら伝えておいてくれないか? アンタの息子はやっと自分の進む道を見つけたって。リーサには好きな奴と添い遂げて幸せに生きろよって。さぁ、行け!」

 

 キーファに押される様にアレン達は時渡りの旅の扉へと足を運んだ。少しずつ眩い光が彼等を包み込む。

 

 その瞬間、キーファはとある袋を彼等へ投げ込みながら、笑みを浮かべ一筋の涙を流してありがとうと呟いたのだった。

 

 そして、アレン達が旅の扉を使い未来へと帰還する。キーファは既に機能を失った旅の扉を見て寂しさを感じつつも、転移する瞬間にアレンから投げられた袋の中身を見た。

 

「全く……。考える事は同じって訳か……。ありがとな、アレン。お前の剣、大切に使わせて貰うぞ」

 

 袋の中に入っていたのはアレンがこれまで記録した薬草図鑑やスノキアの根っこなどに加えて、アレンが持っていた奇跡の剣が入っていた。

 

 キーファも自身の愛剣である光の剣こそアレン達には必要だと思い、家族への手紙が入った袋と共に投げ入れたが、彼も似た様な事を思って同時に投げていたのだった。

 

「さぁ、族長様、みんな、アイツ等との別れが済んだ事なので俺達の、ユバールの旅を再開しましょうか」

 

 力強い笑みを浮かべたキーファは腰に差したユバールの剣を一撫でしながら、アレンから貰った奇跡の剣を背中に差して旅の扉から離れたのだった。




これにて、ユバール族(過去)が終わりました。
次回は現実世界視点を書いてから次に進みたいと思っています。

余談ではありますが、数話前に書いたマリベルのビンタシーンは賛否があるかと思います。

しかし、もし仮にあれが無かったら主人公アレンはキーファとの別れで自身の気持ちを伝えなかったルートに入っていました。

そう言うルートも考えていて、バッドエンドとは言いませんが思いを伝えなかった事にずっと後悔する展開を考えていまので、そうならなくて良かったと書いていて思いました。

なお設定

キーファ・グラン 19歳と数ヶ月
Lv.52
・HP 355
・MP 305
・力120
・素早さ150
・身守り85
・賢さ145
・カッコ良さ89

職業
・戦士 星8
・武闘家 星8
・魔法使い 星1
・僧侶 星2
・踊り子 星8
・吟遊詩人 星8
・笑わせ師 星8

・バトルマスター 星5
・スーパースター 星5

特性
剣の天才
剣技のみ一部の職業で本来なら習得可能な技を覚える事が可能。
例)グランドクロスはパラディンの技であるが、キーファが持つ剣才はゴッドハンド級の技も完璧に習得可能

装備
・武器1:奇跡の剣(アレンの剣)
・武器2:ユバールの剣
・兜:鉄仮面(バーンズ王支給)
・鎧:鉄の鎧(バーンズ王支給)
・装飾品1:太陽石の指輪
・装飾品2:豪傑の腕輪

サブ
破邪の剣(ユバールの剣を失ったダーツへ渡したが、キーファとライラの子供達が守り手になったら返そうと思っている)

鋼の剣(あくまでも予備武器。守り手認定された若い衆の内の誰かにあげようと思っている)

ユバール族の守り手ダーツはLv.27相当を想定。
ゲームよりも高め。
アレン達もキーファと同等クラスはある。


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