取り敢えず近くに水の気配を感じたアルスを先頭にして西に進む。大河の先に禍々しい空気を放つ島が見えたが渡れる様な橋や道はなく、水の流れも激しい感じだった。
多分だけどあの島がこの砂漠地帯が封印されるキッカケとなった異変の正体だと思ったが、情報が足らないので一先ず現地人から話を聞こうと言う結論に至った。
そこから川に沿って南下したがこれと言って何も無かった事を確認して、そのまま東へと進むとオアシスがありアレン達は今日の所はここで休憩を取った。
過去の異変と言う魔王軍の支配や襲撃があるとは言え、流石に村や町の1つでもと思っていたアレン達の表情には疲労感が隠せなかった。
やはりこう言う未知の大陸を探索すると考えると馬車の必要性について再確認したアレン達だった。
一夜明けてそこから北へ向かうか更に南下するかで相談した結果、大河の流れが北へ流れていた事をアルスは思い出す。
アレン達としても砂漠地帯の探索は初めてであり、ユバール族の旅の経験からオアシスと言う水源の付近に町や国を築いているとの事だった。
だから、水源となっているオアシス近辺に町や国が無いとしたら大河の下流が付近にあるのでは無いかと思い北上した。
また、こう言う時のガボや母狼の嗅覚ではあるが、この砂漠地帯はずっと濃い血と死臭が漂っていて彼等の鼻を潰していた。
それほどモンスター達によって多くの人が死んでいるから人に出会えないのだと思った。
探索を進めるアレン達だったがここでようやく人が居そうな大きな城を発見したのだった。ただ、外装がボロボロになっていて不安が残っていた。
「やっと人が居そうな場所が見えてきたわね……。居ると良いのだけど……」
「砂の上は歩きにくいぞー!! もう探索はしたく無いぞー!!」
「ガウッ!!」
「あはは……。それには同感かな……? 水はアルスの力でどうにかなっているが……」
「うん。こうも土地勘が無いと結構辛いね……。まるで、方位磁針無しで大海原を彷徨うってこんな感じなんだろうね……」
「そうね……。水と食料に関してはしばらくはどうにかなるけど、無限にあるって訳じゃ無いからね」
「そうだな……。今回は馬車が使えないから袋の中身を水や食料を多めにしているから助かったな……」
「でも、油断は禁物だよ。万が一の時は一度現代に戻ってから再度準備し直す必要も視野に入れて探索するよ」
アレン達は探索を進めてもう2日目の夜に近付いていた。その間もモンスターとの戦いや慣れない砂場での移動に精神的な疲労感が強かった。
しかし、案の定と言うのだろうか。城の周辺には多数のモンスターが徘徊しており、砂漠地帯の血と死臭の発生源はこの城だった様だ。
この様子では人は居ないだろうと思ったアレン達は、取り敢えず城内のモンスター達を一掃しながら生きている人が居ないか探した。
城内には凄惨な死を遂げて無惨に転がる死体の山だった。それを弄んで居たり、食べているモンスターを見て激怒したアレン達は残った死体を弔える場所を探して地下へ降りて行く。
やはりこの城内には生きている人間は居ないらしい。最下層まで全て調べたがあったのは死体だけだった。
最下層には死神貴族系のボーンライダーが死体を弄びながらゲラゲラと陣取っていたので、アレン達は有無を言わさずに倒した。
ボーンライダーの行為は見ているだけで吐き気を催す様な邪悪な所業であり彼等は見過ごす事が出来なかった。
その際に命乞いで何か喚こうとしていたがアレン達はそれを無視して命を刈り取り、消滅したボーンライダーからは持っていた槍と盾に加えて綺麗な首飾りが落ちたのだった。
そして、それらをいつもの様に袋の中に入れて仕舞い込んだアレン達は早速とばかりに城内の死体をかき集めたのだった。
死体の経過時間から見てアレン達が来る前に死んでいた。だから、助けられなくても仕方がないとアレン達は思えなかった。
せめてアレン達が助けられなかった分、彼等を丁重に弔った。神官の養子として育てられたアレンが筆頭になって祈りを捧げていると人の気配がして視線を向けた。
「……お前達、何者だ? ここで、何を……。いや、弔ってくれたのはお前達だったのか……?」
現れた男は最初は警戒心を強く持っていたが城内に居たモンスターが掃討されていた事。
そして、そこに放置されていた死体達の半分が消えていて、今正に弔われている状況を見て悟ったのだった。
「こんな身なりをしていますが元は僧侶ですから……。傲慢であると理解はしていますが彼等を助けてやれなかったので、僭越ながらせめて安らかに眠れる様にと……」
砂漠を旅する様な装いに加えて戦士や魔法使いなどのおよそ僧侶らしからぬ格好のアレン達。
本当は死者を弔うなら僧侶としての正装が好ましくは思ったが、いかんせんここはまだ危険地帯に加えて数も多かった。
だから、本当の意味での埋葬はこの世界の異変を解決した後で、今はとにかく野晒しに放置された遺体を弔いたかったのだった。
「いや、感謝する……。俺はここにいる連中を弔いに来たが連中も俺なんかよりも、異国とは言え本職の僧侶に弔われた方が良いだろう……。
偉大なるザラシュトロの息子ハディートだ。死した我が同胞達を丁重に埋葬したお前達へ感謝を述べる。本当にありがとう」
「俺の名前はアレン。俺達聖戦士はハディートさんの感謝を受けます」
「アタシはマリベルよ」
「僕はアルスです」
「オイラはガボだぞ!」
「ガウッ!!」
「そうか、よろしく頼む。残り半分は俺も手伝おう……」
そうして、自己紹介を済ませたハディートはアレン達が何故ここにいるのかは一旦さておき、先ずは当初の目的である埋葬を行なったのだった。