過去世界にいたユバール族とキーファ達と別れて現実世界へ戻ったアレン達はしばらくの間、キーファとの今生の別れに耐えていた感情を吐き出していた。
ずっと堪えていた悲しさに誰もがまるで子供の様に泣いて少しした後、ふとマリベルが石板の側に見慣れた袋を発見した。キーファの袋だった。
中を確認するとバーンズ王やリーサ姫達グランエスタード城の関係者達への手紙に加えて、アレン達個人に宛てた手紙があった。
お別れの時には恥ずかしくて話さなかった色々な思い出が詰まった手紙に加えて、アレン宛に彼の愛剣である光の剣も入っていた。
「ふふっ。全く、考える事は同じかよ……。ありがとう、キーファ。お前の剣、大切に使わせて貰うよ」
「そう言えば……アンタ、自分の剣は?」
「帰還する直前に袋ごとキーファに投げてやった。まさか、アイツも同じ事をするなんて思わなかったけどな……」
「2人らしいね……!」
「仲良しだぞ!」
「あぁ、そうだな。それじゃ、バーンズ王達に伝えて行こうか……。手紙に書いてある通りなら、キーファは事前に残る事は言っていた見たいだしな……」
アレン達は謎の神殿にいる妖精へキーファの事を伝えた後にグランエスタード王家への書状等を持って歩みを進めた。
行く途中の門番や兵士達はキーファ王子がいない事と泣き腫らして赤くなり酷い顔のアレン達の表情を見て全てを察した。
数ヶ月前にアレン達が行う冒険は、魔王によって奪われた世界を救う果てしなく過酷な旅路であるとバーンズ王直々に説明があったからだ。
だから当然、今居ないキーファ王子と酷い顔であるが同時に覚悟を持った表情のアレン達を見て、もう2度とキーファ王子には会えないと悟ったのだった。
「……バーンズ王にリーサ姫。ただいま、帰還しました」
「……アレンよ、キーファはどうしたのだ?」
「キーファからの伝言の前にエスタード城で働く皆んなに手紙があります。まずはそれからです」
そう言うと代表したアレンはキーファの袋を手渡して、バーンズ王達に確認して貰った。
震える体を押し留めたバーンズ王とリーサ姫はそれぞれに宛てたキーファからの手紙を読み涙を流した。
前もって覚悟していたとは言え、流石の彼等も胸が張り裂けそうな程に悲しさで溢れていた。
「バーンズ王にリーサ姫、キーファからの伝言です」
「……聞こう」
「……聞かせて頂戴、アレン」
「バーンズ王にはアンタの息子は自分の進む道を見つけた、と……。リーサ姫には幸せに生きろよ、とアイツは笑って俺達を見送りました」
「……何が、自分のやるべき事を見つけた、だ」
「……アレン、お兄様は幸せそうでしたか?」
「とても、とても幸福そうでした。アイツも、この様な別れになって心苦しそうでした。
それでも、愛する人を見つけてやるべき事、やりたい事に胸を張って過去に残りました」
「そうか……。アレン達よ、我が国が誇る聖戦士達よ、誠に大義であった」
「グランエスタード王家とその関係者を代表して感謝を伝えます」
「だが、儂やリーサだけではなく他の者達も流石に心の整理が出来ん……。下がってくれ」
バーンズ王達の気持ちは痛いほど理解していたので、アレン達は静かに頭を下げて退出した。
そして、この日以降にバーンズ王達からグランエスタードの民へ正式に発表があった。
キーファが過去世界に残り、神の復活願うユバール族と共に生きる事とグランエスタード次期国王をリーサ姫すると言う内容だった。
実質的なキーファの死に国民達も動揺を隠せないし、彼には他者を惹きつける魅力があったから悲しむ人も多かった。
それに加えてユバール族の事を知った事で、世界を救う冒険を行うアレン達聖戦士の旅がどれほど過酷なのかを彼等は改めて知ったのだった。
また、リーサ姫の次期国王への決定に関しては多少の不安があったがそれも直ぐに解消された。
次期国王として指名されたリーサの表情はとても凛々しかった。それこそ、病弱で幼く頼りなかった印象を吹っ切る程に王族としての信頼感を獲得したのだった。
後日、バーンズ王から改めて呼ばれたアレン達はキーファへの感謝と気持ちと共に石板を受け取った。
つい先日、城下町に住んでいる兵士達が国内訓練の最中に偶然拾ったと言う事だった。
灯台下暗し。まさかまだエスタード島に石板があるとは思ってもいなかったのでとても驚いた。
また、その際にバーンズ王やリーサ姫からは暫く心を休める様にと言われたが、アレン達はそれについて拒否した。
理由は単純でキーファと分かれたショックが拭いきれないからこそ、今は休まずに体を動かして気持ちを発散したかったからだ。
彼等もその気持ちを理解出来たのでその指示を直ぐに撤回して、復活したユバール族の休息他へ旅立つアレン達を見送ったのだった。
今回、復活した大陸はエンゴウの里よりもエスタード島からかなり離れた場所にある。
アレン達が乗る船は元は廃棄予定だった船を数年掛けて修復した年代物である。
だから、バーンズ王達はアレン達へ新たな船を与えたのだった。元々その船は冒険をするキーファに贈る船だったそうだが、結局間に合わなかったので使って欲しいと渡した。
それについてアレン達は了承したと同時にこれまで使っていた船を廃棄せずに残して欲しいと嘆願した。
これはキーファとの思い出の品だから、出来るだけ長く残して欲しいと言う気持ちが強かったのだ。
それについてはバーンズ王達も二つ返事で了承した事で、アレン達は新たな船を使い復活した大陸へと向かった。
そして、見慣れた風景の道を足早く進みユバール族の休息地へと辿り着いたが、そこにはユバール族は居なかった。
「……やっぱり、居なかったわね」
「まぁ、彼等は一族単位で世界中を旅しているからな……」
「でも、きっと彼等は世界の何処かで生きている筈だよ」
「そうだぞー! だって、キーファが過去に残ったんだ!」
「そう、だな……。あぁ、そうだとも。いつか、ユバール族と再会する為に俺達は俺達の出来る事をするとしようか」
力強く握った拳と共にアレン達の心には固い決意が宿った。ユバール族が存続しているかはまだ分からない。分からないけど、必ず生きていると信じたのだった。
ユバール族編完結!
結局、キーファは過去世界に残って種泥棒やんけ! ってなっている人もいるかと思います。
しかし、彼が残る選択をした結果、未来にとってとても良い事が既に起こっています。
昔からゲームの感想ではキーファやユバール族のやった事は無駄だったとかそう言う意見が多数見られていますが、この物語ではちゃんとした意味がありますのでご了承をよろしくお願いします。
その辺りは物語を進める中で少しずつ明かして行こうかと思いますので、更新しましたら楽しんで頂けると嬉しいです。