エデンの来訪者   作:火取閃光

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第50話

 砂漠の民ハディートと出会ったアレン達は城内にあった死体達を黙々と埋葬して丁重に弔い終えたのだった。

 

 ただ、外に遺棄されていた死体は残念ながら激しい砂嵐により作業を中断せざるを得なかった。

 

 ハディートも砂漠を生きる者としてこれ以上はもう十分過ぎると言い、アレン達と共に一夜を過ごすべく城内へ戻ったのだった。

 

 そして、アレン達が何故こんな死の大地と化した砂漠へ来たのか、聖戦士とは何かについて説明を求めたのだった。

 

 ハディートの質問に対してアレン達は答える。自分達は魔王オルゴ・デミーラによって奪われた世界を取り戻す為に未来から来たと旅の目的を伝えた。

 

 案の定、最初こそは信じ難い気持ちで聞いていたハディートだったが、逆にそれくらいの事がなければこんな死の土地に来てまで死体を弔わなないと思い理解してくれたのだった。

 

 これがもしも、アレン達が死体を弔わなかったのであれば頭がおかしい狂人達の妄言だと思っていた。

 

 しかし、アレン達の異質過ぎる身なりに加えて、一目見ただけでも分かる程の只者ではない強者の空気感にハディートは圧倒されていたのだったのだった。

 

「アレン達の事情は分かった……。それじゃ、今度は俺達砂漠の民の事情を話そう……」

 

「ハディートさん、この国で何があったのですか?」

 

 アルスの問い掛けに対してとても難しそうな表情を浮かべたハディートが静かに語り始めたのだった。

 

 この砂漠の国がこうなり始めたのは、この国の女王フェデルが民を使って精霊の像を作り出そうとした事がキッカケだった。

 

 そして、精霊像の建設中にそれに目をつけたモンスター達が砂漠の民を虐殺して今に至ると簡潔に答えたのだった。

 

「では、近くにあった大河の向こうの島から禍々しい空気を放っていたのは……」

 

「恐らくはモンスター達による物だろう……。ここで殺された者達は女王を守護する兵士や老人達がほとんどだ。

 

 この城に住まう若い働き手や巫女達は襲撃してきたモンスター達によって、ナイラ河を渡り精霊像のある場所まで連れ去られた。

 

 奴等に何の目的があるかは知らないが、人手を連れ去った事から精霊像で何かをしているのだろう……」

 

「そうでしたか……。それで、ナイラ河を渡る手段は……?」

 

「……現状見つかっては居ない。奴等め、砂漠の民を連れ去った時に使った船を壊した様だ。船の残骸がナイラ河を流れていたからな……」

 

「やはり、危険を承知で泳いで渡るしか無いのか……」

 

「それはやめておけ。この激流のナイラ河を泳いで渡るなど人には到底出来ん。今の水の流れはかなりおかしい。

 

 本来、ナイラ河はもっと穏やかな水流だから人力とは言え船を漕ぐ事で渡れていた……。

 

 今の水流で精霊像のある島へ向かうなら……。それこそ、伝説のティラノスが居なければ不可能に近い……」

 

「ねぇ、ティラノスって?」

 

「ん? あぁ、そうだな……。我等、大地の精霊を信仰する一族に伝わる聖竜とされている。本当に居るのかは定かでは無いがな……。

 

 この辺りの話は我が父であり、族長のザラシュトロが詳しい事を知っている筈だ。

 

 ここから南東にある俺の村へ行き、ハディートの連れだと言えば悪い様にはしないだろう。俺はまだやるべき事があるから一緒には行けんがな……」

 

「大地の精霊を信仰する一族……」

 

「あぁ、それがどうした? 砂漠と共に暮らしているのだ。それなら、精霊を信仰するなら大地の精霊だと思うがおかしいか?」

 

「いえ、そう言う事ではありません。ただ、俺とアルスはそれぞれ風と水の精霊から聖刻を受けています」

 

「それに、つい最近まで同じ大地の精霊を信仰するユバールって一族と一緒にいたから驚いただけよ……」

 

「ふむ、なるほど……。ユバール族と言うのは残念ながら知らないが、精霊の紋章を持つ聖人か……。

 

 これは直ぐに我が父に会わせるべきだな……。さっきも言ったが俺の村まではここから南東へ歩き2日掛からない場所にある。

 

 だけど、さっきの話は無しだ。俺も一緒に村へ行き案内しよう。俺も一緒に行った方が手間が省けるだろうからな……」

 

 ハディートが直接村へ案内をしてくれると聞いたアレン達はそのまま感謝を伝えて、一同は死者が弔われたこの場所で一夜を明かしたのだった。

 

 次の日になると外を吹いていた砂嵐が止んでいる事を確認したハディート達は、村の行く途中にある休憩場所であるオアシスを目指して歩いた。

 

 村へ行く道中にモンスター達に襲われたアレンはふとボーンライダーが落とした槍や盾等をハディートに渡した。

 

 自分達には不要な代物だけど件のモンスターが落としたマヌーサが使える砂塵の槍と鋼の盾。

 

 砂塵の槍に関してはグリーンフレークで手に入れた破邪の剣やアレンが持つ光の剣、キーファに渡した奇跡の剣と同じ魔法武器の類である。

 

 未だ武器が鋼の剣から更新出来ていないアルスにも一応は装備は出来るが、慣れている剣術と比べて槍術は稚拙も良い所なので彼は断ったのだった。

 

 それにハディートの武装はこう言う状況だから仕方がないとは言え片手剣1本に加えて旅人の服である。

 

 彼自身の強さに関してはこの砂漠を1人で歩ける程度には強いが、エスタード島にいる兵士達と比べて少し強い程度で兵士長達には届かないくらいだ。

 

 更に加えて彼が持つ片手剣はアルスが持つ鋼の剣と比べてもお世辞にも強い武器とは言えない代物の為、彼の戦力増強を鑑みて渡したのだった。

 

 彼はアレンの施しに感謝をして早速とばかりに砂塵の槍と鋼の盾を装備する。戦士気質な彼にはお似合いな装備であった。

 

 そして、そう言えばボーンライダーがこんな物も落としたとアレンが綺麗な首飾りを取り出すと彼は表情を強張らせた。

 

 この首飾りの正体はこの砂漠の国の女王が代々受け継がれて来た国宝で、行方知れずの現女王フェデルが所持する大切な代物だった。

 

 ハディートの言葉に反応したマリベルが、そう言えばボーンライダーが最後に命乞いをした際に女王から貰っただのと言っていた事を思い出した。

 

 その事を伝えると一気に激昂するハディートだったが、首飾りの宝石の所に何かが挟まれていると気が付いたガボが叫んで一同はそれを見た。

 

 そして、それが女王フェデルが砂漠の民に向けた手紙であると知り、女王の気持ちを知ったハディートは一瞬でも疑った自身を恥じて急ぎ村へと向かったのだった。

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